クラス転移キターっと思ったらクラス転生だったし転生を繰り返していたのでステータスがチートだった

名無しシャン

第63話「後処理、帰宅、お呼び出し」

 奴隷の少女と俺の2人は互いに話さず、静かな空気が漂う。

「えっと、君を渡された訳だけど」
「あっ、はい。えーと、新しいご主人様ですね。私はシャルル。家名は孤児ですのでありません。奴隷としてご主人様のお世話をさせていただきます」
「あっ、俺の名前は....さっき名乗ったしいいか。それでなんだけど、奴隷を解放する事って、出来るかどうかって知ってる?」
「奴隷商人のところに行けば、この首輪の後ろの鍵穴に鍵を入れて外す事が出来ます」
「奴隷って証明するものって、その首輪だけなの?」
「そうですね」
「そうなんだ。じゃあ、シャルル、後ろを向いて首輪が見えるようにして」
「はい、ご主人様」

 そういうと、シャルルは後ろを向き、髪を手で持ち上げ、首輪が見えるようにする。

「そのまま首を前にくっつけて、後ろに隙間を使って」
「わかりました」

 シャルルが行なっている間に、俺は少し距離を開ける。首輪が少し大きめだったからか、腕が1本入るぐらいの隙間が出来る。

「いいよって言うまで動かないでね」

 1度深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。そして、居合の構えをとり、首輪に狙いをつける。

 抜刀。
 下から切り上げと上からの切りおろしの2回。カランッと音がして、首が通るぐらいの隙間が出来る。

「いいよ。首輪は外れたから」
「えっ、Aランク冒険者でも切れない筈の首輪が、何故切れたんですか、ご主人様」
「そのご主人様っての辞めて欲しいんだけど。もう奴隷じゃないんだから」
「では、ルルシアさんと」
「ルルでいいよ。変に距離感があるのは嫌だし」
「あのままダンジョンに行っていれば、その内囮にされていたのは確実です。命の恩人といえるような人にそんな」

 シャルルの言っている通り、恐らくあのメンバーでは途中で逃げる事になり、その際に囮として使われるだろう。そして、見たところ武器の類は見当たらない。
 また、荷物持ちを集めていたところからして、シャルルは初めから囮目的で買われたのだろう。

「シャルル、これからどうすんだ?」
「ルルシア様にお仕えします」
「奴隷じゃないから好きにしていいんだぞ」
「私の意思でルルシア様にお仕えします」
「そうか。シャルルの意思は分かった。しかし、俺に仕えるのは駄目だ」
「そうですか。では、私はどうすれば」
「友達になってくれ」
「そんな、命の恩人と友達だなんて」
「友達なら助け合うの普通だろ。だから、シャルルも友達として俺を助けてくれ」
「ルルシア様を助ける事なんて」
「ルルだ。友達同士なのに距離感が遠すぎるだろ。それと、多分だが、友達同士なのは帰るまでだと思う」
「それはどういう......」
「多分、シャルルの覚悟次第ではレビュートの家名が付く」
「そ、それって」
「養子扱いで家族になるかもだからな。家族からはルルって呼ばれてるからな。その練習だと思ってくれ。まぁ、シャルルに覚悟があればだけど、大丈夫そうだな」
「そう、ですか。それではよろしくお願いします。ルル」

 シャルルとの話が纏まると、話が纏まるのを待っていたフーラさんが話しかけてくる。

「そっちは、だいたい纏まったみたいだな」
「そうですね。それで、なんの用ですか?」
「予想はついてるだろうが、さっきの戦闘についてだな」
「やっぱり、そうですよね」
「本来、ギルドは冒険者同士の争いには関与しないんだが、今回は別だ。伯爵とレビュート家の人間だ。上に報告しなければならない」
「聞きますけど、上って」
「分かってんだろ、国王だよ」
「ですよね」
「でだ、今回の事を報告するとだな、恐らくお呼び出しが長引く。その事だけ分かっといてくれ」
「報告しないって選択肢は?」
「あんたらの家の者の行動は、国からの命令で報告を絶対とされてんだよ。報告しなかったら、そんだけで国家反逆罪で拘束されかねん」
「それはそれは。まぁ、仕方ないですかね」
「それじゃ、帰宅するならどうぞ。と、その前にこれら渡しとくわ」

 そう言いつつ二つの指輪を渡してくる。片方は無装飾の銀色の金属で出来た物で、もう片方は指輪に嵌め込まれている黒い宝石が特徴的な金色の金属で出来た物だ。

「これは?」
「銀のやつが踏破者に渡してるもので、金の方が未踏破のダンジョンをクリアした奴に渡してる」
「そうですか、ありがとうございます。それでは」
「あぁ、またな」
「シャルル、行くぞ」

 フーラさんとの話が終わり、俺はシャルルを連れ帰路につく。
 行きは俺1人だったから走ったが、帰りはシャルルが一緒なので乗合の馬車に乗り、周りの人達と話しながら家に帰る。

 馬車に揺られながら数時間。2〜3日ぶりとなる家に到着する。隣の現代日本風のマンションにはシャルルが大興奮していた。
 扉に手をかけ開けようとすると、向こう側から扉が開けられる。

