非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果
私の結婚観と俺の偉大な両親
百十七話
【新転勇人】
「勇人くん!どうぞ!お母さんも!」
「あらあら〜嬉しいわぁ」
先輩たちと合流し、落ち着ける日陰へと場所を移した俺たちは早速昼ごはんを食べようとしていた。
「勇人くんもどうぞ!」
……大丈夫だろうか。
差し出されたおにぎりを見て思う。
だってオムライスにかさ増し理由で野菜ごろっと入れちゃってたんだもん。
極論、ツナおにぎりです!って缶詰め入っててもおかしくない。
「いただきます」
「いただきま〜す」
見た目はとても綺麗なおにぎりにかぶりつく。
「えっうまっ!」
程よい塩加減で、中の具……これは鮭だな、その鮭がまた美味しい!
「ん〜!美味しいわぁ〜」
母も大満足。
ほっぺたに手をやり、体全体で美味しさを表現している。
「よ、よかったです……」
円香はほっと息をついて、自身もおにぎりに手を伸ばす。
「なに、君も新天のおにぎり食べたいの?」
「いや、まぁそうっすね」
円香のお重箱と先輩のお弁当箱、左道さんと結花のお弁当箱を囲うように円になって食事をしているため、浅見くんたちのそんな声が聞こえた。
「あ、どうぞ!浅見さんも良ければ」
「いいよ新天、この子には私が丹精込めて握ったおにぎりがあるから」
…………先輩って意外と独占欲強いよね。
浅見くんも決して嫌な顔する訳でもないし、相思相愛ここに極まれり!って感じなんだろうな。
それはそれとして……。
「・・・」
円香のおにぎりや卵焼きを食べている俺を、なんだか不機嫌そうな結花がチラチラ見てくる。
さて、俺も伊達にアニメやゲームを見てきたわけじゃない。
これが、いわゆる鈍感系主人公なら「ん?どうしたんだ?円香のおにぎり食べるか?」とか言うんだろうが、俺はそんな鈍感系主人公は好きじゃないので同じようなことはしたくない。
よってここでとる行動は……、
「いただきます」
「あっ……」
結花のお弁当もきちんといただくことだ!
多分ここで無視したらえげつないほど嫌われる。
多分二度と「にぃ」なんて呼ばなくなる。
まぁそれも兄としては良い結果なのかもしれないが、兄妹だからといって個人の感情を無理やり抑制させるなんてことはしたくない。
多分あと二年くらい経てば自ずと兄離れして好きな男もできるはずだしな。
「うん!美味しいよ」
冗談抜きで唐揚げ美味かった。
「そ、そっか…………おいしい、えへ……おいしい……」
なんか俺の周りの女の子ってみんなすぐ自分の世界に落ちるよね。
円香しかり、ね。
□
「勇人〜、もういいんじゃない?」
「ん?なにが?」
お昼休みも中盤戦。
体育祭後半に向けて各々がエネルギーを補充している中。
母は呑気な声を出して、円香の手をとりヒラヒラとさせながら、
「結婚したらぁ?」
「なっ――」
あるものは結婚というワードを母から聞いて目をキラキラさせ。
またあるものは唐揚げを落とし。
またあるものはボイスレコーダーを準備し。
またあるものは自分も結婚したくなり、将来の夫となるであろう彼氏の口におにぎりを詰め込んでいた。
そしてあるもの……その夫になる側のものは、一生懸命に鼻で呼吸をし、モグモグと閉じない口を閉じようと必死に咀嚼していた。
そして俺は…………。
「おぉい何言ってんだよォ!バカか!?バカなのかァ!?海外にかぶれてんのかァ!?あァ!?」
俺の親だということを忘れ、全力でツッコミを入れていた。
「あらあら〜反抗期ぃ?」
「いやね!?結婚よ?結婚!わかる?俺たち十代!まだ早いって!なぁ円香!!」
あ、絶対聞く人間違えた。
そう思ってしまったが、もう後の祭り。
「ぜ、全然早くないですよ!むしろうぇるかむって感じです!」
う〜ん!その思考は今すぐ出ていってほしいな!
「ん〜じゃあ、円香ちゃんはなんでそこまで結婚したいの?勇人を言い伏せちゃえばいいじゃない」
円香に余計な知恵を与えないで!!
