非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のローリエと俺の彼女は夢現

百二十七話






【新転勇人】






ぐぅぅ〜。

みんながみんな集中して勉強へ取り組んでいるさなか、先輩の部屋に誰かの腹の虫の音が響いた。

隣の円香と視線を交差させる。


「…………お腹減りましたね」

全員様子を伺ってる中、円香が口を開いた。
再び静寂が訪れたのだが、そんな中で円香と左道さんが俺へと視線を送っていた。

ここでどう動くかってのは俺にかかってるってわけか……。
お腹がなった人を探し当てるのは得策じゃない。
よって自然な流れで料理フェーズに移行するのが俺のミッションというわけだな?
よし。

「そ、そろそろご飯――」
「お腹鳴ったのだれぇ?」

先輩ィィィ!?

そっち側なんですか!?
探したい側なんですか!?
「おぅい今腹鳴ったの誰だよー」とか笑いながら言っちゃうパリピ側なんですか!?
先輩の事だから、誰か知ってて――
「……杏佳のばかぁ……」
ももちゃん先輩!あなたなんですかァ!!
「さ、ももちゃんのかわいいとこ見れたしご飯にしよー」
「賛成ー」
そう言ってみんなは退室していく。


部屋に残されたのは俺とももちゃん先輩の二人。

どう声かけようか……。
すっごい顔真っ赤だし。
下手に声掛けても先輩だし生徒会長だしなぁ。
「……先輩?そろそろいかないと……」
「なに……君もあたしをからかうの?杏佳みたいに。」
体育座りで、ぷいっとそっぽを向き俺と目を合わせてくれないももちゃん先輩。
「あたしここにいる」
んまぁ!拗ねちゃってる!!先輩もかわいい!
「いいもん別に。会長だからお腹減らないし、頭良いから空腹にならな」ぐぅ〜

すげぇ小声でブツブツ言ってますけど全部聞こえてますしお腹鳴ってますよね!?
「せ、先輩?さすがに会長だからお腹減らないってのは謎理論だと思うんですけど……現にお腹鳴ってますし」
「鳴ってない!!」
あーぁ!もうめんどくさいなぁ!
けどかわいいなぁおい!!
こうなったら引きずってでも!!

俺は膝で綺麗に組まれた手の平に手を伸ばし――



その時、俺の円香アンテナ(髪の毛)が円香の接近を感知した!!
トコトコとゆったりとした音を出していた足取りが、途端にドンドンと勢い良く階段を踏み鳴らすようなものに変わった。
俺の、脳から発せられた手を止める、という信号が腕に届くよりも早く、円香がドアを開けた。


「は〜や〜と〜く〜ん〜?」


俺は、“ももちゃん先輩の手を取ったまま”固まった。

「いやいや違う!違うんだよ円香!」
「犯罪を犯した人は皆一様にやってないと言います。」
「えなに俺のこれって犯罪と同値なの?」
「重罪です♪」

円香ちゃんこわ〜い☆
「……そろそろ離してくれない?」
「あ、申し訳ないです。」
そんな嫌そうな顔しなくていいじゃないですか……そんなに嫌ですか。
「ちょっと先輩!まるで勇人くんが汚いみたいな言い方じゃないですか!」
「「え?」」
先輩と声が被った。
何言ってるのこの子?さっきまで俺の手見ながらブチギレてましたよね?
「私なんて出来ることなら四六時中勇人くんと手繋いでたいですからね!?手を繋いで寝たいですからね!?」
サラッと今晩の寝方について提案してきたと予想。
「いや、普通に彼女がいるから申し訳ないと思ったのだけど」
「彼女?あ、そうですか?彼女……えへへ」
いや、彼女だよ。
その反応は片想いの時にするやつじゃん!
仲良いから彼女に見える〜、の時のやつじゃん!
「彼女〜彼女〜ふふっ」

「…………いつもこの調子なの?」
部屋の入り口でほっぺに手を添え身悶えしてる円香を見ながらももちゃん先輩は呟く。
「はい……残念ながら。」
「……下行こうか」
「はい」
冷静になった俺たちは「そんな、かわいいだなんて……えへへ〜」と夢の世界でお散歩中の円香のわきを通り抜けそそくさと部屋を出ていった。

「置いてきて大丈夫?」
「あ、はい。そのうち現実世界に戻ってくると思うので」
「あ、そう。じゃあ降りよう」

「大好きですよ♡あはっ♪照れちゃいますよぅ」

はいさようなら。





【新天円香】






「勇人くん置いてかないでください!」
「あ、おかえり」
「おかえりじゃないですぅ!」
気づいたら一人でしたよぅ!
「あ、円香カレー混ぜて」
「あ、はい、わかりました」
まぁ私が一人で楽しんでいたのが悪いんですけど!!
ていうか――
「なんか変な葉っぱ入ってますよ!誰ですかふざけたのは!」
「……し、新天先輩、それ、ローリエです……」
「ローリエ?なんですかそれ!難しい言葉で誤魔化そうとしてますね!?」
「円香ステイ」
あっ、うぅ……。
勇人くんがいじわるしますぅ……。
「円香?ローリエはちゃんとした葉っぱだから。三郷さんに謝って?」
…………勇人くんが言うなら本当なのでしょうね。
それによくよく考えてみれば三郷さんが嘘を言うなんてありえませんね。
私はなんて勘違いを……。

