時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

清州が綺麗に見えるところ、魔王の目あり。


「さささ、着きましたよ~。清州城!」

「で、デカいなぁ!!」

ー清州城本丸
俺達は、清州城の本丸まで来ていた。目の前には、それは高く聳え立つ大きな天守閣。
屋根は青いかわらで作られており、空の色よりも鮮やかでとても綺麗な城に見えた。

清州城。織田信秀の代より、織田家の所有する城として使われてきた。
信秀は後々、那古野城(現在の名古屋城)に居城を映す時に、織田信友が城代となるが、後々信長と信長の叔父にあたる織田信光によって、暗殺。
結局は、信長の城となり、信長は那古野城から清州城城へと、粗方全てを大改装させたそうだ。
史実とは異なり、この清州城は信長の代から天守閣が作られている。
小天守から大天守へと2層で作られていた。まさに、この城は信長の影響力を表した城だと言えるだろう。

「え!?大きいって私のことですか!?」

藤吉郎は嬉しそうにそう答えた。両手を頬に当てて、首を振りまくっている。

「いや、そういう意味じゃないから!!城の事だから!!」

「なーんだ。そういうことですか。」

藤吉郎は悲しそうな顔をした。
流石に、藤吉郎がどんな意味で捉えたかは定かではないのだが、これだけは言える。
お前のことは言っていない!

「ふふ。猿ちゃんとたーくんは仲良しだね。私も混ぜてほしいな・・・。」

と、信勝は言うが、後半部分がよく聞き取れなかった。

「ん?信勝。今なんて言った?」

俺がそう言うと、信勝は首を振りながら「ううん。ただ仲良しは良いことだね。って言っただけだよ」と、早口になって話していた。
なんだろう。怪しいな・・・。何か良からぬことでも考えているのだろうか。
俺もそこばかり考え事をしていると、未だに後ろの方から嫌な視線が感じられた。
そう、利家だ。さっきからずっとこの調子で困っています。助けてください。
俺も何度か道中で謝罪をしたのだが、彼女は「うぬのことで怒っているのではない。」
と言い、話を聞いてくれそうになかった。
因みに、前田犬千代こと又左衛門利家は右手に槍を持ち、着物の上に小さいヒョウ柄のジャケット、そして普段見るようなピンク色のスカートと、ちょっと個性が入り混じているような恰好をしているのだが、別に派手と言う訳でもなく逆に周りに宣教師らしい黒服の格好をしている人が多くて困る。
それに関しては、どうとも言えないのだが、この清州の商業区にはそんな感じで黒服を着ている人の割合が多い気がする。
これもやはり、信長の影響なのだろうか。
と、まぁ一人の宣教師が俺達が通っていくルートと同じ道を先に進んでいく宣教師も居るところからすると、織田家中には宣教師の人も居るのかな?
宣教師が居なかったとしても、キリシタンは居そうだけど。

「いやー、それにしてもこの城はいつ見ても大きいですねー!」

「いや、その話はさっき終わったよね!?」

「え、何言ってるんですか。さっきは貴方が言い始めた事ですよ?私は何も言ってませんって~。」

完敗です。言葉が出ません。流石藤吉郎ちゃん。事実を押し付けられるのが怖いよ~。止めて~。

「さて、それでは中に入ろうか。」

その場を取り仕切ったのは信勝こと、つーちゃんだった。
つーちゃんは、城門の前に立つ兵士に身分と目的を伝える。すると、門番たちは門を開いてくれた。
信長の妹であるからして、彼女と似ている性格だと思っていたが、結構お淑やかで信長とは正反対の性格だった。
実感するが、姉妹でも結構似ない事って多いんだな。

