非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果
私の悪い顔と俺の心做し
百十六話
【新転勇人】
母をたずねて三千里、もとい母をたずねて三分強。
…………結果だけを言えば見つけた。
うん、見つけた。
けど、俺たちは声をかけるかかけまいか迷っていた。
特に誰かが誰かを制止させたわけでもなく、自分の意思で踏みとどまっていた。
結花はそんな俺達二人を見て空気を読んだようにこっちを見て足を止めていた。
まぁ俺たちが何かを企むわる〜い顔になっていたら足なんて止まっちゃうか。
そう。
その理由は――
「真結ちゃん次はこれぇ〜」
「誰かこの人止めてー!」
左道さんが着せ替え人形になっているからだ。
多分横に立っている金髪イケメン野郎から渡されたであろうキャリーバッグの中からこれでもかというほど服を漁って左道さんへ着せていた。
折りたたみ試着室なんてあるんだ。
すげぇなこの時代は。
「勇人くん……どうしますか?」
あの円香でさえ声をかけようか迷っている。
多分みんな思ってることは一緒なんだろうな。
うん、珍しいもんね。
「せーので今思ってる事言ってみない?」
俺の円香へ告げる。
円香は「わかりました」と軽く咳払いをする。
俺たちは目を合わせ、
「せーのっ」
「左道さんが「真結がたじろいでるなんて珍しいから!!」」
やっぱりそうだった。
珍しいもんね、なんでもそつなくこなしてこの間も問題解決してくれた左道さんがあんなにタジタジなんて。
「あ!ちょっと二人とも!助けてよ!この人さっきからいろんな服着させてくるの!」
「あ、それ俺の親」
「俺の親!!?」
左道さんがたじろいでるところを見るだけで楽しい。
となりで円香もすっごい悪い顔してる。
かわいく悪い顔してる。
「あぁ〜勇人ぉ〜。この子かわいいのにプロポーション良いからすっごいあいであうかんでくるのぉ〜」
「そりゃ良かったね。心做しか左道さんも嬉しそうじゃん」
「文字通り心做しだよ!」
いじられることに慣れてなさすぎておかしくなっちゃってるのかもしれない。
いやぁ愉快愉快。
「勇人くん、そろそろ本当にお昼休憩の時間ですよ?」
円香が指さす先の時計はお昼休憩五分前を指していた。
浅見くんたち三人も探さないといけないし、楽しく観察してる暇なんてないかもな。
それに……、
「お昼は逃せませんからね!ね!勇人くん!」
俺の彼女がいつになく張り切ってるし。
「べ、別にお昼作ってきたってわけじゃないですが!特にそんなことはありませんが!楽しみですね!!」
作ってきてくれたのね。
特にそんなことあるのね。ありがたいです。
でも良かった。
今日一で目がキラキラしてる。
もしかしたら俺より結花を気に入っちゃったのかと思ったりもしてたけど、
「胃袋鷲掴み……胃袋鷲掴み……」
聞こえちゃうような声と(本人は聞こえてないと思ってるはず)、ギュッと握りしめるジェスチャーをしてるところを見ると、きっと俺の事を思いながら作ってくれたのだろう。
ひとつ怖いのが、円香の目がガチすぎて胃袋鷲掴み(物理)されるんじゃないかってこと。
開いては――強く握りしめ、開いては――勢いよく握りしめ。
そんな円香も愛おしい、と思ってしまう俺はもう末期バカ彼氏なんだろうな。
「兄貴顔気持ち悪すぎ」
「辛辣すぎない!?」
我が妹はなんだか不機嫌だ。
中学三年生…………なるほど。
察しました。
「兄貴変な事考えてるでしょ」
「うんうん、頑張れ」
「か、肩触らないで……!」
うん、やっぱり、顔赤いし、挙動がいつもよりおかしいよね。
「勇人くん私にもやってください。」
自分の世界から戻ってこれた円香からすごい視線を感じる。
多分やらないと胃袋鷲掴み(物理)される。
仕方ないから結花にしたように肩に手を置く。
たったそれだけなのに、魂でも抜けてるんじゃねぇかってくらい惚けた顔をしている。
「勇人〜お腹減ってきたぁ〜」
「随分と急ですね。飽きてきたの?」
左道さんを置いて、遠巻きで見ていた俺たちのところへ駆け寄ってくる母。
「え!?もう終わっていいの!?ジャージ着ていいの!!?」
左道さんすごい嬉しそう。ご機嫌だ。
「お、お母さん!!」
円香の元気な声が響いた。
「ふふっ、気が早いわよ〜」
と言う母さんだが嬉しそうな表情だ。
「でも〜新転家に嫁ぐのはちょっと難しいかもしれないわよぉ〜?」
ふむ。
思い当たる節はある。
父親のことだろ?
