公爵令嬢は結婚したくない!
出張手当はつきますか?(8)
「で、でも――魔法陣は、秘中の秘なのでは――?」
アクアリードさんが、言いにくそうに、だけどシッカリと聞いてくる。
「そうなんですか?」
私は首を傾げながら、答える。
そもそも、私は通常の魔法を使う事が出来なかった。
私が使う魔法は大別して二つに分けられる。
一つは、超大な魔力にモノを言わせて発動させる魔法とも呼べない魔法。
これは山が消滅するほどの威力を誇る魔法を発動させることができる。
一つは、消費魔力を究極的なまでに減らして通常の魔法よりも威力を極端に落とした魔法。
そういうことでもあり、私の使う魔法陣は、制御・精度ともに10年もの歳月をかけて作られた魔法陣なのだ。
今までは、他の人に使ってもらったことがないから分からなかったけど……。
ウラヌス公爵と長い間、一緒に作り上げてきたこともあり、魔法陣の構築基礎知識は、私の頭の中にあるし、魔法陣というのは所謂、世界に干渉するための装置であり、現代風に言うなら、それはプログラミングの領域に近い。
だから自分が携わった魔法陣というのが、どのくらいの効果があるのか気になったりする。
「はい! 魔法陣が書かれている巻物で金貨10枚はするんですよ?」
「金貨10枚――」
4人家族が一ヶ月食べていけるだけの金額。
正直、高いかどうかは分からない。
ただ、リースノット王国では、魔法普及ということも鑑みてかなり安く自国の魔法研究所で作った魔法陣や詠唱を配布してたような気がする。
「ユウティーシア様?」
「――え? あ、はい。それでは、魔法陣を描いていきますね」
私は、空中に魔法陣を描いていく。
「えっと、まずは魔法陣の構成ですが――」
私は、右手で普段自分が使っている魔法陣を描きながら左手でアクアリードさんが使っていた魔法陣を描いていく。
このへんは、元・プログラマーとしてのコードを複写するという必須に近いスキルのおかげで難なく扱うことが出来る。
「右手に書いてある魔法陣と左手で書いてる魔法陣の大きな違いは、導入する魔力に対しての魔力減衰量が大幅に、アクアリードさんが使っていた魔法陣の方が大きいというか歪というか駄目というか……」
「――えっと……正直に言ってください!」
何故か知らないけど、アクアリードさんがムッとした表情で私を見てくる。
私も、人に魔法を教えるのは初めてということもあり、上手く説明できないけど、怒らせるようなことを言ったつもりはないんだけど……。
「つまりですね、魔法陣内で上手く魔力が回っていないため、魔法が発動するまでに導入された魔力の8割が無駄になっているのです。ちなみに私の魔法陣の場合は、出口が小さいだけで、魔力を大幅に無駄にするようなことにはなっていないので安心してください」
私は、二つの魔法陣から普段使っている私の魔法陣の出口の部分だけを大きくした魔法陣を簡易的に頭の中でくみ上げていく。
「こんな感じかな?」
二つの魔法陣を消したあとに、あらたに魔法陣を空中に描いていく。
それは、魔法帝国ジールの販売されてると言っていた巻物に書かれている魔法陣の一部を切り取り、ウラヌス公爵と私が作り上げた魔法陣を合わせた継接ぎのものだけど……。
「どうですか? この魔法陣を使って水を精製してみてください」
「……こんな魔法陣みたことないんですけど……」
困惑しながらも、アクアリードさんは、初めてみた魔法陣を空中に描きながら詠唱をすすめていく。
魔法陣が組み上がり詠唱が終わる。
そしてアクアリードさんの「水生成!」という言葉と同時に水が生成されていき、空から大量の水が降ってきた。
「ユウティーシア様もアクアも何をしているんだ?」
私とアクアリードさんは、現在、馬車に戻り、服を着替えていた。
「下着まで――」
アクアリード、小さな溜息をついている。
彼女は、地球でいうとベージュ色のスパッツとカットソーに同色のマントを羽織っている。
それだけで寒くはないのかな? と思っていたけど。
彼女は、どうやら下着の代えをもってきてはいなかったようで……。
冒険者なのに何をしているのやら……。
「うう――。洋服と下着が入ったカバンまでも……」
どうやら大量に発生した水で予備の服や下着まで全滅してしまった模様。
まだ朝ということもあり冷え込んでいる。
そんな状態で濡れた衣服を着続けるなんて、体温低下を招き下手をすると風邪になってしまうことさえある。
「あの……。私の下着と服でよければ……」
「――え!? いいんですか?」
「はい――、私が魔法陣の精度とアクアリードさんの魔力の比率から見た、魔法発動時の水がどのくらい生み出されるかを計算しなかったのが、そもそもの原因ですし……」
「――で、でも……お高いんでしょう?」
「どこで、その言葉を知ったのか、すごく興味がありますけど、別に構いませんよ? 同性ですし……それに、私が悪いんですし……」
私は、旅行用バックから一人分の下着と白いフリルがたくさんついた緑に着色されたワンピースを取り出す。
「これをどうぞ!」
「――こ、これは!?」
