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[双牙]ファング
自らの巨体を持ち上げたギガントタートルは、私の様子をうかがうようにじっとしている。私が向かってこないとみると、歩き出してこちらへ向かってくる。ズシン、ズシンとゆっくりとだが地面に足跡を残しながら近づいてくる。
「てやぁ!」
試しにギガントタートルに向かって【かまいたち】を放ってみたが、首を中に引っ込めてしまい甲羅によってはじかれてしまった。その後、何事もなかったかのように再び歩きだして距離が大分近づいたところでギガントタートルが突然スピードを上げて走り出した。だが、その巨大な体では大してスピードが出ていなかった。
「せい!」
迫りくる巨体を左に余裕をもってかわし、【居合切り】をすれ違いざまに巨体を支えている左前足を狙って抜き放った。刃は骨までしか届かず貫通しなかったが、前足を負傷して自重を支えきれなくなったギガントタートルはそのまま倒れこんだ。
「グルルルルルルル」
「これでとどめ!」
倒れこんだギガントタートルは首だけをこちらに向け唸り声をあげて威嚇していたが体は動かず何もできない。私はそのまま歩いていき、頭に向かって刀を振り下ろした。HPがなくなったギガントタートルは動かなくなり、そのまま淡い光となり霧散していった。ギルドへと戻り入手した素材の一部を討伐した証拠として見せた。クエストの報酬を受け取り宿屋へと戻った私はスキルUP玉の効果を確認していた。
・スキルUP玉:レベルがあるスキルならば1つだけ1レベルあげることができる。使うとなくなる。
「どんなスキルでも使えるんだ……よし、これに使おう」
手に持ったスキルUP玉をまじまじと見ながら独り言をもらした。そして、【《神獣降臨》】のスキルにスキルUP玉を使った。すると先ほどまで【《神獣降臨》】lv3だったのがlv4となり、新たな能力が発現した。
・獣人化:獣化に変身した時より能力が半分になる代わりにペナルティなしで変身することができる。
備考:【《神獣降臨》】のレベルを4つにあげたことで解放された能力。少しずつスキルを使いこなしていっている証拠。
◇
「これが私のとっておきよ!」
「な、どこへ———ぐぁっ!」
呆然とし、隙だらけのファングさんに対して、私は風を纏いその場から高速で移動してファングさんの背後を取り、風を纏い変身して鋭く伸びた爪がある手を貫手のようにして肩へと突き刺した。風を纏い力の乗った貫手は分厚い鎧を貫通した。この風を纏う能力は初めて獣人化のスキルをゲットしときに一緒に発現した能力だ。初めて獣人化の能力をしようしたときに己の身に風の力があることに気が付いた。lvが4となったことで能力を使いこなせるようになってきたことが原因だとおもう。
「くそ!離れろ!」
ファングさんが後ろへ向けて槍を振り払う
「【《テンペスト》】!」
貫手を戻し素早く飛び去るとさっきまでいた場所に向かって槍が振り払われた。飛び去るのと同時に私は大きく息を吸い込み、ふっと空気の玉を吹き出した。荒れ狂う空気の玉がファングさんに触れると、一気に弾け暴風の塊となってファングさんを弾き飛ばした。
『こ、これはすごい!変身したマチさんがファングさんを圧倒しております!』
『すごいわね…あの変身はユニークスキルなのかしら。』
『全て把握しているわけではありませんが、あんなユニークスキルは私も見たことがありませんね』
『だったらあれはなんなのかしら……』
「くらえ!【《グングニル》】!」
ファングさんの声が聞こえたかと思ったら、赤い光に包まれた槍が暴風を突き抜けてきた。私は身体を捻って槍を躱した。
「逃げても無駄だ!【《グングニル》】は一度狙った獲物は逃さない!」
もう一度距離を詰めようとしたが、かわしたはずの槍が一度急上昇し再び私に狙いを定め突進してきた。
「はははは!いつまでスタミナが持つかな!」
「くぅ、しつこい!」
何度も迫りくる槍を躱し続けながら、槍が私とファングさんが一直線になるように調整する。
「ここだ!」
槍と私とファングさんが一直線に並んだ瞬間を狙って、槍が刺さる直前で両腕でがっちりと掴んで抑え込んだ。
「やったか!……なんだ?」
対象に刺さるまで突進し続ける槍が未だに止まっていないことに首を傾げ、槍に引きずられながら迫ってくる私をみてハッっとした顔になる。
「まさか!」
「もう遅いよ!」
「があああああ!」
私がやろうとしていることに気づいたファングさんだが、既に私はがっちりと掴んでいた槍をファングさんに向かって思いっきり投擲した。ファングさんは反応が遅れ、対処することができずに自分が投げて帰ってきた槍に腹を貫かれた。
「危なかった…」
ふぅっと息を吐きスキルが解除されたのかファングさんの腹に刺さったまま動く気配がない槍を眺めた。
「げほっげほっ……まさか決勝戦で使う前にここで使うことになるとはね」
既に立つことさえやっとなはずなのだがその瞳は闘志を失っていなかった。
「まだ戦う気?」
「あぁ、こんなところで負けるわけにはいかないからね」
ファングさんは内臓を痛めて吐血し痛みに顔を歪めながらも腹に刺さった槍を引き抜いて立ち上がった。そして、もう片方ある槍を構えてスキル名を呟いた。
「千の鏃となって相手を刺し殺せ……いけ!【《ゲイ・ボルグ》】!」
ファングさんがスキル名を呟くと手に持っていた槍が空中浮かび上がり、大量の鏃となって広がった。そして、ファングさんの号令とともに一斉に発射された。
「私も負けるわけにはいかない!」
迫りくる千もの鏃に対して、私は両手を地面につけて身を屈める。そして、私が今使える中で一番強力な技を発動させた。
「【《神風咆哮》】!」
闘技場をも振動させるほどのすさまじい咆哮と切りつける突風、さらに爆音が響き渡る。迫りくる千の鏃をすべて吹き飛ばし、その先にいるファングさんをも巻き込んだ。
爆風が収まると、扇状に広がったクレーターの中心には白目を向き体のあちこちを切りつけられたようなボロボロの姿で倒れているファングさんがいた。
『……はっすみません!私、すさまじい光景に一瞬実況を忘れてしまいました!初戦から激しい激戦でしたが、この第一試合を制したのはマチ選手だああああ!第二試合は30分後に行われるのでみなさんは休憩などをしてお過ごしください!』
数秒間その場は静寂に包まれたが、我に返った運営の声によってふたたび会場は熱狂に包まれた。
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