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第六十章 グラフ大森林再び

皆さんこんにちはアズです
今日は黄国目指して戦闘訓練を行いながらグラフ大森林を攻略していきます
現在 ちょうどメンバーが全員揃い点呼を取っているところです

「よーし皆んな準備良いかー?」

「おー!」
「大丈夫だ、問題ない」
「はーい」
「いいよ」

各々返事をする四人を見て・・・

「いや、良いんだけどさ、なんで姉さんも増えてるんだ?」

          ◇

グラフ大森林、まずはここでAKIHOのレベルが5くらいになるまで戦闘訓練の予定だ
ちなみにスケジュールと戦闘指南は武闘大会チャンピオンのフーキに一任してあるのだが・・・

「大丈夫なのかフーキ?俺がここにきた時はレベル7でも苦戦したぞ?」

当初俺はグラフ草原での戦闘訓練を提案したのだがフーキに却下されたのだ

「あの二人なら問題無いと思うで?見てみ?」

そこには緑の毛皮に大量の苔が付いており、目を黄色く光らせる狼型のモンスターフォレストウルフ
の群れと戦闘している三人
フォレストウルフを笑いながら真っ二つにしていくAKIHO
飛びかかってきたフォレストウルフを無言で回避して確実に仕留めていくアレク
噛まれながらも至高の表情でモフモフを堪能している姉

「・・・俺疲れてるのかな?」
「いやいや、スキルの兼ね合いもあるけど元の身体能力がおかしいんよ」
「いや?一人違う意味でおかしくない?」

姉を噛んでいたフォレストウルフは当初ギャンギャン鳴いていたが
まったく減る様子の無い姉のHPを見て今は諦めたような目をしている
俺は助けを求めるような視線を送ってくるフォレストウルフから視線を逸らす

しかしHPが減らない所を見ているとグレイを思い出す

「確かあの時はグレイに囮をたのんだっけ」

彼はクラーケン戦での戦いで得た金で引きこもり生活を満喫するかと思いきや

「俺はこの金を倍!いや!それ以上にしてくるぜ!」と言い残し街のカジノに行っている

「引きこもり生活もきっとすぐ破綻するだろうな」
「何のことや?」
「いや、こっちの話」

グレイの事を考え苦笑しながら大きな木の表面を撫でる
そういえばあの時はフォレストウッドもポップしたっけ
懐かしむように大きな木を見上げ・・・
目の前の木がザワザワ動き出して木の葉の隙間からフォレストビーが大量に出現するのを確認する

「そうそう!こんな感じの・・・フォレストウッド出たぞー!」
「よっしゃ!幸先良い!」

そう、これは決して事故では無い
今回グラフ樹海のエリアボスを倒すにあたって行動パターンがかなり似ているフォレストウッドを倒すのは目的の一つだったのだ
たまたま思い出にふけっていた所を奇襲されたわけではない

「まずはフォレストビーだが・・・」

素人二人組の方に飛んでいったフォレストビーに視線をやる
AKIHOがフォレストビーの羽をピンポイントで切り裂き地上に叩き落していき、アレクがとどめを刺して回っている姿が見える

「あれ?これ俺達いらなくないか?」
「このレベルのモンスターならいらんやろうね」

フーキが言っていたグラフ草原じゃ戦闘訓練にもならん!と言うのに納得する
というかここでも戦闘訓練にならないレベルじゃないか?
最後のフォレストビーが何も出来ないまま粒子になって消えていく

「自然って残酷だな・・・」

同情の目で手を合わせる俺を背にフォレストビーを倒しきったAKIHOがフォレストウッドに斬りかかる
どうせ他のモンスターのように簡単に切り裂かれ・・・てないな
フォレストウッドは少し切り傷がついた程度だ

「フーキ!そろそろ俺達の出番みたいだ!」
「いやいやちょい待ちアズ」

杖を抜いて臨戦態勢に入る俺をフーキが止める
あのAKIHOが切り裂けないんだぞ?不思議に思い戦闘を確認する

AKIHOが竹刀、もといブンブン刀を不思議そうに見つめると持ち方を変える
今まで片手で竹刀を持ち、ユラユラ体を揺らして陽炎を纏いながら戦っていたAKIHOが両手でブンブン刀を持っている・・・剣道の構えだ
森の静寂をやぶるように唐突にAKIHOが咆哮をあげる

「キエエエエエエエエエエ!」

これが人の咆哮か!?
遠巻きに見ていた俺が足をすくめていると
AKIHOが上段のままフォレストウッドを切り裂く・・・いや!叩いた!?
すると、ボン!という音と共にフォレストウッドが内部から破裂する

「わーお」
「な?ゆうたやろ?」

あんな事も出来るのか、いや?あれが本来の構えなのか?
よくよく考えるとブンブン刀という打撃属性武器で敵を切り裂いていたほうがおかしい気が・・・
俺が思考の迷宮に迷い込んでいるとアレクが嬉しそうにAKIHOに先程の技の事を聞いている

「AKIHO!今のはどうやったのですか?」
「今のはね?・・・こうよ」

AKIHOが竹刀を握り手振りで教えている
アレクはそれを見よう見まねで真似しようとしているがあれじゃあ覚えられ・・・

ボン!

まだ息が残っていたフォレストウッドが弾け飛ぶ
うっとりとした表情のAKIHOが
「やっぱり・・・君も欲しいわ・・・」と言っているのが聞こえてくる
あんな適当な教え方で出来るなんて意外と簡単なのか?
もしかして俺にも出来るかもしれない
ちなみに姉もフォレストウッドを叩いているが全く出来ていない

俺は見よう見まねで杖を構えると足に力をいれ
体を回転させるように思いっきりフォレストウッドを叩く

スコーン

・・・
無言でHPゲージを確認するがフォレストウッドのHPゲージは微動だにしていない
口をムニムニさせながら無言のままフーキを見る
フーキがやれやれといったように手を振りながらフォレストウッドの亡骸をガントレットで殴る

ドカーン!

爆発と共にフォレストウッドの亡骸は粒子になり
その場には小さなクレーターが出来ている

・・・
無言で口をムニムニさせていると姉が俺の肩をチョンチョンと叩く

「ひろは私と一緒だね!」
「チクショー!!!!!」

その日一番な叫び声がグラフ大森林にこだまするのであった

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