公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商工会議を設立しましょう!(4)

 私は、見降ろしてきているフェリスさんを見上げながら立ち上がろうとしたら、足に力らが入らず転んでしまった。
 目の前が揺れている。

「ちょ! ……ちょっと!」

 フェリスさんが、慌てて私に近づいてきて屈むと手を差し伸べてくるけど、私はそこで眠くなって寝てしまった。



 ――数時間後。

 私はゆっくりと目を開けていく。
 部屋には100匹近い妖精さん達とフェリスさんがいた。
フェリスさんは、椅子に座った状態で机に伏せている。

「う……っん――」

 私は額に手を当てながらベッドの上から起き上がる。
 頭がズキズキしてとっても痛いし気持ちわるい。
 部屋の戸口から外の町並みを見ると、もうすぐ夕方になりそうな時刻。

「あっ!?」

 私はそこですぐに洋服を着替える。
 夜に行動していてもミトンの町の人と兵士の方に見つかりにくい紺色のワンピースを被る。
 腰まである黒髪を手櫛で整えると、部屋から出ようとした所で、視界がふらつく。
 初めて気がついたけど、私の体はアルコールにとても弱いみたい。
 少しのアルコールだけでダメージがすごい。

「ティアさん起きたのね?」

 振り返ると、私よりも身長が10センチは高いフェリスさんが見降ろしてきている。
 私がフェリスさんの言葉に頷くと、私の手を握るとベッドまで誘導してから私をベッドに押し倒してきた。

「えっと……フェリスさん。一体なんの……」
「あなた――ティアさん?」

 フェリスさんが私を見ながら首を傾げて尋ねてくる。
 私はなんと言って良いか少し考えて――。

「いいえ、私は……私の名前はユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申します」

 私の言葉にフェリスさんは眉を顰めた。

「やっぱり、貴女が総督府スメラギから来た兵士が探していた子なのね?」
「はい……ごめんなさい。御迷惑をおかけして――」

 私は、腕を無くしていたフェリスさんの時を思い出して頭を下げる。
 そんな私を見てフェリスさんは溜息をついた後。

「大丈夫よ。混濁していた意識の中、貴女が怒ったのも見たし、腕を直してくれた時も泣きそうな顔をして直してくれたものね」
「いえ――それは私が全部悪いんです。本当なら、怪我をする事ありませんでしたし、町の方に迷惑をかけることも無かったんです。私が浅慮な行動を取ったりす――」

 途中まで話した所でフェリスさんが私を抱きしめてきた。

「貴女、何でも完璧にこなそうとしていない? 人は完璧な存在じゃないのよ? それだとアレクも大変だと思うわよ?」

 私は、アレクの言葉を出されて胸が詰まった。
 フェリスさんは、私をアレクのお嫁さんのティアだと思っているからやさしくしてくれているだけで――私が一切関係の無い存在だと知ったら、きっと違う対応をしてくる。
 アレクの繋がりがあるからこそ、やさしくしてくれている。
 私は、その程度の者に過ぎないのに。

「フェリスさん……私は……私はティアですがティアではないんです」 


 私を抱きしめていたフェリスさんは、私を離すと首を傾げながら私を見てくると。

「え? ティアさんなのにティアさんじゃない? どういうことなの?」
「私は……」

 何と説明すればいいんだろう。
 この世界の人間にクローン技術などを説明して理解されるだろうか?
 そもそも精神の移植に関しても、説明して理解できるものなのだろうか?
 納得させやすい方法としては、ティアは双子の妹という設定にすればどうだろう?
 そうすれば丸く収まるかもしれない。

「フェリスさん、ティアは私のいも……」

 途中まで言いかけたところで私は唇を、フェリスさんの人差し指で押さえられた。
 フェリスさんの顔を見ると若干、怒っているようにも見える。

「嘘は駄目よ? 宿をやっているとね嘘をつく人とそうじゃない人の見分けがつくの。そして嘘をつく人は二通りあるのよ? 意味のある嘘をつく人とそうじゃない人。ティアさん、貴女の嘘は意味のある嘘なの?」

 フェリスさんの言葉を私は、聞きながら思案し――コレからのティアとアレクの事を思い説明する事にした。
 理解されない可能性の方が遥かに高い――だけど……アレクとティアの今後の事を考えたら正直に伝えた方がいいと思うから。

「分かりました。きちんと説明できるかどうかは不安ですけど、説明いたします」

 私の言葉に頷いたフェリスさんを見ながら私は空中に魔法陣を描いていく。
 その魔法陣のどれもがこの世界には、存在していない私の膨大な魔力を制御するためだけの魔法陣であり生活魔法。

「この魔法陣は、生活魔法を適度な力で発動させるために、私の為だけに作られた私専用の生活魔法の魔法陣です」
「生活魔法に魔法陣?」

 フェリスさんはとっても驚いている。

「私の魔法力は常人の数万倍あります。そのため、魔力制御を行う魔法陣と魔法詠唱を使い始めて魔法の威力を常人が使うレベルまで落とす事が出来るんです」

 フェリスさんはようやく理解してくれたのか呆けた顔をしている。
 でも、ここからが本題。

「私は大陸最強の魔法師とリースノット王国の王族や関係者には言われていました」

 私の説明にフェリスさんは唾を飲み込んだ。


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品