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ポーションを売ろう②
  次の日、私はガルドさんがどこにいるのか聞こうと思ってミーシャの店を訪ねていた。
  「ミーシャー、今いるー?」
  店の中には誰もいなかったので、私は少し声を大きくして名前を呼んでみた。一分くらい待っていると、店の奥にあるドアがガチャリと開き、ミーシャが顔を出してきた。
  「あ、マチ!よく来たにゃ!また会えてうれしいのにゃ。それと、闘技場イベント優勝おめでとうだにゃ!優勝するなんてすごいにゃマチ!赤熊をソロで倒せるくらい強いのはわかっていたけど、まさかあそこまで強いとは思わなかったにゃ」
  お客さんかなと思い、ドアを開けてこちらを覗いたミーシャが私だとわかった瞬間、ぱぁっと顔を輝かせて興奮した様子で抱き着いてきた。
  「久しぶり!ミーシャ!私もまた会えて嬉しいよ!大会見てくれてたんだね、ありがとう!」
  「それに比べてガルドの奴は何もできずに負けてがっかりだにゃ」
  と、3位入賞だったのに、知り合いから本人のいないところで辛辣なコメントするミーシャを見て、私は「まあまあ」と苦笑いを浮かべた。
  「ところで、マチ。何か用があってここに来たんじゃないかにゃ?」
  「あ、そうだった。ちょっと、ミーシャに聞きたいことがあって突然訪問したの。悪いんだけど、今ガルドさんがどこにいるか知らない?」
  「あ~、ガルドなら今は第三の街にいくために仲間を集めてボスの攻略中のはずだにゃ」
  「え、そうなの!?そっか~、残念。今日は聞けそうにないかな」
  「ガルドの場所なんか聞いてなんか用事でもあったのかにゃ?」
  「あ、うん。私もガルドさんと同じように露店販売をやりたいな~って」
  「あれ?マチは戦闘職じゃないのかにゃ?あ、もしかして素材を露店販売したいとかかにゃ?それなら納得だにゃ」
  「ううん、売りたいのは素材じゃないの」
  「…なら、何を売るつもりなのかにゃ?」
  「ポーションだよ」
  「ポーション!?そんな貴重なものをどうやって大量にゲットしたのかにゃ!いや、そもそも誰に売ってもらったのかにゃ!ポーションがあればボスの攻略がより一層楽になるのにゃ!さ、さぁ、吐くのにゃ!」
  「ちょ、ちょっと落ち着いてミーシャ」
  ものすごい剣幕で詰め寄られて思わず後ずさりをした私は、未だ鼻息荒く説明を求めるミーシャをなんとか宥めた。
  「ふぅ、申し訳ないにゃ。つい、興奮しちゃって」
  「確かにポーションを街の人がポーションを売ってくれなくなっていたけど、それはもう解消したんじゃなかったっけ?」
  ヒロキに、街の人に対する態度についての噂を流してもらいアルバさんから大分解消されたと聞いたはずなんだけど。
  「マチの言う通り、ポーションを売ってくれないということはなくなったのにゃ。だけど、一日の個数制限があるのにゃ。制限ってのは、単数じゃなく複数にかかるものなのにゃ。だから、所謂攻略組のプレイヤー達が買い占めちゃってるせいで、後続に買いに来るプレイヤー達は一日の上限に達しているため、ポーション買うことができないのにゃ」
  (なるほど、すぐに確執が消えることはありえないだろう。だから、前みたいにポーションを売ることはできずに制限を設ける形になっているんだ)
  「今の現状だと、まったくポーションが足りていないのにゃ。だから、マチがポーションを売るというのを聞いて取り乱してしまったのにゃ」
  「それは仕方ないね」
  「それで話は戻るけど、マチはどうやってポーションを手に入れたのかにゃ?もしよかったら、教えてほしいのにゃ」
  「私が売ろうとしてるポーションは自分で作ったんだよ」
  「は!?自作!?ポーション作成のスキルってないよ!?」
  「み、ミーシャ。口調が直ってるよ」
  「おっと、失礼したにゃ」
  (ミーシャの素の口調はあれなのね…)
  「ポーション作成のスキルってあったのかにゃ?」
  「ううん、これは手作業で作ったんだよ」
  「よく、自分で作れたにゃ」
  「それは、色々あってね」
  誰に教えてもらったのかは言うべきではないだろうと思い、言葉を濁しながら説明した。ポーションの教えを請いに大勢で詰め寄られたら、アルバさんにとって大迷惑になるだろう。
  「それで、最初の話に戻るけど、ポーション売りたいんだけどどうやって売ればいいか教えてくれない?」
  「勿論、喜んで教えるにゃ!」
◇
「これでよしっと…」
  ミーシャから教えてもらったところ、商人ギルドというところで簡易露店販売キットを無料で貸してくれるというそうだ。ただし、売れたときには売り上げの5%が勝手に引かれて商人ギルドに贈られるそうだ。簡易じゃないほうは、商人ギルドに貢献したらもらえるようになるそうだ。そして、売り上げの方は簡易版と比べると2%で済むようになっている。
  私は、商人ギルドで貰ってきた簡易露店販売キットをフェンハイルの露店販売のところに敷いた。
  「ポーションの値段はこれくらいかな?」
  ミーシャから、店売りの値段は一本100Gだというのでそれに準ずる値段とした。店売りより高くしても需要は高いので売れるとは思うが、値段を上げて売るのは私は好きじゃない。そして、ミーシャに「マチは優勝して有名人になったから顔を隠したほうがいいにゃ」と言われて貰った、フード付きのマントを深くかぶり、商品を並べた。
  「さあ、商売開始!」
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