【書籍化作品】無名の最強魔法師
エルフガーデン(5)
――翌朝。
「ユウマ殿! どういうことですか?」
まだ日も上がりきっていない朝方から俺を迎えにきたエルフは、レグラントの町に向かうために帆馬車の用意をしている俺を見て強い口調で疑問を呈してきた。
「いや、予定ってのは未定っていうだろ? つまり、不足の事態が発生すれば守れる限りではないということだ!」
俺のこの完璧な理論武装に、セレンは何も言っていないが、同行する事になったリンスタットさんとユリカは、呆れた表情で俺を見ている。
「で、ですが……私達の族長と会っていただけると言うことでしたので歓待の宴なども用意しているのですが……」
「ふむ……」
歓待と言われてもな、俺は仲間たちと決めた意見を簡単に覆すような事はしないぞ?
「悪いが、こちらにもこちらの都合があ……「族長が来て頂ければ身長が伸びる秘術をお教えしようと……」……ふっ、約束は守らないといけないな」
「お兄ちゃん!?」
セレンが驚いた顔で俺を見てきて、「ユウマさん!?」とリンスタットさんが首を傾げてきて、ユリカが「ええー……」と苦情の声を上げてくる。
女性陣も言いたいことは分かる。
だが、少し考えてほしい。
一緒に旅をしているイノンを筆頭とするメンバーは、俺と身長に大差がない。
そしてさらに言えば、身長の成長がストップしてる俺としては男としての威厳を守る為にある程度、身長が欲しかったりする。
まあ、男としては当然の欲求だろう。
「俺は思うんだ……」
「あ、これはユウマさんの語りは……」
俺の言葉に反応したユリカが言葉を返しながら死んだ魚を見るような目で俺を見てくる。
リンスタットさんは、柔らかに微笑んでいるが目が笑っていない。セレンに至っては頬を膨らませて怒っている。
こ、これは……まずいのかもしれない。
「と、とりあえずだ……相手との約束は大事だし……そ、それを守るのは社会人としてじゃなくて……人間として当たり前の事じゃないか!」
「うん。じゃ私達との約束を破るのは。社会人としてじゃなくて人間として最低の事ですね?」
リンスタットさんの言葉に、俺は「ウッ!」と思わず口に出して一歩下がる。
だが、考えてほしい。
今までは、意識してこなかったが身長が伸びる方法があると分かれば、男としてはそういうのを少しは試してみたいなーと思うが人情ではないだろうか?
さしずめ、髪の毛が薄くなって初めて育毛剤が必要だろ! と叫びたくなくなるアレである。
持つ者には、持たざる者の気持ちが分からないのだよ。
だが、ここで……俺身長増やしたいからエルフの族長に会いにいくわ! と言ったら仲間たちはどう思うだろうか?
小せえ男だな! と思うことだろう。
なら、うまく納得させるしかない。
「まあ、まってくれ! 必ずしもリンスタットさんやセレンにユリカとの約束を破るとは一言も言っていない!」
俺の言葉を聞いた仲間たちの視線はとても冷たいもので――。
「ユウマさん? 私の恰好を見てどう思いますか?」
リンスタットさんは、俺に語りかけたあとに一度、その場でクルリと回って見せてきた。
「そうですね……ここ数日のストレートの金髪ではなくて三つ編みにして淡い赤い生地で作られたワンピースに白いカーディガンを羽織っていて綺麗な下し立てと思われる靴を履いてます……?」
俺は、途中からダラダラと汗を流しんながら答える。
こ、これは……かなり本気な余所行きの恰好ではないだろうか?
「ユウマさん、私の恰好はどうですか!」
ユリカは膝に手を当てて俺を問い詰めてくる。
両腕で挟まれた豊なユリカの胸がまことにけしからん!
「ユウマさん?」
横を向くとリンスタットさんが額に青筋を立ててるのが見える。
俺は一度、咳をするふりをして。
「そ、そうだな……い、いいと思う……ぞ?」
「よかったです! 町なんて一か月ぶりですから少し張り切ってしまいました!」
「お、おう――」
もう、どうしよう。
これ行かないとか言ったら女性陣を敵に回す方向じゃないのか? 足元にいるセレンは「おにいちゃん、おにいちゃん! 私は私は!」と聞いてくるが「あー……かわいい、かわいい」と適当に返事を返しておく。
「はあー……。すまない、とりあえず族長には数日中には伺うように伝えておいてもらえないか?」
「……仕方ないですね。わかりました、それでは族長にはそう伝えておきますが、身長が伸びる秘術は諦めてくださいね」
「くっ! お、俺がそんな事で心が揺れ動かされると思ったら大間違いだぞ!」
「ふふーん、そうですか。ならいいです」
それだけ言うと俺を呼びにきたエルフは、森の中へと去っていった。
「ユウマ殿! どういうことですか?」
まだ日も上がりきっていない朝方から俺を迎えにきたエルフは、レグラントの町に向かうために帆馬車の用意をしている俺を見て強い口調で疑問を呈してきた。
「いや、予定ってのは未定っていうだろ? つまり、不足の事態が発生すれば守れる限りではないということだ!」
俺のこの完璧な理論武装に、セレンは何も言っていないが、同行する事になったリンスタットさんとユリカは、呆れた表情で俺を見ている。
「で、ですが……私達の族長と会っていただけると言うことでしたので歓待の宴なども用意しているのですが……」
「ふむ……」
歓待と言われてもな、俺は仲間たちと決めた意見を簡単に覆すような事はしないぞ?