「な、なんでですか……?」
「それはねぇ〜――」
ぐぅ〜。
・
・
・
・
・
・
「それはねぇ〜」
あ、無かったことにしたぞこの母。
「この子の父親が結構――」
ぐぅ〜。
「結構」
ぐぅ〜。
今何度挑んでもダメな気がするよお母さん。
『ただいまからお昼休憩とします。』
「……うふふっ、ご飯にしましょうか。」
諦めた!!
あの人の話する前に諦めた!!
「あのぉ、私ご飯作ってきたので食べていただけませんか?」
「あらまぁ。日本食かしら?」
「はい!そこまで大層なものじゃないですが……」
俺の父親の話で遮られたが、多分先程言いたかったのは話の流れからしてこのことだろう。
「胃袋から掴んじゃお〜ってことね〜?いいわよ〜でもお母さんは厳しいわよぉ〜」
前回帰ってきた時は俺にこんな彼女ができるなんて思ってなかっただろうなぁ。
自分でいうのもなんだけど俺成長してるなぁ。
聞いてるか野郎ども!!
そろそろホワイトデーっつー女の子からのチョコのお返しにネックレスやら指輪をプレゼントしなくちゃいけない呪いの日がやってくるぞ。
何がお返しは三倍だ笑わせんな。
「チョコのお返し何がいい〜?」
「う〜ん、ネックレスがいいなぁ」
バカか滅びろ。
なんで千円ぽっちで出来るチョコにネックレス返さないといけないんだ泥でもすすってろ。
あ、ちょこっと取り乱してしまいました。
ちょこだけに。
はァァァァァァいッ!!
【新転勇人】
母をたずねて三千里、もとい母をたずねて三分強。
…………結果だけを言えば見つけた。
うん、見つけた。
けど、俺たちは声をかけるかかけまいか迷っていた。
特に誰かが誰かを制止させたわけでもなく、自分の意思で踏みとどまっていた。
結花はそんな俺達二人を見て空気を読んだようにこっちを見て足を止めていた。
まぁ俺たちが何かを企むわる〜い顔になっていたら足なんて止まっちゃうか。
そう。
その理由は――
「真結ちゃん次はこれぇ〜」
「誰かこの人止めてー!」
左道さんが着せ替え人形になっているからだ。
多分横に立っている金髪イケメン野郎から渡されたであろうキャリーバッグの中からこれでもかというほど服を漁って左道さんへ着せていた。
折りたたみ試着室なんてあるんだ。
すげぇなこの時代は。
「勇人くん……どうしますか?」
あの円香でさえ声をかけようか迷っている。
多分みんな思ってることは一緒なんだろうな。
うん、珍しいもんね。
「せーので今思ってる事言ってみない?」
俺の円香へ告げる。
円香は「わかりました」と軽く咳払いをする。
俺たちは目を合わせ、
「せーのっ」
「左道さんが「真結がたじろいでるなんて珍しいから!!」」
やっぱりそうだった。
珍しいもんね、なんでもそつなくこなしてこの間も問題解決してくれた左道さんがあんなにタジタジなんて。
「あ!ちょっと二人とも!助けてよ!この人さっきからいろんな服着させてくるの!」
「あ、それ俺の親」
「俺の親!!?」
左道さんがたじろいでるところを見るだけで楽しい。
となりで円香もすっごい悪い顔してる。
かわいく悪い顔してる。
「あぁ〜勇人ぉ〜。この子かわいいのにプロポーション良いからすっごいあいであうかんでくるのぉ〜」
「そりゃ良かったね。心做しか左道さんも嬉しそうじゃん」
「文字通り心做しだよ!」
いじられることに慣れてなさすぎておかしくなっちゃってるのかもしれない。
いやぁ愉快愉快。
「勇人くん、そろそろ本当にお昼休憩の時間ですよ?」
円香が指さす先の時計はお昼休憩五分前を指していた。
浅見くんたち三人も探さないといけないし、楽しく観察してる暇なんてないかもな。
それに……、
「お昼は逃せませんからね!ね!勇人くん!」
