【書籍化作品】無名の最強魔法師
絡み合う思想と想い(4)
「俺は――」
途中で。
途中で言葉が詰まる。
喉元で言葉が詰まる――。
「俺は……」
自分が何を言いたいのか考えが纏まらない。
何を話そうとしようとしていたのか。
自分がどうしたいのか。
それが分からない。
「無理に、言わなくていいから。だって、ずっと妹さんの手前、我慢して頑張ってきたんだものね……」
「それは……」
「本当はね、もっと前に言うつもりだったの。でもね、ユウマの目を見て、言葉を聞いて言わないと絶対に後悔するって思ったの。だって、いまのユウマは昔の私と同じだもの。誰かの為に行動して、無意識に自分を押さえつけて苦しんで苦しんで、痛いと思っても口に出せずに自分を傷つけて、誰かを――周りを全て敵として見て、それでも信じたいと心の中で泣き叫んでいるの分かるもの」
「そんなこと……」
俺は、リネラスから顔を背ける。
今の自分がどういった顔をしているのか分からない。
どんな表情をしてリネラスを見ていいか分からない。
ただ、「そんなこと……【ない】」と続く言葉が口から出なかった。
「そういう強がりしなくていいから、だってユウマが誰かをそんなに悪く言ってることなんてないもの」
「……」
リネラスの言葉に俺は無言で返す。
彼女の言葉が分からない。
何を言っているのか一切、理解できない。
俺は、裏切った奴を……奴を――。
「裏切った奴が悪い……んだ……。俺は、俺は……」
「それ以上は駄目、本当は救ってあげたいから連れてきたんだよね? 私達にイノンが受け入れられるために、イノンのことも皆に何も言わなかったんだよね? それを全て自分の中に仕舞いこんだんだよね……」
「リネラス……」
彼女の名前を言葉として紡ぐ。
すると、リネラスは俺の頭を撫でながら語りかけてくる。
「私には、なんの力もない。ユウマの力になりたくてもなれない。ギルドマスターなのに、本当に駄目だよね。ギルドマスター失格だよね……。自分の好きな人が傷ついているのに、助けてもらったのに何もしてあげられない。それって、とっても苦しくて悲しくて辛いよ――」
「そんなことない。リネラスがいるから皆が集まっているんだろ?」
「そうじゃない。そうじゃないの。だって、ユウマが大黒柱として居てくれるから、皆が安心して暮らしていけるんだよ?」
「私達は、それに甘えてユウマに全部、背負わせていたの。妹さんにも聞いたよ? アライ村でも、ユウマは妹さんのために、ずっと行動してきたんだよね? 魔王と名乗っているのも妹さんのためなんだよね?」
「それは……長男だから……」
「――そう……だよね……」
俺の答えにリネラスは、やさしげな声で同意しながら、俺の頭の上にそっと手を置いてくる。
それが、どこか心地よく感じる。
「――疲れたんだよね?」
「……」
「多くの人がユウマの外面しか見てないけど、私はユウマの内面を心の中で見たもの。だから、イノンに裏切られたことを知って、いっぱいいっぱい傷ついたんだよね? だって、ユウマは仲間を本当に大事にするから。だから裏切られて苦しかったんだよね? だから――」
リネラスが一度、言葉を区切り俺の耳元で「頑張って偉かったね」と語りかけてきた。
頑張って偉かったねと言う言葉に、喉元まで詰まっていた言葉が口を通って――。
「大変だった……頑張った――。でも、いつも悪い方にばかり話しが……だから、俺は……真剣に受け止める事をやめ……。どんなに強い魔法を使えても、多くの知識を持っていても、思い通りにならなくてリネラスを守れなくて、イノンの事も気がつけなくて……妹も満足に幸せにできなくて、リリナにもエメラダにも何もしてあげられなくて……あれ? おれ……何を言って――」
自分で何を言っているのか分からない。
たくさんの思いが考えが脳裏に駆け巡って上手く言葉にすることが……。
「辛いときは、泣いてもいいんだよ? ユウマは、それだけ頑張ってきたもの」
リネラスが俺の頭を撫でながら語りかけてくる。
気がつけば、瞳から涙が出て――。
生まれて初めて、俺は……。
「こんなことで、ユウマを守ってあげることなんて出来ないけど、でもユウマが辛い表情をするのは、そんなユウマを見るのは、私もとっても苦しいから……。きっとイノンをここで見捨てたらユウマは絶対に後悔するから、だから少しでも愚痴でもいいから、私に話して、だって、私にはこんなことくらいしか出来ないから――」
途中で。
