ぼくは今日も胸を揉む
#2 女の子になっちゃった
「……さん……て……さい」
誰かの声がする。誰かに体を揺すられている。
だけど、何を言っているのかよく聞き取れない。
「……杏さん、起きてくださいっ」
そこでようやく声の主が誰なのかを察し、ぼくはゆっくりと瞼を開いていく。
澄み渡る青空をバックに、ユズの整った幼い顔が、ぼくの顔を覗き込んでいた。
心地よい風が、ぼくたちの肌を撫で、ユズは長い髪を靡かせる。
どうやら、本当に異世界転生をしてしまったらしい。
「あれ、何でユズもいるの?」
疑問に思ったことを問いながら、ぼくは上体を起こす。
そして辺りを見回すと、途轍もなく広大な草原がどこまでも続いていた。
もし治安の悪い荒んだ街とかに飛ばされたらどうしようと思っていたが、とても穏やかな土地のようで安心した。
「わたしは神ですけど、一応ここら辺にある街で暮らしてるんですよ」
「神って、ぼくたちを見守ってるだけじゃないんだ」
「だって、ずっと上でみんなを見ているだけなんて暇じゃないですか。だから、わたしが神だと気づかれないようにしながら、他の住民と同じように平穏に暮らしているわけです」
得心がいった。
確かに、そう考えれば神とは退屈なものなのかもしれない。
ただの可愛い幼女にしか見えないし、たとえ近くに住んでいたとしても、誰も神さまだとは思えないだろう。
きっと自分が神だと告げたところで、信じてくれる者などいないはずだ。
ぼくは状況が状況だったし、割とあっさり信じたけど……まあ、それは例外だろう。
「そういや、ここってどういう世界なの?」
「ここのことを話すには長くなりますから、とりあえずわたしの家に行きましょう」
そう言ってユズは立ち上がり、スカートについた埃を手で払う。
そうか。普通に暮らしていると言っていたから、当然家もあるわけか。
生憎と女の子の部屋なんて行ったことがないため、少し緊張してしまう。
ぼくも起立し、そのまま歩き出そう――と、して。
「……っ?」
突如として、ぼくの体に異変が生じた。
徐々に、徐々に、目線が下がっていく。
ユズの身長より大分高い位置にあったぼくの視界は、あっという間にユズの頭より少し上というところにまで下りてしまっていた。
しかも、異変はそれだけではなく。
頭から首、背中にかけて何だか鬱陶しいものが纏わりついている気がする。
背後を振り向き、手で掬ってみると――それは、長い長い白銀の髪だった。
更に、少し体が重い。いや、体が、というよりは――胸部の辺りが。
気になって見下ろしてみれば、ぼくの胸に不自然な膨らみが見えた。
えっと……何だろう、これ。どういうことなのでしょう。
「……」
ユズは手鏡を取り出し、ぼくに見せてくる。
そこに映っていたのは――とても整った顔立ちの、一人の美少女。
長い銀髪、適度に膨らんだ胸、あどけなさの残る可愛らしい容貌……どこからどう見ても、可愛い女の子だ。
だけど、今鏡の前にいるのはぼくだけなわけで。
そうなると、当然この姿は――。
「あ、あれ? ぼく……女の子になっちゃった?」
「……そう、みたいですね」
ユズは、神妙な面持ちで頷いた。
異世界転生を果たしただけでは飽き足らず、まさか性転換まで経験しちゃうなんて。
元々男にしては高めの声を持っていたぼくだが、先ほど発した声は明らかに甲高い女のものだ。
ぼくは咄嗟に股間を手で押さえてみるが……本当に、不思議なことに何もついていなかった。
でも、代わりについているものもある。
微かな緊張を覚えながら、ゆっくりと手を上げる。
そして、自身の胸部に現れた双丘を鷲掴み。
ぐにゅっ……と胸が潰れ、掌に柔らかい胸肉の感触が伝わってくる。
巨乳とまではいかないものの、それなりに大きい。
興奮と快感が、ぼくの頭を支配する。
「お、おぉぉおぉおおぉぉぉおっ!? すごいっ! 女の子すごい! ふあぁぁぁあああっ!」
自分でもよく分からなくなるほどの甲高い奇声をあげ、ぼくはひたすら自分の胸を揉み続ける。
一揉みする度に、胸の肉はむにゅむにゅと形を変える。
この大きさは……せいぜいCかD辺りだろうか。
大して大きくはない並乳だと思っていたが、こうして揉んでみると改めて素晴らしさを実感できた。
ずっと揉んでいても飽きない、この感覚。
やはり、女の子のおっぱいには男の夢と希望が詰まっているというわけだ。最高です。
「ちょ、いきなり何してるんですかっ! とにかく落ち着いてください!」
「あ、ユズ。大丈夫だよ、ぼくはちっぱいも好きだから」
