公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議を設立しましょう!(16)

「それは、ご理解頂けてよかったです」

 私は、ミューラさんの言葉を聞きながら握手をするために手を差し出す。
 その私の手をミューラさんは握ると、微笑みかけてきた。
 もちろん私も今回の商談には上手くいけば子供たちの住む場所が確保できるから全力を尽くす。
 まぁ全力を尽くさなくても、元・男だった私の経験を使えば男なんてあっさりと落とせると思うしチョロイもの。
 そんな私とミューラさんを心配な顔をして見てくるフェリスさん。

「それじゃ、そっちの話は済んだようだし、今度はこっちの話をしてもいいかい?」
「こっちの話?」

 私はフェリスさんの言葉に首を傾げる。
 何か重要な話なんてあったけ? という心持であった。

「アレクに会ってきた」
「あ――!」

 フェリスさんの、その一言だけで私は察してしまった。
 そういえば、私の分体であるティアはすでに独立はしているけど、髪の色を除けば見た目も容姿もすべて私に瓜二つなわけで……他の人から見たら姉妹? 双子と思われても仕方がないほど似ている。
 一瞬、驚いた私を見ていたフェリスさんは、小さくため息をつくと「それで、どういう理由かを説明してもらえるかい?」と、私に語りかけてきた。
 ただ、ティアを知ってるのは私とアレクとフェリスさんに、エイリカ村の住民だけ。
 こんな場所で話す事でもないし、あまり突っ込んで話をしてもクローンなどをこの世界の人間が理解してくれるとは思えない。

「見たままです!」
「見たまま……」

 フェリスさんが呆れた顔を私に見せてくる。
 詳細を語る必要はないと思うし、突っ込んだ話をされてもミューラさんがいる時に、そんな細かい事を説明する気もない。
 だから、私としては、「二人に関しては見守って頂けると嬉しいと思っています」としか言うことはできない。
 フェリスさんは、「……そうなのかい?」と、呟くとしばらく考え込んだ後に、「まぁ、アレクの坊主が幸せそうだから、これ以上言うのは野暮かもしれないね」と、一人呟くと私の方を見てから頷いてきた。
 どうやら、これで私とティアの問題は理解してもらったようで――。

「それで、あれなんだけど何なんだい?」

 フェリスさんは、宿屋内で兵士さんたちが私を探してる時に破壊したと思われる壁や床を補修している妖精ブラウニーを見て質問してきた。

「あ、あれは、ブラウニーです」
「ぶらうにー?」

 首を傾げてフェリスさんは聞いてくるけど、私も妖精さんについては不思議生物としか認識してないから良く知らなかったりする。
 だから、あまり詳しく説明はできないけど。

「簡単に言えば、お家の掃除とか維持をしてくれる妖精さんです。私もよくは知らないんですけど、魔力を上げれば一生懸命仕事をしてくれる偉い人です」

 まあ、白色魔宝石を上げると震えながらお水を漏らしたりするけど、基本的に無害なお仕事熱心の妖精だったりする。

「そうなのかい。でも魔力を私はもってないんだけど?」
「あ、それは問題ないです。私が魔力を上げていますのできちんと働いてくれるので大丈夫です。邪魔なようでしたら職場を移動しますので大丈夫です!」

 私の言葉に、フェリスさんは「邪魔でもないよ! いろいろ手伝ってくれるしからね」と、話してきた。。
 なるほど……フェリスさんもブラウニーさんの有用性をご理解いただけたみたい。

「はい! それでは、これからもブラウニーさんたちをよろしくお願いします」

 さすがに、チラッと見ただけでも50匹近い妖精さんを子供たちがいる家に連れていくわけにもいかない。
 私が少しだけ安堵したところで「それじゃ私の話を聞いてくれる?」と、ミューラさんが語りかけてきた。
 そういえば、ミューラさんとの会話の途中でフェリスさんが話しかけてきたんですね。

「えっと……なんでしょうか?」
「トーマスさんと、どのように仲を取り持ってくれるんですか?」

 私は椅子に座りながら、考える。
 たしか……私の記憶によると男性は女性にお弁当を作ってきてもらったりすると弱かったきがする。
 いや、それは性急かも知れない。
 いきなりお弁当とかを渡されたらさすがに警戒しそうな気もする。

「そうですね。まずは合コンから始めた方がいいかも知れませんね!」
「ごうこん?」
「はい! 不特定多数の男女がデートを――遊びをするような物だったはずです!」

 やばい。
 前世で合コンに誘われた経験がない!
 まぁ、それでも元男だった経験からそのへんは恙なくなんとか出来るはず。

「では、ミューラさん。私が今日中にトーマスさんに話を通しておきますので明日、ここで待ち合わせしましょう!」
「わかりました!」

 ミューラさんは私の提案に頷いてくれるけど、フェリスさんは私とミューラさんを交互に見た後に小さくため息をついていた。

 
 

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