「やっぱり結婚って夢じゃないですか。好き同士が愛してる同士になって、言葉なんて交わさなくても互いの愛を感じることの出来る関係。勇人くんとそんな間柄になりたいんです」
うっ……。
どうしようそんなこと言われたら、結婚ダメ!早い!なんて言えない……。
「そっか〜、じゃあ、なんで勇人じゃないとダメなの?二十代の時に勇人よりいい男に出会うかもよ?」
母が殺しに来てます。
助けてください。
「たとえそんな未来が待っていたとしても私は勇人と一緒になりたいんです。生意気かも知れませんが、誰かと一緒になりたい、好きになる気持ちに理由なんて必要でしょうか。」
え、まって?男の俺よりかっこいいこと言ってない?
あれ、俺彼女だっけ?円香って俺の彼氏だっけ。
「そうね。生意気なんかじゃないわお母さんも同じ意見だから。でも、」
そこでやっと気づいた。
母の口調がいつもの呑気なものではなく、きっちりとした、ハキハキとした喋り方になっていることに。
「まだ結婚は早いわね。お母さんから言ったのにごめんなさいね」
伊達に何年も海外に単身赴任しているわけじゃないってことか。
もっと若い歳から結婚が許されてる国なんてたくさんあるだろうし、俺が知りえない、考えつかないようなことを見てきたんだろうな。
あのはっきりした口調が仕事のときの母さんだとしたら、そりゃ周りから必要とされて海外飛び回るよな。
円香もバカじゃない。
…………分野によるが。
まぁ円香も気づいたんだろう。
母の変わり身に。
だから「そうですよね……」と、仕方ない、というより言い伏せられた、理解させられたという方が正しいといえる声のトーンで呟いていたのだ。
「円香ちゃん、次いつ帰ってくるかわからないけどその時はよ〜く話し合いましょうね〜?」
いつものような呑気な口調でそういう母は時計を見ながら「そろそろねぇ」とも呟いた。
多分そろそろ日本を発つ、ということだろう。
遠目で眺めていた金髪イケメンがそんな母を見て近寄ってきた。
きっとこの人も彼女がいるんだろうな。
だから母さんもその経験を踏まえて俺たちを諭したのか。
「瑠璃子サン、そろそろデス」
「そうねぇ〜名残惜しいけど仕方ないわね」
「お母さんもう行っちゃうの?」
「ごめんねこんな短い時間しか会えなくて。」
母さんは結花を抱きしめながら、心から名残惜しそうに言った。
「瑠璃子サン、そろそろ来るのでこれを」
イケメンがそう言って取り出したのは、何の変哲もない軍手。
いつも何かと的外れな推理をする円香でさえクエスチョンマークでいっぱいの様子。
「勇人、次会う時までには」
――ブォォォッ。
「なりなさいよ〜」
えなに。
え?
「円香ちゃんも、勇人がもし」
――ブォォォッ。
「お母さんにまかせなさ〜い」
わかんないわかんない。
何言ってるかも聞こえないし、何この音!バカなの!?本当に海外かぶれが尋常じゃないよ!?
「瑠璃子サン、ハシゴが来ました。行きまショウ」
「じゃあねみんな。今日は楽しかったわ」
――ブォブォブォブォォォッ!!
俺の予想は的中していました。
飛行機で日本を発つのではなく、ヘリで日本を発って行きました。
これにはさすがの円香もドン引――
「かっこいいです!!お母さん美しいです!!」
こっちは恥ずかしくて仕方ないけどね!
だから軍手なのね!
しばらくぶら下がるための!!
…………でもまぁ父さんと比べたら……。
俺の両親は偉大だと、改めて知ったお昼休みであった。
□
『ただいまから体育祭午後の部を始めます。』
そして体育祭午後の部が始まろうとしていた。
遅れてごめんぬ。
そして大事なお話があります。
いや、この間のあとがきで、みんな貰えてない体で話進めてたけど、もしかしたら貰ってる野郎もいるんじゃないかなぁと思って。
いないとは思うよ?
けどいたらと思うとなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃって。
別に貰ってない人をバカにしてないよ?一緒だもん。自分で自分の首絞めたくないもん。
もし貰っている人がいるのなら。
半分くらいくれても良かったんじゃない?
