時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

織田家の中で、一番鉄砲が上手な人。

種子島。世に言う鉄砲のことである。縄に火をかけて放つ火縄銃とも言われる。
数百メートル先の敵をも撃ち抜くことが出来る、その時代としては最先端の技術の結晶ともいわれる火器であった。後に、必需品として大名たちは固持するようになるが、それよりももっと早く鉄砲の魅力に引かれていた女子が、この尾張を治めている織田信長であった。

「種子島……あぁ、鉄砲だっけ?」

俺達は道場を後にする。
長い間、俺は種子島という言葉を島以外に何かなかったか考えていた。

「そうそう! それです!」

「世に言う種子島……」

気付いたが、利家は体言で終わらせるかごじゃるで終わらせるかのどちらかが凄く多い。
こっちの世界の標準語は、国によって違うのかな?良く分からないけど。俺のいた現代には銃を所持していたら逮捕、押収されるけど……こっちの世界には、まだ逮捕と言う概念は無さそうだ。

「さて、着きました! ここが種子島館です!」

考え事をしていると、いつの間にか種子島館に到着していたようだった。
建物の上の辺りには派手で大きい鉄砲が看板のように飾られていた。とにかく再現度が高く、普通に実戦配備できそうな気もするのだが……え?まさかね……?

「もしかしてあれ、戦とかで使えたりするの?」

俺の指の指している方向を、藤吉郎と利家は見つめると藤吉郎は頷き、次のように解説してくれた。

「はい! その通りです! あれは信長様が決死の覚悟で幼い頃より開発を進めた、ウルトラスーパー種子島です! 見て分かると思いますが、威力は凄まじいそうです。ただ、まだ誰も試したことが無いとか……」

さらに、藤吉郎の話に続けるように利家が話始める。

「これは飽くまで籠城用兵器。攻め込むときに持って行っても重労働になって、使わないとなれば無駄。その為、普段はこうやって飾り置いているでごじゃる」

「へぇ! 一応使う事は出来るのか! てか、幼少期の頃から信長ってそんなことやってたのかよ!」

「信長様は天才さんですから!」

「いや違う、天才じゃない! 絶対に天災だー!」

と、いざこざをしているうちに利家は種子島館の館長さんとの話をつけ、入館することが可能となった。
入っていくと、先ほどの道場よりも、新しい作りで作られているようだ。まず、木の材質からして違う。これは、ヒノキのようだ。

「ささ、それでは案内第三弾! いきますよー」

「わーい」

「ごじゃる」

藤吉郎はそういうと、奥に続いている廊下を進んでいく。前よりも長い廊下だ。
奥に進むと鉄砲練習場なるものがあり、外に出るようだった。そこからは、清州城がとても綺麗な角度から見ることが出来るそうだ。

「うおぉ! 凄いな!! ここ!!」

思わず驚いてしまった。鉄砲場ながら、設備は整っており、弾の使用制限などもなく、自由に鉄砲の練習をしていいそうだ。しかも、とても広く、ざっと数百メートルはある。
信長の政策には驚く点がいっぱいあって、腰を抜かしそうだ。凄い、凄すぎる……!!

「織田家の鉄砲開発は、今も信長様を筆頭に進められていますねー。特に、槍に関して何かは、持ち手の部分を少し長くしつつ、刃の部分も増やし、尚且つ軽くするという製法を見事大成させている部分もあります。今回、そこからいきついたのか、鉄砲の近接攻撃も出来るようにするために、鉄砲の先端に短刀を付けると言う開発が進められているそうです! 凄いです! 信長様!」

「しかし、そうなると槍を全面廃止にすることもありえる……」

利家は悲しそうに話した。
ただ、信長の武器製法も凄いと思うけどな。

そこに、一人。狙いの的一点に集中して見つめる女の子の姿があった。
引き金を抑え、数百メートルも離れている、俺達から見ても余りハッキリとは見えない的を一点に。
まさに、森の中でソロでクマ相手に一撃を噛まし仕留めるような勢いだ。それくらい、圧力の掛かっている彼女の集中力。
バン!!と、鳴り響く大きな音と共に、巣口より弾が跳んで行く。

