to be Continued ~ここはゲームか異世界か~
3話 『宿屋ホンテン』
「ほぉー、外観はそのまんまだな」
やって参りました“宿屋ホンテン”
レンガで作られた茶色を基調とした外壁、木製の両開きの扉とその上に掛けられた横文字の看板。中は一階が受付と食堂で、二階から上が部屋のようだ。
ゲームの時と変わらず、古いが綺麗な宿屋といった感じか。
宿屋は、さっき居た場所から意外と近くだったらしく、歩いて五分程度で着いてしまった。
歩きながらこの世界の街並みを見ていたが、やはりと言うべきか、ゲームの中の“アルタの街”の風景とソックリだった。(なぜだか物凄く、懐かしく感じたが)
そんなこんなで、あっさりと目的の“宿屋ホンテン”に着いたわけだが――
……どうしよう……誰もいないんだが。
チラッと見る限り、端の方で酒らしき物を飲んでいる二人組が居るだけだった。
もしかしたら、アレが店員なのかもしれない。どうやらこちらには気づいていないようなので、取り敢えず(仕方なく) 声を掛けてみる事にした。
「すみません……あのー」
「あ? なんだ、酒ならやらんぞ」
いらんわ!!
「いや、お酒じゃなくて…泊まりたいんですけど、部屋って空いてますか?」
「知らん、店のもんに聞け」
「あ、はい」
店員じゃなかったパターンですか……ある意味ほっとしたけど……
それはそれで困った事になってしまった、秋山としては一刻も早く宿に入って情報を集めておきたかったのだが、店員が居ないのであればどうする事も出来ない。
店の入り口まで戻りながら、秋山は途方に暮れる思いだった。
「――あら、お客様ですか?」
「女神さまですか?!」
そんな時、入り口から現れた救世主の、その綺麗な声と待ち望んでいた言葉を聞いて、反射的にそう返してしまった。
「フフ、お上手なのね!」
二十代後半だろうか。焦げ茶色の神……もとい、髪に白い肌、これぞ美人な女性といった感じの人だ。
シンプルなエプロン姿で手には買い物の袋らしきものを持っていて、一目でこの宿の人だと分かる。
この人もNPCなんだろうか? とてもそうには見えないけど……。
最初の獣人のおっさんといいこの人といい、NPCっぽさを感じない。
「それで……お客さんよね? 朝食付きで銅貨五枚になるけれど構わないかしら?」
「はい、それでお願いします」
「はーい、ちょっと待っててねー」
そう言って美人さんは帳簿を取りに行った。
銅貨五枚……一泊、五千Gか。安いな。
「お待たせ! ここに名前を書いてもらえるかしら?」
名前――少し迷ったが……アキヤマとだけ書いた。
「ふ~ん、アキヤマ……変わった名前ね? それに見たことない服装だし……アキヤマ君は旅の人なのかしら?」
「まあ、そんなとこです」
見たことない服装と言うのは――秋山は今、『ソレガシ』と言う自分のゲームキャラになっている。
勿論、見た目もキャラの時の姿なっていて、青髪に青のパーカーに七分丈の黒のパンツといった格好で、おまけに割とイケメンな仕様だった。
おおよそ地球にいた頃の原型はなくなっている。着ているものは装備ではなく外見用アバターだが。
そんな俺の服装が、この世界では奇抜で珍しいのかもしれない。
このゲームのアイテムなのに不思議なもんだ。
とまあ、曖昧に答えたオレに、まだ何かを聞きたそうにしていたようだったが、それを制するように二十日分の宿代――金貨一枚を支払って、そそくさと部屋に行くことにした。(時間もったいないし)
かくして、テンプレ的な何かが起きる事は無く、無事に宿に辿り着くことが出来た秋山であった。
ちなみに部屋はthe宿屋といった感じだった。
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