「しかし、これで城内の敷地に入ったって事で良いのか?」

俺は城の常識が全く分からないので、その場で信勝に聞いてみた。

「うん。そういうことだよ。ここからは正真正銘の清州城だよ。」

俺は生涯生きて来て、とは言っても新たな人生で生まれ変わりだが、初めて城の敷地内に入った。
敷地内は、城へと続く道がそれぞれ4つあり、いずれも真っ直ぐ出来ていて、所々に屋敷や小屋などが建てられていたが、それを圧倒するほどの大きさを誇る清州城が目の前に立ちはだかっていた。
道以外の一本道の脇は白い石で敷き詰められていて、またそれも綺麗であった。

「さて、これからが本番ですよね。本腰入れないと、信長様に怒られてしまいます~。」

「そうだね。ここからだね。頑張っていこう!あ、そういえばここから馬禁止だった。降りなきゃ」

信勝はそういうと、馬を降りて護衛の人に縄を渡した。

「え、そうなの?ここから重要って感じ?」

「はい、そうです。良く見て貰えれば分かりますけど、天守閣の天辺辺りに信長様がそれぞれ四方向からくる家臣達の様子を伺っているのですよ。ここでミスったら即家臣から草履取までに降格してしまうのです・・・。だから、頑張りましょう!」

あぁ、そうだった。藤吉郎は確か、元草履取から始まって今この位置に属しているんだった。
だから、やっぱり初期位置に戻るという事はどれだけ残酷な事なのか知っているのであろう。
ただ、俺はこう考えた。
信長は、本当は皆をそういう目に合わせることで、結団力を深めて、裏切られることを防ぎたいのだと思う。
信長の姿を見て来て思った。彼女はそうやって粗末に人を殺すような人間では無い。
斉藤義龍の時もそうだった。ちゃんと成仏させてあげようとしていたのだ。
それに、彼女の本当の心打ちを聞いてしまえば、俺は絶対に彼女を守ってあげたくなる。
そういう面から見ても、彼女の目的はただ一つ。
世の中に影響力を示したいのだろう。だから、それを支えるために俺達は進みだした。

「さ、ここからです。黙って行きましょうね。」

と、思った瞬間・・・。バン!!と、天守閣の上から大きな音が聞こえた。
キンッ!と、硬い者同士がぶつかる音がする。

「・・・・!」

「な、なんですと!?」

俺、藤吉郎、信勝は天守閣を見上げると信長が、こちら目掛けて鉄砲を構えていた。しかし、もう撃った後だ。
その弾は、その3人ではなく、その後ろにいる奴目掛けて放ったものだろう。
後ろを向くと、利家の槍の先端部分から少し煙のようなものが上がっていた。
彼女は、本当に弾を弾き返したのだ。

「・・・としいえ・・!?」

「・・・。いざ」

シュンっと、目の前にいた利家があっという間に姿を消す。
一体何処へ!?

「相良殿、天守閣です!」

俺が後ろを向いたころには、信長と利家がにらみ合っている状況だった。
どうやら、天守閣の下では人々が集まってざわざわとしていた。

「な、利家!?何をやってるんだ!?」

「状況的にはヤバいね・・。お姉様がどう出るかだけど。」

なんでそんなに平然として受け答えられるんだ!?信勝。と、言ってもそうか。彼女は少なくとも全然俺より長い間信長と一緒に生活してたわけだもんな。
俺達は、走って天守閣の近くへ駆けつける。
まさに、この状況。相まみえる寸前だった。

「・・・信長様。」

あまりよく聞こえはしないが、利家が言ったようだ。
それに対して、信長はずっと見つめて受け答える。

「なんじゃ。犬千代」

この空気・・・。やるのか。
全員がその瞬間、そう思っていただろう。俺もその一人だ。
突然犬千代は、槍を、一回転させる。すると、その場で座り込み、槍も右脇へ静かに置いた。

「先日の振る舞いには畏れ多いこと。そのご行為を許したまへ。」

辺り一面、真冬の寒さの様に冷気で覆われた。
何処だよ、ここ。葬式の式場かよ?小声死にそうです・・・。

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