公爵令嬢は結婚したくない!
リースノット王国、国王陛下とウラヌス卿の話(後編)
「――なるほど、わかりました。たしかにクラウス殿下が来られるなら……」
そこでウラヌス卿は言葉に詰まった。
私はウラヌス卿の真意を測るために表情を見る。
その表情は良いとは言えない。
「国王陛下。もしかしてこちらの部屋は防音魔法など掛っているのでは?」
私はウラヌス卿の言葉に頷く。
仕事に集中するために扉を叩かれない限り外の音が入らないようにしてある。
その為に仕事に集中する事ができる。
「防音魔法がどうかしたのか?」
ウラヌス卿は私の言葉に頷きながら、テラスへ通じる窓を開く。
そして山の方へ手を向けて――。
「国王陛下、向こうをご確認ください」
私は、席から立ち上がるとテラスに出る。
そしてウラヌス卿が手を向けている方へ視線を向けると、そこには天然の要塞である山脈の一角が綺麗に消えていた。
「ウ……ウラヌス卿。リースノット王国の自然の防壁である山脈の一部が消えているのだが……どういうこと……なのだ?」
ウラヌス卿は、頭を一度下げたあと。
「ユウティーシア嬢が、魔法で消し去りました」
ウラヌス卿の言葉に私は一瞬頭が真っ白になる。
まさか……大陸一の魔力量を誇っていると思っていたが……これほどとは……。
おかしい。
これは、明らかにおかしい。
神級魔法師であっても、山脈の一部を消し飛ばす程の魔法を発動する事はできない。
そのような魔法など聞いたこともない。
「ウラヌス卿、本当にこれはシュトロハイム家ユウティーシア令嬢が行ったものなのか? どのような魔法を使ったのだ?」
上級魔法師であった私としては、シュトロハイム家のユウティーシア令嬢が、どのような魔法で山脈の一角を消し飛ばしたのか気になってしまう。
そんな私に向かってウラヌス卿は――。
「恐らくは……ファイアーランスかファイアーボールかと思われます」
――と、報告してきた。
魔法式構築研究室長であり近衛兵魔法騎士団の教導官でもウラヌス卿の言葉に私は疑問を呈した。
生活魔法以外の魔法を発動させる為には、魔法陣つまり魔法式を空中に描き詠唱と魔法名を歌いあげないと発動しない。
そのため、どのような魔法であっても必ず魔法発動条件が存在する。
だからこそ、シュトロハイム家のユウティーシア嬢が、どのような魔法を使ったのかをウラヌス卿が看破出来なかったのが不思議でならない。
「ウラヌス卿でも、分からない道の魔法なのか?」
私の言葉に、ウラヌス卿は否定的な意味合いを込めて頭を振ってくる。
そして――。
「いえ、魔法式も詠唱も魔法名も使わずに発動させていました。もしかしたら……」
私は喉を鳴らす。
まさかそんな訳が……。
「生活魔法の灯の可能性が高いと言う事か?」
私の言葉にウラヌス卿は頷いてくる。
つまり、最下級の魔法とも呼べない魔法で山すら消し飛ばす。
それだけの魔法を使う者を……人間と呼ぶのだろうか?
