僕と彼女たちのありきたりなようで、ありきたりではない日常。

きりんのつばさ

10年前の真実

その日の夕方
時間通りに私はゆーちゃんの家に行った。
「・・・約束通り来たよ」
というと私はリビングに案内された。
「うん、それじゃぁ話そうか」
「じゃあさ・・・
まず10年前何があったの・・・?」
「そうだね・・・まず僕のお母さん覚えている?」
「ゆーちゃんのお母さん?
うん、覚えているよ?」
あの優しそうなゆーちゃんのお母さんは
よく覚えている。
たまにしか家にいなかったけど、
作ってくれたスコーンは美味しかったな~!
なんかまた会いたいな~。
「そのお母さんだけど
ーーーもういないよ」
「え?」
・・・今、なんて言ったの?
ーーーもういないよ。
ということは。
「今から丁度10年前、死んだよ」
「!?」
でもここで1つ疑問が浮かんでくる。
「で、でもゆーちゃんはKIグループの跡取り
なんだよね?」
「うん、そうなっているね」
「なら、なんであんなアパートに住んでいたの?」
ゆーちゃんはKIグループの跡取りだ。
その国を代表するような会社の跡取りがあんなアパートに
住むだろうか?
「それに答える前に、1つ質問。
僕の父親を10年前見たことある?」
「お父さん・・・?」
流石に10年前ということもあるかもしれないが
全くと言えるほど記憶がない。
私の記憶だとゆーちゃんはいつもお母さんだけだった。
なんでそんなことに気づかなかったのだろう・・・?
「ごめん、全然記憶が無いかな・・・」
「そりゃそうだろうね。だって・・・」
とゆーちゃんは言葉を一度区切り
「僕のお母さんはその人の愛人だったんだ。
愛人の家にいちいちくる男はいないだろ?」
「!?」
なんだって・・・
ゆーちゃんが愛人の息子・・・!?
「元々僕のお母さんは筧の屋敷で働いていたんだ。
そこで僕の血縁上の父親と不倫をしてしまったんだ」
「・・・」
「で、それが本妻にバレて、僕のお母さんは
クビになったんだ。
この町に戻ってきたのは母さんの生まれた場所が
この町近辺だったからさ」
「・・・」
「それで町にかえってきたら僕を妊娠していたんだ。
当時は僕が生まれたのは父親しか知らなかったよ。
・・・だって本妻が知ったら最悪殺しかねないからね」
「じゃあゆーちゃんのお母さんは
その後どうしたの・・・?」
「僕が生まれてからはパートをいくつも
掛け持ちしていたよ・・・
一応僕の父親が極秘に援助をしていたけど
お母さんはそれに手をつけなかった」
「そうなんだ・・・」
「そして僕が7歳になった年に
お母さんは死んだ。
元々屋敷にいた時から本妻からの
いじめで体弱くなっていたのと
働きすぎで」
「それで筧の家に引き取られたの?」
「本来なら僕は施設いきだったさ。
・・・だって本妻から見れば僕なんて
ただの邪魔だからね」
「じゃぁなんで・・・」
「僕のお母さんも死んだと同時期に
本妻の長男が死んだからね。普通に病気だってさ。
それで筧の本家の血を引いている男子が
僕だけになったの。
・・・それ以降は予想簡単でしょ?」
要するに男子の跡取りのために
引き取られたということだろう。
だけどそれだと・・・
「あまりにも酷すぎるよ・・・!
だって家を追い出された上に
身勝手な理由でまた呼び戻されたんでしょ!?」
と私が言うとゆーちゃんは苦笑しながら
「ハハ、まぁね。
一応父親の弁明しておくと
僕とお母さんが追い出されるのを最後まで反対したのは
父親なんだ。そして父親はお母さんが死んだ際には
僕を引き取ることを独断で決めたらしいよ。
・・・それが贖罪に繋がっていると思ったら
大間違いなんだけどな・・・!」
とゆーちゃんを見ると拳に力を入れて
何かを我慢していた。
「ゆーちゃん・・・」
「・・・ごめん。
父親は僕のために思っていて行動しているのは
頭では理解できる・・・出来るけど・・・!
未だに心では許せないんだ・・・!」
「それで聞きにくいんだけど
引き取られたあとは・・・?」
「毎日いじめの嵐だよ。
特に本妻がすごかったな・・・
存在を無視、八つ当たりなんて当たり前・・・
でも何人かの人たちは優しかったよ。
お母さんに関係ある人や伊予に茜。
その人たちに助けられて今の僕がいる」
「ゆーちゃんって強いんだね」
・・・普通あんな状況にいたら
性格は大きく歪んでしまうだろう。
でもゆーちゃんは私が最後に見た10年前から
優しいのは全然変わってなかった。
「僕が、っていうよりも
伊予や茜のおかげだよ」
とゆーちゃんは微笑みながら言った。

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