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第五十八章 ショッピング!

スースーと心地よい寝息を立てているアレク
膝の上で寝ている彼女の頭を撫でながら
俺は先程の決闘を思い出して真っ青になっていた

「危なかった・・・」

陽炎によって完全に不意をついたAKIHOの攻撃がクリティカル
アレクは致死量のダメージを受けてしまったのだ
今はギャラリーと化していた姉の回復魔法によってHPが最大まで回復している

「私にかかればちょちょいのちょいだよ!」

一日数回が限度の回復魔法に息を切らして胸を張る姉
褒めてやりたいが今はそれどころではない
無視してアレクに話しかけていると
姉は少しいじけた顔をするがすぐに笑顔に戻りギャラリーの歓声に手を振っている

「アレク!大丈夫か!?」
「うう・・・ん?」

アレクは意識を取り戻すと周囲を見回して自分の置かれている状況を把握
顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がった
かと思うとすぐに顔を白くしてへたり込んでしまった

「アズ、僕を連れて行ってくれるかい?」
「当たり前だろ?なんで連れていかない話になってるんだよ」

アレクの顔色が少し戻ったが油断はできない

「痛みはないか?気分は悪くないか?もう少し横になってなさい!」

ギャラリーから笑い声が聞こえてきてアレクの顔が再び真っ赤になる
もしかして熱でもあるんじゃないか?

俺がアレクを無理矢理膝枕していると
おろおろしていたAKIHOが俺の後ろからアレクを覗き込む

「ほんとに・・・ごめんね・・・」
「いや、僕のほうこそ悪かった」

何か思うところがあるのか二人共黙り込んでしまった
何これ?二人の沈黙に耐えれずにいると
フーキが回復ポーションを大量に両手にかかえて歩み寄って来る

「無事やったか!良かった・・・どうしたん?」

二人の様子を見てフーキが納得した顔をすると
わざとらしく大きな声で二人に話しかける

「どっちも素人とは思えん動きやったね」

二人は黙ったままうつむいている
それを見たフーキは満足したようにうなずきながら・・・

「というわけで!アズには二人の装備を見てきてほしいんよ」
「はぁ!?」

こいつ丸投げしやがった!

         ◇

露店街の一角からこんにちは、アズです
先程の勝負の熱気はどこにいったのか
今は静かな二人の引率を任されています


「まずは服だな・・・」

アレクは誘拐された時のボロボロな服
AKIHOに至っては初期装備のボロい服(上下)を着用している
二人は全く気にしていないが俺は気にする

今日はなんでも揃うと有名なレイノール商店に来ている

「二人はどんな装備が良いかな?」
「僕はアズが選んでくれたものならなんでも」
「私も防具はどうでも良いかな?」

駄目だこいつらはやくなんとかしないと・・・
アレクにマント付きの服と軽装を渡しAKIHOに軽めの甲冑を渡す
合計で100Rしたがこれで二人が少しでも生き残れるなら安いものだ
あとは女子力も上がってくれれば嬉しいのだが・・・
俺の心配をよそに二人は先程の決闘話で盛り上がっている
まぁ・・・仲直り出来たようでなによりだ

「・・・アレクはどうやぅて最後の陽炎を見破ったの?」

それは俺も気になる
あの動きは常人離れしていた

アレクが少し困った顔をしながら答える

「光が見えたんだ赤色や緑色の」

・・・光?精神科の受診を検討すべきか?

「杖を持った時だけだけどね、こうやって・・・今は黄色の光が多いかな」

アレクが杖を持ちながら説明する
黄色・・・

「もしかして精霊じゃないか?」

そう言いながら黄色の精霊を手に取り精霊術を発動する
アレクが驚いた顔でこちらを見る

「アズも見えるのか!?」

アレクは精霊術を覚えたのか!

『NPCがスキルを!ギルド長レアです!』
『クラマス!勧誘すべきかと!』
『待て待て!彼女はアズ様の知り合いだぞ!』

外野が騒いでいるが
NPCがスキルを覚えるのはレアらしい
今後は精霊術を教えていくのもありかもしれない

それはそれとして・・・
二人に向き合い次は獲物を見る

「次は武器だけど・・・」
「僕はアズから預かっている杖がある」

アレクがうれしそうに杖を握りしめているのを見てホッコリする
続いて木刀を所持しているAKIHOだが

「私は竹刀が欲しいかな」

またBGOでは珍しいものをご所望である
アレクに関しては竹刀ってなんだ?と俺に隠れて訪ねてくる程に珍しい物だ
アレクに身振り手振りで説明すると何か思いついたようだ