「ウラヌス卿、シュトロハイム家のユウティーシア嬢に行動は逐一、報告するようにしろ。最悪、国の害になるようなら殺してもかまわん」
シュトロハイム公爵家と、息子のクラウスには悪いが、ユウティーシア嬢はアルドーラ公国や、巨大軍事国家ヴァルキリアスよりも遥かに危険存在。
「ですが……あの娘が本気で国に仇なすとは思えませんが……」
そのくらいは私にも分かる。
ユウティーシア嬢は、基本誰かの為に自分の利益を捨てて民を救うために活動をしている。
だが、過ぎたる力は激毒に成りうる。
だからこそ、打てる手立ては打たなければならない。
それが結果的に、シュトロハイム公爵家バルザックとエレンシアに恨まれる事になるかもしれない。
だが国を治める者として妥協する訳にはいかない。
「最悪の事態を想定せねばならぬからな」
ユウティーシア嬢一人の命で民の命を守れるものならば安いものだ。
そのくらいは貴族に生まれた以上、理解しているだろう。
「わかりました。すぐに別の妖精を……」
私はウラヌス卿の言葉に頷きながら――。
「ウラヌス卿。アルドーラ公国との交渉事を任せたぞ」
そこでウラヌス卿は言葉に詰まった。
私はウラヌス卿の真意を測るために表情を見る。
その表情は良いとは言えない。
「国王陛下。もしかしてこちらの部屋は防音魔法など掛っているのでは?」
私はウラヌス卿の言葉に頷く。
仕事に集中するために扉を叩かれない限り外の音が入らないようにしてある。
その為に仕事に集中する事ができる。
「防音魔法がどうかしたのか?」
ウラヌス卿は私の言葉に頷きながら、テラスへ通じる窓を開く。
そして山の方へ手を向けて――。
「国王陛下、向こうをご確認ください」
私は、席から立ち上がるとテラスに出る。
そしてウラヌス卿が手を向けている方へ視線を向けると、そこには天然の要塞である山脈の一角が綺麗に消えていた。
「ウ……ウラヌス卿。リースノット王国の自然の防壁である山脈の一部が消えているのだが……どういうこと……なのだ?」
ウラヌス卿は、頭を一度下げたあと。
「ユウティーシア嬢が、魔法で消し去りました」
ウラヌス卿の言葉に私は一瞬頭が真っ白になる。
まさか……大陸一の魔力量を誇っていると思っていたが……これほどとは……。
おかしい。
これは、明らかにおかしい。
神級魔法師であっても、山脈の一部を消し飛ばす程の魔法を発動する事はできない。
そのような魔法など聞いたこともない。
「ウラヌス卿、本当にこれはシュトロハイム家ユウティーシア令嬢が行ったものなのか? どのような魔法を使ったのだ?」
上級魔法師であった私としては、シュトロハイム家のユウティーシア令嬢が、どのような魔法で山脈の一角を消し飛ばしたのか気になってしまう。
そんな私に向かってウラヌス卿は――。
「恐らくは……ファイアーランスかファイアーボールかと思われます」
――と、報告してきた。
魔法式構築研究室長であり近衛兵魔法騎士団の教導官でもウラヌス卿の言葉に私は疑問を呈した。
生活魔法以外の魔法を発動させる為には、魔法陣つまり魔法式を空中に描き詠唱と魔法名を歌いあげないと発動しない。
そのため、どのような魔法であっても必ず魔法発動条件が存在する。
だからこそ、シュトロハイム家のユウティーシア嬢が、どのような魔法を使ったのかをウラヌス卿が看破出来なかったのが不思議でならない。
「ウラヌス卿でも、分からない道の魔法なのか?」
私の言葉に、ウラヌス卿は否定的な意味合いを込めて頭を振ってくる。
そして――。
「いえ、魔法式も詠唱も魔法名も使わずに発動させていました。もしかしたら……」
私は喉を鳴らす。
まさかそんな訳が……。
「生活魔法の灯の可能性が高いと言う事か?」
私の言葉にウラヌス卿は頷いてくる。
つまり、最下級の魔法とも呼べない魔法で山すら消し飛ばす。
それだけの魔法を使う者を……人間と呼ぶのだろうか?
「ウラヌス卿、シュトロハイム家のユウティーシア嬢に行動は逐一、報告するようにしろ。最悪、国の害になるようなら殺してもかまわん」
シュトロハイム公爵家と、息子のクラウスには悪いが、ユウティーシア嬢はアルドーラ公国や、巨大軍事国家ヴァルキリアスよりも遥かに危険存在。
「ですが……あの娘が本気で国に仇なすとは思えませんが……」
そのくらいは私にも分かる。
ユウティーシア嬢は、基本誰かの為に自分の利益を捨てて民を救うために活動をしている。
だが、過ぎたる力は激毒に成りうる。
だからこそ、打てる手立ては打たなければならない。
それが結果的に、シュトロハイム公爵家バルザックとエレンシアに恨まれる事になるかもしれない。
だが国を治める者として妥協する訳にはいかない。
「最悪の事態を想定せねばならぬからな」
ユウティーシア嬢一人の命で民の命を守れるものならば安いものだ。
そのくらいは貴族に生まれた以上、理解しているだろう。
「わかりました。すぐに別の妖精を……」
私はウラヌス卿の言葉に頷きながら――。
「ウラヌス卿。アルドーラ公国との交渉事を任せたぞ」
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