「悪いが、こちらにもこちらの都合があ……「族長が来て頂ければ身長が伸びる秘術をお教えしようと……」……ふっ、約束は守らないといけないな」
「お兄ちゃん!?」
セレンが驚いた顔で俺を見てきて、「ユウマさん!?」とリンスタットさんが首を傾げてきて、ユリカが「ええー……」と苦情の声を上げてくる。
女性陣も言いたいことは分かる。
だが、少し考えてほしい。
一緒に旅をしているイノンを筆頭とするメンバーは、俺と身長に大差がない。
そしてさらに言えば、身長の成長がストップしてる俺としては男としての威厳を守る為にある程度、身長が欲しかったりする。
まあ、男としては当然の欲求だろう。
「俺は思うんだ……」
「あ、これはユウマさんの語りは……」
俺の言葉に反応したユリカが言葉を返しながら死んだ魚を見るような目で俺を見てくる。
リンスタットさんは、柔らかに微笑んでいるが目が笑っていない。セレンに至っては頬を膨らませて怒っている。
こ、これは……まずいのかもしれない。
「と、とりあえずだ……相手との約束は大事だし……そ、それを守るのは社会人としてじゃなくて……人間として当たり前の事じゃないか!」
「うん。じゃ私達との約束を破るのは。社会人としてじゃなくて人間として最低の事ですね?」
リンスタットさんの言葉に、俺は「ウッ!」と思わず口に出して一歩下がる。
だが、考えてほしい。
今までは、意識してこなかったが身長が伸びる方法があると分かれば、男としてはそういうのを少しは試してみたいなーと思うが人情ではないだろうか?
さしずめ、髪の毛が薄くなって初めて育毛剤が必要だろ! と叫びたくなくなるアレである。
持つ者には、持たざる者の気持ちが分からないのだよ。
だが、ここで……俺身長増やしたいからエルフの族長に会いにいくわ! と言ったら仲間たちはどう思うだろうか?
小せえ男だな! と思うことだろう。
なら、うまく納得させるしかない。
「まあ、まってくれ! 必ずしもリンスタットさんやセレンにユリカとの約束を破るとは一言も言っていない!」
俺の言葉を聞いた仲間たちの視線はとても冷たいもので――。
「ユウマさん? 私の恰好を見てどう思いますか?」
リンスタットさんは、俺に語りかけたあとに一度、その場でクルリと回って見せてきた。
「そうですね……ここ数日のストレートの金髪ではなくて三つ編みにして淡い赤い生地で作られたワンピースに白いカーディガンを羽織っていて綺麗な下し立てと思われる靴を履いてます……?」
俺は、途中からダラダラと汗を流しんながら答える。
こ、これは……かなり本気な余所行きの恰好ではないだろうか?
「ユウマさん、私の恰好はどうですか!」
ユリカは膝に手を当てて俺を問い詰めてくる。
両腕で挟まれた豊なユリカの胸がまことにけしからん!
「ユウマさん?」
横を向くとリンスタットさんが額に青筋を立ててるのが見える。
俺は一度、咳をするふりをして。
「そ、そうだな……い、いいと思う……ぞ?」
「よかったです! 町なんて一か月ぶりですから少し張り切ってしまいました!」
「お、おう――」
もう、どうしよう。
これ行かないとか言ったら女性陣を敵に回す方向じゃないのか? 足元にいるセレンは「おにいちゃん、おにいちゃん! 私は私は!」と聞いてくるが「あー……かわいい、かわいい」と適当に返事を返しておく。
「はあー……。すまない、とりあえず族長には数日中には伺うように伝えておいてもらえないか?」
「……仕方ないですね。わかりました、それでは族長にはそう伝えておきますが、身長が伸びる秘術は諦めてくださいね」
「くっ! お、俺がそんな事で心が揺れ動かされると思ったら大間違いだぞ!」
「ふふーん、そうですか。ならいいです」
それだけ言うと俺を呼びにきたエルフは、森の中へと去っていった。
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