俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい
愛してる
「うん、お前ら合格。てことで、ちょっと来い」
3人の中で1番顔が整っている男の人がいきなり私の腕を掴む。サイドを刈り上げ、トップをワックスで立たせたその特徴的な髪型は好きな人は好きなのかもしれない。
「い、痛い!やめてください!」
余りにも強引に腕を掴まれたため、反射的に振り払ってしまった。何なんだろうこの人。すごく怖い。
「……は??」
そしてその怖い人はと言うと、信じられない事態が起きたかのように間抜けな声を出した。振り払われた右手と私の顔を交互に見て、未だに状況を整理できていない様子だ。
「え?もしかして今嫌がった?お前女だよな?俺に誘われて嫌がるとかお前頭おかしいのか?あ?」
得体の知れない物を見るように。ただ純粋に理解できない。そう言っているようだ。
この人の心境は今の言葉だけでもよく分かる。『男に強引に連れ出されて無茶苦茶にされたい!』や、『1度は男にナンパされたい!』というのは極普通の女の願望。そういう女からすれば、目の前の顔が整っている男の人から半ば強引に腕を掴まれれば大人しくついて行くのだと思う。
でも私は……私達にはお兄ちゃんがいるから。カッコよくて可愛くて優しくて頼りになる最高の男の人が身近にいるから。他の人に靡かない。大好きだもん。
「ご、ごめんなさい。何処に行くのは知りませんけど、私達は用事があるのでついて行くことはできません」
今まで男の人なんて怖く感じた事はないけど、何故だかこの人達は怖い。
それでも私はお兄ちゃんに夢中だから。他の男の人に構っている余裕なんかない。女の癖に生意気って男の人には言われるかもしれないけど、これが紛れもない本心だ。
「……」
顔が整っている男の人がジッとこちらを見つめる。何を考えているのかは全く分からない。私の気持ちが伝わって、引き返してくれたらいいんだけど。
しかし、そんな私の願望は脆い。
「……ぶふっ!あはははは!!!なにこいつ!?ヤバいな!?」
「身の程知らねえのな?」
「愚かだな」
1人は愉快に、1人は呆れたように、1人は不快にそう言い放つ。三者三様の反応を見せる彼らだけど、見た感じ私が変な事を言ったみたい。何なんだろうこの人達。
「ゆ、心愛ちゃん……」
ののちゃんがとても不安そうに私に寄り添い、服の裾をギュッと掴む。怖いのだろう。
愛菜ちゃんも同様に不安そうだ。
「だ、大丈夫だよ」
こう言うことしか出来ない。私には勇気も、力もない。ただ薄っぺらい言葉を友人に吐くことしか出来ないのだ。
そうこうしてるうちに、顔の整った男の人は笑い終わったのか私達に目を向けた。
「あーー笑った笑った。なぁお前ってやっぱり頭おかしいんだろ?こんなイケメンが誘ってるんだぞ?ヤバいなお前」
自分でイケメンとか言うな。
それにこの人さっきからヤバいしか言ってない。語彙力?というんだったかな?その力が貧相なのかもしれない。
「何もやばいことなんかないです。私達は今お友達同士で遊んでいるところなので邪魔しないでください」
「あーーわかったわかったそういうのいいから。な?着いて来いって」
なんでこの人は私達にここまで執着するのだろう。この人ほど顔が整っていればもっと美人な女とも遊べるはずなのに。
「ってか本当にこいつらでいいのー?すぐに潰れそうだけど?」
「あ?いいんだって。この3人、特にこいつなんか良い声で鳴きそうだろ?」
私をヌメヌメした嫌な目付きで見下ろしてくる。
「……まぁたしかに。お前もいい趣味してるよな」
「当たり前だろ。『この世の女は全員俺ら男のおもちゃ』なんだから。こいつらを壊そうが潰そうが俺の自由だ」
「そうだな」
ひ、冷や汗が止まらない。男の人とはこんな生き物だっただろうか。もっとこう、カッコよくて優しくて強いけどどこか危なっかしくて守ってあげたくなるような……。男の人って、そんな感じの……。
……。
……あ。
「はは」
違う、そうじゃない。
男の人はそんな生き物じゃない。
お兄ちゃんだ。私が思い込んでいた男の人。その理想像はいつだってお兄ちゃんだったんだ。
ろくに男の人のことなんて知らないくせに、1番そばに素敵な人がいたから。
だから……。
「なあもういいだろ?いい加減いくぞ。どうせお前も後で俺に虐められて喜ぶんだからよ」
黒い。この男の人達は真っ黒だ。
お兄ちゃん。
「……助けて」
あまりにも小さく、その掠れた願いはどうやら男の人達には聞こえていなかったらしく、私は腕を強く掴まれた。
「おら、来いよ」
「いや!!痛い!」
「チッ。いいからよ、ついてこいよ!!」
私が拒絶し続けたためか、いい加減イライラしてきているみたいだ。舌打ちと共に少し不快げに表情を顰める。
「やめて、離して!誰か助けて!」
ギュウゥと私の腕を掴む力が強くなる。痛い。痛い。
「やだ……!助けて!!誰か!」
誰か……お兄ちゃん!
