【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(12)
「一体、どうしたのですか?」
エリンフィートは、怪訝な表情を向けてくる。
「なんだよ――」
エリンフィートの態度に俺は苛立つ。
それと同じくらい自分が、どうすればいいのか分からず心の中が淀むのを感じる。
「……娘は……リネラスは、このまま……」
リンスタットの声は沈んでいて涙声から察するに悲しんでいるように思えるが……。
俺は、部屋の壁に背中をつけたままベッドの上で寝ているリネラスはと視線を向ける。
呼吸はしているが、目覚めることは無い。
それが、何となくだが分かった。
「今更、母親面して――」
「――それは、どういう!?」
思ったより過剰に反応を見せたリンスタットに、俺は途中で口を閉じていた。
「そうですか……。ユウマさんはリネラスの深層心理に入ることが出来たんですね?」
「入ることが出来た? お前が深層心理に入って来いって言ったんだろう?」
「そうですが……」
「何か隠していることがあるのか? あるならハッキリと言えよ? いまの俺は誰かを気にかけるほど……。とくにお前とリンスタットに至っては、手心を加えるようなことはできないからな?」
「「……」」
二人は俺の言葉に沈黙を返してくるが――。
最初に口を開いたのはリンスタットであった。
「それで、娘はどうなるんでしょうか? 助かるんでしょうか? ユウマさんは何を見たんですか?」
「何をか……」
俺はリネラスの深層心理の世界で見た内容を思い出す。
それは幼少期には、過度すぎる内容で残酷な日々で、とても……。
「リンスタット、お前はリネラスが妖精の儀と呼ばれる魔力が見れるかどうかを確認する成人の儀のときに、リネラスに何をしたのか覚えているか?」
「――ッ!?」
リンスタットは、唇を噛み締めると顔色を変えていた。
どうやら、覚えているらしいな。
だが、覚えていてどうにかなるなんて、そんな時は、とっくに通り過ぎている。
「エルフガーデンのエルフ達から、罵倒され忌み嫌われたときに、お前はリネラスを拒絶したよな? それが、どれだけ幼かった時のリネラスを傷つけたか分かっているか?」
「それは……」
「お前は、その後にリネラスに謝罪をしたか?」
リンスタットはゆっくりと否定的な意味を込めて頭を振ってきた。
その表情には後悔の念が浮かんでいるように見えたが、それが余計に俺の心中をざわめかせる。
どうして……。
どうして! お前が、そんな表情をして被害者のような振る舞いをするのか。
それが、どうしても気にいらない。
「リネラスは、お前が自分の旦那と話していた時のことを聞いていたんだぞ? 子ども達がいるからリネラスにやさしく出来ないって話しを……」
「そうなんですか……」
「そうなんですか? それしか言う言葉がないのか? それを聞いて、リネラスがどう思ったのか! リネラスが何を思ったのか! まだ、小さい保護者に頼らないと生きていけない子どもが何を考えていたのか分からないのか?」
「……すいません」
「謝って欲しいわけじゃない!」
ふざけんな!
謝れば全部許してもらえると思ってるのか!
