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第七章 ヌレー河川


新天地目指しグラフ草原を南に行軍するアズ一向、そこでは黙々とブルーラットを狩る少女の姿があった

「なにあの子すごい」

俺やフーキが時間をかけて倒していたブルーラットを、軽々となぎ倒し行軍するルピーを見ながら呟く

最初、ブルーラットに遭遇した時ルピーの前にでてジローと臨戦態勢に入ったのだが
ルピーが手で制しながら前にでると、ブルーラットは恐慌状態になり動けなくなる、恐慌状態が解ける前に俊敏の高さを生かした速度で間合いを詰め、武器である小太刀でブルーラットを一息で切り刻む、まさにスターバーストストリーム・・・

ここまでノーダメージで10体ものブルーラットが討伐されている
倒すたびにルピーはブルーラットの肉を俺のアイテムストレージにいれている、本人曰く

[ブルーラットのお肉はよく加熱すれば食べられるんです!]

との経験談らしい
ちなみに加熱が甘いと毒になるというのも経験済みらしい
戦闘は空腹度の減りが早いのだが、連戦なうえにルピーは餓狼スキルの効果も相まって
俺が90%の所なのに、ルピーはすでに一桁まで下がっている

空腹度は25%を下回ると能力が半分に、0%になるとHPが徐々に減っていく仕様である
飢狼のスキルは逆に能力が上がるが、0%のHP減少は普通にあるらしいのでこまめに空腹度を満たす必要がある

現在俺は、ブルーラットの肉をひたすら包丁の効果で加工、ルピーの所持品の小型バーナーで焼いてルピーに提供、ルピーがモンスターを狩る、のルーチンワークである
なんだろう目に込み上げてくるものがある

だがBGO内での空腹感はリアルと全くと言って良い程に同じなので、空腹の女の子を放置するわけにもいかず、調理?した物をおいしそうに食べてもらえるのはうれしいものもある
この作業だと次のLvアップでは防御が上がりそうな気がする

そんな中一際大きく赤色の毛並みのモンスターがこちらに向かってくることに気づく
レッドラット、グラフ草原におけるボスを除けば最も強いモンスターである

ルピーに警告する時間はない、それほどまでのスピードだ
小型バーナーを器用に使いこなすジローにすぐさま囮を発動させる
レッドラットはジローに一瞬目を向けるがすぐにルピーに視線を戻す
さすが草原MOB最強、ちょっとしたスキルは無効にするらしい
慌てて駆け出すがもう遅い、そこにはニッコリとレッドラットの素材をはぎ取るルピーの姿が!

[新しいお肉、楽しみです!]

彼女を少しでも心配した俺が馬鹿でした

レッドラット出現!等あったが、道中これといった危険もなく
無事目的地であるヌレー河川についた俺達はクエスト板に書いてある依頼主を探す

クエスト板には、依頼主の場所が自動で浮かび上がるシステムがついており、なんなく見つかる
こういうところはゲームならではだと思いながらクエストの依頼主からクエストの場所に案内してもらうことにする
依頼主は俺達二人を見るとほんとに大丈夫か?といった視線を向けてくる

「ここから少し行った所だが・・・あんたらほんとに大丈夫か?冒険者とはいえ君達みたいな子が危ない目に会ったり嫌な思いをすると思うとあまり気が進まないのだが・・・」

等と案内途中に心配すらしてくる始末だ
俺はともかくこう見えてもこの子、相当な強者ですよ?
冒険者ギルドでジン魚やグラフ平原のモンスターについて聞いて来た感じだと、ジン魚はレッドラットより弱くブルーラットより少し強いくらいのモンスターと聞いている
そんな相手に負ける気はしない!(倒すのはルピーだが

依頼主も困ってるのもあり、俺達の強気な態度に諦め、問題の場所に案内してくれる事になった


結論から言おう、正直後悔している
確かにこの辺りのモンスターはレッドラットより遥かに弱い、だが見た目に難があった
まず目的のジン魚、人魚を間違えて読んだ初代グラフ王が無理矢理その名前に定着させたらしいモンスター
ここまで聞くと上半身が美しい女性、下半身が魚なイメージだ
しかし実物は相当グロテスクな物で・・・
下半身は予想通り魚、上半身は確かに人間の形をしているのだが、ウロコに覆われ、顔に相当する部分はイソギンチャクのような物がウネウネしているのだ