「ルル、おかえり〜」

 扉から現れたのは姉さんだった。
 そして、視線は俺から後ろのシャルルの方に向く。事態をややこしくしなければいいが。

「姉さん、説明をさ....」

 家の中へと走り去っていく。そして家の中に姉さんの声が響く。

「ルルが、また女の子を連れてきた〜!」

 姉さんが家で叫ぶと、シャルルに後ろから肩を叩かれる。

「またって、どういうことですか?」
「そのまま。だいぶ前だけどな」
「さっきの人がそうですか?」
「そこら辺はまとめて入ってからやるから」
「わかりました」

 シャルルと話していると姉さんに連れられ、家の中にいたであろう人がほぼ全員出てくる。部屋で横になっているであろうセラさん以外だ。

「折角みんな出てきたみたいだけど、説明するから部屋に行って」

 俺がそう言うと、全員中に入る。そして、いつもの机を囲うように座る。親父と向かい合うように俺とシャルル、母さんとレナさんと向かい合うように座るのが、リアと姉さんだ。
 どう話をしようかと思ったが、親父が話を切り出す。

「まず、生還おめでとう。無事踏破出来たみたいだな」
「はい。難易度がかなり高かった気がしますが」
「そうか。その子シャルルの事も含めて、終始全てを報告してくれ」
「わかりました。ではまず......」

 家を出てから帰ってくるまでを、簡潔に報告した。ダンジョンマスターとの話はどうしようか迷ったが、結局は報告した。

「そうか、初代から。それの確認は後にして、シャルルをどうするかだな。まず聞こう。シャルル、君はここに居たいか?」
「...はい」
「そうか、ではレビュートの家名をあげよう。しかし、レビュートの家名には実力が必要になる」
「最強を表す家の家名を貰うのですから、覚悟はあります」
「そうか、最強を表すか。この家名を持つ限り、死と隣合わせの無理難題がやってくる。それから、自分と守りたいモノを守る為に強くなる。ただそれだけなんだがな」

 シャルルは何も話さず、親父の話を聞いている。守る為の力であるからこそ、争いごとに対してこちらからは何もしない。

「守りたいモノを守る為に強くなる覚悟はあるか?」
「はい」

 シャルルは即答する。答えは決まっていたのだろう。

「いい返事だ。明日から1年だ。1年間で一般人を辞めてもらう。国の兵士程度なら1対3でも勝てる程度にな」

 帰ってくる最中に、シャルルのステータスは覗きみている。乗り合いの馬車なので、オープンにすると全員に見える事になってしまうからな。
 ステータスを見る限りだと、ステータスは大体平均程度しかなく、固有スキルもない。はっきり言って、1年ではかなり厳しいだろう。
  5年あればそれぐらいにはなるかもだが、それを1年でやってしまうという事は、言ってしまえば1日で5日分強くすると言っているようなものだ。半端な覚悟では無理だ。
 しかし、シャルルは覚悟しているようで、静かに返事をする。


「さて、ルルの話からしたらもうすぐ来ると思うが」
「来るって、誰が」

 親父が話を変え、俺に話しかけてくる。親父が返答するよりも早く、家の前に1台の馬車が止まる。

「来たみたいだな。出迎えに行こうか」

 親父は立ち上がり、玄関の方に向かって行き、そのまま外に出る。俺も親父の後を追って外へと出る。
 外に出て見ると男が1人立っており、後ろに馬車があるだけで、他は特に何もない。
 男は体に鎧を着ているだけで、頭や足には鎧を着ていない。腰に剣は差しており、年齢は30〜35ぐらいに見えるが実際にはもう少し上だろう。若く見える。

「ハゾメ、久しぶりだな。色々話したい事はあるが、1つ目の要件からだ。王からお呼び出しだ。明日、息子の方は城に来るようにだと。で、2つ目。伯爵は息子に爵位を譲って隠居するんだとか」
「そうか、明日から鍛える娘が1人増えたから用がある時は早めに言え、と伝えといてくれ。それと、それ絡みで明日は息子に1人で行かせるとも頼む」
「了解。ある程度の事情は聞いてるから。それじゃあな」

 それだけ伝えると男は馬車に乗って去っていった。

「そういう事だから、ルル。明日、王城行ってこい」
「えっと、城に行くのはわかったけど、さっきの人は?」
「あいつは小さい頃からの友達で、王国最強の下っ端だな」
「それはどういう」
「小さい頃から一緒に鍛えてた。実力的には騎士団長相手に素手で勝てるらしいが、目立つのが嫌らしい」
「だから最強の下っ端か」
「これ、本人じゃなくて周りが言ってるだけらしい」
「なんだ、周りは知ってるんだ」
「騎士団の入団試験で騎士団の上から10人をダウンさせたらしいからな」
「さっきから気になってたけど、らしいって」
「本人談じゃないからな。さて、中に入ろうか」

 そう言いながら親父は中に入っていった。

コメント

  • ノベルバユーザー234312

    そんなに面白いわけではない

    0
  • ペンギン

    早く続きが見たいです!
    お願いします!

    0
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