こんな時思い出すのはやはり世界一のお兄ちゃん。気分が落ち込んでるお兄ちゃんに助けを求めるなんて最低だ。でも願わずにはいられない。
「「心愛ちゃん!」」
ののちゃんと愛菜ちゃんが弾かれたように私に向かって駆け出す。
怖い。怖いよ。男の人がこんなに怖いなんて想像もしてなかった。
助けて。
たすけて。
そんな私の願いは。
「うぜぇ!!」
突如頬を襲った大きな衝撃で儚く散った。
「きゃ……!!?」
何?なんだろ?
視界が急に回って。立っていられなくなって。気が付いたらそこは地面で。周りの人がみんな、私を見下ろしていて。『キィーン』という耳鳴りがして。
そこまで知覚した瞬間、頬から噴き出すような痛みが。痛い。痛い。いたい。
「うえぇ……ぃだい……うぅ……」
頬が、痛い。熱い。涙が止まらない。
私殴られたんだ。この男の人に。
初めてだった。人に殴られたのは。
こんなに、こんなに痛いものだったんだ。涙が次から次へと溢れてくる。悔しさ?恐怖?憎しみ?分からない。
「おいおい!ここでそれやっちゃったらまずいでしょ」
「滑稽だな」
あとの2人の男の人はというと、心底愉快げに私を見下ろしていた。そっか、この人達はみんな同類なんだ。
ののちゃんと愛菜ちゃんが慌てて駆け寄ってきてくれる。
……助けて。
なんでお友達と楽しくピクニックしてただけなのに、こんな目にあうの。
私達はただ遊んでいただけなのに。
なんで……。
こんな時お兄ちゃんがいれば……。
きっと何とかしてくれる。
でも、そのお兄ちゃんは今落ち込んでるから。私がお兄ちゃんを支えてあげるんだ。
お兄ちゃんが私をいつも助けてくれるように、支え返してあげる。それが恩返しだと思うから。だから、こんなやつに負けるわけにはいかない!
キッと目尻を釣りあげ、男の人3人を睨む。こんな人たちなんかに!こんな……
「ん〜?なんだ?まだ何か?」
私の視線に気付いたのか、嬉しそうに拳を鳴らす。頬がズキズキと痛む。
「おっとー?まだ殴られたいのか?」
こんな……人達が……。
とても怖い。
「あ……」
無理だ。絶対勝てないし、絶対逃げられない。身長も体格も筋肉量も何もかも、到底敵わない。
自分の目から闘志が失われていくのが分かる。また泣きそうだ。
お兄ちゃん。
私じゃ無理だったよ。
結局お兄ちゃんがいなきゃ何も出来ない。
弱っちいんだ。私。
落ち込んでる大切な人に助けを求めちゃうくらい。
最低な事は重々分かってる。
それでもやっぱり願ってしまう。
お兄ちゃん……。
「助けて……」
「おい」
……。
「あ?なんだ」
……あれ?
