非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の勘違いと俺のパンツ事件再び

四十八話






【金霧杏佳】






二人共まだかな…。
先生は海の家でバイトの準備をしてくれてるからいないし……。
もう……。

「―金霧先輩!水着すっげぇにあってます!」

この子がガンガンあたしに喋りかけてくるぅ。
「ありがと」
「いいえ!事実なんで!」
どんなに塩対応してもぜんっぜん折れない!
勇っち早く助けて……。
左道も我関せずを貫いてるし。
それにまだ新天にしたこと忘れたわけじゃない……この子はそこの所どう考えてるのかな。
「ん?どうしました先輩」
「いや、まだ新天のこと追い回してるのかなぁ〜って。」
「もうそんなことしてませんよ!今は先輩一筋ですから!」
「………んぁごめん。今鼓膜敗れてて、してませんよ!の後から聞こえなかった。」
「なんで!?めんどくさいって思ってますよね!?」

大正解、思ってます。

「正解、おめでと」
「あ、ありがとうございます……ってやっぱりそうなんですか!」
どうしよう。
非常にめんどくさい。
一応あたしも勇っちと同じような種族なのに、ガツガツこられるの苦手って知らないのかな。
「先輩、俺じゃ何でダメなんですか?」

そんなところがダメなんですよー。



…………とは言えなかった。






【新転勇人】






「ただいまもどりましたー―って、何があったんですか!?」
俺たちふたりが戻ると、そこは何かが起こった後かのような静けさでいっぱいだった。
金霧先輩はぐったりと力が抜けている身体を地へ預け、左道さんはそんな先輩をチラチラ横目で見て、浅見くんは「やってしまった」と言わんばかりの絶望を顔に浮かべていた。

俺の隣でかき氷を食べていた円香。
そんな円香がその場を見た衝撃でかき氷を落としてしまう。
そして――

「もしもし警察ですか?」

通報した。

「円香ぁ!?話聞こ!?ね!?決めつけるのはまだ早いと思うんだ!」
「で、でも勇人くん。この状況って誰がどう見ても……」
いや確かに!確かに、浅見くんが金霧先輩へ欲望の全てをぶつけた図に見えなくもないけど……。
「一回落ち着いて?」
「うぅ…」
円香がゆっくりと携帯を耳から遠ざけ、通話ボタンを切った。
イタ電みたいで警察の方には申し訳ないけど仕方あるまい。
「はい、いい子。下げてくれてありがとうございます」
「じゃあいい子な私に後でご褒美をください」
俺の彼女油断も隙も存在しなかった。
こんな状況でも自分の欲望には忠実なんですね。
「何なら前にいただけなかったパンツでも――」
「あげませんよ?」
「で、でも前は、今はカップル(仮)だから、って断ったじゃないですか?でも、今私たちって正式なカップルですよね?だからパンツを――」
「あげませんよ?」
やばい。
学園のアイドルで、優等生で、みんなから好かれていた新天円香の頭のネジが残り少なくなってきたかもしれない。
非常にまずい。
「べ、別に嗅いだり額縁に入れて飾ったりしようなんて思ってませんから!」
「思ってるんですね。あげません」
「ね?だからいいですよね?パンツ」といいたげな視線を向けてくるが絶対に折れないぞ。
この世界のどこに、彼女に自分のパンツをあげる奴がいるんですか。

「勇人くんのケチ…」
「円香?本当に大丈夫?いろいろな面で」






【新天円香】






「なーぁんだ、そんな事でしたか」
ただ浅見さんの「何がダメ?」という問いに「そういうところだよ」って答えただけらしいです。
真結は真結で他人の恋路を邪魔しないという理由でチラチラ見てたと。
安心しました。
てっきり私にしたことよりもやばいことをしたのかと思いましたよ。ありえそうですし。

「でもガツガツ行きすぎだよ浅見くん」
「なんだ勇人!彼女いるからって余裕ぶりやがって!!」
「いや、ゲーマーとかオタクにマシンガントークしても嫌われるだけだよ」
「なん……だと…?」

二人は二人で楽しげな会話を繰り広げています。
「先輩大丈夫ですか?」
「うん。ちょっと疲れちゃって、私は言ってないと思ってたのに口から出ちゃってて…あの子その後ひどく落ち込んじゃってね」
浅見さんは本気で恋してるんですか。
「新天のこともあるし……でもちょい言いすぎたかもしれないなって…」
先輩はいつになく疲れと反省の色を見せ休んでいます。

「これ、全員の分買ってきたので、食べられたら食べてください」
私はそんな先輩と真結に焼きそばを渡しました。


勇人くんたちも食べ始めているようで、そろそろ一日目の遊ぶ時間が終わりかけているのを実感しました。





「―あ!勇人くん、帰ったらパンツを」
「しつこい!!」
ぶー!

「非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く