親だからこそ、子どもを守らないといけないのに、それをせずに自分の都合を押し付けて振舞うなんて、そんなの……。
「悪い――」
「ユウマさん?」
リンスタットは、突然、俺が謝罪したことに驚いていたが、その表情は暗く真っ青で。
「言い過ぎた」
本当なら、こんなことになる前に俺が何とかしないといけなかった。
そのために俺は――。
「それで、どうするもつもりなのですか?」
考えていると、エリンフィートが問いかけてきた。
こいつが一番の原因を作り出した人物であり、今、一番殴りたい奴でもある。
「どうするも何も……何もできないだろ……」
「それでは、諦めるのですか?」
「お前! ふざけんなよ! 誰のせいでリネラスが苦しんだと思っているんだ! エリンフィート、お前がエルフの族長だったくせに何もせずに取引をしたからリネラスが苦しんだんだろうが!」
立ち上がりエリンフィートの首を片手で掴むと壁にたたき付ける。
俺が改装したコンクリート製の壁には大きく亀裂が入り、「カハッ!」とエリンフィートが吐血する。
「お前が! お前が! リネラスを保護しておけば、下らない常識で魔力が見えないだけでリネラスや、魔力が見えない者を差別していなければ! こんなことにはならなかったかもしれないのに!」
「分かっています。ですが……魔力が見えないということは、私の加護を得られないということです。そんな中途半端な者をエルフガーデンにおいておくことなんて出来ません。ですから、魔力が持たない者を保護するためにきちんと対策を取ったでは――!!」
「ふざけるな!」
言い訳を述べてくるエリンフィートの身体をもう一度、壁にたたき付ける。
壁には、さらに亀裂が入りエリンフィートは苦悶の表情を見せるが……。
「ユウマさん?」
「ユウマお兄ちゃん?」
大きな音に気がついたのか部屋の扉を開けて入ってきたのは、セレンにセイレスにユリカで――。
エリンフィートの首を絞めたまま、壁に叩きつけた姿を見た3人は、驚いた表情を見せていた。
「チッ!」
俺はエリンフィートの身体を床に叩きつけるように投げると部屋を出て通路を歩き建物を出ると、湖畔に向かう。
どうしても、周りに森があると心が落ち着かないからだ。
湖畔の草上に寝転ぶ。
まだ春に差し掛かったとは言え肌寒いが、頭に上った熱を下げるには丁度いい。
「どうしたら……どうしたらいいんだ――」
解決策がまるで思い浮かばない。
アライ村に居たときは、こんな気持ちになった事なんて一度も無かったのに……。
自分が何をしたいのか、どうしたいのかが分からない。
「どうしたらいいんだろうな……」
「お兄ちゃん、見つけたの!」
落ち込んだ言葉に、重ねるように弾んだ声が混ざる。
どこかで聞いた声に心臓が律動する。
俺はすぐに振り返る。
自分の目を疑った。
遠目でしか確認はできないが、たしかに妹のアリアの姿が見える。
スライムに上に寝そべりながら手を振っているその姿は、まごうことなき俺の妹であった。
エリンフィートは、怪訝な表情を向けてくる。
「なんだよ――」
エリンフィートの態度に俺は苛立つ。
それと同じくらい自分が、どうすればいいのか分からず心の中が淀むのを感じる。
「……娘は……リネラスは、このまま……」
リンスタットの声は沈んでいて涙声から察するに悲しんでいるように思えるが……。
俺は、部屋の壁に背中をつけたままベッドの上で寝ているリネラスはと視線を向ける。
呼吸はしているが、目覚めることは無い。
それが、何となくだが分かった。
「今更、母親面して――」
「――それは、どういう!?」
思ったより過剰に反応を見せたリンスタットに、俺は途中で口を閉じていた。
「そうですか……。ユウマさんはリネラスの深層心理に入ることが出来たんですね?」
「入ることが出来た? お前が深層心理に入って来いって言ったんだろう?」
「そうですが……」
「何か隠していることがあるのか? あるならハッキリと言えよ? いまの俺は誰かを気にかけるほど……。とくにお前とリンスタットに至っては、手心を加えるようなことはできないからな?」
「「……」」
二人は俺の言葉に沈黙を返してくるが――。
最初に口を開いたのはリンスタットであった。
「それで、娘はどうなるんでしょうか? 助かるんでしょうか? ユウマさんは何を見たんですか?」
「何をか……」
俺はリネラスの深層心理の世界で見た内容を思い出す。
それは幼少期には、過度すぎる内容で残酷な日々で、とても……。
「リンスタット、お前はリネラスが妖精の儀と呼ばれる魔力が見れるかどうかを確認する成人の儀のときに、リネラスに何をしたのか覚えているか?」
「――ッ!?」
リンスタットは、唇を噛み締めると顔色を変えていた。
どうやら、覚えているらしいな。
だが、覚えていてどうにかなるなんて、そんな時は、とっくに通り過ぎている。
「エルフガーデンのエルフ達から、罵倒され忌み嫌われたときに、お前はリネラスを拒絶したよな? それが、どれだけ幼かった時のリネラスを傷つけたか分かっているか?」
「それは……」
「お前は、その後にリネラスに謝罪をしたか?」
リンスタットはゆっくりと否定的な意味を込めて頭を振ってきた。
その表情には後悔の念が浮かんでいるように見えたが、それが余計に俺の心中をざわめかせる。
どうして……。
どうして! お前が、そんな表情をして被害者のような振る舞いをするのか。
それが、どうしても気にいらない。
「リネラスは、お前が自分の旦那と話していた時のことを聞いていたんだぞ? 子ども達がいるからリネラスにやさしく出来ないって話しを……」
「そうなんですか……」
「そうなんですか? それしか言う言葉がないのか? それを聞いて、リネラスがどう思ったのか! リネラスが何を思ったのか! まだ、小さい保護者に頼らないと生きていけない子どもが何を考えていたのか分からないのか?」
「……すいません」
「謝って欲しいわけじゃない!」
ふざけんな!
