公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

王城に向かいましょう。

 私は、台所に行くとお肉保管庫から、お肉のブロックを取りだす。
 すると、お肉を見て毎度の事ながら、ルアちゃんが足に纏わりついてきた。
 今日は、いつもの貴族学院の制服ではないので、スカートの中に入ってきてしまう。

 私は溜息をつきながら、空中に魔法陣を組み上げていく。
 私が魔法陣を使うのは他の人とは毛色が違う。
 高すぎる魔力量を、そのまま使うと大惨事に繋がってしまうから。
 だから魔法陣を使うことで自分の力を極限まで限定し抑え込む。
 さらに、詠唱を行う事で発動魔法の力をさらに落とす。
 こうする事で、一般の人が無詠唱で発動する生活魔法のレベルまで威力を弱める事ができる。

 私は、魔法で水を作り出してお鍋に注ぐ。
 そして水の入ったお鍋を、魔動コンロの上に置く。
 そして魔動コンロを起動する。

 この魔動コンロは3年前に発売された物で試作品でもあって国内で最初に置かれた物でもあった。
 原理は簡単で、白色魔宝石を加工した魔石からの熱で物を加熱するだけ。
 簡単に言えばIHと言った方が早いかもしれない。
 起動するのは、微量の魔力を流すだけで、最新式は魔力が蓄えられた棒を販売しているのでそれを近づけるだけで動き出す。

 お値段は金貨2枚。
 リースノット王国の年収が金貨400枚くらいが平均だから、そんなに値段は高くはない。
 問題は、一日1000個近い白色魔宝石を最近作り続けているくらいだけど。

 そんな事を考えていると、水が沸騰し始めた。
 まな板と包丁を沸騰したお湯で軽く煮沸消毒した後に、まな板の上にブロックのお肉を置いて1センチ四方のブロックに切り分けたあと、お鍋の中に投入して油を抜いていく。

 本当は、ササミ肉とかが欲しいんだけど、リースノット王国では販売がほとんどない。
 というか鶏がいない。
 仕方無く、牛や馬や豚に近いお肉で代用するしかない。
 私はお肉の脂を丁寧に救いながら、テーブルの上にボールを置いて、魔法陣を描いた後に詠唱を行いボールの中にお水を注ぐ。
 そして油抜きしたサイコロ状のお肉をお鍋からお玉で掬い取った後に水の中に投入していき冷やす。
 1個だけボールから取り出して食べて十分冷えているのを確認した後に、お皿にお肉を盛り付けて完成!

「ルアちゃん。できましたよ」

 私は、ドレスのスカートを捲って、スカートの中で足にじゃれついてきている白い子犬を抱き上げる。
 そして両膝をついてお皿を床の上に置く。

「はい、お手! おかわり!」

 と、細かい芸をやらせた後に。

「はい、食べていいよー」

 そう言うと、ルアちゃんは勢いよく食べ始める。
 私は、ルアちゃんの食べている姿を横目で見ながら、学園長から上げられてきた資料に目を通していく。

 貴族学院に新しい校舎が建てられる事になった。
 その校舎は、地球の小学校の鉄筋コンクリートの校舎を目安に作られた校舎で、使われている素材事態は鉄と古代モルタルだけど、古代モルタルの方が長持ちするから私は古代モルタルの製法を伝えて建築計画を進めている。

 クラスの数は100クラス近い。
 下は6歳から上は16歳まで通える学校にしてある。
 子供達は、無料で勉強を受けられる形を取っていて、その財源は全て私の私的財産。
 簡単に言えば、魔動コンロなどの知的財産権からの収入で賄われている。
 もちろん、子供達を通わせれば給付金を各家庭に配布させるようにしている。
 その金額は、月に換算すると金貨6枚。
 年間にあらわすと金貨72枚に相当する。
 親の年収が金貨400枚が相場だとすると実に2カ月分近くに相当する。
 おかげで今年の新入生の人数は1300人近い。
 うん、おかげで全然お金が溜まりません。
 まぁ、勉強は国の基礎ですから、それは仕方ないです。

 私が考えている内に、ルアちゃんがご飯を全部食べてしまったのかお皿まで舐めている。
 魔法でお水をお皿の上に出して上げると、お水を舌で舐めて飲んだ後、ルアちゃんは床に寝そべってしまった。

 私は仕方無く抱き上げてルアちゃん専用の私お手製のクッションの上に下ろす。

「ルアちゃん。今日は、私はお城に行かないと行けない日ですから、寮の皆さんに迷惑をかけたらダメですよ?」

 私は、ルアちゃんの頭を撫でながら伝えていると、すでに目を閉じて寝てしまっていた。
 きっと私の話を聞いていないんでしょうね。

 私は談話室にルアちゃんを置いたまま、ホールに出る。
 そこにはケットシ―とケルピーが私を見た後に溜息をついてきた。
 そしてケットシ―が私に向かって――。

「子犬には甘甘ですな。クラウス殿下に貰った子犬だから?」

 ――と、聞いてくる。
 私は、否定的な意味合いで頭を振る。

「それとこれは関係ないです。それとルアちゃんをきちんと面倒見ておいてくださいね。きちんと面倒見てくれない時と、もしルアちゃんに何かあったら、ケットシ―さんは、お空のお星様になりますので頑張ってください」

 私は、ケットシ―に、きちんと依頼する。
 どうせ、ウラヌス卿が派遣している私を監視している猫なのだ。
 きちんと使い倒してあげないともったいないです。
 そんなやり取りをしている私達にケルピーが――。

「それじゃ、気をつけて行ってくるんだな」

 ――と、私に話しかけてくる。
 最近のケルピーはずっとこんな感じで辺り障りない対応をしてきてくれる。

「はい、それでは女子寮の警護をよろしくお願いします」

 私は、頭を下げてケルピーに依頼すると女子寮から出る。
 まだ朝の時間帯が早いと言う事もあり女子寮から、馬車停留所までは10分近くあるけど、誰にも会わずについてしまう。

 そして、周囲を見渡していつもの馬車を確認する。
 エンブレムは3本の槍が交差している王家の文様。
 これがついている馬車は、直通で王城まで向かってくれる。
 貴族街で止められる事も無い。

「従者さん、王城までお願いします」

 従者さんは私のドレス姿を見て納得したように頷くと、馬車を走らせ始めた。
 今日は、王城での定例会議がある日。
 諸外国への対応を謁見の間で行う。
 その際には、普段参加しない王宮魔法師筆頭も参加しないと行けない。

 私は馬車に揺られながら溜息をつく。
 きっと王城に行けばお父様に会う事になる。
 そしてクラウス様とも出会う事に成ると思う。
 今日は、なんて言い含めて回避すればいいか頭がいたい。

 しばらく馬車に揺られていると、目の前にリースノット王国の王城が見えてきた。



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