「訓練用の非殺傷武器か・・・それなら道場に似たような物がありそうだな」
「道場なんてこの街にあったのか?」
「貧民街のほうになるけどね、結構大きい道場だったよ」

アレクは貧民街に何の用事で行ったのだろうか?
追及するべきか悩みながらアレクの後ろをついていくと
アレクが困ったような顔を浮かべ俺達に向き直る

「僕が行った時は門下生も多くて賑わってたんだけどな」

目の前には道場の看板が外れ
閑古鳥が鳴いている屋敷しかない

「もしかしてこれが道場か?」
「だったはず、だよ」

アレクにしては歯切れが悪い
どう見ても幽霊屋敷にしか見えないんだよなぁ・・・

意を決して中に踏み込むと
鼻の上に切り傷がある白髪の爺さんがあぐらをかいて暇そうに欠伸をしている

「あのーここに竹刀ってありますか?」
「竹刀?なんだそりゃ」

まあそうなりますよね
アレクが知らない時点でそんな気はしていた
それでも近い物はないかと身振り手振りで説明する

「ああ・・・これの事か?」

そこにはリアルとは少し見た目が違う
だがまごう事無き竹刀が置いてあった

「それそれ!おいくらですか?」
「ふん!こんなぼろ道場にはもう必要ねえ物品だ!タダでやるよ!」

爺が投げやり気味に竹刀を投げるとアイテムストレージにブンブン刀が追加される

<ブンブン刀>
攻撃力3 俊敏-2 打属性

こっちではブンブン刀っていうのか
ブンブン刀の性能を確認してAKIHOに渡す
AKIHOはうれしそうにブンブン刀を振るうと爺に向き合う

「ありがとう・・・せっかくだから試し切りさせてくれない?」

爺は何言ってんだこいつ?といった顔でAKIHOを見るが、本気とわかると怯えた顔でこちらを見ている
その人・・・そういう性格なんです・・・

俺が他人事の用に爺に同情していると、アレクがブンブン刀を振りながら爺に話しかける

「師範代、少し前に僕が来た時は賑わっていたのにどうしたんだい?」

この人師範代だったのか

「それがな・・・この前めっぽう強いと噂の剣豪が食い倒れてたんで飯をご馳走がてら勝負を挑んだんだが」

師範代はその時の事を思い出したのかブルブル震え出す
恐らくぼこぼこにされたのであろう

「まぁ・・・そんな凄い人・・・戦ってみたいわ・・・」

戦闘狂が食いついてしまった
だが戦闘は楽しいが疲れるから少し黙っていてほしい

しかし・・・

「そんな強い人なら名前くらい知ってそうだけど・・・どんな人なんですか?」
「金髪で髪を横で束ねててな・・・和服っていうのかい?和の国の装備を着てたな」

ん?

「装備は大太刀を持ってはいたが小太刀を使ってたな・・・名前はなんてったかな・・・」

多分それ俺の知人です・・・
今度うちのハングリー娘が普段何をしているのか問いただす必要がありそうだ

準備を整えて木漏れ日荘についた俺達にフーキが声をかけ・・・AKIHOを見て苦笑いを浮かべる

「二人共良い装備になったね・・・でもなんで竹刀なん?」
「こっちのほうが・・・手に馴染むの」
「AKIHOはリアルで剣道部なんだよ」

俺の補足にフーキが納得する

「なるほどね・・・じゃあ出発は明後日!日曜日に合わせて徹夜でクリアするぞ!」

               ◇

薄暗い酒場の一角で三人の人影が密談する

「情報は、間違がいねぇな?」
「間違いありませんギルド長!」

一人の下っ端の男が写真を取り出す、そこには赤色ショートのウェイトレスが映っている

「この少女はNPCでありながら精霊術を使えます・・・いずれダイヤモンドの大量生産のやくにたつかと!」

下っ端の言葉に金髪の男が下卑た笑みを浮かべる

「ひひひ!良いね良いね!金の匂いがプンプンするぜ!」

赤髪の男は頷く

「次のターゲットはこいつに決定だ」

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コメント

  • ツリー

    コメントありがとうございます!これは初期設定の読み落としですね
    自分の中でHPとMPはポイント数の倍にするとか計算してたんで混乱しました!

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  • ノベルバユーザー34792

    レベル1で初期合計ポイント32っておかしくない?15じゃなかったっけ?

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