【書籍化作品】無名の最強魔法師
絡み合う思想と想い(10)
「それで……他には問題ごとを起こしてはいないでしょうね?」
「おいおい、俺をトラブルメーカーというか問題児みたいな扱いするのはやめてもらいんだが……」
「ユウマだから言っているのよ?」
「やれやれ……」
俺は肩を竦めながら、周りを見渡す。
噴水が存在する広場は、それなりの広さがあり人の行き来も多い。
ただ、その表情には幾分かの陰りが見えるような気がする。
「もー。私の話を聞いているの?」
リネラスが、スライムの件で俺に対して言い足りないのか文句を言おうとしてくるが、とりあえず話題を変えたほうがいいだろう。
人の精神世界に長くいてもいい事は何もないからな。
「リネラス」
俺は、彼女の語りを止めるために両肩に手を置く。
すると、一瞬だけリネラスは「え?」という声を上げて両肩に添えられている俺の腕を見たあと、顔を真っ赤にして「な、なによ……」と、語りかけてきた。
「俺は、フィンデイカ村のことは、お前たちと出会うまでは知らない。何が、どう違うか教えてもらえると助かる」
「それって、必要なことなの?」
「必要かどうかは分からないが、イノンが目を覚まさない理由に繋がっている可能性もある。それに、真実を確かめる必要もあるんだろう?」
「真実というか、イノンの真意を推し量る必要ね」
俺の言葉を聞いたリネラスは、俺が口にした言葉を訂正すると、広場の噴水を見た。
「この噴水ってユウマが来たときに枯れていたわよね?」
「そうだな……」
「他に、あのりんごを売っているお姉さん!」
「もしかして、あれって……」
俺はフィンデイカの村でりんごを投げて寄越してきたおばさんのことを思い出す。
「ふむ、たしかに細部が少し違う気がするな」
「でしょう? それだけじゃないんだけどね。ところで、どうするの? イノンの両親って宿屋を経営していたよね?」
「確かに……宿屋を経営していたな」
俺はポケットの中に手を突っ込む。
そこには何も入っていない。
「どうしたの?」
「非常事態だ。お金が……ない……」
「はぁー……」
リネラスが溜息をつき「まったく、ユウマはダメね」と、イルカのリュックサックを俺に見せ付けてくる。
「おい……アイテムボックス機能が付与されているリュックサックは持ってきたら不味いんじゃないのか? 精神的不可とか色々と……」
「大丈夫、たぶん……きっと……、それにお金があったほうがいいと思うから!」
「はぁ……、少しは物事をきちんと考えてから動く癖をつけたほうがいいぞ?」
「ユウマに言われたくないわ」
俺の注意をリネラスは無視して、イルカの形をしたリュックサックを開けていく。
「――え? あ、あれ?」
「どうした?」
「普通のリュックサックになっていて、何も入ってない!」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
これで、摩訶不思議なアイテムボックスが使えたら、この世界がどうなるのか想像もつかなかっただけに俺は安堵し溜息をつく。
「なんだか、ユウマ感じが悪いんだけど!?」
「気のせいだろ、それよりどうやってイノンに近づく? お金がないと、さすがに会うのは厳しくないか?」
「そうね……。こうなったら、冒険者ギルドに登録して仕事をするしかないわね」
「だよな……」
リネラスの言葉に俺は溜息をつきながら頷く。
「何か問題でもあるの?」
「いや――」
俺は、彼女に何と言っていいのか迷ってしまう。
そもそも、フィンデイカの村に来てから冒険者ギルドのほうへ向かわなかったのは明確な理由があったからだ。
リネラスの精神世界、その中で彼女の過去を見た俺としては、あまりリネラスの過去に関わる内容を見せたいとは思ってはいない。
「早くいくわよ!」
躊躇していた俺の手を掴むとリネラスは、俺の腕を引っ張ってくる。
どうやら、彼女は冒険者ギルドに行くことに対して、殆ど気負いはないようだ。
「わかった」
俺は頷き、リネラスに腕を引かれる形で広場から、冒険者ギルドの建物がある道へと歩みを進めるが……。
その歩みは、少しずつ速くなっていき――。
「リネラス、少しペースを落としても……」
途中で俺は口を閉じる。
彼女の、俺の腕を掴んでいる手の平から伝わる熱が、掴んでいる力がいつもと違うから。
「早く……早く――」
リネラスの歩みは速くなる一方で、緩むことがない。
「リネラス!」
彼女の名前を叫ぶが、リネラスが反応した様子がない。
まるで、何かに急き立てられるかのように、歩みだけが速くなっていく。
「くそっ!?」
俺は、自分の迂闊さを呪った。
肉親が死んでいて、幻影だとしても、それに会えると思ったら、会いたいと思っていたのなら、冷静で居られるわけがない。
そして、ようやく冒険者ギルドの建物が、視界に入った。
「お父さん!」
リネラスが、掴んでいた手を離すと冒険者ギルドの建物に向かって走り出してしまった。
