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sun

vs蟒蛇

 
「よっしゃ!掛かったぜ!こいつがこの湖の主、蟒蛇だ!」


 シュンが何かを言いかけたが、水面から出てきた巨大な生き物によって頭まで食べられてしまった。レイとリンは悲鳴を上げるが、ヒロキはそんなことお構いなしに釣り竿をグイッと引き寄せようとした。


「ちょ、ちょっとヒロキ、シュンを助けないと!」

 
 シュンを助けようと飛び出そうとするが、ヒロキが「大丈夫だ」と口にする。


「やれ!シュン!」


 急に大声を出したヒロキに反応するかのように、蟒蛇の上口から剣が突き出てきた。そして、蟒蛇が痛みに怯んだ隙に一気に陸へと釣り上げた。
 しばらくして、陸へと釣り上げられた蟒蛇の口から強引にシュンが這い出てきた。


「うしっ、作戦成功!」
「おう、上手くいったぜ!」

「あんたらいつのまにそんな作戦立ててたのよ」
「ちょっと、吊るすときにな」


 シュンが死んでいなかったことで、いつもの調子に戻ったリンがため息を吐きながら、腕を交差させてぶつけ合っているヒロキとシュンのところへ歩いていった。私もシュンがデスペナにならずに済んだので、胸を撫で下ろした。陸に釣り上げられた蟒蛇の全長は15メートルほどはありそうだった。身体には鱗があり、口のサイズはシュンを丸呑みしたように、かなり大きい。
 蟒蛇の身体を観察していると、蟒蛇の身体がピクリと動き始めた


「動き出したよ!みんな気をつけて!」


 ホッとしたのもつかの間に、再び動き始めた蟒蛇が、こちらを怒りの篭った目で睨み付けていた。
 餌だと思って喰い付いたら、実は罠で騙されたのなら怒るのも当然だよね。
 蟒蛇は「シャアアアアア!」と声を出しながら、武器の構えていなかった私の方へ大きな口を開いて噛みつこうとしてきた。


 「【バークシールド!】」
 「ジャアアアアア!」


 普通に回避するのでは避けきれないと思った私は、素早さが高い【《獣人化フェンリル》】のスキルを発動させようとしたのだが、突如、蟒蛇の頭が横に吹っ飛ばされた。


 「ありがとうシュン」
 「俺の役目は仲間の盾だからな」


 シュンにお礼を言うと、「気にすんな」と返ってきた。シュンがちゃんと戦っている姿を見るのは、これが初めてかもしれない。初期のころは、みんな型と呼べるものがないので除外して、闘技場ではヒロキとじゃれてた感じだし、メタルジュエルワーム戦では真っ先に食べられたから、戦闘そのものを見ていなかった。今は、相手の注意をひきつけ、上手く盾で攻撃を阻み、仲間に攻撃が行くのを防いでいる。これがシュンの本領なんだろうと思った。
 私も見ているだけじゃだめだと思い、【《獣人化ファフニール》】を発動させた。【《獣人化フェンリル》】でもいいが、それだと素早さは高いが、攻撃力が低い。【《神風咆哮》】は威力は高いが、実は残ったすべてのMPを消費して放つため、放った後はこの姿は解除されて使えなくなってしまう。


 「【《火玉》】!」
 「【ファイアーボール】!」


 私は仲間を巻き込まないように、範囲の小さいスキルを使い、蟒蛇を攻撃した。私に合わせるように、リンさんも火魔法を使って攻撃した。
 シュンに気を取られていた蟒蛇は、その二つの攻撃を避けることが出来ずに直撃する。多少怯んだものの、大したダメージがなかったのか再び攻撃を始めた。
 今度は、レイが【ジャイロアロー】を放つが、一度攻撃を食らったことで、こちらを警戒していたのか、さっと身体を動かして軌道から外れようとした。だが、その動きを読んでいたかのように先回りしていたヒロキが、横から【煉獄斬り】で切りつける。斬りつけた場所に燃え移った炎がじわじわと蟒蛇にダメージを与えていく。


 「ジュラアアアア!」


 私たちの猛攻を受けた蟒蛇がたまらず距離を取る。私たちが追撃を仕掛けてこないのを見ると、自分の身体に残る炎に向かって口から水を飛ばして消火した。
 そして、蟒蛇が息を吸い込み先ほどと同じ水を飛ばした。


 「俺に任せろ!」
 

 シュンが、水を防ごうと盾を構えて前に出る。

 (ん、ちょっと待って。色がさっきと違うような気がする……まさか毒!?)

 
 「待ってシュン!避けて!」
 「何!?」


 咄嗟に声を掛けたが既に遅く、シュンはその液体を盾で防いでいた。最初は何も起きなかったが、徐々に盾が溶解を始め、シュンは慌てて盾を手放した。


 「あぶねえ、毒か!」


 毒が私たちに有効だと思ったのか、蟒蛇は連続で毒を吐き出してきた。


 「くそっ!このままじゃじり貧だ。奴が息継ぎのタイミングで一斉に攻撃して片を付けるぞ!まずはマチ、リン、レイの後衛組で攻撃して、その後俺とシュンでとどめを刺す!」
 「わかったわ」
 「おう」


 私もヒロキの言葉にうなづいて返した。

 十回くらい躱したところで、ようやく蟒蛇の攻撃が止み、再び息を吸い込んで攻撃しようとした。その瞬間を狙って、ヒロキの合図が響いた。


 「……よし、今だ!」

 「【シャイニングストリーム】!」
 「【マグマボム!】」


 【《増殖》】で増やしたレイのスキルとリンの高威力の火魔法が蟒蛇に飛んでいく。私も地面に手を付け、【《大噴火イラプション》】で蟒蛇のしたから攻撃した。一歩遅れて、ヒロキとシュンが蟒蛇を攻撃しようと走りだした瞬間、爆炎と光の矢が降り注ぐ中からやけどや切り傷でボロボロになった飛び出してきた。


 「なっ!」


 攻撃を行おうとしていたヒロキとシュンが唖然と口を開き、蟒蛇の突進を受け止めきれずに弾き飛ばされた。そのまま蟒蛇がこちらに狙いを定めて突進してきた。すぐに我を取り戻して避けようとしたが、蟒蛇の方が一歩早く、伸ばされた尻尾に足を絡め取られてその場に転んでしまった。そして、そのまま蟒蛇は湖の中へ飛び込み、尻尾につかまった私は一緒に湖の中へ引きずり込まれてしまった。


 「マチ!」


 最後にレイの叫び声が聞こえた気がするが、水中に引きずり込まれて呼吸が出来なくなった私は抜け出そうともがくが、尻尾の力は緩むことなく私の足をとらえていた。体の中の酸素がなくなってきた私は暴れる力もなくなり、だんだんと意識を失っていった。



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