更に魚ジンといったモンスターも出没する
これは魚の体に人間の足がついたようなモンスターなのだが、人間の足がついてるだけでも生理的に厳しい物があるのにすね毛がまたすごいのだ
水に濡れたすね毛が醸し出す風景、イソギンチャクの顔が水の中からこちらを見る風景、まさに地獄絵図であった、運営・・・もう少しましなデザイン考えてください・・・

そんな中期待のエースルピーさん、体は強くても精神は子供だったらしくあまりの光景にSAN値直葬
うつろな目で現実逃避されてらっしゃる、言葉が出ないが口をパクパクと何か言っているような感じだ
依頼主が言っていた嫌な思いとはもしかしたらこのことだったのかもしれない

ルピーが戦えない現状戦闘を行えるのは俺だけになる
ルピーをこの地獄から少し離れた位置で休憩させ、ジローをアイテムストレージから出し、一番近くにいたジン魚に隠密で近づき包丁を取り出す

見切りで敵の弱点はすぐにわかった、イソギンチャクの頭の部分、触手の一つに弱点マーカーが付く
弱点目掛けて攻撃をしかけ、自然調和、いつものパターンを決める予定だ
ジローに囮の効果を発揮してもらう為視線を向けるとそこには水にぬれて動けなくなってる物体が一匹

「ジロー・・・そういえばぬいぐるみだってこと忘れてたよ・・・」

こうなっては必勝パターンも使えない、何か突破口が無いか脳をフルスロットルに集中させる
この際人形使いは外そう、使い物にならない
ふと思いつきで自然調和のスキルで水に手を触れる、イメージするのは小さな渦だ
すると水面に渦が広がっていく
いかに水場のモンスターとは言えうまくいけば渦に巻き込まれるかもしれない

そして選んだスキルは逃走術、精霊術、隠密術だ
見切りに関しては弱点を把握したので外す事にしたのだ
逃走術を選んだ理由は、逃走時スピードが上がり逃げやすくなるという物、ルピー程ではないにしろ逃げに専念したら一時的に俊敏が大きく上がる・・・という勘繰りだ
勝利への方程式を整えた俺は隠密術でジン魚に近づく、ウネウネしている触手の一部に料理人の包丁を突き立てる
刺さった瞬間どこから出でいるのか、甲高い悲鳴が聞こえジン魚がこちらを振り返る
その間にさっさと逃走術を使い距離を話す

しかしジン魚はご自慢のヒレでなんなく距離を詰めてくる
追いつかれる前に自然調和で小さい渦を目の前の空間に広げる
目論見通りジン魚は体制を崩し渦に流される、そこに精霊術で精霊を目視

精霊は元来どの物質にも宿り、どこにでもいる、少なくとも見た感じそうだった
水場ということもありこの辺りは水の精霊しか見当たらない
試しに一発撃ってみたがウロコに弾き返されイソギンチャクの部分は美味しそうに水精霊を食べている
水の精霊しかいないこの場所、一度見つかり自然調和で俺を隠すには水の中で寝そべる必要があるが
残念ながら一度見失わせても水から出た瞬間に見つかるのだ、ならばどうするか

手元にルピー愛用の調理器具?小型バーナーがある、そして精霊はどのような物にも宿る
バーナーから軽い火をつけそこから火精霊を取り出す

「・・・その触手・・・火は大分効きそうだと思ったんだよね!」

弱点の触手に向かって火精霊を放つと、ジン魚は再び甲高い悲鳴をあげ動かなくなる
無事ノーダメージ撃破である!
ここまでルピーが戦闘を担っていたのもありフラストレーションがたまっていたのだ

素材を確保するべくジン魚に近づき包丁を取り出す
まずはイソギンチャクの部分をはがす、つもりだった

無警戒に近づいた俺に突如動かなくなっていたジン魚が動きだす
完全なる不意打ち、ジン魚の手が俺の両手を掴み逃げれなくする
そのままイソギンチャクの部分を肥大化させる
これ、どこかで見た気がする、あぁ某ゾンビゲームの即死技だ!等と遠い目で思い出しながら触手を見つめる

「ごめんルピー、先に街に戻る事になりそうだわ」

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