謝れば全部許してもらえると思ってるのか!
親だからこそ、子どもを守らないといけないのに、それをせずに自分の都合を押し付けて振舞うなんて、そんなの……。
「悪い――」
「ユウマさん?」
リンスタットは、突然、俺が謝罪したことに驚いていたが、その表情は暗く真っ青で。
「言い過ぎた」
本当なら、こんなことになる前に俺が何とかしないといけなかった。
そのために俺は――。
「それで、どうするもつもりなのですか?」
考えていると、エリンフィートが問いかけてきた。
こいつが一番の原因を作り出した人物であり、今、一番殴りたい奴でもある。
「どうするも何も……何もできないだろ……」
「それでは、諦めるのですか?」
「お前! ふざけんなよ! 誰のせいでリネラスが苦しんだと思っているんだ! エリンフィート、お前がエルフの族長だったくせに何もせずに取引をしたからリネラスが苦しんだんだろうが!」
立ち上がりエリンフィートの首を片手で掴むと壁にたたき付ける。
俺が改装したコンクリート製の壁には大きく亀裂が入り、「カハッ!」とエリンフィートが吐血する。
「お前が! お前が! リネラスを保護しておけば、下らない常識で魔力が見えないだけでリネラスや、魔力が見えない者を差別していなければ! こんなことにはならなかったかもしれないのに!」
「分かっています。ですが……魔力が見えないということは、私の加護を得られないということです。そんな中途半端な者をエルフガーデンにおいておくことなんて出来ません。ですから、魔力が持たない者を保護するためにきちんと対策を取ったでは――!!」
「ふざけるな!」
言い訳を述べてくるエリンフィートの身体をもう一度、壁にたたき付ける。
壁には、さらに亀裂が入りエリンフィートは苦悶の表情を見せるが……。
「ユウマさん?」
「ユウマお兄ちゃん?」
大きな音に気がついたのか部屋の扉を開けて入ってきたのは、セレンにセイレスにユリカで――。
エリンフィートの首を絞めたまま、壁に叩きつけた姿を見た3人は、驚いた表情を見せていた。
「チッ!」
俺はエリンフィートの身体を床に叩きつけるように投げると部屋を出て通路を歩き建物を出ると、湖畔に向かう。
どうしても、周りに森があると心が落ち着かないからだ。
湖畔の草上に寝転ぶ。
まだ春に差し掛かったとは言え肌寒いが、頭に上った熱を下げるには丁度いい。
「どうしたら……どうしたらいいんだ――」
解決策がまるで思い浮かばない。
アライ村に居たときは、こんな気持ちになった事なんて一度も無かったのに……。
自分が何をしたいのか、どうしたいのかが分からない。
「どうしたらいいんだろうな……」
「お兄ちゃん、見つけたの!」
落ち込んだ言葉に、重ねるように弾んだ声が混ざる。
どこかで聞いた声に心臓が律動する。
俺はすぐに振り返る。
自分の目を疑った。
遠目でしか確認はできないが、たしかに妹のアリアの姿が見える。
スライムに上に寝そべりながら手を振っているその姿は、まごうことなき俺の妹であった。
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