「そんなこと一言も言ってません! わたしの胸を見るのはやめてくださいっ!」
元々男であるぼくのほうがユズより大きい胸になってしまったために凹んでいるかもしれないと思ったが、どうやら違ったらしい。
あれ、待てよ……。女の子になったということは、もちろん便所は女子トイレ、風呂は女湯……。
しかもぼくが男だったという事実は、ユズしか知らない。
今日から始まる異世界生活は、ぼくにとってかなり有意義なものになりそうだ。物凄く楽しみ。
「でも、何で女の子になっちゃったんだ……?」
「あ、それはきっと杏さんが別の世界の住人だからですよ。世界を越えてやって来たわけですから、体にかかる負荷とかその他諸々によって、杏さん自身があべこべになってしまったのだと思います」
「……うん、何言ってるか分からない」
ぼくの脳みそじゃ足りない部分は、全てユズに任せよう。
ぼくはあまり理解できなかったけど、ユズが分かっているならそれでいいや。
「そういえば、これから名前はどうするんですか?」
「名前?」
「はい。杏さんは女になってしまったじゃないですか。これからも、雷夢杏と名乗っていくんですか?」
生活をしていくなら、当然ながら自分の名前は必要になる。
本名である雷夢杏でも構わないけど、ぼくの場合は「あんず」ではなく「きょう」である。
女の子になったというのに、男っぽい名前はやめておきたい。
雷夢……らいむ……きょう……あんず……か。
「じゃあ――ライム・アプリコットとか、どうかな」
異世界ならば、どちらかと言うと外国人みたいな名前のほうがいいだろう。
そう思って雷夢をそのままカタカナにし、杏を英語にしてみた。
少し安直すぎる気もするが、他に良さそうな名前は思いつかない。
「だったら、わたしはライムさんと呼んだほうがいいですね」
「うん、これからは女の子として暮らしていくからよろしくねっ」
「は、はい……ノリノリですね……」
口角を引きつらせて苦笑するユズに続いて、ぼくは歩く。
これから、この世界で、どんなことが起きるのか。
そんな期待に、胸を揉み――否、膨らませながら。
「……って、自分の胸を揉みながら歩くのはやめてくださいっ!」
このあとめちゃくちゃ怒られた。
誰かの声がする。誰かに体を揺すられている。
だけど、何を言っているのかよく聞き取れない。
「……杏さん、起きてくださいっ」
そこでようやく声の主が誰なのかを察し、ぼくはゆっくりと瞼を開いていく。
澄み渡る青空をバックに、ユズの整った幼い顔が、ぼくの顔を覗き込んでいた。
心地よい風が、ぼくたちの肌を撫で、ユズは長い髪を靡かせる。
どうやら、本当に異世界転生をしてしまったらしい。
「あれ、何でユズもいるの?」
疑問に思ったことを問いながら、ぼくは上体を起こす。
そして辺りを見回すと、途轍もなく広大な草原がどこまでも続いていた。
もし治安の悪い荒んだ街とかに飛ばされたらどうしようと思っていたが、とても穏やかな土地のようで安心した。
「わたしは神ですけど、一応ここら辺にある街で暮らしてるんですよ」
「神って、ぼくたちを見守ってるだけじゃないんだ」
「だって、ずっと上でみんなを見ているだけなんて暇じゃないですか。だから、わたしが神だと気づかれないようにしながら、他の住民と同じように平穏に暮らしているわけです」
得心がいった。
確かに、そう考えれば神とは退屈なものなのかもしれない。
ただの可愛い幼女にしか見えないし、たとえ近くに住んでいたとしても、誰も神さまだとは思えないだろう。
きっと自分が神だと告げたところで、信じてくれる者などいないはずだ。
ぼくは状況が状況だったし、割とあっさり信じたけど……まあ、それは例外だろう。
「そういや、ここってどういう世界なの?」
「ここのことを話すには長くなりますから、とりあえずわたしの家に行きましょう」
そう言ってユズは立ち上がり、スカートについた埃を手で払う。
そうか。普通に暮らしていると言っていたから、当然家もあるわけか。
生憎と女の子の部屋なんて行ったことがないため、少し緊張してしまう。
ぼくも起立し、そのまま歩き出そう――と、して。
「……っ?」
突如として、ぼくの体に異変が生じた。
徐々に、徐々に、目線が下がっていく。
ユズの身長より大分高い位置にあったぼくの視界は、あっという間にユズの頭より少し上というところにまで下りてしまっていた。
しかも、異変はそれだけではなく。
頭から首、背中にかけて何だか鬱陶しいものが纏わりついている気がする。
