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第五十九章 Their probability

本日の俺は病院受診の為学校を早退している
先に言うと病にかかったわけではない
学校が提示した本人証明の条件を得るためだ

学校が提示した条件は三つ
一つは病院での本人確認
二つは役所での当面の戸籍登録
三つ目は次の期末試験での学力

その内の一つの達成の為に病院に来ているのだ

         ◇

診察室の前に三人の人影

「なんで姉さんがいるの?」
「保護者?代行だよー」

まぁ俺一人じゃ門前払いを受けるだろうし仕方ないか
両親が遠くで仕事をしている以上今俺の保護者は姉か馬鹿兄しかいない
そして馬鹿兄と来る等死んでもごめんだったから助かったといえば助かった
空耳で「我が血縁が遂に真の姿を!」と聞こえてきそうだ

恐らく学校のほうから姉に連絡がいったのだろう
姉はニコニコしながら首を傾げてこちらを覗き込んでいる

それは仕方ないとして・・・
俺の顔をじっと見つめ続けるもう一人の女性に視線をやる

「なんで香月さんもいるの?」
「青葉が診察を受けるって聞いて?」

香月さんの謎の視線に耐えれなくなった俺は目をそらす
学校から帰宅、病院で視線を感じ隠れていたら香月さんがいたのだが
今はまだバリバリ授業中のはずだ

「香月さんは風邪でもひいたのか?」

そうでも無い限りこんな所でこんな時間にバッタリ会うなんて事はないだろう

「ええ・・・ちょっとね?」

よく見ると頬が少し赤い
普段からこんな顔だった気がしないでもないが熱でもあるんじゃないか?

「じゃあ診察受けておいでよ」
「青葉が心配だから」

自分も風邪をひいているのになんて良い人なんだろう!
俺が心の中で感激しているとアナウンスが入る

『青葉さーん青葉大和さーん』

遠くで看護婦が呼んでいるのが見えたのでそちらに歩み寄る
俺は心の友に振り返り

「じゃあ行ってくるね?」

別れを告げ診察室に入る
診察室では医師が変な顔をして一人座っており、俺の両脇には保護者・・・

「なんで香月さんも入ってきてるの!?」

香月さんは何言ってるんだこいつ?といったような顔でこちらを見ている
俺達の様子を見ていた医師が香月さんを追い出すよう看護婦に手差しする

連れていかれる瞬間捨てられた子犬のような目をしていた気がするが・・・
まぁいいや・・・彼女は彼女の病気を治すのに専念すべきだ
俺がウンウン頷いていると目の前の医師が眼鏡をかけ直し真剣な表情を浮かべる

「それで青葉さん」
「あ・・・はい」

医師の診察は心音の確認などの簡単なものから入り
大きな機械を使った診察までやる事になった
終わる頃には数刻が過ぎ、外は真っ暗
今は検査の結果を聞く為診察室の前に座っている

「疲れたー!」
「ほんとだねーまるで健康診断みたいだったねー」
「いや、姉さんは途中で寝てなかったか?」

姉さんが目を逸らしながら口笛を吹く
こいつ・・・!

ここが公共の場でなければ腹にブローを決めている所である
それにしても・・・香月さん・・・大丈夫だったかな
姉さんをジト目で見ながら香月さんの事を考えていると
カシュッという音と共にジュースが差し出される

「お疲れ」
「ありがとう!ちょうど喉がかわい・・・なんで香月さんがいるの?」

そこにはジュースを片手に小首を傾げる香月さんがいた

「待ってた」
「あ・・・はい・・・」

きっと香月さんも診察に時間がかかり、終わったうえで待ってくれていたのだろう
こんな夜遅くまでかかる診察なんて実は彼女重病なんじゃないだろうか?
心の中で今度は心配をしていると再びアナウンスが流れる

『青葉さーん青葉大和さーん』

診察の結果が出たのだろう
俺達は再び診察室に入り・・・医師の無言の手差しで一人追い出された
なんであの人は毎回入ってくるんだ?

部屋の中では医師がレントゲンや書類と睨めっこしている

「結論から言いましょう」

ずれた眼鏡を掛け直しながら医師が真剣な表情で話しを切り出す
俺は間違いなく本人だ・・・それは一番自分がわかっている
だが医師の空気にのまれて自然と喉が鳴る

「私の診察では・・・あなたは99.9%の確立で青葉大和だという結果が出ました」

それもう本人じゃないのか?

「しかし0.01%の確率で青葉大和では無いという結果を出します」
「え?どういう事?」
「難しい話は端折りますがここで貴方を100%本人と書類に書くのは危険だと判断しました」

よくわからないといった顔をしていると医師が優しい笑顔を向けてくる

「大丈夫です、私達は貴方が本人であるというのは認めています」

とりあえず本人確認はとれた・・・のか?
尚も難しい顔をしている俺に医師が「それに・・・」と前置きを置いて話しを続ける

「青葉さんは気づいてないかもしれないけど・・・私はBGO内で君と出会った事があるんですよ」

医師の衝撃の発言その2に驚愕する
BGOの人達を頭に浮かべては、その変態性から頭の中で否定していく
一番近い人はクラウスさんくらいだがあの人はNPCだ・・・
誰だ!?こんな優しそうなエリート俺の周りにはいないはずだぞ!?
困惑する俺をよそに医師は話を続けていく

「BGOではキャラ名を変えられないし重複する事はない・・・だが私は大きい時の君に会った事がある」
「俺の昔からの知り合い・・・?貴方は誰なんですか・・・?」

医師は子供めいた笑みを浮かべる

「それは秘密です」

狐につままれたような顔をして診察室を出ると姉が抱きついてくる

「ねーひろー!終わったし帰ろうよー」
「・・・そうだね今日はご馳走を用意するよ」

やったー!と喜ぶ姉の呑気さに毒気を抜かれ・・・

「まあ誰でも良いか」

リアルの詮索は基本タブーである
手を握ってくる姉と香月さんを両手に俺は帰宅・・・

「だからなんで香月さんがいるんだよ!!!」

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