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第七十章 王都攻略作戦!


いつも賑やかな木漏れ日荘のフロア
今日は有力クラマスや冒険者、果てはNPCまでが集まり、いつもとは違う賑わいを見せていたが
今回召集をかけた人物がホールに現れると静寂が訪れる
青髪の小童、アズが重々しく口を開き会議が始まる

            ◇


「皆さんなにあつまってもらったのは他でもない今回のイベントの事です」
「ああ知ってるぜ?なんでも姫防衛と姫救出とかいう矛盾したクエストが同時に発生したらしいな」
「姫様ってーとピンク髪のラヴィ・・・ラヴィ・・・なんだっけ?」
「ラヴィーネよ!」

当の本人であるピンク髪の姫様が机をバンバン叩いている

「そうそうラヴィーネ姫ラヴィーネひ・・・?」

その場の全員が驚愕の眼差しを向ける中、ラヴィーネはぷんぷん頬を膨らませている
ホールがざわつく中ランズロットさんが眼鏡をつけたり外したりしながら視線を俺に向ける

「そ・・・それで?姫様がここにおられるなら私達は何をすれば?」
「今回のイベントの指し示す姫は・・・俺の姉になります」

ホールのざわつきが更に高まる

『サトミさんだって!?』
『なんでまた!?』

戸惑う冒険者達をよそに小さな手をあげる人物が一人

「アズちゃん!私にも何か出来ない?」

サトミ姉の救出と知り
いきりたつアクアの頭をポンポンと撫でながら見知った面々に顔を向ける

北のクラン小鳥の会リーダー、会長
東のクラン円卓の騎士団リーダー、ランズロット
南のクラン漁業組合リーダー、海王
そして・・・西のクラン†断罪者†リーダーフィン

「フィンさんが会議に参加するなんて珍しい・・・」

俺の視線に気づいた他の冒険者がフィンさんの存在に気づき更にざわめく
当然だろう、フィンさんは滅多に会議に参加しない最強のプレイヤーの一角だ
耳を澄ませば冒険者の・・・

『宣告のフィンだとぉ!?』
『お・・・おい!?誰だ!?今回の会議の情報を流したやつ!?』
『追い返せ!いや・・・帰ってもらおう!?』

あれ?なんか俺の思った反応と違うな?
隣のグレイもカタカタ震えている

「な・・・なぁグレイ?なんでフィンさんこんな恐れられてるの?」
「ああ・・・アズは知らなかったな・・・」

グレイ曰く
炎の精霊使い戦、拮抗していた冒険者軍団
そこに颯爽と現れたフィンさんが戦闘中に放った一言

「皆に告ぐ、死兵となり活路を開け」

その言葉に冒険者軍団は文字通り死兵となり恐ろしい程のパワーを発揮する事になった・・・

その言葉が届いた敵も含めて

前線の火花は加速、誰一人生きて帰る事が出来なかったとの事だ

「予想以上に恐ろしい力だな・・・」

まさか対象が声の聞こえる範囲全部とは・・・
だがそんな力こそ今は必要なのだ

できるだけ皆の正面に位置取り頭を下げる

「皆さん・・・どうか力を貸してください!」

ざわつきがおさまり静寂が訪れる
駄目だったか?今回のイベントも自由参加だ・・・強制はできない
俺がおずおずと顔をあげると海王が頭をわしわし撫でてくる

「・・・水臭い」
「今更何を言っとる!」
「私たちの絆は・・・53万です」
「然り」

有力クランの代表が頷く
続いて木漏れ日荘の面々の様子を伺う
グレイはまず無理だろう、今も俺と視線を合わせないように机を見ている
アレクに関しては危険な目に合わせたくない
最強生物になりつつあるルピーなら・・・!
金髪犬耳っこに視線を送り・・・
そこで当のルピーがいない事に気づく

