【書籍化作品】無名の最強魔法師
襲撃! 海の港町カレイドスコープを救え!(中編)
「リネラス。とりあえず、お前とセイレスにセレンについては、此処で留守番だな。今後どうなるかさすがに見通しが立たないからな。無闇に動かない方がいいだろう」
「そうだね! その間にセレンちゃんには、将来には冒険者ギルドの受付になれるように仕事を教えているね!」
「いや……まだ小さいのに良いのか?」
「はい、たしかセレンちゃんの年齢は9歳くらいですから、今から仕込めばきちんと仕事が出来る冒険者ギルドの職員になれるはずです! それに無垢な状態から私が培った冒険者ギルド経営ノウハウをきちんと教え込めば立派な大人になれるはずです!」
リネラスが、力強く力説してくるが、リネラスが2人になると冒険者ギルド的にあまりよろしくない気がする。
とりあえずストッパーをつけておく必要もあるな。
「……それはどうなんだろうか? とりあえずセイレスの許可をもらってからやれよ?」
「もう! ユウマは少し考えすぎです! その言い方だと私が問題がある冒険者ギルドの職員みたいじゃないですか?」
実際、問題があるから言っているわけであって……問題が無かったら言わないし。
「イノン、とりあえず明日の朝からは海の港町カレイドスコープで情報収集に当たるとしよう。とりあえずは、権力機構を確認しておきたい」
「はい! 分かりました!」
俺の言葉にイノンは頷き了承してきた。
そして日が暮れる前に俺たちは、イノンが待つ『移動式ギルド宿屋』に到着することが出来た。
――数時間後。
夜の帳が落ちたところで、俺は、宿屋から抜け出して建物から距離を取る。
宿から5キロメートル以上離れた所で、クルド公爵邸で出会った男が攻撃してくる姿が見えなかった原因を、俺が知りうる限りの知識から照らし合わせて考える。
ただ、どれだけ考えても答えは出てこない。
俺は溜息をつきながら、反射神経を上げるためにずっと考えていた新魔法を使った修行をする事にする。
上空数万メートルの上の大気の原子構成を組み替え金属結合した直径数センチの鉱物を、音速を超える速さで地表に落とす技。
その名も【流星】の魔法。
俺は、【流星】の魔法を発動させる。
それに伴い、音速を超える速度で俺が立っている周辺へ数千に及ぶ鉱物が断続的に降り注ぐ。
俺はそれらを必死に避け続ける。
ただ、避けきれない物質も存在しており、それらが皮膚に掠るとそれだけで皮膚が炭化してしまう。
「……これは、思ったより、やばいな」
俺は、それでも自分が弱い事には納得できない。
だから! 次々と落下してくる流星を避ける。
必死に避ける。
それでも、認識した時には、体を貫いた鉱物も存在している。
俺は集中力を切らさないように必死に【流星】の魔法を避け、終わった頃には自分の体は瀕死の状態であった。
【肉体修復】の魔法で体を修復し、再度、同じ事を繰り返した、何度も……。
「ユウマさん! ユウマさん!」
イノンが俺の部屋の扉を何度も叩いては俺の名前を連呼してくる。
俺はイノンの声を聞きながら眠気と戦っていた。
調子に乗って朝方まで修行をしていた結果、致命傷部分を避ける事は出来るようにはなった。
ただ、持続力がまったく足りず後半部分になると精度が落ちていくのを感じた。
もっと鍛錬をする必要があるが、どうしてもこれ以上強くなれるイメージが浮かばない。
「どうしたんだ?」
俺は扉を開けながらイノンの様子を見る。
「朝食の準備ができました」
「そうか……もう朝食の時間か……」
俺は、頷きながら部屋から出て1Fの食堂に向かう。
食堂は1Fの入り口のホールの横に作られており酒場の雰囲気を思わせる。
「ふむ。こんなのあったか?」
昨日までは酒場ではなくて談話室だったような……。
「何でもリネラスさんが、冒険者ギルドの職員が2人増えたからと言ってました」
人が増えたら成長する宿屋とか意味が分からん。
どうして職員が増えると酒場が追加されるのだろうか?