「おいおい、俺をトラブルメーカーというか問題児みたいな扱いするのはやめてもらいんだが……」
「ユウマだから言っているのよ?」
「やれやれ……」
俺は肩を竦めながら、周りを見渡す。
噴水が存在する広場は、それなりの広さがあり人の行き来も多い。
ただ、その表情には幾分かの陰りが見えるような気がする。
「もー。私の話を聞いているの?」
リネラスが、スライムの件で俺に対して言い足りないのか文句を言おうとしてくるが、とりあえず話題を変えたほうがいいだろう。
人の精神世界に長くいてもいい事は何もないからな。
「リネラス」
俺は、彼女の語りを止めるために両肩に手を置く。
すると、一瞬だけリネラスは「え?」という声を上げて両肩に添えられている俺の腕を見たあと、顔を真っ赤にして「な、なによ……」と、語りかけてきた。
「俺は、フィンデイカ村のことは、お前たちと出会うまでは知らない。何が、どう違うか教えてもらえると助かる」
「それって、必要なことなの?」
「必要かどうかは分からないが、イノンが目を覚まさない理由に繋がっている可能性もある。それに、真実を確かめる必要もあるんだろう?」
「真実というか、イノンの真意を推し量る必要ね」
俺の言葉を聞いたリネラスは、俺が口にした言葉を訂正すると、広場の噴水を見た。
「この噴水ってユウマが来たときに枯れていたわよね?」
「そうだな……」
「他に、あのりんごを売っているお姉さん!」
「もしかして、あれって……」
俺はフィンデイカの村でりんごを投げて寄越してきたおばさんのことを思い出す。
「ふむ、たしかに細部が少し違う気がするな」
「でしょう? それだけじゃないんだけどね。ところで、どうするの? イノンの両親って宿屋を経営していたよね?」
「確かに……宿屋を経営していたな」
俺はポケットの中に手を突っ込む。
そこには何も入っていない。
「どうしたの?」
「非常事態だ。お金が……ない……」
「はぁー……」
リネラスが溜息をつき「まったく、ユウマはダメね」と、イルカのリュックサックを俺に見せ付けてくる。
「おい……アイテムボックス機能が付与されているリュックサックは持ってきたら不味いんじゃないのか? 精神的不可とか色々と……」
「大丈夫、たぶん……きっと……、それにお金があったほうがいいと思うから!」
「はぁ……、少しは物事をきちんと考えてから動く癖をつけたほうがいいぞ?」
「ユウマに言われたくないわ」
俺の注意をリネラスは無視して、イルカの形をしたリュックサックを開けていく。
「――え? あ、あれ?」
「どうした?」
「普通のリュックサックになっていて、何も入ってない!」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
これで、摩訶不思議なアイテムボックスが使えたら、この世界がどうなるのか想像もつかなかっただけに俺は安堵し溜息をつく。
「なんだか、ユウマ感じが悪いんだけど!?」
「気のせいだろ、それよりどうやってイノンに近づく? お金がないと、さすがに会うのは厳しくないか?」
「そうね……。こうなったら、冒険者ギルドに登録して仕事をするしかないわね」
「だよな……」
リネラスの言葉に俺は溜息をつきながら頷く。
「何か問題でもあるの?」
「いや――」
俺は、彼女に何と言っていいのか迷ってしまう。
そもそも、フィンデイカの村に来てから冒険者ギルドのほうへ向かわなかったのは明確な理由があったからだ。
リネラスの精神世界、その中で彼女の過去を見た俺としては、あまりリネラスの過去に関わる内容を見せたいとは思ってはいない。
「早くいくわよ!」
躊躇していた俺の手を掴むとリネラスは、俺の腕を引っ張ってくる。
どうやら、彼女は冒険者ギルドに行くことに対して、殆ど気負いはないようだ。
「わかった」
俺は頷き、リネラスに腕を引かれる形で広場から、冒険者ギルドの建物がある道へと歩みを進めるが……。
その歩みは、少しずつ速くなっていき――。
「リネラス、少しペースを落としても……」
途中で俺は口を閉じる。
彼女の、俺の腕を掴んでいる手の平から伝わる熱が、掴んでいる力がいつもと違うから。
「早く……早く――」
リネラスの歩みは速くなる一方で、緩むことがない。
「リネラス!」
彼女の名前を叫ぶが、リネラスが反応した様子がない。
まるで、何かに急き立てられるかのように、歩みだけが速くなっていく。
「くそっ!?」
俺は、自分の迂闊さを呪った。
肉親が死んでいて、幻影だとしても、それに会えると思ったら、会いたいと思っていたのなら、冷静で居られるわけがない。
そして、ようやく冒険者ギルドの建物が、視界に入った。
「お父さん!」
リネラスが、掴んでいた手を離すと冒険者ギルドの建物に向かって走り出してしまった。
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