「歯ぁ食いしばれ」
この声は。
『ボキィッ!!』
少し目を瞑ってる間に、さっきまでそこにいた男の人があそこに倒れ込んでて。
「おごご……!?おぇええええ!!!」
殺虫剤をかけられた虫みたいにのたうち回っている。その姿はとても間抜けで、何処かスッキリしたような気がする。
そして。
今までに見た事がないくらい怖い顔をしたこの人。そう、とても怖いのに何故か安心する。もう大丈夫なんだって確信できる。
「……」
なんで……。
お兄ちゃんはこんなに。
「俺の妹に何してんだお前」
……なんでこんなに眩しいんだろう。
物語のヒーローみたいだ。記憶がなくなっちゃってからのお兄ちゃんは。
私は妹であることを誇りに思う。
まるで私のピンチを知ってたかのように駆け付けてくれて……ってあれ?
「お、お兄ちゃん!?」
なんかお願いしたら無茶苦茶カッコよく登場してくれて現状に酔ってたけど、よく考えたら何故ここに!?
「そうだよ。怪我は大丈夫?心愛」
頬をとんとんと指で叩きながら私の安否を確認してくれる。
……そういえば、殴られたんだった。すっかりそんな事頭から抜け切ってたよ。
そこでふとお兄ちゃんの右手に目がいく。
……あれ?
あの手……。赤くなってて……とても腫れてる。もしかして今殴ったから?それで今の一瞬で腫れ上がってるの?
……何でそこまでして。
『う、うん。それよりお兄ちゃん右手が……』
そう言おうと思った。
でも、私の視線に気付いたのかお兄ちゃんが右手をサッと背中に隠してしまった。かなり痛そうなのに顔にはおくびにも出さない。
あくまで私に心配はかけさせたくないみたいだ。……なんで。
「あ、……うん。私は大丈夫だよ。それよりなんで……」
私なんかのためにそこまで。
お願いした身であれだけど、何もお兄ちゃんが痛い思いしなくても……。
私がこんなに不安定なのに、この人はなんでもない様に言う。
「ん?ただアイツがムカついたから殴っただけだよ。怖がらせてごめんね?」
「……ッ!もう……お兄ちゃんは本当に……」
大好きだ。私はこの人が大好きだ。
いつかお兄ちゃんに恩返ししよう。
私は一人の人間としても、男性としてもこの人を愛してる。
3人の中で1番顔が整っている男の人がいきなり私の腕を掴む。サイドを刈り上げ、トップをワックスで立たせたその特徴的な髪型は好きな人は好きなのかもしれない。
「い、痛い!やめてください!」
余りにも強引に腕を掴まれたため、反射的に振り払ってしまった。何なんだろうこの人。すごく怖い。
「……は??」
そしてその怖い人はと言うと、信じられない事態が起きたかのように間抜けな声を出した。振り払われた右手と私の顔を交互に見て、未だに状況を整理できていない様子だ。
「え?もしかして今嫌がった?お前女だよな?俺に誘われて嫌がるとかお前頭おかしいのか?あ?」
得体の知れない物を見るように。ただ純粋に理解できない。そう言っているようだ。
この人の心境は今の言葉だけでもよく分かる。『男に強引に連れ出されて無茶苦茶にされたい!』や、『1度は男にナンパされたい!』というのは極普通の女の願望。そういう女からすれば、目の前の顔が整っている男の人から半ば強引に腕を掴まれれば大人しくついて行くのだと思う。
でも私は……私達にはお兄ちゃんがいるから。カッコよくて可愛くて優しくて頼りになる最高の男の人が身近にいるから。他の人に靡かない。大好きだもん。
「ご、ごめんなさい。何処に行くのは知りませんけど、私達は用事があるのでついて行くことはできません」
今まで男の人なんて怖く感じた事はないけど、何故だかこの人達は怖い。
それでも私はお兄ちゃんに夢中だから。他の男の人に構っている余裕なんかない。女の癖に生意気って男の人には言われるかもしれないけど、これが紛れもない本心だ。
「……」
顔が整っている男の人がジッとこちらを見つめる。何を考えているのかは全く分からない。私の気持ちが伝わって、引き返してくれたらいいんだけど。
しかし、そんな私の願望は脆い。
「……ぶふっ!あはははは!!!なにこいつ!?ヤバいな!?」
「身の程知らねえのな?」
「愚かだな」
1人は愉快に、1人は呆れたように、1人は不快にそう言い放つ。三者三様の反応を見せる彼らだけど、見た感じ私が変な事を言ったみたい。何なんだろうこの人達。
「ゆ、心愛ちゃん……」