「三郷さんごめんなさい」
「だ、大丈夫です、だから……頭上げて、ください、」
「うん、ありがとう」

私は再びカレーを混ぜ始めます。

三郷さんはサラダ用の野菜を切り、真結は炊き上がったお米をお皿によそっています。
あれ?私だけすごく楽な仕事してませんか?
なんだか申し訳ないような……。

「あのぅ、私もなにか手伝いましょうか?」
「円香ステイ。大丈夫、それも立派な仕事。円香にしか頼めないんだ」
あっ、そうですか!?
私にしかできないんですか!?
私の手際が良すぎて!?
んも〜ぅ、勇人くんったら正直すぎますよ〜。
「任せておいてください!」
そんなこと言われちゃ必死に混ぜないとじゃないですかぁ!






【新転勇人】







「ごちそうさまでした。」
食べ終わった皿を台所へ持って行き即座に洗う。
「あ、私やりますよ」
ほぼ同時に食べ終えた円香がそう言って寄ってきてくれた。
「私スプーンとフォーク洗いますね。」
「うん、ありがとう」
俺はスプーンとフォークを円香へ渡して皿を洗う。
「そういえば先輩、よく急に押しかけること、両親が許してくれましたね」
「いや、あたしの家そういうとこ意外と緩いからさ、ご飯を自分たちで作るならあとはお好きにって」
「なるほど」
先輩のゆる〜い性格や広い心は遺伝だったんだな。
「あ、今夜寝る場所リビングでいい?親朝早く出てくから鉢合わせたりはしないと思う」
「リビング!?」
それを聞いた途端隣の円香の目がキラキラ、いや、ギラギラ輝き始めた。
「寝る配置!配置はどうしますか!」
「んまぁ、リビングなら男子と女子の間あけられるし、万が一が起こることもないだろうし、男子の列、女子の列、って感じにしよっか」
家主がそう言うんだ。
決定!決定!
俺の両隣は、浅見くんと壁!
「そんなぁ……」
「円香が一番危ないしね」
「そんなことないですよぉ」
そんなことある。
断言出来る。
そんなことある。
大事なことなので2回言いました。
「じゃあ、例えば俺の近くに寝れるとしたら?」
「同じ布団で寝ます」
「はいアウトー」
「あっ」
嘘つけない円香もかわいい♡
「勇人くんだって同じ布団で寝たいくせに」
効果音をつけるなら、ぶーぅ、と可愛く拗ねてみせる円香。
まぁね?たしかに寝たいよ。
というか好きな人と近い距離で居れるなんて常に欲してるよ!その状況を!
「けどね円香?場所と状況を見極めよ?」
「愛にそんな壁は関係ないのです!」
「勇人くんどうする?ソファとかに円香括り付けとく?このままだと夜大変なことになるよ?」
「名案」
「もーぅ!わかりましたよ!名案ってなんですか名案って!」
さすがに括り付けられるのは嫌よね。
うんうん。
「言質取ったからね?あと名案って言ったのは冗談♪」
「ぐぬぬぅ…………」
これで何とか円香を押しとどめることは出来ただろう。
正直左道さんの「括り付けとく?」の時の目は割と本気だった気がしなくもないが、怖いので真相は闇の中にしまっておこう。
パンドラの箱だ。

「――じゃあ一時間だけ勉強してお風呂入って寝よっか」
「え〜まだやんの〜?」
「あんたが一番やらないといけないでしょ!」
「ちぇ〜」
先輩と会話してる時のももちゃん先輩って体育祭の時見た先輩とは別人だなぁ。
あの時はすごいきっちりきっかり可憐で清楚な方だったのに……今や。
「ももちゃん口にカレー付いてるよ」
「えっ?……あっ。」
見る影もないドジっ子ギャップモードだもんなぁ。
生徒会長モードはすげぇや。

「はい!たったの一時間だから!早く準備する!」
「まだついてるよ」










やぁみんな、井戸井戸ラジオの時間だ。
今日も井戸千尋がお送りするぞ!

今日のトークテーマはこれだ!
【すぬのはやてわねひてふそゅば】
これはあまり万人受けするものではないが、井戸は大好きだ。
あと、ここから派生される【やなとやざこむおめじゆごのなもゅ】もいいよな!
見ていてすごく飽きない!

今日はこの辺でおしまいだ!
みんな、今日も井戸のラジオを聞いてくれてありがとな!
次回も2680年の今日お送りするぜ!
しーゆーあげいん!

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コメント

  • Karavisu

    さようなら

    1
  • 猫ネギ

    ちょっと時空を超えて行ってくるわ

    2
  • ミラル ムカデ

    生きれますか?

    1
  • Flugel

    そのテーマはちょっと分かりかねますねぇ

    1
  • うみたけ

    その時までに不老不死になっときますねっ(・ω<)

    2
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