【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(9)
そこまで話すとリネラスは、小さく息を吐く。
すると周囲の景色が変わっていく。
景色が変わった場所は、深い森林であり生物の生きている気配を感じ取ることができない。
「ここは……エルフガーデンか?」
「そう、ここはエルフガーデン。そして――私が、自分の愚かさを知っても、理解しなかった場所」
語りかけられた方へ視線を向けると、そこにはリネラスが立っていた。
その服装は、フィンデイカの冒険者ギルドで出会った服装であって――。
「私、言ったよね? うちに来た子ども達を私は嫌いだったって……」
「ああ……」
「ほら、見てみて」
リネラスが指差した先には、リンスタットとリネラスの父親が居て。
「お前、まだ娘の事が受け入れられないのか?」
「そうじゃないの! でも……私は、どうやって接していいのか分からないの! あの子が本当に必要だと思った時に私は……私は……」
「リンスタット……」
「分かってるわ。あの時から、あの子は本当の意味で笑顔を見せてくれなくなったということを。でも、私はどうしたらいいのか分からないの――だって、あの子は必死に頑張ってるから――」
「だが!」
リネラスの父親の言葉に、彼女――リンスタットの肩が小さく震えるのが遠めからも分かる。
「本当は、あの子に声をかけて抱きしめてあげたいわ! でも、それをしたら親元から離されて私たちの元に来た子ども達はどうなるの? 分かっているわ! でも、自分の本当の親から引き離されて満足に会うことも許されてない子どもの事を思うと――」
小さく肩を震わせながらリンスタットは涙声で、自分自身とリネラスの父親に訴えかけるように言葉を紡いでいた。
「ユウマ、私は、このやり取りを見ていたの。ほら、あそこにいるでしょう?」
リネラスの視線を辿るように視線を向けた先には、エルフガーデンの大樹に背中を預けた少女の姿をしたリネラスの姿が確認できて――。
そんなリネラスの姿を、成人姿のリネラスは寂しげに見ると。
「でもね。私は、こんな場面を見せられても……ううん、見せられたからこそ姉妹となった妹たちを受け入れることは出来なかった。だって! 妹たちが居なければ私はお母さんに優しくしてもらえたかもしれないから……」
「それは……」
「分かっているの。妹たちも被害者に過ぎないというくらい理解しているから。でもね、理解していることと、納得できることは別のことで。そのときの私は、気が狂うくらい妹を! 私に優しくしてくれなかったお母さんを! 習慣に囚われたエルフを! 私は憎んだの」
リネラスの言葉は、とても重い。
普段の軽い言動がまるで嘘のようで――。
「でもね、結局……私はエルフガーデンを出ることになったの」
「それが、リネラスが父親に連れられた場面だったということか?」
「うん、もうあの頃の私はおかしくなっていたと思う。ほら、見てみて」
指差された場所に居た少女の姿をしたリネラスは、年下の子ども達をきちんとあやしてるいるように見える。
ただ、その笑顔は作られていることがわかるし、目は何も移してない空ろなモノであった。
「私は考えたの。妹になった子たちを殺せば、もしかしたらお母さんは私を見てくれるんじゃないかなって……でも、そんなことをしてバレたら嫌われるかもしれない。だから、私は思い悩んだの。すぐそこに幸せがあるのに! 手を伸ばせば届くかもしれないのに! ……ってね」
「それで……」
「うん、だからお父さんは、私をエルフガーデンから遠ざけることにしたの。ふう……。これがエルフガーデンの顛末。私が魔力を見ることが出来なかったから――出来損ないのエルフだから大勢の人に迷惑をかけて、おじいちゃんを死なせてエルフガーデンから出たからお父さんが殺されたの。私は、本当に駄目だよね? 本当に出来損ないのエルフって呼ばれるに相応しいよね? みんな、私のせいで不幸になって死んで傷ついて――だから、私は、私自身が大嫌い!」
すると周囲の景色が変わっていく。
景色が変わった場所は、深い森林であり生物の生きている気配を感じ取ることができない。
「ここは……エルフガーデンか?」
「そう、ここはエルフガーデン。そして――私が、自分の愚かさを知っても、理解しなかった場所」
語りかけられた方へ視線を向けると、そこにはリネラスが立っていた。
その服装は、フィンデイカの冒険者ギルドで出会った服装であって――。
「私、言ったよね? うちに来た子ども達を私は嫌いだったって……」
「ああ……」
「ほら、見てみて」
リネラスが指差した先には、リンスタットとリネラスの父親が居て。
「お前、まだ娘の事が受け入れられないのか?」
「そうじゃないの! でも……私は、どうやって接していいのか分からないの! あの子が本当に必要だと思った時に私は……私は……」
「リンスタット……」
「分かってるわ。あの時から、あの子は本当の意味で笑顔を見せてくれなくなったということを。でも、私はどうしたらいいのか分からないの――だって、あの子は必死に頑張ってるから――」
「だが!」
リネラスの父親の言葉に、彼女――リンスタットの肩が小さく震えるのが遠めからも分かる。
「本当は、あの子に声をかけて抱きしめてあげたいわ! でも、それをしたら親元から離されて私たちの元に来た子ども達はどうなるの? 分かっているわ! でも、自分の本当の親から引き離されて満足に会うことも許されてない子どもの事を思うと――」
小さく肩を震わせながらリンスタットは涙声で、自分自身とリネラスの父親に訴えかけるように言葉を紡いでいた。
「ユウマ、私は、このやり取りを見ていたの。ほら、あそこにいるでしょう?」
リネラスの視線を辿るように視線を向けた先には、エルフガーデンの大樹に背中を預けた少女の姿をしたリネラスの姿が確認できて――。
そんなリネラスの姿を、成人姿のリネラスは寂しげに見ると。
「でもね。私は、こんな場面を見せられても……ううん、見せられたからこそ姉妹となった妹たちを受け入れることは出来なかった。だって! 妹たちが居なければ私はお母さんに優しくしてもらえたかもしれないから……」
「それは……」
「分かっているの。妹たちも被害者に過ぎないというくらい理解しているから。でもね、理解していることと、納得できることは別のことで。そのときの私は、気が狂うくらい妹を! 私に優しくしてくれなかったお母さんを! 習慣に囚われたエルフを! 私は憎んだの」
リネラスの言葉は、とても重い。
普段の軽い言動がまるで嘘のようで――。
「でもね、結局……私はエルフガーデンを出ることになったの」
「それが、リネラスが父親に連れられた場面だったということか?」
「うん、もうあの頃の私はおかしくなっていたと思う。ほら、見てみて」
指差された場所に居た少女の姿をしたリネラスは、年下の子ども達をきちんとあやしてるいるように見える。
ただ、その笑顔は作られていることがわかるし、目は何も移してない空ろなモノであった。
「私は考えたの。妹になった子たちを殺せば、もしかしたらお母さんは私を見てくれるんじゃないかなって……でも、そんなことをしてバレたら嫌われるかもしれない。だから、私は思い悩んだの。すぐそこに幸せがあるのに! 手を伸ばせば届くかもしれないのに! ……ってね」
「それで……」
「うん、だからお父さんは、私をエルフガーデンから遠ざけることにしたの。ふう……。これがエルフガーデンの顛末。私が魔力を見ることが出来なかったから――出来損ないのエルフだから大勢の人に迷惑をかけて、おじいちゃんを死なせてエルフガーデンから出たからお父さんが殺されたの。私は、本当に駄目だよね? 本当に出来損ないのエルフって呼ばれるに相応しいよね? みんな、私のせいで不幸になって死んで傷ついて――だから、私は、私自身が大嫌い!」
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