公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

迷宮攻略(2)

「ハハハハ……」

 笑いを返すことしかできない。
 ついつい気が流行ってしまった。

「それよりも、どうしますか?」

 もはや呆れたのかどうかは知らないけど、今後の対応をどうするか? メリッサさんが尋ねてくる。

「そうですね。とりあえず迷宮に入れないことには、どうしようもないですね」
「……少しずつ石などを取り除くのが良いかも知れません。時間は掛かりますが、それが確実です」
「そうですか。でも私達には時間がありません。アクアリードさん、メリッサさん離れていてください!」
「「ええー!?」」

 私の言葉に驚きながらも二人は上空に作り出されていく巨大な水の塊を見て唖然としたあと、顔を青くして走って入り口から離れていく。
 二人が十分な距離が取ったのを確認したところで、魔法を発動させる。

「ナイアガラの滝!」

 膨大なまでの水が迷宮入り口を襲い、堆積していた石や砂を破壊・粉砕し迷宮内に水と一緒に流れこんでいく。
 作り出した水の量は、学校の50メートルプール30個分。
 それらが、全て迷宮の中に入ったのを確認。

「ふう……、これで中に入れますね!」
「なんてことを……」
「カベル海将は大丈夫なのでしょうか?」
「……ハッ! 中に入ることを優先して考えていたのでカベル海将のことを忘れていました! とは言えないですね」

 さて、二人に何と上手く説明して誤魔化せば……。

「あの……心の声が洩れていますけど……」
「あっ……」

 メリッサさんに指摘されて、私はすぐに口元を手で塞ぐ。
 そんな私を見て、アクアリードさんは深く溜息をつくと「早くダンジョンに入りましょう。カベル海将が居たら大変ですし」と、話てくる。

「そうですね、急ぎましょう」

 そう、失敗をいつまでも悔やんでいても仕方がない。
 その後に取った行動が重要なのであって過程ではないのだ!

 ――と、自分に言い聞かせておく。

 ダンジョン内へ通じる階段は、石で作られていて大人二人が横に並んで降りられるくらいに広い。
 そして階段一つ一つが、規則正しく作られており学校の階段と同じ大きさである。

 100段近く降りたところで、床に足をつけることが出来た。
 迷宮1階は、縦横5メートルの広さがありずっと先まで通路が伸びている。

「思ったよりも広いのですね」
「そうですね。エルノのダンジョンは、この世界で確認されているダンジョンの中でもかなり大きいダンジョンの部類と言われていますので」
「なるほど……」

 私はメリッサさんの言葉に頷きながら、アクアリードさんが回りの床を見て表情を変えているのを見て首を傾げる。

「アクアリードさん、どうかしたのですか?」
「見てください! 魔石があっちこっちに落ちています」
「魔石ですか?」

 私は、アクアリードさんが指差している方向に転がっている黒い魔石を見る。
 たしかに、黒い魔石は私が白色魔宝石を作るときに素材だった物に似ていて――。

「ここは、魔石採掘現場なのですか?」
「いえ、ここは普通のダンジョンです。だからこそ、おかしいと思ったのですけど……」
「なるほど……、それは不思議ですね」
「ま、まさか……」

 私とアクアリードさんとの会話を聞いていたメリッサさんが足を止めると「これって、さっきのユウティーシアさんの水魔法で、倒された魔物の魔石では!?」と、語りかけてきた。

「「あっ!?」」

 思わず、私とアクアリードさんの言葉が重なる。
 たしかに、私の魔法に巻き込まれて2次災害で倒されたと考えると辻褄はあう。

「こ、これを見てください!」

 アクアリードさんが、床から拾ったのは小さなポーチ。
 ポーチには花の絵柄が描かれていてかわいらしい。

「これは、アイテムボックスです!」
「アイテムボックスですか?」
「はい! 討伐ボーナスがついたときしか出ないと聞いたことがあります!」
「つまり……私の場合はボーナスがついたと?」
「おそらくですが……」

 ふむ……。
 たしかに床に転がっている魔石の数を見る限り数百個は下らない。
 つまり撃破ボーナスでアイテムボックスの性能がついたポーチがでたと……。

「ゲームじゃないのだから……」

 思わず一人突っ込みを入れてしまっていた。

「とりあえず、魔石については放置で先に進みましょう。カベル海将のことが気がかりです」
「「ええええええー!?」」

 私の言葉に、アクアリードさんとメリッサさんが二人揃って驚いた声を上げてきた。
 それが、迷宮内で響く。
 思わず耳を覆いたくなるくらい。

「ええー! じゃありません! カベル海将のほうが重要ですから!」

 まったく、遊びにきたわけではないのですから。
 少しはまじめに行動してほしいものです。


 

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