ののちゃんがとても不安そうに私に寄り添い、服の裾をギュッと掴む。怖いのだろう。
愛菜ちゃんも同様に不安そうだ。
「だ、大丈夫だよ」
こう言うことしか出来ない。私には勇気も、力もない。ただ薄っぺらい言葉を友人に吐くことしか出来ないのだ。
そうこうしてるうちに、顔の整った男の人は笑い終わったのか私達に目を向けた。
「あーー笑った笑った。なぁお前ってやっぱり頭おかしいんだろ?こんなイケメンが誘ってるんだぞ?ヤバいなお前」
自分でイケメンとか言うな。
それにこの人さっきからヤバいしか言ってない。語彙力?というんだったかな?その力が貧相なのかもしれない。
「何もやばいことなんかないです。私達は今お友達同士で遊んでいるところなので邪魔しないでください」
「あーーわかったわかったそういうのいいから。な?着いて来いって」
なんでこの人は私達にここまで執着するのだろう。この人ほど顔が整っていればもっと美人な女とも遊べるはずなのに。
「ってか本当にこいつらでいいのー?すぐに潰れそうだけど?」
「あ?いいんだって。この3人、特にこいつなんか良い声で鳴きそうだろ?」
私をヌメヌメした嫌な目付きで見下ろしてくる。
「……まぁたしかに。お前もいい趣味してるよな」
「当たり前だろ。『この世の女は全員俺ら男のおもちゃ』なんだから。こいつらを壊そうが潰そうが俺の自由だ」
「そうだな」
ひ、冷や汗が止まらない。男の人とはこんな生き物だっただろうか。もっとこう、カッコよくて優しくて強いけどどこか危なっかしくて守ってあげたくなるような……。男の人って、そんな感じの……。
……。
……あ。
「はは」
違う、そうじゃない。
男の人はそんな生き物じゃない。
お兄ちゃんだ。私が思い込んでいた男の人。その理想像はいつだってお兄ちゃんだったんだ。
ろくに男の人のことなんて知らないくせに、1番そばに素敵な人がいたから。
だから……。
「なあもういいだろ?いい加減いくぞ。どうせお前も後で俺に虐められて喜ぶんだからよ」
黒い。この男の人達は真っ黒だ。
お兄ちゃん。
「……助けて」
あまりにも小さく、その掠れた願いはどうやら男の人達には聞こえていなかったらしく、私は腕を強く掴まれた。
「おら、来いよ」
「いや!!痛い!」
「チッ。いいからよ、ついてこいよ!!」
私が拒絶し続けたためか、いい加減イライラしてきているみたいだ。舌打ちと共に少し不快げに表情を顰める。
「やめて、離して!誰か助けて!」
ギュウゥと私の腕を掴む力が強くなる。痛い。痛い。
「やだ……!助けて!!誰か!」
誰か……お兄ちゃん!
こんな時思い出すのはやはり世界一のお兄ちゃん。気分が落ち込んでるお兄ちゃんに助けを求めるなんて最低だ。でも願わずにはいられない。
「「心愛ちゃん!」」
ののちゃんと愛菜ちゃんが弾かれたように私に向かって駆け出す。
怖い。怖いよ。男の人がこんなに怖いなんて想像もしてなかった。
助けて。
たすけて。
そんな私の願いは。
「うぜぇ!!」
突如頬を襲った大きな衝撃で儚く散った。
「きゃ……!!?」
何?なんだろ?
視界が急に回って。立っていられなくなって。気が付いたらそこは地面で。周りの人がみんな、私を見下ろしていて。『キィーン』という耳鳴りがして。
そこまで知覚した瞬間、頬から噴き出すような痛みが。痛い。痛い。いたい。
「うえぇ……ぃだい……うぅ……」
頬が、痛い。熱い。涙が止まらない。
私殴られたんだ。この男の人に。
初めてだった。人に殴られたのは。
こんなに、こんなに痛いものだったんだ。涙が次から次へと溢れてくる。悔しさ?恐怖?憎しみ?分からない。
「おいおい!ここでそれやっちゃったらまずいでしょ」
「滑稽だな」
あとの2人の男の人はというと、心底愉快げに私を見下ろしていた。そっか、この人達はみんな同類なんだ。
ののちゃんと愛菜ちゃんが慌てて駆け寄ってきてくれる。
……助けて。
なんでお友達と楽しくピクニックしてただけなのに、こんな目にあうの。
私達はただ遊んでいただけなのに。
なんで……。
こんな時お兄ちゃんがいれば……。
きっと何とかしてくれる。
でも、そのお兄ちゃんは今落ち込んでるから。私がお兄ちゃんを支えてあげるんだ。
お兄ちゃんが私をいつも助けてくれるように、支え返してあげる。それが恩返しだと思うから。だから、こんなやつに負けるわけにはいかない!