以上、人の幸せをすすって生きる井戸千尋でした。
【新転勇人】
「勇人くん!どうぞ!お母さんも!」
「あらあら〜嬉しいわぁ」
先輩たちと合流し、落ち着ける日陰へと場所を移した俺たちは早速昼ごはんを食べようとしていた。
「勇人くんもどうぞ!」
……大丈夫だろうか。
差し出されたおにぎりを見て思う。
だってオムライスにかさ増し理由で野菜ごろっと入れちゃってたんだもん。
極論、ツナおにぎりです!って缶詰め入っててもおかしくない。
「いただきます」
「いただきま〜す」
見た目はとても綺麗なおにぎりにかぶりつく。
「えっうまっ!」
程よい塩加減で、中の具……これは鮭だな、その鮭がまた美味しい!
「ん〜!美味しいわぁ〜」
母も大満足。
ほっぺたに手をやり、体全体で美味しさを表現している。
「よ、よかったです……」
円香はほっと息をついて、自身もおにぎりに手を伸ばす。
「なに、君も新天のおにぎり食べたいの?」
「いや、まぁそうっすね」
円香のお重箱と先輩のお弁当箱、左道さんと結花のお弁当箱を囲うように円になって食事をしているため、浅見くんたちのそんな声が聞こえた。
「あ、どうぞ!浅見さんも良ければ」
「いいよ新天、この子には私が丹精込めて握ったおにぎりがあるから」
…………先輩って意外と独占欲強いよね。
浅見くんも決して嫌な顔する訳でもないし、相思相愛ここに極まれり!って感じなんだろうな。
それはそれとして……。
「・・・」
円香のおにぎりや卵焼きを食べている俺を、なんだか不機嫌そうな結花がチラチラ見てくる。
さて、俺も伊達にアニメやゲームを見てきたわけじゃない。
これが、いわゆる鈍感系主人公なら「ん?どうしたんだ?円香のおにぎり食べるか?」とか言うんだろうが、俺はそんな鈍感系主人公は好きじゃないので同じようなことはしたくない。
よってここでとる行動は……、
「いただきます」
「あっ……」
結花のお弁当もきちんといただくことだ!
多分ここで無視したらえげつないほど嫌われる。
多分二度と「にぃ」なんて呼ばなくなる。
まぁそれも兄としては良い結果なのかもしれないが、兄妹だからといって個人の感情を無理やり抑制させるなんてことはしたくない。
多分あと二年くらい経てば自ずと兄離れして好きな男もできるはずだしな。
「うん!美味しいよ」
冗談抜きで唐揚げ美味かった。
「そ、そっか…………おいしい、えへ……おいしい……」
なんか俺の周りの女の子ってみんなすぐ自分の世界に落ちるよね。
円香しかり、ね。
□
「勇人〜、もういいんじゃない?」
「ん?なにが?」
お昼休みも中盤戦。
体育祭後半に向けて各々がエネルギーを補充している中。
母は呑気な声を出して、円香の手をとりヒラヒラとさせながら、
「結婚したらぁ?」
「なっ――」
あるものは結婚というワードを母から聞いて目をキラキラさせ。
またあるものは唐揚げを落とし。
またあるものはボイスレコーダーを準備し。
またあるものは自分も結婚したくなり、将来の夫となるであろう彼氏の口におにぎりを詰め込んでいた。
そしてあるもの……その夫になる側のものは、一生懸命に鼻で呼吸をし、モグモグと閉じない口を閉じようと必死に咀嚼していた。
そして俺は…………。
「おぉい何言ってんだよォ!バカか!?バカなのかァ!?海外にかぶれてんのかァ!?あァ!?」
俺の親だということを忘れ、全力でツッコミを入れていた。
「あらあら〜反抗期ぃ?」
「いやね!?結婚よ?結婚!わかる?俺たち十代!まだ早いって!なぁ円香!!」
あ、絶対聞く人間違えた。
そう思ってしまったが、もう後の祭り。
「ぜ、全然早くないですよ!むしろうぇるかむって感じです!」
う〜ん!その思考は今すぐ出ていってほしいな!
「ん〜じゃあ、円香ちゃんはなんでそこまで結婚したいの?勇人を言い伏せちゃえばいいじゃない」
円香に余計な知恵を与えないで!!