背後を振り向き、手で掬ってみると――それは、長い長い白銀の髪だった。
更に、少し体が重い。いや、体が、というよりは――胸部の辺りが。
気になって見下ろしてみれば、ぼくの胸に不自然な膨らみが見えた。
えっと……何だろう、これ。どういうことなのでしょう。
「……」
ユズは手鏡を取り出し、ぼくに見せてくる。
そこに映っていたのは――とても整った顔立ちの、一人の美少女。
長い銀髪、適度に膨らんだ胸、あどけなさの残る可愛らしい容貌……どこからどう見ても、可愛い女の子だ。
だけど、今鏡の前にいるのはぼくだけなわけで。
そうなると、当然この姿は――。
「あ、あれ? ぼく……女の子になっちゃった?」
「……そう、みたいですね」
ユズは、神妙な面持ちで頷いた。
異世界転生を果たしただけでは飽き足らず、まさか性転換まで経験しちゃうなんて。
元々男にしては高めの声を持っていたぼくだが、先ほど発した声は明らかに甲高い女のものだ。
ぼくは咄嗟に股間を手で押さえてみるが……本当に、不思議なことに何もついていなかった。
でも、代わりについているものもある。
微かな緊張を覚えながら、ゆっくりと手を上げる。
そして、自身の胸部に現れた双丘を鷲掴み。
ぐにゅっ……と胸が潰れ、掌に柔らかい胸肉の感触が伝わってくる。
巨乳とまではいかないものの、それなりに大きい。
興奮と快感が、ぼくの頭を支配する。
「お、おぉぉおぉおおぉぉぉおっ!? すごいっ! 女の子すごい! ふあぁぁぁあああっ!」
自分でもよく分からなくなるほどの甲高い奇声をあげ、ぼくはひたすら自分の胸を揉み続ける。
一揉みする度に、胸の肉はむにゅむにゅと形を変える。
この大きさは……せいぜいCかD辺りだろうか。
大して大きくはない並乳だと思っていたが、こうして揉んでみると改めて素晴らしさを実感できた。
ずっと揉んでいても飽きない、この感覚。
やはり、女の子のおっぱいには男の夢と希望が詰まっているというわけだ。最高です。
「ちょ、いきなり何してるんですかっ! とにかく落ち着いてください!」
「あ、ユズ。大丈夫だよ、ぼくはちっぱいも好きだから」
「そんなこと一言も言ってません! わたしの胸を見るのはやめてくださいっ!」
元々男であるぼくのほうがユズより大きい胸になってしまったために凹んでいるかもしれないと思ったが、どうやら違ったらしい。
あれ、待てよ……。女の子になったということは、もちろん便所は女子トイレ、風呂は女湯……。
しかもぼくが男だったという事実は、ユズしか知らない。
今日から始まる異世界生活は、ぼくにとってかなり有意義なものになりそうだ。物凄く楽しみ。
「でも、何で女の子になっちゃったんだ……?」
「あ、それはきっと杏さんが別の世界の住人だからですよ。世界を越えてやって来たわけですから、体にかかる負荷とかその他諸々によって、杏さん自身があべこべになってしまったのだと思います」
「……うん、何言ってるか分からない」
ぼくの脳みそじゃ足りない部分は、全てユズに任せよう。
ぼくはあまり理解できなかったけど、ユズが分かっているならそれでいいや。
「そういえば、これから名前はどうするんですか?」
「名前?」
「はい。杏さんは女になってしまったじゃないですか。これからも、雷夢杏と名乗っていくんですか?」
生活をしていくなら、当然ながら自分の名前は必要になる。
本名である雷夢杏でも構わないけど、ぼくの場合は「あんず」ではなく「きょう」である。
女の子になったというのに、男っぽい名前はやめておきたい。
雷夢……らいむ……きょう……あんず……か。
「じゃあ――ライム・アプリコットとか、どうかな」
異世界ならば、どちらかと言うと外国人みたいな名前のほうがいいだろう。
そう思って雷夢をそのままカタカナにし、杏を英語にしてみた。
少し安直すぎる気もするが、他に良さそうな名前は思いつかない。
「だったら、わたしはライムさんと呼んだほうがいいですね」
「うん、これからは女の子として暮らしていくからよろしくねっ」
「は、はい……ノリノリですね……」
口角を引きつらせて苦笑するユズに続いて、ぼくは歩く。
これから、この世界で、どんなことが起きるのか。
そんな期待に、胸を揉み――否、膨らませながら。
「……って、自分の胸を揉みながら歩くのはやめてくださいっ!」
このあとめちゃくちゃ怒られた。
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