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第八十四章 海園都市オクトリア

広い広い大海原をボロボロの小型船で進むアズ
何か見つけたのでしょうか?
気持ちいい潮風にあたりながら海面をのぞいているようです

         ◇

「オロロロロロロロ!」

船旅に出て何度めかのリバースをした俺は船の上で大の字に横になる 
空はどこまでも青く、上空では鳥が楽しそうに飛んでいる

「うっぷ・・・」

胃の中から感じる酸っぱい感覚で俺は魂が抜けたように空を見つめ呟く

「いつになったらつくんだ・・・」

オクトリア目指して一体何日がたっただろうか
当初危惧していた食料や水分の問題はなんとかなった
しかし俺は長い船旅で食欲がなくなり完全にダウンしていた
視界の端には潮風でカピカピになったぬいぐるみのアル

「いつの間にか海獣のアミュレットも落としてるし・・・」

暗い気持ちで船の上を転がり回る
う・・・転がったせいでまた気持ち悪くなってきた・・・
再び船の端に移動して海面をのぞく

そんな俺を気遣ってくれているのか
アルがキーキー言いながら俺のローブの裾を引っ張る

「アル・・・気持ちはありがたいが・・・いたい!?アル!?やめ!?」

裾を引っ張るのをやめて引っ掻き出したアルに違和感を感じて周りを見渡す
よくよく目を凝らして遠方を見ると何かの建造物が見えてくる

「・・・陸だ!」

急ぎマップを開くとオクトリアという文字が浮かんでいる

「ついに・・・ついに着いたー!」

歓喜の雄叫びをあげながら再びリバースするのであった

           ◇

海園都市オクトリア
その歴史は深く、まだ人類が生まれ前、神々の時代から存在していたとされている
海辺には白亜の城が建てられ、この世界では少数の教育機関が存在する

                                                      グラフ幻想譚


商業地区を歩きながらオクトリアの基本情報を確認する

「教育機関・・・学校があるのか!」

白亜の城の隣に建てられている巨大な建造物に視線をやる

「今まで王様に会いにきたりで実はあんまり探索してないんだよなぁ・・・」

興味はあるが・・・今回は神様召喚の儀式道具探しに来たのだ
思いの外船旅に時間がかかったし寄り道している暇はない
マップを開き目的の場所を見つける

「神様といえばここだろう」

白い石材で出来た建物、一番高い位置には十字架が飾られている
そう、教会だ

教会に入るとちょうど何もせずに歩き回っているシスターを見つける
地味なシスター服に丸眼鏡、茶色のおさげが特徴の少女
パッと見あまり話が好きではなさそうなイメージだ
長話するつもりもないし、聞くこと聞いたらさっさと退散しよう
そう思いながら少女に近寄る

「あのー」

少女はビクリと体を震わせて俺から距離を取る

「な・・・なんでしょうか?」

これはもしかしたら人選ミスだったかもしれない
少女の反応に若干傷つきながらも話を切り出す

「実は神様について聞きたいん「入信希望の方でしたか!」

少女が一瞬で距離を縮めて俺の手を握っている

「あ・・・いや・・・神様ってどうやってウマレルノカナーッテ」
「偉大なる神々の生誕について興味がおありなのですね!」

少女は満面の笑みでウンウン頭を振るうと大声で語り出す
あまりの大声に近くにいた神官達が集まってくる程だ
これは・・・人選ミスだったな・・・

教会の椅子に半ば無理矢理座らせられた俺は
抜け殻のように数時間少女の演説を聞く羽目になった

「であるからして!我々オクトリアは海神アトラハルトにより永遠の繁栄をもたらされたのです!」

少女が両手を広げて教会の奥に設置されている彫像に跪くと祈りを捧げだす
周りでは神官達が涙を流しながら拍手している
そんな様子をゲンナリと見つめる俺に再び少女が歩み寄って来る
まだ興奮の余熱が残っているのか頬を赤く染め若干息が荒い少女が俺の肩を掴む

「では!入信されますね!」
「いやいやちょっと待って!?そんな流れだったか!?」

少女は不思議そうに小首を傾げる
これはマズイ

「そそそそういえば神様って召喚できるんですよね?」

このままでは勢いに押されて入信させられそうなので当初の目的を話して話題を逸らす
しかし俺の言葉を聞いた少女の目がすわり怪しく光る
あ・・・あれ・・・?

「・・・その通りです、ですが一体何故そのような事を聞かれるのですか?」

今までと全く違う雰囲気の少女の様子に頭の中で警報が鳴り響く
よく見ると周りの神官達も各々杖や短剣を取り出している

「ええええっと!そんな偉大な神様なら是非会ってみたいと思いましてええええ!」

俺の発言に少女は俯いてプルプル震えだす
流石に苦しすぎるか!?
いつでも逃げれるように退路を確認しながら少女の顔をのぞく

「そこまで熱心な信徒は初めてです!ええ!ええ!」

俺の視界が少女の顔で埋まる
近い近い近い!

「これは秘密情報なのですが!この街の学園には偉大なる神の書物が保管されているのです!残念ながら学園には立ち入ることは出来ませんが貴方ならいずれお目にかかる事が出来る事でしょう!さぁ!この入信書類にサインを・・・あれ!?迷える子羊は何処に!?」

少女が書類を取るためにクルリと背を向けた瞬間に隠密術を発動
こっそりと教会から抜け出した俺は汗をぬぐって学園への道を歩き出す

「危ない危ない・・・どこの世界でも宗教団体には関わらないほうが良いのかもなぁ」

そんな感想を抱きながらしばらく歩くと学園の門にたどり着く
門では見張りが二人こちらを警戒して睨んでいる
すごい睨まれようだ・・・何かおかしいかな?
近くにあったお店の窓ガラスに映るボロボロのローブ姿を見て納得する

「流石に怪しいな」

俺は口笛を吹きながら近くのお店に逃げるように入り込む

「さてどうやって入るかな・・・やっぱり潜入が一番手っ取り早いかな?」

店の窓ガラスから外を確認て作戦を練る

「となるとやはり夜に「いらっしゃいませー!!!」

突如後ろから話しかけられて棚にダイブする

「何事!?」
「いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!その商品をお求めですか?」

俺の手元には棚にダイブした拍子に手にした服が一着
商品を急いで元あった場所に戻すが店員は満面の笑みで俺の戻した服を手に取る

「学園への転入生の子ですね!」
「へ?」

店員は俺の背丈を確認すると店の奥に引っ込み同じ見た目の服を持ってくる

「ではこちらをどうぞ!」

店員に押されるように試着室に押し込められる

「どうしてこうな・・・いや・・・制服なら堂々と潜入出来るんじゃないか?」

俺は渡された服を試着する
ふとももまであるセーラー服のような装飾がされた上着と短パン
これが制服だというのか・・・?
俺は頬が熱くなるのを感じながらワンピースの裾を掴んで試着室を出る

「おい店員!男物の制服は無いのか!?」

そんな俺の抗議の声に店員は相変わらずの満面の笑みを浮かべる

「学園は男女共にその制服ですよ?なんでも学園長と国王の趣味だとか」

だめだこの国・・・はやくなんとかしないと・・・

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