非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の浴衣と俺の国宝級の彼女

六十四話






【新天円香】






「うん、よく似合ってる」
「よかった……」
私は下駄とかごバッグを手に持って玄関へ向かいます。
「いやぁ、まさか円香が男の子とお祭りに行く日が来るなんてねぇ」
お母さんはしみじみと呟きながら後ろをついてきます。
私はそこまで男性との絡みがない娘だと思われてたのでしょうか。
「あっちの気があるのかと疑ってたけど疑いで済んでよかったわ」
相当心配させていたんですね私。
「いやぁ、本当よく似合ってるわね」
「あ、ありがとうございます」
お母さんが褒めてくれるなんてなんかこそばゆい感覚です。
いつもは貧乳だとか乳無しだとかからかってくるのに。
おっと、そろそろ時間ですね。
「―じゃあ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」






【新転勇人】






「じゃあそろそろ行ってくるわ」
「……うん」
雑誌を読んでいる結花に声をかけて俺は玄関へと急ぐ。
あ、そういえば……
「結花はお祭りいかないの?」
「うん。行く友達もいないし」
「そっか……」
行く友達が居ない……か。
俺も産まれてこの方家族以外とお祭りなんて初めてだな……。
ん?結花、友達が居ないわけじゃないよな……?
「ゆ、ゆい――」
「早く行ったら?新天さん待ってるんじゃないの?」
それは冷気を帯び、触れるだけで全身が凍りついてしまうような言葉だった。
俺は若干の引っかかりを覚えたが結花が言ったように円香が待っているため、家を出た。







「やっぱ人多いなぁ……」
待ち合わせ場所に向かう中、周りの人の多さに圧倒されていた俺は既に足が重くなっていた。
円香はもう先についているみたいだから急ぎたいのだが、周りにかける迷惑を考えたら走れないのが現状だ。
だからと言ってはなんだが、ゆっくりと歩きつつMMOをプレイしている。

銀杏『こんこんー』

前に向けていた視線を画面に落とすと、銀杏こと金霧先輩からチャットが届いているのに気がついた。

勇『こんー』

もう一度前方を確認し、画面へ視線を落とす。


銀杏『祭り行くの?』
勇『はい、円香と回ります』
勇『あ、一緒に回りますか?』
銀杏『あの子から、新天たちを邪魔するくらいなら俺と回りましょう!って誘われちゃってね』
銀杏『あの子と回るんから大丈夫』
勇『あの子って浅見くん?』
銀杏『そうその子』


先輩は浅見くんと回るのか。
邪魔なんてことはないんだけどなぁ。
まぁ浅見くんが頑張って掴んだチャンスだから無理に誘わないでおくか。


銀杏『あ、あの子来たから落ちるね』
勇『おっけ!おつー』


あの子って……。
浅見くん名前すら覚えられてないのか。道のり厳しそうだなぁ。

「――勇人くん!!」
「あっ、遅れて申し訳ない」
どうやら俺も到着していたみたいで円香に呼ばれてそれに気がついた。
ていうか――

「かわいすぎませんかそれ」
円香は、藍色から白へ、下からグラデーションになっていてそこへピンク色の紫陽花があしらわれている色気のある浴衣を着ていた。
円香からしたらいつもと何も変わらない笑い方をしていると思うが何だかその笑みも妖艶に見える。
そして髪をまとめているためいつもは見えないうなじが見えてなんか……そう、一言で言うなら――エロい。
「あ、ありがとうございます……ふふっ♪嬉しいですね」
どうしよう。

俺これからこんな国宝級にかわいい彼女と一緒にお祭りを回るの?
既に理性がどこかへ行ってしまいそうなんですけど。

「さ!行きましょ!勇人くん♡」

円香は俺の手を掴んで振り向きざまにそう言った。
満面の笑みを浮かべながら。

それはもう足の重さなんて感じなくなって、むしろ足ついてるのかな?となってしまうほど俺の心は円香に射止められていた。

コメント

  • クロエル

    貧乳の浴衣姿は萌えますよねぇノ(´д`)

    3
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