ダンジョン潜って1000年、LVの限界を越えちゃいました

花鳥月下

交わる二人と純白の精

胃腸炎から復活して三日間使って書きました。いつもより多めの四千字程度でお送りします!
前回のお詫びに対しての労いのお言葉、力になりました!!
本当に感謝感激です!!
これからも精進致しますので宜しく御願いします!!
あ、今回バトル無しです。


ティオーネとの激戦から約2日、キリガは未だ目を覚まさないでいた。
キリガの纏っていたテラの光は消え、逆立っていた頭髪は元の短く切り揃えられた清潔感のある垂れた赤髪に戻っている。
瞳は目を瞑っていて良く分からないが、この分なら戻っている事だろう。

『キー、大丈夫かな?目、覚ますよね?』
一方、クロナはキリガの周りをふわふわと、いやオロオロと飛び回って落ち着かない様子だ。
それもそうだろう、あれほどの力を急激に発動させたのだ、肉体に多大な負担を負っていると考えても不可解おかしくはない。現に2日程寝込んでいるのだからこのように狼狽えるのも普通と言えよう。

『うーん……あ、忘れてた!そうだそうだ、鑑定すればキーの身体の状態分かるじゃん!あれ?僕って天才?』

そう、鑑定が重宝される理由は此処にある。

鑑定は、対象者のステータスを確認出来るだけでは無く、対象者の状態、心理状態等も確認出来るのだ。
つまり、敵に鑑定士が一人でも居れば自分の弱点、行動、心理学に長けている者なら思考まで読まれてしまうのだ。
この事から、鑑定士はとても重宝されるのだ。

『じゃあ早速……『鑑定』!!…………え?』
クロナの絶句した理由、その原因、キリガのステータスをご覧頂こうーーー

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キリガ(極度疲労•肉体超絶強化による長期睡眠•心理状態正常)
種族 エルフ『変異型』
レベル 68
生命力 89000/67000
内蔵テラ600/600
攻撃19750
防御12000
俊敏90500
運50
スキル 『収納庫』 『精霊術‘‘操,,』 『元素の兆候』
???(未覚醒)
魔法 『全属性中級魔法』 『睡眠回復』 『形成』new
称号 無し 
加護 世界樹ユグドラシルの加護
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『元素の兆候』
テラ、即ち世界元素に何らかの変化により直接的な関与を果たした者の覚醒の兆し。このスキル自体にバフが有るわけでもなく、覚醒の予兆を表すのみとなっている。

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『強過ぎるのだ……しかも『元素の兆候』……やはりあの力はあの方のーーいや、それよりも……』
今までの緊張の糸がプツンと切れたのか、ヘロヘロと地面に落ちる。
カツンッ
と子気味の良い音が鳴る。
クロナは大きく息を吐きーー
『無事でよがっだのだ!ギ~~!』
そう、クロナも狼狽えた様子を見せていたが、実際はとてつもなく心配していた、それこそ心臓を握り潰されるように心が痛んでいたのだ。
ヒック、ヒックと泣きじゃくっている。
涙は出ないが泣きじゃくっている。

ーー無音と化した十階層の内部に、クロナのすすり泣く声が、静かに木霊するーー

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[sideキリガ&???in精神空間スピリットルーム]

『やぁ、どうやら兆しきっかけを掴むことが出来たみたいだね、おめでとう。流石僕に選ばれただけの事はあるよ。』
………は?なに言ってんだコイツ?
兆し?選ばれた?何だよ、対に俺は夢ですら面倒事に巻き込まれんのかよ………
て言うか、コイツ誰だ!?
何か声に聞き覚えが有るような無いような……………
あ………
「お前、ティオーネの時の……所で、お前誰だ?」

少し大きめの玉座に座る彼、白髪白眼、不自然な程白い肌に白い着衣を纏っている幼げな純白少年は、ヤレヤレ、と大げさに首を振って溜め息を吐く。
何だコイツ。

『まぁ、初めまして、ではないよねキリガ。現に一回会っているし。

すくっと立ち上がり、三歩程近づいて前置きを話す。
「前置きなんざいらねぇよ、さっさと質問に答えろ」
それに対してキリガは、そんな態度を一蹴するかのように返答する。
『おおー怖い怖い、そんなに怒るなよ。…コホン、では、改めまして、僕の名前はユグドラシル、世界樹ユグドラシルの意思さ。』
「…………へ?」
『お♪予想通りのリアクションだね!やっぱり君は面白いよ!!シッシッシッシッシッ♪』
そう言って、ユグドラシルと名乗る子供は悪戯に笑う。

「おいおい、なにがなんだかさっぱり分かんねーぞ?説明よろしくたのむわ……」
一方キリガは、全く状況を飲み込めないでいる。それもそうだろう、自分の中に知らない奴が居るんだから。
その異物感っていったら半端じゃない。