「あれ?ルピーは?」
「うぴーちゃんなら豪華ディナー付きの良いクエストを見つけたって最近帰ってきてないよ?」
「あー・・・」

あのハングリー娘なら絶対食いつきそうな報酬である
となると木漏れ日荘からの助っ人は無しだな
そう思い次にNPCに目をやろうとした所でグレイと目が合う

「俺様の出番ってわけだ」

グレイの発言に目を丸くする

「え?いいのか?」
「へん!サトミさんには何度か色々助けられたからな!」

何故か尻をさすりながらカッコつけるグレイ
近くで「それでこそ我が愛しの!」だの「はぁ!はぁ!」だの聞こえて来るのは幻聴だろう

「それに今回はラヴィーネ姫もいるんだろう?」

グレイがニヤケ顔でピンク髪の姫様ラヴィーネに視線を送る

「姫様の鶴の一声で城の内部から分裂させれば余裕余裕!」

グレイの言葉に冒険者達は「確かに・・・」と期待の眼差しをラヴィーネに向ける

「それに関しては期待しないで頂戴」

ラヴィーネの言葉に、期待していた全員の目が点になる

「協力しないわけではないわ!ただ、兵士達は私をターゲットにできないでしょうけど」

ラヴィーネは顔を俯かせるとポツリと呟く

「命令も聞かないわ」

その台詞に他の面々か様々な憶測を立てている
「孤独の姫様か・・・」とか「きっと城ではひどい生活を・・・」とか
だが、今村というリアル人物がモデルとなっていると知っている俺は
単純にNPCをいじる作業に従事してなかっただけだろうと予測を立てる

今の所いつものメンバーぐらいしか集まっていないが
それでもレイドボスクラスには人が集まったのは日頃の人徳だろう

「次に相手の兵力を減らす策ですが・・・」
「そこは他の国に協力を申請してみてはどうじゃ?」

フードで目元まで隠した女冒険者の提案に頷く

「オクトリア王とは面識があります、悪いようにはされないでしょう」
「迷宮都市には私の知り合いがおるから其奴を頼るぞい」

迷宮都市からも援軍が来るのか!
二国家からの支援とは心強い
ホクホク顔で次の議題に入ろうとしたところで更にフーキが発言する

「黄国は今天下一舞踏会中なんよ、優勝者はなんでも望みが叶えられるらしい、わいがいっちょ優勝して支援要請してくるよ」

こいつはただ戦いたいだけじゃないか?
格闘バカにジト目を送りながら心の中で感謝しておく

「後は和の国の交渉と必要物資の補給かなぁ」
「物資の支援は我らレイノール商店に任せてくれ」

レイノールが前に出て頭を下げる

「つい最近私どもの中に裏切り者がおり・・・アズ様にご迷惑をおかけしました故」

それはありがたい!
レイノール商店は、夏から秋にかけてもはや敵無しの商業クランだ!
これで装備による武力の底上げも期待できる!

「では皆さん・・・レイノール商店をどうぞごひいきに・・・」

レイノールが商業スマイルで後ろに下がっていく
こんな大戦に無償でアイテムの提供をしてくれるとは・・・良い人だ・・・
感動している所を、隣のフード冒険者の咳払いで我に返る

「えっと!?次は城での戦闘ですが!」

城へどう攻めるかが議論されていき
それぞれ役割を命じられていく
最後の一人に役割を命じて一息つく

「これが作戦の概要です、何かある方はいますか?」

俺の言葉に何故か一歩線を引いている冒険者達

『流石鬼策士・・・』
『えぐいわぁ・・・』

周りの反応に首を傾げる
なにか変な事言ったかな?

「なければこれで解「待ってくれ!今の作戦だと!」
「私とアレクちゃんが入ってないよ!」
「・・・すまないアクア、ちゃん付けはやめてくれ」

アレクとアクアが作戦に抗議してきた
二人の気持ちはわかるし今は猫の手も借りたい
だが今回は危険な戦いになる
死んだら終わりのNPC・・・しかも子供を連れて行きたくないのが本音だ
この二人はどうにか安全地帯にいて欲しいのだが・・・どう説得したものか・・・

「ちょっといいかのう?」

フード冒険者が耳打ちをしてくる

「な!?でもそれは!」
「このままここに居て人質にされたりするより安全じゃぞい?」

確かにその通りだ・・・ぐうの音もでないとはこのことだ

「なぁに、悪いようにはせんわい」

フード冒険者が飴玉が入ったケースを取り出すと更に作戦を付け加えていき
会議は深夜まで続くのだった西に向かった兵士達がこちらに向かってきている

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