こんなふざけた裁判に弁護士なんていらない!

Len Hat

第一章 第3話 【運命の一発】

酒場は大いに賑わっていた.ここに来るのは飲み比べをする者、楽器で演奏する者、音楽にあわせて踊る者など様々だ。その人々を除けて、カウンターの方へ向かった。カウンターには日焼けした大柄の男が接客していた。
彼はその人に「大図書館はどこにありますか?」と尋ねた。
男は「さぁ知らねぇな。そんなことよりも何か飲むかい。」と答えた。彼は断ろうとしたが、男は彼を逃がさなかった.逃げ場を失った彼は、何か注文しようとするも何を注文すればいいのか迷っていた.戸惑った彼は男に壁に書かれている殴り書きを指差して
「あそこに書かれているのは何ですか?」と質問した.
男は「あぁ,字が汚くてすまないな.あそこに書かれているのはリアナビール 24ロンドだ.それにするかい?」と軽快に答えた.
彼は「未成年なので,結構です.」と断った.
それを聞いた男は「未成年だと?看板に『未成年者はお断り』と書いてあるのに無視して入ってきたのか!!」と鬼の形相で怒鳴った.一気に周りの客たちの視線が彼にとまった.
そんな状況で彼は「すみません.看板の文字が読めなかったので」と弁明を求めた.
男は「文字が読めなかっただぁ.そんなことはないはずだ.」と否定した.
彼は「本当です,ここに来たばっかでまだこの町について何も知らないんです.」と言ったら,
男は「何だと!? 確かに、あんた見慣れない顔だな、あんた何者だ?」と眉間にシワを寄せて言った。彼は不意に「日本からきました。鎌岸椿です。」と事実を口にしてしまった。
男は「ニッポン?聞いたことない場所だな、どの方角にあるんだ?」と彼の目を凝視した。
彼はとっさに「あの方角にあります」と指を適当な方向に指して答えた。男は彼の指した方角を見つめ、少し首を傾げた。そして、男は納得したように頷き、話を続けた。
「なるほどな、あの方角に、その言葉使いとなれば、あんたヤーパのもんだろ。」と言った.
彼は「ヤーパ?」と首を傾げた.
男は「ニッ…んや,あんたの故郷のことをここではヤーパって言うんだ.あの方角から来たんだろ?」と彼を見つめて質問した.
彼は「えぇその通りです.」と男に合わせた.
それを聞いて,男は「おいみんな!!あのヤーパから生き延びた者がきたぞ!!歓迎の宴を始めるぞ!!」と今までの対応が嘘のように彼の手を持ち上げながら客たちを盛り上げた.客たちは笑顔で彼に向けて乾杯し,互いに酒を酌み交わした.
彼が現状に戸惑っていると男は「そう言えば自己紹介をしていなかったなぁ.俺はこの店の店主をしている.さっきはすまんな、またどっかの不良か不審者どもかと思ったんだ。まさかあんたがヤーパのもんだったとは」と彼と肩を組ながら、言った。
彼も「誤解がとけてよかったです。」と返した。
店主は「ついてこい、さっきの詫びに一杯奢ってやる、もちろん酒以外でな。」と彼の腕を引っ張ってカウンターの方へ向かった。彼がカウンター席に座ったと同時にオレンジジュースを差し出された。彼がそれを口にすると、店主と彼のやり取りが始まった。
「あんたどうしてこの町に来たんだ?」と店主が話しかけた。彼は「この町の大図書館に用があって来ました。」とここに来た目的を話した。
「大図書館で何をするんだ?」
「調べたいことがあるからです」
「調べたいことってなんだ?」
「えっと…それは」
「店主ここの席って空いてる?」と二人のやり取りの間に可憐な声が割り込んできた.そして、三人の
やり取りが始まった.
店主 「ジェッキーか!,そこなら空いてるぞ.」
ジェッキー「それでどうしたの?ヤーパの人と話しているなんて珍しいね?」
椿 「...!」
ジェッキー「ん,どうしたの?」
椿 「どうして俺がこの町の人ではないってわかるんですか?」
ジェッキー「そこまで難しいことじゃないけど,気になる?」
椿「気になります.」
ジェッキー 「じゃあまず,あなたの服装と振る舞いをみるとこの町の人ではないということは一目でわかる.次に,店主の反応から多分他の国の亡命者か逃亡者,革命家みたいな自由の為に生きる人なのかなと推測できる.店主はそういうタイプの人が好きだから.でも,逃亡者にしては身なりはきちんとしているから逃亡者ではないし,革命家にしては変装や武器を携帯していないことから革命家も違う.残っているのは亡命者だけになる.最後に周りのお客さんの反応の大きさからあなたはあの鎖国国家ヤーパから亡命した人だということが推理できる.ねっ,思っていたより簡単でしょ!」とジェッキーという名の彼女は彼らの前で今推理したことを話した.
