俺の幼馴染2人がメンヘラとヤンデレすぎる件
帰りたい……
 はぁ……。
 俺はまるでバス酔いしてしまったかのような、辛い表情をしていた。
 その表情とは真逆の美代……なんせ俺は美代の唾液入りチョコを食べてしまったのだ。
 そして隣の志保は……どこからともなく取り出して来た包丁を綺麗に研いでいた。
 ……それって料理に使うんだよね!?グサって刺さないよね!?
 バスが加速した、きっと高速道路に入ったのだろう、外の景色を見ると辺りには沢山の車が走っていくのが見える。
 そのまま目線をバス内に移し変えると生徒はそれぞれバスレイクを満喫していた。
 俺は冷や汗が止まらないのでカバンの中から扇子を取り出し仰ぎ始めた。
 あれ〜?このバス冷房効いてるはずなのに〜……。
 「美代さん、唾液はどれくらいの量を入れたんですか?」
 ……確かにそこは重要だ、もしかしたらほんの少ししか、入れてないのかもしれない。
 いや、結局唾液を摂取してしまったことにかわりはないのだがそこはあえて触れないでおこう、いや触れないで下さい。
 座席越しのため表情は伺えないもの、テンションが明らかに高いのは分かった。
 「えっと〜ふふっ」
  ふふっ?
 「チョコを溶かす時に舌からゆっくりと垂れ流して……」
 あぁ〜!!!!!聞きたくない!聞きたくない!
 俺は必死で耳を抑えると同時に、冷や汗は滝のように流れ始めた。
 し、しかし!聞かなくては……。
 俺は押さえつけていた手をゆっくりと離していくと再び美代の声が入って来た。
 その口調は明らかに俺をからかって楽しんでいるようだったが志保の表情はどんどん暗く危なくなっていった。
  あれ?何だか頭がくらくらしてきたような……。
 そもそも俺は乗り物酔いしやすいタイプなのだからこれくらい普通なのだろう。
  俺はリラックスした体制になるとゆっくり目を閉じた。
 そこからの記憶は、ほとんど覚えていなかった、そしていつの間にか目的地についていた。
 「起きなさい……」
 「雪くん!起きなさいってば!」
  あれ?妹がいつになく怒っている……。
 俺は目を開けると志保が顔を膨らませながらこちらを見ていた。
 あ……あ!そうか……。
 俺は美代に……くっ!あれ?体が動かない?
 俺は体を起こそうとすると何か太い紐のようなもので縛られていた。
 周りを見渡すとどうやら俺は志保の太ももの上で寝ていたらしい……。
 「あ!これシートベルトか……ところで志保さん?その左手に持っている光り輝くものは一体……」
 「雪くん……実は私……生き血を飲んで見たいなって……」
 ……え?
 「別に良いわよね?」
 そのまま声のトーンは下がっていった。
 ダメに決まってるだろ!嫌だ〜!助けて!お母さ〜ん!
 志保は大きく手を振りかざすと包丁は太陽の光を反射して俺の目に直撃した。
 「うわっ!眩しい……」
 死ぬのか……遺書、書いといて良かった。
 「あ、あの〜高橋くんも志保さんもそろそろバスから降りないと……」
 そこには申し訳なさそうにしていた、担任の先生がいた。
 「2人とも仲がいいのは構わないけど、ほどほどにね?」
 そう言うと先生はバスから降りて、生徒たちを整列させていた。
 「そう言う訳なので志保さ〜ん、ベルトを解いてもらってもよろしいでしょうか?」
 俺は志保からシートベルトをほどいてもらうと、体を伸ばしきった。
 やっと……解放された〜!
   「ふんっ!」
 「あとで私の唾液も飲んでもらうから……」
 「えっ……」
 そう言うとそのままバスから降りて行った。
 耳元で囁いて来た志保に対して俺は思わず声が漏れてしまった。
 「……帰りたい」
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柴衛門
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