彼女は、少し驚いた様子で見ているけど、たしかに、この世界では着色された衣服は中々高価なもの。
しかもフリルがたくさんついているということは、かなりの手間がかかっている証拠であり、なかなかの値段がする。
それでも、私は町の代表者である以上、身嗜みには気をつけないといけない立場なわけ。
かわいい服を着ている自分が可愛いとか、そんな理由では決してない。
「さあ、どうぞ! 遠慮なく着ちゃてください!」
「――で、でも……こんな服、私には……」
どうやら、アクアリードさんは、美人さんなのに、自覚が無い模様。
ここは、私がきちんとリードしてあげないといけないですね。
アクアリードさんが、私が渡した下着を着るのを確認すると「ちょっと、いいですか?」と、言いつつワンピースも無理矢理着せていく。
もちろん、ボタンは背中についているわけ。
これがまた慣れないと、なかなか着れないし脱げないというのが、この世界のワンピースの問題点なわけで、つまり体が柔らかくないと脱ぐのも着るのも大変ってこと。
袖を通してからワンピースのボタンを留めていくと、彼女の体に洋服はピッタリだった。
「おお! 私のワンピースがピッタリですね!」
こう見えても、ちょっと自慢ではないけど15歳というか、もうすぐ16歳になる私の肉体は、それなりに発育がいいわけで、なかなかのプロポーションを誇るわけで。
出るところは出て、締まっているところは締まっていてくびれもきちんとあるのが自慢。
そんな私が特注したワンピースが、ピッタリなんて……。
ぐぬぬ――。
「えっと……おかしくないですか?」
「完璧とは言えませんが! いいと思います!」
つい、女として16年間生きてきた自尊心が、素直に褒めるということを阻害してしまっていた。
「――えっ!?」
アクアリードさんが、私の嫌味に気がついたからなのか振り向いてきた。
やばい! ちょっとフォローいれないと。
「実は! アクセサリーとかがあるんです! やっぱり、可愛い女の子は飾り立てないとですよね!」
私は着替えの終わったアクアリードさんの肩に手を置くと、帆馬車内の敷物の上に座らせる。
そして、櫛を使い彼女の青い髪を丁寧に梳かしたあと、髪の毛を結い上げて青いブローチで留める。
「できました!」
私は鏡を旅行バックから取り出すと、アクアリードさんに渡す。
すると彼女は、「別人みたいです!」と、とても驚いていた。
彼女の喜ぶ姿を見ながらも、私……もと男なのに何をしているんだろうと心の中で突っ込みを入れつつ、女性の肌を見ても何も思わないことに、少しだけ落ち込んだ。
アクアリードさんが、言いにくそうに、だけどシッカリと聞いてくる。
「そうなんですか?」
私は首を傾げながら、答える。
そもそも、私は通常の魔法を使う事が出来なかった。
私が使う魔法は大別して二つに分けられる。
一つは、超大な魔力にモノを言わせて発動させる魔法とも呼べない魔法。
これは山が消滅するほどの威力を誇る魔法を発動させることができる。
一つは、消費魔力を究極的なまでに減らして通常の魔法よりも威力を極端に落とした魔法。
そういうことでもあり、私の使う魔法陣は、制御・精度ともに10年もの歳月をかけて作られた魔法陣なのだ。
今までは、他の人に使ってもらったことがないから分からなかったけど……。
ウラヌス公爵と長い間、一緒に作り上げてきたこともあり、魔法陣の構築基礎知識は、私の頭の中にあるし、魔法陣というのは所謂、世界に干渉するための装置であり、現代風に言うなら、それはプログラミングの領域に近い。
だから自分が携わった魔法陣というのが、どのくらいの効果があるのか気になったりする。
「はい! 魔法陣が書かれている巻物で金貨10枚はするんですよ?」
「金貨10枚――」
4人家族が一ヶ月食べていけるだけの金額。
正直、高いかどうかは分からない。
ただ、リースノット王国では、魔法普及ということも鑑みてかなり安く自国の魔法研究所で作った魔法陣や詠唱を配布してたような気がする。
「ユウティーシア様?」
「――え? あ、はい。それでは、魔法陣を描いていきますね」
私は、空中に魔法陣を描いていく。
「えっと、まずは魔法陣の構成ですが――」
私は、右手で普段自分が使っている魔法陣を描きながら左手でアクアリードさんが使っていた魔法陣を描いていく。
このへんは、元・プログラマーとしてのコードを複写するという必須に近いスキルのおかげで難なく扱うことが出来る。
「右手に書いてある魔法陣と左手で書いてる魔法陣の大きな違いは、導入する魔力に対しての魔力減衰量が大幅に、アクアリードさんが使っていた魔法陣の方が大きいというか歪というか駄目というか……」
「――えっと……正直に言ってください!」
何故か知らないけど、アクアリードさんがムッとした表情で私を見てくる。
私も、人に魔法を教えるのは初めてということもあり、上手く説明できないけど、怒らせるようなことを言ったつもりはないんだけど……。
「つまりですね、魔法陣内で上手く魔力が回っていないため、魔法が発動するまでに導入された魔力の8割が無駄になっているのです。ちなみに私の魔法陣の場合は、出口が小さいだけで、魔力を大幅に無駄にするようなことにはなっていないので安心してください」