「酒場を追加するという話しは、事前にリネラスから聞いていたのか?」
俺の言葉にイノンは頭を振る。
「えっと事後承諾でした。でも、そういう契約でユウマさん達についてきましたから……」
「そうか……すまないな。両親の残した建物に勝手に加えられるのは嫌だろう?」
「たしかに少しは抵抗がありますけど、たくさんの方が幸せになれるのでしたらこのくらい大丈夫ですよ? ですからユウマさんも思いつめた表情をせずに私に甘えてくださいね?」
「……お、おう」
なんていい子なんだろうか? イノンを20歳後半だと思っていた奴を、殴ってやりたい気分だ。
「それじゃ朝食でも摂るとするか」
部屋の中にたしかに酒場になっていた。
部屋の中は、10人ほど座れるカウンター席に直径2メートルほどの木製の丸いテーブルが5つ並んでいる。
そのうちの一つのテーブルにリネラスとセイレス、セレンが座っている。
俺は近づき椅子に座る。
するとリネラスが俺のほうへ視線を向けてきた。
「ユウマ、あまり無理をしないようにね」
リネラスは、朝食を食べながら器用に俺に話しかけてくる。
セイレスと、妹のセレンは海草サラダやじゃがいもを食べている。
それにしても海草が多いな。
「今日の朝食はずいぶんと海草が多いんだな。安かったのか?」
俺はほどよく酸味が効いた海草サラダを食べながら、イノンに語りかける。
「はい、海神って魔物からたくさん取れたらしく、とても安かったです。何でも無料で配られるくらい量があるらしいですよ」
「……そ、そうか……」
市場で流通していた昆布というか海草っぽいのは全て俺が倒した海神ウミゾーだったのか。
そこでリネラスが俺の耳元に口を近づけてくると「ユウマ、絶対にアンタが海神を倒したって事は言わないようにね。秘密裏に海の迷宮処理はしないといけないんだから、そこは気をつけてね」と俺にだけ聞こえるように呟いてきた。
俺も、リネラスの耳元で「分かっている。俺の口の堅さを舐めるなよ? 自分に都合が悪ければ絶対に話さないのが俺の信条だからな!」と力強く説明した。
そして、俺とリネラスは握手を交わした。
そんな俺達二人を、イノン、セイレス、セレンがジッと見て来ていた。
「それにしても、冒険者ギルドが国に狙われていると思ってもっと落ち込んでいると思っていたぞ?」
「落ち込んでばかりいられないの、私はこれでも冒険者ギルドマスターなのよ? 人の生き死になんてたくさん見てきた。それに、私はもう立場的にそういう事を引きずったらいけないの。だって私はギルドマスターなのだから、気持ちを切り替えないと下の者に示しがつかないでしょう?」
「まあな……ちなみに、その事はセレンにも教えるのか?」
俺の言葉にリネラスは頷いてくる。
「きちんと言うわ。だって、私たちは冒険者の命を預かっているもの。人の生き死には、慣れたらいけない。だけどそれを引きずる事はもっとよくない。何故なら冷静な判断力を無くす要因になるのだから」
そこでリネラスは俺に向けて海草サラダを刺したフォークを向けてくる。
「ユウマ、あなたもあまり無茶な特訓をするんじゃないわよ? 貴方が死んだら悲しむ人がいるんだからね!」
リネラスはそれだけ俺に言うと、海草サラダを口に運び租借した。
俺は彼女の目を見ながら頷く。
「分かった、気をつけるとしよう」
「そうだね! その間にセレンちゃんには、将来には冒険者ギルドの受付になれるように仕事を教えているね!」
「いや……まだ小さいのに良いのか?」
「はい、たしかセレンちゃんの年齢は9歳くらいですから、今から仕込めばきちんと仕事が出来る冒険者ギルドの職員になれるはずです! それに無垢な状態から私が培った冒険者ギルド経営ノウハウをきちんと教え込めば立派な大人になれるはずです!」
リネラスが、力強く力説してくるが、リネラスが2人になると冒険者ギルド的にあまりよろしくない気がする。
とりあえずストッパーをつけておく必要もあるな。
「……それはどうなんだろうか? とりあえずセイレスの許可をもらってからやれよ?」
「もう! ユウマは少し考えすぎです! その言い方だと私が問題がある冒険者ギルドの職員みたいじゃないですか?」
実際、問題があるから言っているわけであって……問題が無かったら言わないし。
「イノン、とりあえず明日の朝からは海の港町カレイドスコープで情報収集に当たるとしよう。とりあえずは、権力機構を確認しておきたい」
「はい! 分かりました!」
俺の言葉にイノンは頷き了承してきた。
そして日が暮れる前に俺たちは、イノンが待つ『移動式ギルド宿屋』に到着することが出来た。
――数時間後。
夜の帳が落ちたところで、俺は、宿屋から抜け出して建物から距離を取る。
宿から5キロメートル以上離れた所で、クルド公爵邸で出会った男が攻撃してくる姿が見えなかった原因を、俺が知りうる限りの知識から照らし合わせて考える。
ただ、どれだけ考えても答えは出てこない。
俺は溜息をつきながら、反射神経を上げるためにずっと考えていた新魔法を使った修行をする事にする。
上空数万メートルの上の大気の原子構成を組み替え金属結合した直径数センチの鉱物を、音速を超える速さで地表に落とす技。
その名も【流星】の魔法。
俺は、【流星】の魔法を発動させる。
それに伴い、音速を超える速度で俺が立っている周辺へ数千に及ぶ鉱物が断続的に降り注ぐ。
俺はそれらを必死に避け続ける。
ただ、避けきれない物質も存在しており、それらが皮膚に掠るとそれだけで皮膚が炭化してしまう。
「……これは、思ったより、やばいな」
俺は、それでも自分が弱い事には納得できない。
だから! 次々と落下してくる流星を避ける。
必死に避ける。
それでも、認識した時には、体を貫いた鉱物も存在している。
俺は集中力を切らさないように必死に【流星】の魔法を避け、終わった頃には自分の体は瀕死の状態であった。
【肉体修復】の魔法で体を修復し、再度、同じ事を繰り返した、何度も……。
「ユウマさん! ユウマさん!」
イノンが俺の部屋の扉を何度も叩いては俺の名前を連呼してくる。
俺はイノンの声を聞きながら眠気と戦っていた。
調子に乗って朝方まで修行をしていた結果、致命傷部分を避ける事は出来るようにはなった。
ただ、持続力がまったく足りず後半部分になると精度が落ちていくのを感じた。
もっと鍛錬をする必要があるが、どうしてもこれ以上強くなれるイメージが浮かばない。
「どうしたんだ?」
俺は扉を開けながらイノンの様子を見る。
「朝食の準備ができました」
「そうか……もう朝食の時間か……」
俺は、頷きながら部屋から出て1Fの食堂に向かう。
食堂は1Fの入り口のホールの横に作られており酒場の雰囲気を思わせる。
「ふむ。こんなのあったか?」
昨日までは酒場ではなくて談話室だったような……。
「何でもリネラスさんが、冒険者ギルドの職員が2人増えたからと言ってました」
人が増えたら成長する宿屋とか意味が分からん。
どうして職員が増えると酒場が追加されるのだろうか?