『オーケーオーケー、まず僕自身についてだけど、僕は言うなれば君の加護、世界樹ユグドラシルの加護が偶々意思を持っただけの存在だよ。今まで勇者とか帝王とかに加護を与えたけど、今回みたいに僕自体が出向くことなんてまず無いんだ。
ま、僕はおまけだね、お、ま、け!』

「何だ、たかがオマケか……」

『ヒドリッシング!!?』

「なんだそれ?」

『ヒドいって意味だよ~?』

「あっそ、で、次の質問だ。兆しってのはなんだ?あの時は雑音のせいで上手く聞き取れなかったが俺の聞き間違いじゃなければ……お前だよな?俺にあの力を渡したのは、あれは何なんだ?」

刹那、ほんの一瞬だがユグドラシルの雰囲気が変わった。その直後、まるで、身を引き寄せられるような感覚に襲われる。それと同時、に全身が身震いを起こす。この世に生を受けて約百年程の人生の情報が一瞬でキリガの脳裏に浮かび上がった。

そして、ユグドラシルの雰囲気が元の和やかな空気に戻った時、まるで無重力から帰ってきた宇宙飛行士の様にへたりと座り込んでしまった。

「い、今のは……?」

『今僕が使ったのは君が発動させた力と同じ類のも物だよ。もっとも、僕と君の精霊術の種類は別だから、全く同じとは言え無いんだよね。これは君の持っている兆候が覚醒する事によって得る力の事だよ。その名は‘‘精霊覚醒,,人によって全く異なるスキル、この世で進化するスキルはこれしかないよ?僕が与えた兆しってのは、そのスキルを強制発動させて、肉体をそれに耐えうる器にしただけに過ぎない。目覚めるか目覚めないかは君しだいだよ!?ビシッ!』

「すげえ……今のが俺にも……!」
 
『おっと、そろそろクロナが心配だ……泣いて疲れて寝ちゃうかも知れないし………あ、そうそう、これだけは伝えておくよ!』

そう言うと、とても真剣な表情を浮かべて口を動かす。
『彼女を…クロナを絶対守ってやってくれ、彼女、とても優しいから無理をするけど………それでも、絶対に忘れないで、彼女、とっても弱いからーー』

ユグドラシルがそう言うと、キリガは後ろを振り返って微笑みながらーー
「知ってるよ、バカヤロー」
そう、口にしたのだ。

「じゃあな、ユグドラシル」

『シルでいいよ?』

「あぁ、じゃあな、シル」

『あぁ、じゃあな、キリガ』
そして、キリガは意識を投げ捨てたーー
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ーーー時は流れて数時間後ーーー
「………ん、ふわぁぁぁあ……よく寝た」
うーん、とキリガはゆっくり伸びをする。
するとーーー

『チェェエエストォォォァァ!!』

超絶加速したクロナが、キリガの腹部にクリーンヒットしたーーー
「グハッ、なにすんだクロ『キーー!!』」
キリガが言い終わる寸前で、クロナの渾身の叫び声がキリガの怒号を遮る。
そしてーー
『グスッ、し、心配掛けすぎなのだぁ……』
酷く震えた、消え入るようにか細く、怯えた声を出した。

クロナは始めて、キリガに自分の弱さをさらけ出した。
この男なら信用出来る、この男なら大丈夫だ。私を受け止めてくれる。
そんな思いが伝わってきた気がして、キリガは少し照れ臭いような思いと同時に、胸の奥に湧く不思議な感情に気づく。
これが何なのかは分からない、只、悪い気はしない。
それともう一つ、沸いてきた物が有る。それはーー

「クロナ、こんな俺に弱さを見せてくれてありがとう。お前も、もう強がる必要は無いからな?辛いときは辛いって、悲しいときは悲しいって、ちゃんと言って良いんだからな……少なくとも、今は俺だけにはそうしてくれて良いからな……ありがとう、クロナ」

クロナを抱き寄せて、キリガは優しく、包み込むように囁いた。
『う………うん、うん!!ありがとう、キー!!大好き!!』
クロナは大きな声で返事をした。
その声は、たとえ表情の読めない石だとしても満面の笑みを浮かべていることが分かる位、明るい声だった。

「石に好きって言われるのもまた複雑だな」
キリガは、冗談めかしたように笑った。

『じゃあ、今度は身体が戻ってからだね!?』

「おう、楽しみにしてるぞ!」

こうして石とエルフ、二人は更に深く深く、絆の根を絡め合わせる事となるーー 



どうでしたか?ラストはいい感じに出来たと自負しております。まぁ、あくまで自己満足ですが……
クロナデレさせるの早過ぎましたかね………………?
え、そうそう!遂に画像入れたんですよ!!
どうですか?感想や要望があったら是非コメントで教えて下さい!!
ブクマ、いいね、コメ、お待ちしています!

コメント

  • ノベルバ愛読者

    もう、続きは更新しないんですか?
    面白いので読みたいです。

    0
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