私は、二つの魔法陣から普段使っている私の魔法陣の出口の部分だけを大きくした魔法陣を簡易的に頭の中でくみ上げていく。
「こんな感じかな?」
二つの魔法陣を消したあとに、あらたに魔法陣を空中に描いていく。
それは、魔法帝国ジールの販売されてると言っていた巻物に書かれている魔法陣の一部を切り取り、ウラヌス公爵と私が作り上げた魔法陣を合わせた継接ぎのものだけど……。
「どうですか? この魔法陣を使って水を精製してみてください」
「……こんな魔法陣みたことないんですけど……」
困惑しながらも、アクアリードさんは、初めてみた魔法陣を空中に描きながら詠唱をすすめていく。
魔法陣が組み上がり詠唱が終わる。
そしてアクアリードさんの「水生成!」という言葉と同時に水が生成されていき、空から大量の水が降ってきた。
「ユウティーシア様もアクアも何をしているんだ?」
私とアクアリードさんは、現在、馬車に戻り、服を着替えていた。
「下着まで――」
アクアリード、小さな溜息をついている。
彼女は、地球でいうとベージュ色のスパッツとカットソーに同色のマントを羽織っている。
それだけで寒くはないのかな? と思っていたけど。
彼女は、どうやら下着の代えをもってきてはいなかったようで……。
冒険者なのに何をしているのやら……。
「うう――。洋服と下着が入ったカバンまでも……」
どうやら大量に発生した水で予備の服や下着まで全滅してしまった模様。
まだ朝ということもあり冷え込んでいる。
そんな状態で濡れた衣服を着続けるなんて、体温低下を招き下手をすると風邪になってしまうことさえある。
「あの……。私の下着と服でよければ……」
「――え!? いいんですか?」
「はい――、私が魔法陣の精度とアクアリードさんの魔力の比率から見た、魔法発動時の水がどのくらい生み出されるかを計算しなかったのが、そもそもの原因ですし……」
「――で、でも……お高いんでしょう?」
「どこで、その言葉を知ったのか、すごく興味がありますけど、別に構いませんよ? 同性ですし……それに、私が悪いんですし……」
私は、旅行用バックから一人分の下着と白いフリルがたくさんついた緑に着色されたワンピースを取り出す。
「これをどうぞ!」
「――こ、これは!?」
彼女は、少し驚いた様子で見ているけど、たしかに、この世界では着色された衣服は中々高価なもの。
しかもフリルがたくさんついているということは、かなりの手間がかかっている証拠であり、なかなかの値段がする。
それでも、私は町の代表者である以上、身嗜みには気をつけないといけない立場なわけ。
かわいい服を着ている自分が可愛いとか、そんな理由では決してない。
「さあ、どうぞ! 遠慮なく着ちゃてください!」
「――で、でも……こんな服、私には……」
どうやら、アクアリードさんは、美人さんなのに、自覚が無い模様。
ここは、私がきちんとリードしてあげないといけないですね。
アクアリードさんが、私が渡した下着を着るのを確認すると「ちょっと、いいですか?」と、言いつつワンピースも無理矢理着せていく。
もちろん、ボタンは背中についているわけ。
これがまた慣れないと、なかなか着れないし脱げないというのが、この世界のワンピースの問題点なわけで、つまり体が柔らかくないと脱ぐのも着るのも大変ってこと。
袖を通してからワンピースのボタンを留めていくと、彼女の体に洋服はピッタリだった。
「おお! 私のワンピースがピッタリですね!」
こう見えても、ちょっと自慢ではないけど15歳というか、もうすぐ16歳になる私の肉体は、それなりに発育がいいわけで、なかなかのプロポーションを誇るわけで。
出るところは出て、締まっているところは締まっていてくびれもきちんとあるのが自慢。
そんな私が特注したワンピースが、ピッタリなんて……。
ぐぬぬ――。
「えっと……おかしくないですか?」
「完璧とは言えませんが! いいと思います!」
つい、女として16年間生きてきた自尊心が、素直に褒めるということを阻害してしまっていた。
「――えっ!?」
アクアリードさんが、私の嫌味に気がついたからなのか振り向いてきた。
やばい! ちょっとフォローいれないと。
「実は! アクセサリーとかがあるんです! やっぱり、可愛い女の子は飾り立てないとですよね!」
私は着替えの終わったアクアリードさんの肩に手を置くと、帆馬車内の敷物の上に座らせる。
そして、櫛を使い彼女の青い髪を丁寧に梳かしたあと、髪の毛を結い上げて青いブローチで留める。
「できました!」
私は鏡を旅行バックから取り出すと、アクアリードさんに渡す。
すると彼女は、「別人みたいです!」と、とても驚いていた。
彼女の喜ぶ姿を見ながらも、私……もと男なのに何をしているんだろうと心の中で突っ込みを入れつつ、女性の肌を見ても何も思わないことに、少しだけ落ち込んだ。
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