公爵令嬢は結婚したくない!
好きという気持ち
「アレク――一体いつから?」
ベッドの上で座りながらアレクを見上げて私はポツリと言葉を紡ぐ。
目の前に立ったまま私を見降ろしてきているアレクは、私が座っているベッドの左に座ると右肩に手をまわしてきて、私の体を引き寄せてきた。
突然の事に、抵抗する事も出来ず彼の胸に飛び込んだ私は、アレクの汗の匂いを嗅いでドキドキしてしまう。
「ティア、心配事があるようならきちんと言ってほしい」
頭の上から声をかけられて、私は茫然としたまま顔を上げる。
すると私を見つめてきていた彼と視線が絡み合う。
そして自然と……。
「――んっ」
私は、アレクの逞しい胸板に頬を寄せる。
日中ずっと外にいたからなのか、男性特有なのか汗の匂いがする。
でも、嫌いじゃない匂い。
私は顔を上げながら。
「えっとね……私とアレクの関係をきちんとフェリスさんとエイダさんには教えた方が良い気がするの」
私の言葉にアレクが頬を掻いてから私を力強く抱きしめてくる。
「ティアと俺がそういう関係じゃない。夫婦の中では無いと言う事を伝える――そう言う事か?」
「う、うん……」
きっとエイダさんもフェリスさんも説明してくれれば分かってくれると思うし、それに私だって、いつまでもエイリカ村に居る訳にはいかないし。
「それは、止めた方がいいな」
「どうして?」
「秘密を知る者が増えれば、それだけ俺とティアが夫婦ではないという事が村長の息子に伝わる可能性がある。それに……」
アレクが私の顎に手を当てる私の顔を上げてキスをしてくる。
「ティアを離したくない。俺と結婚して本当の夫婦になってほしい。」
「けっ……結婚? 本当の夫婦……」
私は、キスをしたばかりの唇に手を触れながら、茫然と呟く。
たしかに……アレクは嫌いじゃないし好ましいと思っているけど……。
どうしてか分からないけど、それは――。
「あ……す、すまない……今の事は忘れてくれ」
「――え?」
アレクは、手にタオルを持つと私の顔に宛がってきた。
そこでようやく、私は自分が涙を零している事に気がつく。
「ごめんなさい……」
胸の奥が苦しい。
とても胸の奥が痛い。
でも、私はきっと――。
翌日、目を覚ますと私はベッドの上で寝ていた。
もうアレクは外に行ったのか部屋にはいない。
「あのまま……泣いたまま、私……寝ちゃたんだ……」
私、最低だ。
きっとアレクは一生懸命、プロポーズしてくれたのに私はきちんと答える事すらしなかった。
涙を流して断っただけで、私の言葉からは何も言ってない。
こんなんじゃダメなのに……。
でも、言い知れない不安が胸中に広がって言葉には出来なかった。
コンコンコン――。
扉を叩く音が部屋内に響き渡る。
「はい……」
廊下に繋がる扉が開いてフェリスさんが部屋に入ってくる。
そして昨日と同じように薬草の液体を染み込ませたタオルで私の足を包むと。
「明日には歩けそうだね。それより……なんて顔しているんだい――」
「顔ですか……?」
「そうだよ。初日に見た時とはまるで別人のようだよ。アレクと喧嘩でもしたのかい?」
私はフェリスさんの言葉に頭を振る。
そんな私を見てフェリスさんは溜息をつくと。
「まったく、アレクもアレクだけどティア、あんたもアンタだよ」
「……はい」
私の返答を聞いてフェリスさんが、もう一度溜息をつくと私が座っているベッドに腰を下ろしてきた。
「アレクのことを、アンタは嫌いなのかい?」
「いえ! そんな事ありません! で、でも……私には、記憶がありませんし、それに……私みたいな余所者にアレクはもったいないです……」
よく考えてみたら、私みたいな人にアレクはもったいないと思う。
だって、アレクは笑うと子供みたいでかわいいし、でもいざとなったら頼りになるし、それに……私を大事にしてくれるし、いつも優しい目で見てきてくれるし……。
「あの子は、そんな事を気にするような子じゃないと思うけどね」
「で、でも!」
私は、フェリスさんの方へ視線をむけると。
「まぁ、良く考えてみることさ。本当に大事な物は失ってからじゃ遅いんだからね」
「……はい」
フェリスさんの言葉に私は頷く事しかできなかった。
部屋から出ていくフェリスさんの後ろ姿を見ながら扉が閉まったのを確認した所で、私はベッドの上に横たわる。
私は、一体どうしたいのか……。
答えは出ない。
でも、アレクが私と結婚したいと言ってくれた時は、心臓の鼓動が彼に聞こえるかと思うくらいドキドキしていた。
きっとアレクと結婚したら、毎日が楽しいと思うし子供も可愛いと思う。
「うん、アレクが帰ってきたらきちんと話してみよう」
私はアレクにきちんと自分の気持ちを、好きって気持ちを伝えようと思った。
きっと、いろいろ大変だと思うけど……。
何とかなるはずだから。
