部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

合宿道中にて

「うわ〜雨凄いですね〜 」
「あぁ・・・ 」
と隣の七海は土砂降りの雨に
感想をつぶやいていた。
あの後、全員集まった僕らは
大学から貸し切りバスを使って
合宿地である伊豆に向かっていた。
・・・個人的に台風で高速道路が通行禁止に
なってくれればよかったのだが
悲しいぐらい何も表示されていない。
・・・ちくしょう、台風め恨むぜ。
バスの座席配置は部員のみんなが
気を利かしたのか僕と七海
織田と与謝野さんが隣になっていた。
・・・そしてそんな僕らを睨んでくる夏目。
なんせ夏目は最前列で、彼の愛しの?七海は
最後列で僕の隣なのだ。
そりゃ機嫌も悪くなるか。
「胃が痛い・・・」
だって夏目って機嫌が悪いと
何しでかすか分からないんだよ?
・・・今までどれだけ後処理をしてきたか。
「センパイ〜? 」
と考え事をしていた僕の顔を
七海が覗き込んできた。
「ん?どうしたの? 」
「顔がしかめっ面になってますよ?
ほらほら笑顔ですよ‼︎ 笑顔‼︎ 」
と頬を引っ張られる。
「ほひ、やめほ」
「うわ〜センパイのほっぺ
柔らかい〜楽しい〜‼︎」
「やめほい」
と僕は七海の頭に軽くチョップを入れた。
「あいた! 」
「僕の頬で遊ぶんじゃないよ・・・」
「えぇ〜だって柔らかいんですよ〜
触りたくなりますよね〜?」
「ならば・・・君も同じ立場を
味あわせてやろう」
「へっ?はぷっ」
「おぉ~こりゃ面白いね」
プニプニしていてまるで餅を
触っているような感覚だ。
「へんはい、やへてふたはい」
「ごめん~何言っているか
分からない~」
「へんはいのはか!」
「墓ならまだ大分先さ~」
としばらく七海の頬で遊んでいた。
・・・後ろから後輩や同期達が
温かい目で見てきていたが無視をした。

そしてその後バスは何事も無く
目的地である伊豆の民宿に着いた。
与謝野さんの親戚の家に比べたら
小さいと思ってしまうが
あそこが異常なだけあって
目の前の民宿が小さい訳ではない。
僕ら幹部は宿の方に挨拶をしに行った。
「これから1週間よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
「こちらこそよろしくお願いしますね」
そして宿の方にお土産を渡して
各学年ごとの部屋に向かった。

各学年ごとの部屋という事で察して欲しいが
僕と夏目は同じ部屋だ。
僕ら以外にも男子は1人いるが
気まずい事には変わらない・・・
「・・・」
「・・・」
とお互い目を合わそうともしない。
まぁ当たり前だろう。
夏目から見れば、僕は主将になかなか
従わない上に主将よりも人望があり
今回の事件で立場が逆転されたのだから
嫌になるだろう。
無論僕も夏目の事は1年生の頃から
自己中で嫌いだったし、今回の事件では
七海を脅しかけたのだから
僕が許すはずがないだろう。
「国木田、夏目もさ、
部屋でお互いに殺気出すのやめないか?」
と同部屋の同期に注意されたが
「「断る」」
「・・・お前ら、そこは息ぴったりなんだな」
と同期が呆れながら呟いた。
「おい、俺と部活のお荷物と
一緒にすんな」
「同じく、僕と部活の問題児を
一緒にしないでよ」
「誰が問題児だ?」
とさっきまでの雰囲気とは異なり
今にも突っかかりそうな雰囲気になった。
「何か間違った事言ったかい?
今回の件もそうだし、今までも。
お前のせいでどれだけの人が
迷惑被ったと思っている?」
「そ、そりゃ俺は主将だからな」
とたじろぎながら答えた。
「そうか・・・お前はそうなんだな」
それを聞いて僕は呆れていた。
・・・こんな奴と3年間よくいれたな〜
なんか疲れを超えて、何にも感じないよ。
「とりあえず2人とも落ち着け。
幹部2人がこうだと全体の士気に  
関わってくるからやめろ」
「国木田、お前部屋から出て行け」
「おい夏目‼︎」
と同期が止めに入ろうとするが
「そうだな、出て行かせてもらうよ」
「国木田も落ち着けって‼︎」
「てかお前は国木田の味方を何故する?
そんな奴味方になる意味無いぞ」
「・・・あぁすまないなお荷物で。
ごめんね問題児の夏目」
「てめぇ・・・」
「やるかい?」
「お前らいい加減にしろ‼︎」
間に同期が入ってくれたおかげもあり
その場はなんとか収まったが
僕と夏目の溝は更に深まった。

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