非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のせくしーぼでぃと俺のざわ……ざわ

百五十二話






【新天円香】






現在、私たちは新幹線で京都へ向かっているのですが……。
「円香見て!富士山!!でけぇ!」
勇人くんのテンションがいつになく高くて少し驚いています。
正面に座っている浅見さんも口と目をこれでもかと開き勇人くんを凝視しています。
「な、なぁ新天……」
「分かります……言いたいことは分かります」
思わず俳句ちっくになってしまいました……。
「俺いつも小さい山しか見てないからテンション上がるわ!あれは山じゃないか。平原か!ね!円香!!」
なんで私に同意を求めるんですか……。
そもそも私たちの学校の周りに平原なんてないじゃないですか。
「近くに山も平原もないですよ…………ん?」
「どうしたの円香?」
だんだんと嫌な予感がしてきました。
小さい山。
平原。
「勇人くん……まさかとは思いますがそれって私の……」
「目指せ富士山!」
「はいはいそういうことですか!!まだ成長しますから!たわわですよたわわ!!」
「うんうん」
「あー!可哀想な人を見る目ですねそれは!!」
にこやかな笑顔を浮かべちゃって!
戯言だと思って信じてないですね!!?
「もういいですよ!せくしーぼでぃになっても勇人くんには1ミリたりとも触らせてあげませんからね!!」
「えっ……勇人くんにはってことはほかの人には……」
あ…………いや!ここで引いたらまた勇人くんに負けてしまいます!
たまには私も言葉を以て勇人くんに勝ちたいですよ!
「ま、まぁ!せくしーな私の前にはいかなる男性も虜になりますから!」
「そっか…………」
ぁ、そんな悲しそうな顔しないでくださいよ。
「嘘です!嘘ですから!泣きそうにならないでください!」
「ホント?」
「はい!そもそも勇人くん以外の男性なんて微塵も興味ありませんから!」
「…………知ってた☆」
「え?」
知ってた?
何を?
私の胸の大きさを?
「円香のことだから言葉で勇人くんに勝ちます!とか思うんだろうなぁって」
「む!」
「だから悲しくなってみた。ごめんね?」
「勇人くんは意地悪です!」
勇人くんが悲しい顔をしてたら私まで悲しくなるじゃないですか!
酷いですよ!
私の心の裏を突くような攻撃は!
ですが……。
「でも、意地悪な勇人くんも嫌いじゃないですよ」
どんな勇人くんでも嫌いじゃないですからね。
みんな違ってみんないい。
まぁ勇人くん一人ですが。
勇人くんA
勇人くんB
勇人くんC
全員違って全員素晴らしい。
「円香、からかわれるの好きなの?」
「人聞き悪いこと言わないでくださいよ!」
「あ!見て!あの雲円香みたい!」
凄いですね勇人くん。
テンション高いと嵐のようです。
「え?どこがですか?」
「円香の胸!」
「よしきた喧嘩です!!拳と拳で語り合おうじゃありませんか!!」
新幹線は走ります。
私の胸のような雲と富士山の横を音を置き去りにしながら。




【新転勇人】





「うへぇ酔ったぁ……」
「もう!あんなにはしゃぐからですよ!ほら!真結が買ってきてくれた薬飲んでください!」
新幹線の中ではしゃぎすぎた俺は情けなくも円香の肩を借りて駅前に止まっているバスに乗り込む。
それにしても左道さん、新幹線の中で写真撮りながら歩き回っててよく酔わなかったな。
「勇人くん、私の隣に。」
一番後ろはもちろんカーストトップの陽キャどもの場所だ。
もちろん円香はそこの真ん中の席に座るような人なのだが、俺のために最前の席に座ってくれた。
「あ、私の膝使いますか?楽な姿勢をとった方がいいと思いますよ」
「ん、じゃあお言葉に甘えて」
「やった!」
なんか今やった!って聞こえた気がするけど、まぁいい。俺も膝枕に関しては嫌じゃないしむしろ至福のときだ。
円香はわざとらしく咳払いをした後、俺の頭に手を乗せて、頭を撫でながら、
「ゆっくり休んでくださいねー」
と、優しい言葉で声をかけてくれる。
あれ?ここは天国かな?
なんかいい匂いもするし頭から伝わってくる柔らかいふにふにとした感触がなんとも心地いい。
ヒザヤバイ。
オデココニスム。


あっ、危ねぇ人ならざるものになりかけた。
「ふふっ、蕩けそうな口しちゃって。私と結婚したら毎日膝枕してあげますよ?」
「よし役所行こうか。」
「ふふふ……計画通り……ッ!」
あーぁまずいな。
マジで心地よすぎる。
本当に眠れそうだ。
うん。結婚しよう。
「勇人……?そろそろ身体を起こした方が……」
「ん?先生には体調悪いから少し寝ますって言っといて」
「――勇人くん〜?彼女の柔らかな膝の上で、が抜けてるんじゃないかなぁ?」
おぉん。
「俺知らねぇからな」
あっちょっと待って……。
浅見くんは我関せずを貫くようでバスのカーテンの中で顔を隠して窓に寄りかかるようにしてしまった。
「勇人くんさぁ、このままかわいいかわいい彼女の膝の上で寝続けて先生に大声で事実確認されるのと、その虫唾が走る行動を今すぐやめるのどっちがいい?」
俺は勢いよく体を起こした。
だって言い方おかしいじゃん!相当怒ってないと虫唾が走るなんて言わないよ!?
鬼が目覚める前に天国から抜け出そう。
じゃないとマジモンの天国に行ってしまう。
「よし偉い!すぐに彼女の膝から頭を離すなんて偉いぞ勇人くん!!」
「おいちょっとまて話が――」
ざわ……
ざわざわ……
ざわざわ……
ざわ……
ざわ……
「あ!ごめんね勇人くん。悪意はなかったの!」
「おいこら万年孤独ロリババァ!!」
「んなっ!先生に向かって何その口の利き方!小学校からやり直してきなさいよ!」
「絶対悪意あっただろ!」
「ないですぅー!断じてないですぅー!」
「なんだとこのぉ……」
「大人に口喧嘩で勝てると思わないでくださーい!ばーかばーか!色恋に現を抜かしてるから成績悪いんですぅ!」
くっそ……婚期逃してて内心焦り散らかしてる癖に……。
「ふんっ!所詮は子供ね!せいぜいままごと恋愛でもやってなさい!」

「あのぉ……どっちも子供だと思うのは私だけでしょうか……」
「あなたは「円香は黙ってて!」」

「は、はい……」




そうこうしているあいだに、俺の吐き気はどこかへ飛んでしまったのであった。






あれ?井戸ったらまだ続くって言ってたのに前回の話で完結させちゃったのかな?とか思った?
思ったでしょーw思ったよね?w

いや、ホントごめん。
日曜は文化祭(行く側)。
今日はff。

ちなみにここだけの話、次回作は王道の幼馴染と……な物語か奇を衒った物語かのどちらかです。(情報を出すことで遅れを取り戻そうとする作者の図)

コメント

  • クロエル

    あとがきがこのテンションなら次回作も期待出来ますわ

    1
  • 狼大好き野郎

    がんばれ

    1
  • ミリオン

    王道も言いいですね!

    1
  • Flugel

    失踪したら指名手配するから安心して書いて下さい

    2
  • ミラル ムカデ

    大丈夫ですよ
    井戸さんが失踪したら家に押し掛けますから

    1
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