時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

藤吉郎のちょっとした昔話 1


ー城内の内装はとても広いのが印象的だった。
いくつもの襖がある中、一際ここを通ればなんとかなると言ったかのような、一本の続く道へ家臣達は入っていく。
俺と藤吉郎、信勝もその後を追うようについていっていた。

「け、結構緊張するよな....」

「あー、分かります。私も最初の頃は城下に立ち入るってことでさえ、緊張していましたからね~。」

「そんなに慎重だったの!?」

そこまで慎重になるというのは、誰かに狙われていたのか、それともただ単に人と触れ合うのが苦手だったとか、そういう理由なんじゃないかと驚いたが、それを覆すのは簡単だ。藤吉郎が誰かに狙われていたとしても、彼女の頭の切れには誰もが口をアングリ状態になるくらいに凄い行動を取る。それに、人と触れ合うのが苦手というのは、今の状況を見ると全く考えられない。
疑問が頭に浮かぶ中、何かと何かがぶつかり合ってコーンッと良い音を鳴らす。

「ん....あれは...」

と、音の鳴った方に移動していくと、少し進んだ所に現代で言う中庭らしき小さい庭園を発見する。
大きさ的には、畳が15畳分くらいのお庭。

「おぉ、こんなところがあるのか。」

「織田家の事実上人質とされている、斎藤家の人質である帰蝶様が手入れをされているのよ。ここは」

信勝が丁寧に説明してくれると、ある物を指さした。

「で、さっき鳴ったのがあれよ。」

「あれは確か....鹿威しだっけ」

俺が答えると、藤吉郎は「ご名答です!」と言って手を叩いた。

「そう。あれは鹿威しと言うものなの。猿ちゃんの言った通り、ご名答ね。」

「おっし!当たった!.....ところで、前から気になってたんだが鹿威しはなんで置かれているんだ?」

「そうね...確か」

信勝が手を軽く握りながら口に手をあてると、小さな声で「うー」と唸りながら下を向いた。
どうやらお考え中のようだった。女の子らしい仕草だね!
と、そこで数十秒経つ頃には、藤吉郎が我慢ならなくなった様で、彼女が説明を始めた。

「それはですね。第一、鹿威しの目的は鳥やカラスから稲等を守るために、農民達が開発した新たな鳥避けの道具だったのですよ!カカシとは違って、また音も出ますのである程度退治することは出来たそうです。」

「へぇ。そうなのか!じゃあここもそういう目的で置いてるんだな。」

すると信勝が隣でクスクスと笑う。

「ふふ。猿ちゃんに言われちゃったか。まぁ、今はこうやって音を楽しむ為に置いている場合が多いのよ。特にこの夏季は癒されるでしょう?」

俺は少しの間だけ庭園を眺めた後、藤吉郎と信勝の後を追う。
庭園には、かきつばたの花が植えられており、紫色と白色が多く咲いていた。
とても幻想的で綺麗だった。

・・・少し道を進むと信勝が歩きながら、一つ元の話題を吹っ掛ける。

「そういえば、さっきの話は途中までしか聞いてなかったね」

「さっきの話?」

さっきの話と言えば、庭園の鹿威しの話だが...それ以外に何か話をしていたのか覚えていない。
俺が首を傾げながら考えているのを信勝は気付いたのか、話を進める。

「ほら、猿ちゃんの城下町に入るときに緊張したのなんだのって話」

「あぁ、それですか!」

周りに響く声で藤吉郎が言うと、やっと分かったと手を叩いて良い顔をする。

「そうですね~。あの話ですか.....では、大広間に着いてからでよろしいですかな?時間はあるでしょうからね!」

「そうね。行きましょうか」

「あ、あぁ」

さっきよりも早足で歩くこと1分。
長い間真っ直ぐに進んでいたところだったが、ついに右へ曲がり、城が一望できる外の通りへ出た。
城が一望できるのに、城内って言うのも面白いな。
そのうち、また建物内に入り、右に曲がると何やらざわざわと声が聞こえ始めた。

「さて、つきましたよ~(」

「えぇー!広いなぁ!」

「そりゃ、大広間って言うくらいだもん」

「さささ、早速席につきますか」

と言うと、藤吉郎は大広間に入り、前列より4番目の列と思われる家臣達が座っている所に入った。
見たところ、全員女の子のようだった。本当に、歴史上の人物が女の子だったのかと目を疑うところだな。
まだ、人数もそこまで集まってはいないが、家臣の女の子達は何か話し合っているのが分かった。

「さて、何処からお話すれば宜しいですかな?」

藤吉郎はそういうと、腕を組んで背筋を伸ばし、ニヤニヤ笑っている。

「そうだな。確か、城下町にいくのも気が気じゃないって……」

「そこですか。えっとですね、これに関してはあまり大声で言えないのですけれども……」

藤吉郎は手招きをして、二人の耳を近づけさせる。

「実はですね………私は元々今川家に仕えていたのですよ。」

「えぇ!?マジか……」

と、俺が小声で驚いて言うと、藤吉郎は頷いた。
信勝も、決して明るい顔ではなく、表情が非常に暗い。

「はい。何処かは言えませんがね。ですから、気が気じゃなかった訳です。今川の者だと知れたら、即切腹になりますし……」

「でも、何故織田家に仕えようとしたの?」

信勝は興味津々に聞く。

「元々私の家は、小姓の家でしたからね。実はお父さんも織田家に仕えておりましたので。その手引きでなんとか入れて貰うことが出来た訳です。」

「ふふふ。確か最初は、お姉様の草履取りだったわね。」

「草履取りだと……」

「えへへ。」

「本当に素晴らしい発想を持っている草履取りね。まぁ、そこから今のように刀を持つことを許されている足軽を越えた家臣の卵になっているのだけれどね。」

・・・かくして、発展もなくここで藤吉郎の昔話は終わる。
すると、信勝は動きだし、前の方にある、偉い方々が座るような雰囲気の場所へ向かっていく。
そうだ、信勝は織田信長の妹だった。だから前の方に座るのかな?
位置的には、一番前の座布団が信長、そこから南に左右両サイド数人の重臣の座布団が置いてあり、そこから南へいくと、今俺が座っている場所である家臣の席になる。因みに、座布団無し。
列は4列程で、一列5人ほどが座る感じであった。

ー既に重臣の何人かは座っていた。

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