非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の(ぼいんっ)(たぽんっ)と俺の質問

五十話






【新転勇人】






「あたしは柳紫やなぎむらさき!気軽にお姉ちゃんって呼んでね!」
「私は柳碧やなぎあおい、詳しくはそこの真結から聞いてね」
茶髪で巨乳なお姉さんが紫さん、なにげに気の合う巻き込み事故店員は碧さん。
紫さんはかわいいという言葉が良く似合う女性で碧さんはthe美人という感じだ。
――ッ!!
「は・や・と・く・ん・♡・?」
さっきまでショートしていたはずの円香は何かを感じ取ったのか脅しをまとった笑みを浮かべて俺を見てくる。

なんて察しの良さだ……ッ!!

「まさか私以外の女性に対して美人やらかわいいやら思ってないですよね?」

くっ……。
思ってないと言ったら嘘になる。

「ま、まさか〜、円香しか可愛くないよ」

「―ほ、ホントですか!?えへへぇ〜仕方が無いですね勇人くんはぁ〜」

ちょ、ちょろすぎる!!

ちょろすぎてこの場にいるみんなが冷たい目で見てきてるもん。
「イチャつきはそこまでにして、仕事の内容説明するから―」
碧さんの声掛けで「俺、左道さん、先生」と「円香、先輩、浅見くん」というグループ分けがされ、俺たちが調理、円香たちが接客、という担当になった。
「はーいこっちは調理担当ねー」
碧さんではなく、紫さんが面倒を見てくれるようだった。
てっきり、俺達が買いに行った時に碧さんが調理してたから碧さんかと。
「おーどうした少年!悩みがあるならお姉さんが聞いてあげるよ?」
「あ、無いんで大丈夫です。」
「あっ……そう…そっか……ないなら仕方ないよね……」
露骨に悲しんでる……!
非常にめんどくさい…。
「こ、これってどうやるんですかね……?」
まだ一つも説明されてないうちに悲しまれて、結局わからないところがあったら大変だから、とりあえず聞いてみる。
「食材とかっ―」
―すると目の色を変え、食い気味で、むしろ食ってんじゃないかってくらい速く。
「食材はね!ここ!あたしお姉ちゃんだから分かっちゃうんだよねぇ!」

「わーおねーちゃんすごーい」
「すごいだろぅすごいだろぅ!」

こうしてお姉ちゃん(笑)の調理場説明が始まった。






【新天円香】







「ぐぬぬぬぬぬ」
解せません。
解せませんよ由美先生……。
なんで私と勇人くんが離れ離れなんですか!
「新天落ち着いて、碧さんが説明してくれるから」
「だって―」
「大丈夫だよ彼女ちゃん。」
私の焦りとは裏腹に碧さんはいたって落ち着いて私の頭をぽんぽんしてくれます。
「あんな些細なことでも心配してくれる男はなかなかいないから、当たって砕いてきな!」
当たって砕く!?
何を!
「安心していいと思うよ。」
そうですかね…。
あの茶髪で“巨乳”な紫さんが誘惑したりしませんよね……。
そ、それにしても………………。

頭ぽんぽん気持ちぃです……。
後で勇人くんにもやってもらいましょう。


そんなこんなで接客組の説明が始まりました。









「先輩!紫さんが勇人くんとあんな近くで!」
客足が少ない時間帯のため、焼きそばなどの主食は少なく、軽食であるフランクフルトやかき氷が多い印象を受けていたころ、調理場では大変なことが起こっていました。

「ほら!お姉ちゃんが先やってあげるから!お手本ねお手本!………………きゃぁ!……うぅ…お姉ちゃんなのに失敗しちゃった……」

紫さんが勇人くんへ焼きそばの作り方を教えようとしてソースを周囲に撒き散らしてしまい、勇人くんと紫さんで拭き合う。
という大事件が起きていたのです。
「もぅ、焼きそば出ないだろうし大丈夫ですよ?」
「いや、教えなくちゃ!」
何ですか紫さんは!
異様にお姉ちゃんアピールして!
勇人くんは私を好きなんです!
いくら巨乳で年上で巨乳だとしてもその気持ちは――
「(じーーーっ)」
胸ばっか見てます!!
男の子すぎます!勇人くんは男の子がすぎます!
私にも同じような脂肪が付いてたら………。





「円香ー!」
「あっ、勇人くん!」
「遅くなってごめんなさ―」(コケッ)
「あうっ…もー!気をつけてくださいよ!クッションがあったから良かったものの、私に胸がなかったらどうなっていたか……」(たぷん)

「あぁ!よかったよ!」





ってきっと……。
えへ…えへへへ…えへへへへへ……♡

「新天頬緩みすぎ」
「ハッ!つ、つい別世界に没頭してました……。」
危ないところでした。
これ以上いってしまったら、踏み込んではいけない妄想の世界へ身を投じていました……。
「彼女ちゃん大丈夫かーって、あっちが気になるのね」
「うぅ……はいぃ」
「大丈夫だと思うよ。あっち真結いるし、それに紫も奪おうとしてないから。あいつ年下にはすぐ姉ぶりたがるから。ごめんね」
碧さんは優しい顔でそう言ってくれました。
勇人くんを疑っている訳ではありませんが、万が一があるので。巨乳には万が一があるので。

「新天ー」
先輩が私を呼ぶ声が聞こえたので先輩の方へと向かいました。
「これ一緒に店の前に運ぼ」
そこには缶ビールが大量に水につけられている状態で入っているクーラーボックスがありました。
「分かりました」
断る理由がないので私はクーラーボックスの片方に両手をかけます。
「せーーのっ」(ぼいんっ)

イラッ。

「そのまま運ぶよ」

「はい……」
カニ歩きのような形で運んでいます。
一歩進むたび、先輩の山は崩れ落ちてしまうのではないかというくらいに揺れ、もはやゲームの域でした。

「じゃあ置くよ…」(たぽんっ)
イライラッ。

一緒に水の中に沈めてしまいましょうかその脂肪。

私は揺れる二つの山を睨みつけ、思いました。



やはり巨乳には万が一がある。

と。

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