途中で言葉が詰まる。
喉元で言葉が詰まる――。
「俺は……」
自分が何を言いたいのか考えが纏まらない。
何を話そうとしようとしていたのか。
自分がどうしたいのか。
それが分からない。
「無理に、言わなくていいから。だって、ずっと妹さんの手前、我慢して頑張ってきたんだものね……」
「それは……」
「本当はね、もっと前に言うつもりだったの。でもね、ユウマの目を見て、言葉を聞いて言わないと絶対に後悔するって思ったの。だって、いまのユウマは昔の私と同じだもの。誰かの為に行動して、無意識に自分を押さえつけて苦しんで苦しんで、痛いと思っても口に出せずに自分を傷つけて、誰かを――周りを全て敵として見て、それでも信じたいと心の中で泣き叫んでいるの分かるもの」
「そんなこと……」
俺は、リネラスから顔を背ける。
今の自分がどういった顔をしているのか分からない。
どんな表情をしてリネラスを見ていいか分からない。
ただ、「そんなこと……【ない】」と続く言葉が口から出なかった。
「そういう強がりしなくていいから、だってユウマが誰かをそんなに悪く言ってることなんてないもの」
「……」
リネラスの言葉に俺は無言で返す。
彼女の言葉が分からない。
何を言っているのか一切、理解できない。
俺は、裏切った奴を……奴を――。
「裏切った奴が悪い……んだ……。俺は、俺は……」
「それ以上は駄目、本当は救ってあげたいから連れてきたんだよね? 私達にイノンが受け入れられるために、イノンのことも皆に何も言わなかったんだよね? それを全て自分の中に仕舞いこんだんだよね……」
「リネラス……」
彼女の名前を言葉として紡ぐ。
すると、リネラスは俺の頭を撫でながら語りかけてくる。
「私には、なんの力もない。ユウマの力になりたくてもなれない。ギルドマスターなのに、本当に駄目だよね。ギルドマスター失格だよね……。自分の好きな人が傷ついているのに、助けてもらったのに何もしてあげられない。それって、とっても苦しくて悲しくて辛いよ――」
「そんなことない。リネラスがいるから皆が集まっているんだろ?」
「そうじゃない。そうじゃないの。だって、ユウマが大黒柱として居てくれるから、皆が安心して暮らしていけるんだよ?」
「私達は、それに甘えてユウマに全部、背負わせていたの。妹さんにも聞いたよ? アライ村でも、ユウマは妹さんのために、ずっと行動してきたんだよね? 魔王と名乗っているのも妹さんのためなんだよね?」
「それは……長男だから……」
「――そう……だよね……」
俺の答えにリネラスは、やさしげな声で同意しながら、俺の頭の上にそっと手を置いてくる。
それが、どこか心地よく感じる。
「――疲れたんだよね?」
「……」
「多くの人がユウマの外面しか見てないけど、私はユウマの内面を心の中で見たもの。だから、イノンに裏切られたことを知って、いっぱいいっぱい傷ついたんだよね? だって、ユウマは仲間を本当に大事にするから。だから裏切られて苦しかったんだよね? だから――」
リネラスが一度、言葉を区切り俺の耳元で「頑張って偉かったね」と語りかけてきた。
頑張って偉かったねと言う言葉に、喉元まで詰まっていた言葉が口を通って――。
「大変だった……頑張った――。でも、いつも悪い方にばかり話しが……だから、俺は……真剣に受け止める事をやめ……。どんなに強い魔法を使えても、多くの知識を持っていても、思い通りにならなくてリネラスを守れなくて、イノンの事も気がつけなくて……妹も満足に幸せにできなくて、リリナにもエメラダにも何もしてあげられなくて……あれ? おれ……何を言って――」
自分で何を言っているのか分からない。
たくさんの思いが考えが脳裏に駆け巡って上手く言葉にすることが……。
「辛いときは、泣いてもいいんだよ? ユウマは、それだけ頑張ってきたもの」
リネラスが俺の頭を撫でながら語りかけてくる。
気がつけば、瞳から涙が出て――。
生まれて初めて、俺は……。
「こんなことで、ユウマを守ってあげることなんて出来ないけど、でもユウマが辛い表情をするのは、そんなユウマを見るのは、私もとっても苦しいから……。きっとイノンをここで見捨てたらユウマは絶対に後悔するから、だから少しでも愚痴でもいいから、私に話して、だって、私にはこんなことくらいしか出来ないから――」
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