「め、命中!!」

審判係をしているような女の人がそう言うと、周りの人々は「おぉぉ!」と驚きと感激のあまりに声を上げていた。

「……こんな良い物を掘り出した信長様は、凄いお方なのでしょうね……」

彼女はそう言うと、鉄砲を台の上に置いて、練習台から離れて行った。

「ふふ、あの子気になりますか?」

藤吉郎が横からダメ押しレベルの意地悪口を入れてくる。

「い、いやそう言う訳じゃないけど、あんな距離をも当てられるなんて凄いなー。ってね」

「確か、あの方は浪人だったはずですよ。銭は持っているそうですが、最近清州のこの辺りにいるのはよく見かけますね。確か名前は……」

城郷恵美しろさとえみです」

「ひゃ!?」

と、彼女は自分で名前を言い出すとなんと真後ろにいたという。
その拍子で、高い声と共に後ろを思いっきり向いてしまった。
長い青髪に、ポニーテールの女の子で、胸はそれとなく大きい。

「ふふ。お主の方がまだ子供でごじゃるな」

「う、うるさい。怖いものは怖いのよぅ……」

利家はこっちを見て笑っている。ぶかぷかぶつぷつ俺が言っていると、恵美の方から話をしてきた。

「もしかして、貴方が斉藤義龍を討ち取ったという戦極稀の男の方ですか?」

え、なんでその話を知っているんだこの子……?

「え、義龍を討ち取ったでごじゃるか!」

「う、うん……まぁ……」

藤吉郎は俺に跳びかかって右肩の方までよじ登ってきた。とても痛いのだがこの猿めぇ!

「そうですよ! 貴兄は、信長様を守る為に義龍を討ち取ったのです!」

「ちょ、そんなに大事にしないで~」

藤吉郎は、討ち取ったとハッキリ言うと周りにいた人たちが大勢駆けよってきた。
話の内容はこうだ。
「え! それは誠かいね!?」「義龍がいなくなった!」「マムシはどうなったんじゃけ?」「信長様は無事なんだべな?」
まさに、質問の生き地獄じゃけぇ!

「と、すると貴方は信長様の家臣……あの、もしよければ…」

「ちょ、え?家臣にしてくれとかは無理だよ!?俸禄とかまだ何も無いし!!」

俺は慌ててそう言った。

「……無理ですか?」

家臣にするとかなんとか……って、そんなに軽い事なの!?ど、どうしよう……

ポカンと口を開ける藤吉郎に冷静になってもらえるよう話をふっ変える。
犬千代もしっかりと聞く体制に入ったようだ。

「な、なぁ恵美。なんでいきなり家臣になりたいなんて言ったんだ?」

俺が、冷静にゆっくりと話す。彼女は、数回瞬きをしてから目を瞑り、目を開く。

「私は、元々信長様に憧れていたんです! 信長様は凄いなって、かっこいいなって! うつけとも言われていたらしいですけど私はそうは思いません! 南蛮人さんと沢山交流をして、家臣たちにも好かれて、城をここまで凄い設備や発展が出来る姫君は流石にいません! ですから、そのような方に私は仕えてみたいのです! それに、家臣団の皆さんとなれば、私をきっと入れてくださると思いました。どうぞ、私の鉄砲技術を戦に役立てて下さい!」

彼女は自分の気持ちを正直に話すと頭を大きく下げて言った。
そのお願いしますと言う言葉は心の奥にまで染み込んでいく。
やがて藤吉郎がこう言った。

「相良殿。貴方が先にコクられたのです! 優先順位は貴方からですよ!」

コクられるとか、藤吉郎ちゃん!?お、おい!?ちょ、ちょっと!?

……とにかく藤吉郎が譲ってくれると言うなら、私も少し頭の中で考えてみた。
女の子が、何かの為に必死になって俺に俺お願いをして来ている。と、なれば是非!
俺はその子の夢を叶えてあげたい。
それが例え初対面の子でもね!

「分かった! 城郷恵美を家臣団に加えるよ!」

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