ベッドの上で座りながらアレクを見上げて私はポツリと言葉を紡ぐ。
目の前に立ったまま私を見降ろしてきているアレクは、私が座っているベッドの左に座ると右肩に手をまわしてきて、私の体を引き寄せてきた。
突然の事に、抵抗する事も出来ず彼の胸に飛び込んだ私は、アレクの汗の匂いを嗅いでドキドキしてしまう。
「ティア、心配事があるようならきちんと言ってほしい」
頭の上から声をかけられて、私は茫然としたまま顔を上げる。
すると私を見つめてきていた彼と視線が絡み合う。
そして自然と……。
「――んっ」
私は、アレクの逞しい胸板に頬を寄せる。
日中ずっと外にいたからなのか、男性特有なのか汗の匂いがする。
でも、嫌いじゃない匂い。
私は顔を上げながら。
「えっとね……私とアレクの関係をきちんとフェリスさんとエイダさんには教えた方が良い気がするの」
私の言葉にアレクが頬を掻いてから私を力強く抱きしめてくる。
「ティアと俺がそういう関係じゃない。夫婦の中では無いと言う事を伝える――そう言う事か?」
「う、うん……」
きっとエイダさんもフェリスさんも説明してくれれば分かってくれると思うし、それに私だって、いつまでもエイリカ村に居る訳にはいかないし。
「それは、止めた方がいいな」
「どうして?」
「秘密を知る者が増えれば、それだけ俺とティアが夫婦ではないという事が村長の息子に伝わる可能性がある。それに……」
アレクが私の顎に手を当てる私の顔を上げてキスをしてくる。
「ティアを離したくない。俺と結婚して本当の夫婦になってほしい。」
「けっ……結婚? 本当の夫婦……」
私は、キスをしたばかりの唇に手を触れながら、茫然と呟く。
たしかに……アレクは嫌いじゃないし好ましいと思っているけど……。
どうしてか分からないけど、それは――。
「あ……す、すまない……今の事は忘れてくれ」
「――え?」
アレクは、手にタオルを持つと私の顔に宛がってきた。
そこでようやく、私は自分が涙を零している事に気がつく。
「ごめんなさい……」
胸の奥が苦しい。
とても胸の奥が痛い。
でも、私はきっと――。
翌日、目を覚ますと私はベッドの上で寝ていた。
もうアレクは外に行ったのか部屋にはいない。
「あのまま……泣いたまま、私……寝ちゃたんだ……」
私、最低だ。
きっとアレクは一生懸命、プロポーズしてくれたのに私はきちんと答える事すらしなかった。
涙を流して断っただけで、私の言葉からは何も言ってない。
こんなんじゃダメなのに……。
でも、言い知れない不安が胸中に広がって言葉には出来なかった。
コンコンコン――。
扉を叩く音が部屋内に響き渡る。
「はい……」
廊下に繋がる扉が開いてフェリスさんが部屋に入ってくる。
そして昨日と同じように薬草の液体を染み込ませたタオルで私の足を包むと。
「明日には歩けそうだね。それより……なんて顔しているんだい――」
「顔ですか……?」
「そうだよ。初日に見た時とはまるで別人のようだよ。アレクと喧嘩でもしたのかい?」
私はフェリスさんの言葉に頭を振る。
そんな私を見てフェリスさんは溜息をつくと。
「まったく、アレクもアレクだけどティア、あんたもアンタだよ」
「……はい」
私の返答を聞いてフェリスさんが、もう一度溜息をつくと私が座っているベッドに腰を下ろしてきた。
「アレクのことを、アンタは嫌いなのかい?」
「いえ! そんな事ありません! で、でも……私には、記憶がありませんし、それに……私みたいな余所者にアレクはもったいないです……」
よく考えてみたら、私みたいな人にアレクはもったいないと思う。
だって、アレクは笑うと子供みたいでかわいいし、でもいざとなったら頼りになるし、それに……私を大事にしてくれるし、いつも優しい目で見てきてくれるし……。
「あの子は、そんな事を気にするような子じゃないと思うけどね」
「で、でも!」
私は、フェリスさんの方へ視線をむけると。
「まぁ、良く考えてみることさ。本当に大事な物は失ってからじゃ遅いんだからね」
「……はい」
フェリスさんの言葉に私は頷く事しかできなかった。
部屋から出ていくフェリスさんの後ろ姿を見ながら扉が閉まったのを確認した所で、私はベッドの上に横たわる。
私は、一体どうしたいのか……。
答えは出ない。
でも、アレクが私と結婚したいと言ってくれた時は、心臓の鼓動が彼に聞こえるかと思うくらいドキドキしていた。
きっとアレクと結婚したら、毎日が楽しいと思うし子供も可愛いと思う。
「うん、アレクが帰ってきたらきちんと話してみよう」
私はアレクにきちんと自分の気持ちを、好きって気持ちを伝えようと思った。
きっと、いろいろ大変だと思うけど……。
何とかなるはずだから。
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