時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
信長の乳姉妹、現る!
「で、なんで俺を此処に呼んだんだよ」
「決まっておろう。武功改めとはどんなものか、お主に学ばせるためじゃ」
「あ~。でも、問注所に居ただけであれだけ大勢の人が来るって分かると、こっちでの情報処理も見物だな・・・。よし、分かった」
俺はそう言うと、部屋の正面の隅っこに向かって行き、座った。
「兄さんも面白いところに座るやね~」
一益はクスクスと笑い、こっちを向く。
続いて信長が大笑いし、勝家もそれに合わせて笑った。
「なんで笑うんですか・・・皆さん・・・?」
信長は笑い終える。そして此方に扇子を向けて差す。
「決まっておろう。そんなところに座る軍師があるか。普通なら、一益か勝家の脇に座るのが常識じゃ」
そう言う事か・・・!!しかし、そんな事はどうでもいいと俺は言って刀を腰から抜いて床に置いた。
「非常識こそ、未来を変える!俺はそう思いたいね」
「・・・やはり可笑しな軍師です。中庭の木にでも首から吊るしておきましょう。信長様」
勝家はそう言うと、何故か懐から縄を持ち出してその縄を強く引っ張る。
なんで縄を常備してるんだか3時間くらい話し合いたいです。
「まぁまぁ、どうせ縄があるなら種子島で用いれば良いだけや。ほら勝家殿、縄をお貸し頂けるに?」
「いやそれ貸してくれって時点で撃つ気だよね!?その腰に掛けてある騎馬鉄砲で撃つ気だよね!?てか、それ撃った時点で縄返す気ねぇじゃねぇか!?」
「裕太、うるさいぞ。お主はそこで控えておれ!」
「(控えろって言う時点で控えてるから別に此処に居て可笑しく無くなったじゃねぇか・・・。)」
と、思いつつも、口を封じて体を前に向けてじっと黙って動きを止めた。
「信長様、勝三郎様と勘重郎様が・・・」
と、信長の小姓が大広間の襖を開けて入って跪く。
「そうであるか。中に入れよ」
信長も低い声で小姓に応じると、中に入るよう命令する。
小姓は「はっ!」と言うと、立ち上がって襖を開けて外へ出た後、閉めるとその場から去って行った。
・・・数分が経つと。
「失礼いたします~」
と、ほんわかしたあの何度も聞いた事のある声が襖の外から聞こえてくる。
「よかろう、入れ」
信長はスイッチの切り替えがとても速い。さっきまでふざけていたのに、今となっては真面目に応じている。これが大名の器量って奴なのだろうか・・・。
襖がサーっと開くと、二人の女の子が大広間に入室してくる。
彼女達は、目の前に敷かれている二枚の座布団の上にそれぞれ座ると、刀を腰より抜いて床に置いた。
「織田勘重郎信勝、只今参上仕りました~」
「池田勝三郎恒興、只今参上仕りましてございます」
二人そう話すと、頭を深く下げる。
「ふむ、表をあげよ。勘重郎、勝三郎」
信長はそう言うと、二人の深く下げている頭を上げさせた。
左には信勝が座っていて、左には恒興という女の子が座っていた。そう、先程噂になっていた信長の義姉妹なのである。
「勘重郎、末森では大儀であったな。よく父上に築いた末森城を守り抜いてくれた」
末森城、今では信勝が城主として任されている城である。
尾張には、いくつか城があるが、そのうちでも先代の信秀が築いた唯一と言える城であった。
彼は末森城を築いた後、那古野城を信長に任せて晩年を末森で過ごしたとされている。
「そして勝三郎。久しいな。末森で参陣していると聞いた時は驚いたぞ。まさかお主、この地に帰ってきているとは」
「いえ、義姉上こそ。御当主として健在で勝三郎を嬉しゅうございます」
彼女の名前は池田勝三郎恒興。織田信長の乳姉妹である。
史実では、信長の乳兄弟。桶狭間でも手柄を上げて後に美濃大垣城城主として活躍。
信長の死後は豊臣秀吉に仕えて、小牧・長久手の戦いにて戦死する。
なんでも、信勝の死後はその側室を嫁に貰っているとかなんとか。
「えぇ、確か池田流を作りに旅をすると言われ、各地を転々としていたそうですが・・・まさかこのタイミングで帰ってきているとは思いませんでした」
と、勝家は話した。
え、という事はさっきの噂もそう言う事で解釈して良いのかな?
ー数十分前
「でも、勝三郎様って最近まで尾張に居なかったんでしょ?なんで今の時期になって・・・?」
「さぁ?何処にいたかは謎だけど、戻って来てくれて、ひとまずは良かったかな」
・・・そう言う事だったのか。
俺は右手を下にして平らにすると左手を握り、右手をポンっと叩く。
「いや~、実は東は上野、西は長門に行ったり、京に行ったりと・・・各地を転々している間に刀が真っ二つになってしまいまして。名刀が無いかと探しているうちに、尾張での戦を聞きつけて帰って来た所です。そう言えば、京でまた一戦あるのではないか、と噂が」
今なんか凄い事言わなかったか?上野に行ったり長門に行ったり?
流石に歴史が好きじゃなくても授業に出てればそれくらいは分かるわ!
確か、上野は今の群馬県・・・長門は今の山口県・・・昔じゃ馬でも時間掛かるだろうから、結構長い距離を回っていたことになる。しかも、京都まで行ってるとは・・・。
それを推測すると、何年も居ない事になるな。
「京で・・・ふむ。とにかく、今回は大儀であった。岡部親綱だったな。信勝も末森での指揮、誠に素晴らしかったと佐久間が言っておった。引き続き頼んだぞ」
「はっ、有りがたき幸せ」
信勝と恒興はそう言うと、また頭を深く下げる。すぐに上げたけどね。
「さて、それじゃあお姉様。どうせこれからもいっぱい人が来るだろうから、私たちはさっとお暇するね。じゃあ、かずちゃん、かつちゃん。そして、たーくん」
俺のあだ名が出て来た時はビックリしたが、信勝が手を振ると、俺はどうすればいいか分からず迷い、頭を下げた。
「ふふ、可愛い~」
「・・・」
信勝はそう言って出て行ったが、恒興は此方になにか気迫を見せていたが、そのままその場を立ち去った。
一体何だったのか、今の俺にはまだ分からず仕舞いだった。
ただし、一つだけ。彼女はもしかすると・・・浪人と言う漂流者なのではないだろうか。(え、どうでもいい!?
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