店主 「ジェッキーさすがだな.まさにその通りだ!!」
ジェッキー 「そんなことよりどうしてあなたがここにいるのか気になるわ」
椿 「大図書館に行きたいけど,どこにあるのかわからなかったので,色々と聞いてまわっていたところです.」
ジェッキー 「なるほど,そういうことだったのね.大図書館ならこの酒場から西の方角にあるわ」
椿 「ありがとうございます.では早速...」
ジェッキー「ちょっと待って」
椿「何か俺に用ですか?」
ジェッキー「大図書館に何しに行くの?」
店主「そう言えばまだ聞いていなかったなその件」
椿「調べものです.」
ジェッキー「調べものって何?」
椿「異次元転生みたいなものですかね」
ジェッキー「異次元転生・・・?」
店主「いじげんへんせいって何だ?」
ジェッキー「店主,異次元転生よ.簡単にいうとこの世界とは異なる世界に召喚されるというものよ.」
店主「何だと.そうなのかいあんた?」
椿「まぁそんな感じです.」
ジェッキー「そんなものを調べてどうするの?学者でもないのに」
店主「確かにな,どうするつもりだ?あんた」
椿「ただ調べたいだけです.他に理由はありませんよ、では失礼し」
ジェッキー「じゃあどうしてそんな君は動揺してるの?」
椿「えっ」
ジェッキー「だってあなたを見ていると何か隠しているような仕草なんだもん.さっきから周りを気にしているし、不審者っぽい.なんならその隠し事を当てようか?」
椿「やめてください。その代わりにここだけの話にしてくれませんか?」
ジェッキー「それでかまわないわ」
椿「実はこの世界の住人ではないです.異世界から来たんです。」
店主「はぁ!?」 
ジェッキー「....」
椿「やはり,信じられませんよね.」
ジェッキー「そんなことないわ」
店主「えぇ!!」
ジェッキー「だって,君嘘ついていないから」
椿「えっ!」
ジェッキー「一応,念のためにこれを渡しておくわ」
椿「これは?」
ジェッキー「知り合いに弁護士がいるのよ.それはその人の名刺,何か困ったことがあれば多分君の味方になって助けてくれると思うから」
椿「その多分ってのが少し気になるんですが?」
ジェッキー「まぁ持っていて損はないから.それ」
椿「ありがとうございます.」
ジェッキー「それじゃあ,もうそろそろ行くわ.」
店主「あぁ,またな.ジェッキー」
ジェッキー「今の聞いて頭真っ白になっていたでしょ」
店主「そうだ.だが,確かにわかったことがある.それはこの坊主の言っていることが本当だということだ.」
椿「どうして信じてくれるんですか?」
店主「あんたが俺達に嘘をつく理由がないことともし嘘をついていたらジェッキーが見抜くからだ.ジェッキーはその点に関しては腕がたつからな.それに人が疑うことよりも信じたほうが後々面白いことが起こるからな.」
椿「...」
ジェッキー「それじゃ,お二人さんまた今度ね.」
店主「またな」
椿「それじゃ俺はこれで失礼しまっ」
店主「ちょっと待て」
店主は椿を引き留めた
椿「何ですか、早く図書館に行きたいですけど」
店主「そんなに焦らなくてもいい、ここで会ったのも何の縁だ、俺の話に付き合え、この町についてまだ何も知らねぇだろ?」
椿「…」と元の席に着いた。
それから店主は仕事をウェイターたちに任せ、二人はこの町や椿の事情など色々なことについて話し合った。話し合っているうちに互いに事情を理解し、親しくなっていた。
話が終わると椿は頭を下げて、ぐっすり眠っている人のテーブルの下に拳銃が落ちていることに気づいた。椿はこのことを店主に伝えた。片付けに追われていた店主は「危ないからそいつのポケットに入れてくれ」と椿に頼んだ。椿はその人のポケットに入れようと拳銃を拾う。
その次の瞬間、パァン
まさにこのタイミング、とことんついていなかった彼にとってはこれまでの人生を一変してしまうような運命の銃弾が今放たれた!

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