俺の彼女がいつになく張り切ってるし。
「べ、別にお昼作ってきたってわけじゃないですが!特にそんなことはありませんが!楽しみですね!!」
作ってきてくれたのね。
特にそんなことあるのね。ありがたいです。
でも良かった。
今日一で目がキラキラしてる。
もしかしたら俺より結花を気に入っちゃったのかと思ったりもしてたけど、
「胃袋鷲掴み……胃袋鷲掴み……」
聞こえちゃうような声と(本人は聞こえてないと思ってるはず)、ギュッと握りしめるジェスチャーをしてるところを見ると、きっと俺の事を思いながら作ってくれたのだろう。
ひとつ怖いのが、円香の目がガチすぎて胃袋鷲掴み(物理)されるんじゃないかってこと。
開いては――強く握りしめ、開いては――勢いよく握りしめ。
そんな円香も愛おしい、と思ってしまう俺はもう末期バカ彼氏なんだろうな。
「兄貴顔気持ち悪すぎ」
「辛辣すぎない!?」
我が妹はなんだか不機嫌だ。
中学三年生…………なるほど。
察しました。
「兄貴変な事考えてるでしょ」
「うんうん、頑張れ」
「か、肩触らないで……!」
うん、やっぱり、顔赤いし、挙動がいつもよりおかしいよね。
「勇人くん私にもやってください。」
自分の世界から戻ってこれた円香からすごい視線を感じる。
多分やらないと胃袋鷲掴み(物理)される。
仕方ないから結花にしたように肩に手を置く。
たったそれだけなのに、魂でも抜けてるんじゃねぇかってくらい惚けた顔をしている。
「勇人〜お腹減ってきたぁ〜」
「随分と急ですね。飽きてきたの?」
左道さんを置いて、遠巻きで見ていた俺たちのところへ駆け寄ってくる母。
「え!?もう終わっていいの!?ジャージ着ていいの!!?」
左道さんすごい嬉しそう。ご機嫌だ。
「お、お母さん!!」
円香の元気な声が響いた。
「ふふっ、気が早いわよ〜」
と言う母さんだが嬉しそうな表情だ。
「でも〜新転家に嫁ぐのはちょっと難しいかもしれないわよぉ〜?」
ふむ。
思い当たる節はある。
父親のことだろ?
「な、なんでですか……?」
「それはねぇ〜――」
ぐぅ〜。
・
・
・
・
・
・
「それはねぇ〜」
あ、無かったことにしたぞこの母。
「この子の父親が結構――」
ぐぅ〜。
「結構」
ぐぅ〜。
今何度挑んでもダメな気がするよお母さん。
『ただいまからお昼休憩とします。』
「……うふふっ、ご飯にしましょうか。」
諦めた!!
あの人の話する前に諦めた!!
「あのぉ、私ご飯作ってきたので食べていただけませんか?」
「あらまぁ。日本食かしら?」
「はい!そこまで大層なものじゃないですが……」
俺の父親の話で遮られたが、多分先程言いたかったのは話の流れからしてこのことだろう。
「胃袋から掴んじゃお〜ってことね〜?いいわよ〜でもお母さんは厳しいわよぉ〜」
前回帰ってきた時は俺にこんな彼女ができるなんて思ってなかっただろうなぁ。
自分でいうのもなんだけど俺成長してるなぁ。
聞いてるか野郎ども!!
そろそろホワイトデーっつー女の子からのチョコのお返しにネックレスやら指輪をプレゼントしなくちゃいけない呪いの日がやってくるぞ。
何がお返しは三倍だ笑わせんな。
「チョコのお返し何がいい〜?」
「う〜ん、ネックレスがいいなぁ」
バカか滅びろ。
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コメント
猫ネギ
諭吉さん渡した
紅月
チョコには手作りチョコで返したぜ⭐️
うみたけ
3倍返し?
Σ(゜Д゜)ハッ?知るかよ
影の住人
わーい\(^^)/。チョコ貰ってないから返さなくていいわー。
貰わなくて良かったわー(白目)。