「やっぱり結婚って夢じゃないですか。好き同士が愛してる同士になって、言葉なんて交わさなくても互いの愛を感じることの出来る関係。勇人くんとそんな間柄になりたいんです」
うっ……。
どうしようそんなこと言われたら、結婚ダメ!早い!なんて言えない……。
「そっか〜、じゃあ、なんで勇人じゃないとダメなの?二十代の時に勇人よりいい男に出会うかもよ?」
母が殺しに来てます。
助けてください。
「たとえそんな未来が待っていたとしても私は勇人と一緒になりたいんです。生意気かも知れませんが、誰かと一緒になりたい、好きになる気持ちに理由なんて必要でしょうか。」
え、まって?男の俺よりかっこいいこと言ってない?
あれ、俺彼女だっけ?円香って俺の彼氏だっけ。
「そうね。生意気なんかじゃないわお母さんも同じ意見だから。でも、」
そこでやっと気づいた。
母の口調がいつもの呑気なものではなく、きっちりとした、ハキハキとした喋り方になっていることに。
「まだ結婚は早いわね。お母さんから言ったのにごめんなさいね」
伊達に何年も海外に単身赴任しているわけじゃないってことか。
もっと若い歳から結婚が許されてる国なんてたくさんあるだろうし、俺が知りえない、考えつかないようなことを見てきたんだろうな。
あのはっきりした口調が仕事のときの母さんだとしたら、そりゃ周りから必要とされて海外飛び回るよな。
円香もバカじゃない。
…………分野によるが。
まぁ円香も気づいたんだろう。
母の変わり身に。
だから「そうですよね……」と、仕方ない、というより言い伏せられた、理解させられたという方が正しいといえる声のトーンで呟いていたのだ。
「円香ちゃん、次いつ帰ってくるかわからないけどその時はよ〜く話し合いましょうね〜?」
いつものような呑気な口調でそういう母は時計を見ながら「そろそろねぇ」とも呟いた。
多分そろそろ日本を発つ、ということだろう。
遠目で眺めていた金髪イケメンがそんな母を見て近寄ってきた。
きっとこの人も彼女がいるんだろうな。
だから母さんもその経験を踏まえて俺たちを諭したのか。
「瑠璃子サン、そろそろデス」
「そうねぇ〜名残惜しいけど仕方ないわね」
「お母さんもう行っちゃうの?」
「ごめんねこんな短い時間しか会えなくて。」
母さんは結花を抱きしめながら、心から名残惜しそうに言った。
「瑠璃子サン、そろそろ来るのでこれを」
イケメンがそう言って取り出したのは、何の変哲もない軍手。
いつも何かと的外れな推理をする円香でさえクエスチョンマークでいっぱいの様子。
「勇人、次会う時までには」
――ブォォォッ。
「なりなさいよ〜」
えなに。
え?
「円香ちゃんも、勇人がもし」
――ブォォォッ。
「お母さんにまかせなさ〜い」
わかんないわかんない。
何言ってるかも聞こえないし、何この音!バカなの!?本当に海外かぶれが尋常じゃないよ!?
「瑠璃子サン、ハシゴが来ました。行きまショウ」
「じゃあねみんな。今日は楽しかったわ」
――ブォブォブォブォォォッ!!
俺の予想は的中していました。
飛行機で日本を発つのではなく、ヘリで日本を発って行きました。
これにはさすがの円香もドン引――
「かっこいいです!!お母さん美しいです!!」
こっちは恥ずかしくて仕方ないけどね!
だから軍手なのね!
しばらくぶら下がるための!!
…………でもまぁ父さんと比べたら……。
俺の両親は偉大だと、改めて知ったお昼休みであった。
□
『ただいまから体育祭午後の部を始めます。』
そして体育祭午後の部が始まろうとしていた。
遅れてごめんぬ。
そして大事なお話があります。
いや、この間のあとがきで、みんな貰えてない体で話進めてたけど、もしかしたら貰ってる野郎もいるんじゃないかなぁと思って。
いないとは思うよ?
けどいたらと思うとなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃって。
別に貰ってない人をバカにしてないよ?一緒だもん。自分で自分の首絞めたくないもん。
もし貰っている人がいるのなら。
半分くらいくれても良かったんじゃない?
以上、人の幸せをすすって生きる井戸千尋でした。
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