キッと目尻を釣りあげ、男の人3人を睨む。こんな人たちなんかに!こんな……
「ん〜?なんだ?まだ何か?」
私の視線に気付いたのか、嬉しそうに拳を鳴らす。頬がズキズキと痛む。
「おっとー?まだ殴られたいのか?」
こんな……人達が……。
とても怖い。
「あ……」
無理だ。絶対勝てないし、絶対逃げられない。身長も体格も筋肉量も何もかも、到底敵わない。
自分の目から闘志が失われていくのが分かる。また泣きそうだ。
お兄ちゃん。
私じゃ無理だったよ。
結局お兄ちゃんがいなきゃ何も出来ない。
弱っちいんだ。私。
落ち込んでる大切な人に助けを求めちゃうくらい。
最低な事は重々分かってる。
それでもやっぱり願ってしまう。
お兄ちゃん……。
「助けて……」
「おい」
……。
「あ?なんだ」
……あれ?
「歯ぁ食いしばれ」
この声は。
『ボキィッ!!』
少し目を瞑ってる間に、さっきまでそこにいた男の人があそこに倒れ込んでて。
「おごご……!?おぇええええ!!!」
殺虫剤をかけられた虫みたいにのたうち回っている。その姿はとても間抜けで、何処かスッキリしたような気がする。
そして。
今までに見た事がないくらい怖い顔をしたこの人。そう、とても怖いのに何故か安心する。もう大丈夫なんだって確信できる。
「……」
なんで……。
お兄ちゃんはこんなに。
「俺の妹に何してんだお前」
……なんでこんなに眩しいんだろう。
物語のヒーローみたいだ。記憶がなくなっちゃってからのお兄ちゃんは。
私は妹であることを誇りに思う。
まるで私のピンチを知ってたかのように駆け付けてくれて……ってあれ?
「お、お兄ちゃん!?」
なんかお願いしたら無茶苦茶カッコよく登場してくれて現状に酔ってたけど、よく考えたら何故ここに!?
「そうだよ。怪我は大丈夫?心愛」
頬をとんとんと指で叩きながら私の安否を確認してくれる。
……そういえば、殴られたんだった。すっかりそんな事頭から抜け切ってたよ。
そこでふとお兄ちゃんの右手に目がいく。
……あれ?
あの手……。赤くなってて……とても腫れてる。もしかして今殴ったから?それで今の一瞬で腫れ上がってるの?
……何でそこまでして。
『う、うん。それよりお兄ちゃん右手が……』
そう言おうと思った。
でも、私の視線に気付いたのかお兄ちゃんが右手をサッと背中に隠してしまった。かなり痛そうなのに顔にはおくびにも出さない。
あくまで私に心配はかけさせたくないみたいだ。……なんで。
「あ、……うん。私は大丈夫だよ。それよりなんで……」
私なんかのためにそこまで。
お願いした身であれだけど、何もお兄ちゃんが痛い思いしなくても……。
私がこんなに不安定なのに、この人はなんでもない様に言う。
「ん?ただアイツがムカついたから殴っただけだよ。怖がらせてごめんね?」
「……ッ!もう……お兄ちゃんは本当に……」
大好きだ。私はこの人が大好きだ。
いつかお兄ちゃんに恩返ししよう。
私は一人の人間としても、男性としてもこの人を愛してる。
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コメント
ノベルバユーザー305890
面白いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
うい2002
おおぉぅぅおおぉおーーーー!!!!久しぶりの投稿きたぁぁー。これ楽しみにしてたんだよなぁー!
HARO
面白いです!
続きお願いします
TADAI
待ってました更新ありがとうございます!
ましゃや
やばい更新しためちゃくちゃうれしい