「酒場を追加するという話しは、事前にリネラスから聞いていたのか?」
俺の言葉にイノンは頭を振る。
「えっと事後承諾でした。でも、そういう契約でユウマさん達についてきましたから……」
「そうか……すまないな。両親の残した建物に勝手に加えられるのは嫌だろう?」
「たしかに少しは抵抗がありますけど、たくさんの方が幸せになれるのでしたらこのくらい大丈夫ですよ? ですからユウマさんも思いつめた表情をせずに私に甘えてくださいね?」
「……お、おう」
なんていい子なんだろうか? イノンを20歳後半だと思っていた奴を、殴ってやりたい気分だ。
「それじゃ朝食でも摂るとするか」
部屋の中にたしかに酒場になっていた。
部屋の中は、10人ほど座れるカウンター席に直径2メートルほどの木製の丸いテーブルが5つ並んでいる。
そのうちの一つのテーブルにリネラスとセイレス、セレンが座っている。
俺は近づき椅子に座る。
するとリネラスが俺のほうへ視線を向けてきた。
「ユウマ、あまり無理をしないようにね」
リネラスは、朝食を食べながら器用に俺に話しかけてくる。
セイレスと、妹のセレンは海草サラダやじゃがいもを食べている。
それにしても海草が多いな。
「今日の朝食はずいぶんと海草が多いんだな。安かったのか?」
俺はほどよく酸味が効いた海草サラダを食べながら、イノンに語りかける。
「はい、海神って魔物からたくさん取れたらしく、とても安かったです。何でも無料で配られるくらい量があるらしいですよ」
「……そ、そうか……」
市場で流通していた昆布というか海草っぽいのは全て俺が倒した海神ウミゾーだったのか。
そこでリネラスが俺の耳元に口を近づけてくると「ユウマ、絶対にアンタが海神を倒したって事は言わないようにね。秘密裏に海の迷宮処理はしないといけないんだから、そこは気をつけてね」と俺にだけ聞こえるように呟いてきた。
俺も、リネラスの耳元で「分かっている。俺の口の堅さを舐めるなよ? 自分に都合が悪ければ絶対に話さないのが俺の信条だからな!」と力強く説明した。
そして、俺とリネラスは握手を交わした。
そんな俺達二人を、イノン、セイレス、セレンがジッと見て来ていた。
「それにしても、冒険者ギルドが国に狙われていると思ってもっと落ち込んでいると思っていたぞ?」
「落ち込んでばかりいられないの、私はこれでも冒険者ギルドマスターなのよ? 人の生き死になんてたくさん見てきた。それに、私はもう立場的にそういう事を引きずったらいけないの。だって私はギルドマスターなのだから、気持ちを切り替えないと下の者に示しがつかないでしょう?」
「まあな……ちなみに、その事はセレンにも教えるのか?」
俺の言葉にリネラスは頷いてくる。
「きちんと言うわ。だって、私たちは冒険者の命を預かっているもの。人の生き死には、慣れたらいけない。だけどそれを引きずる事はもっとよくない。何故なら冷静な判断力を無くす要因になるのだから」
そこでリネラスは俺に向けて海草サラダを刺したフォークを向けてくる。
「ユウマ、あなたもあまり無茶な特訓をするんじゃないわよ? 貴方が死んだら悲しむ人がいるんだからね!」
リネラスはそれだけ俺に言うと、海草サラダを口に運び租借した。
俺は彼女の目を見ながら頷く。
「分かった、気をつけるとしよう」
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