お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

み、見ないで!!

「………!……!…」

場所は変わって、高宮兄妹のどちらの部屋でもない、がらんとした部屋。
かつては兄妹の母親が暮らしていたその部屋。

今では来客用の部屋としているらしく、最低限として箪笥やデスクがある程度。
整然としているものの、殺風景とも言える涼羽の部屋よりもさらに物のない部屋。

その部屋に、この日来客として迎えられ、泊まることとなっている人物。
涼羽のクラスメイトである、柊 美鈴。

自宅から持参した、寝巻用としている淡いレッドのジャージに包まれた肢体が、ぴくんと身じろぐ。

閑散としていて、自身の寝息すら響くその部屋に届く、かすかな声。
それに、美鈴の身体が反応する。

「…ん…?…」

すでに心地よい夢の世界に飛ばしていた意識が、じょじょに現実に引き寄せられる。
自身の耳に、かすかに聞こえてくる声。

それが、美鈴のまどろんだ意識をじょじょに目覚めさせていく。

「…声?…」

自身の眠りを妨げるように耳に入り込んでくる雑音(ノイズ)。

それが、人の声だと気づく。

そして、それが、涼羽の部屋から聞こえてくることにも。

その声は、必死にそれ自体を抑えようとしている。
しかし、それでいて艶めいた、甘やかさが増していく。

許容の水量を超えたダムが決壊し始めるかのように、大きくなり始める声。

どうしても、気になってしまう。

「…いったい、何?」

ついには、覚醒した意識と共に、その身体をも起こしてしまう美鈴。
その上半身を起こし、さらにはゆっくりと立ち上がる。

「こんな時間に、なんだろう?…」

この一日で、その心を根こそぎ奪われてしまった存在。
今となっては、この人なしなんて、絶対に嫌だと、確信をもって言える存在。

その存在である、涼羽の声。
その彼が自ら吐き出すとは思えない、艶めいた声。

それも、こんな時間に。

極力音を立てないように、静かに部屋の襖を開け、闇に包まれた外を見る。
すると、とあることに気づく。



――――涼羽の部屋の襖が、わずかに開き、そこから光が漏れ出していることに――――



――――そして、その妹である羽月の部屋の襖も、わずかに開いていることに――――



「?……」

恐らくは、羽月が涼羽の布団に潜り込んで一緒に寝る、とか。
そういった事態になっているのだろう。

あのお兄ちゃん大好きな妹なら、絶対にそうするだろうという確信がある。

しかし、ただそれだけなら、なんで部屋の明かりはついているのだろう。
それに、なんで涼羽のらしくない声が、ずっと聞こえてくるのだろう。

気になる。

音を立てないように木の板張りの廊下をそっと忍び足で歩く。
そして、明かりの漏れるその部屋まで近寄っていく。

「…んんっ……あ…」

近寄れば近寄るほどに、はっきりと聞こえる声。

自分が心底大好きな存在である、涼羽の声。
その涼羽の、あまりにもらしくない声。

美鈴の身体が、ついに涼羽の部屋の前に着く。

そして、わずかに開いている襖の隙間から、中を覗く。

「!!……」

その瞬間、美鈴の目に映りこんだ光景。

その光景に、美鈴の身体が跳ね上がるかのように震える。

「ん…ちゅうっ…」
「あ…んっ…」
「んん…ほにいひゃん(お兄ちゃん)…」
「!ひ…あっ…」

そこには、見た目美少女姉妹にしか見えない、一組の兄妹の姿があった。

兄である涼羽。
妹である羽月。

その二人が、同じ布団の中で一緒に身体を横たわらせている姿が。

ただ、それだけではなかった。

布団の上に仰向けに身体を寝かせている涼羽。

寝巻として着ているはずのジャージの前が開かれ…
その中のインナーとしているタンクトップがめくり上げられ…

その華奢で、それでいてすべすべとして柔らかな胸が、完全に晒しだされている。

その露になった胸に。

正確には、その胸にぽつんとある、その飾りに。

実の兄を押し倒すようにして上に覆いかぶさり。
その晒しだされたものに、幸福感に満ちた表情で吸い付いている妹、羽月。

羽月の口が動くごとに、涼羽の口から甘やかな声が漏れだす。

そんな涼羽の声が耳に響く度に、よりその表情に浮かぶ幸福感が増していく羽月。

そんな自分の声を実の妹に聞かれ…
さらにはこんな自分を容赦なく見られ…

際限なく襲い掛かる羞恥に、その顔全体が染まっている。

恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないのだろう。

時折、上目使いで自分の顔を覗き込んでくる妹から、この顔を見られないように逸らしている。

しかし、それでも突き放すことができないのか。
その華奢な身体にべったりと抱きついてくる妹の身体を優しく抱きしめ…
胸の中で生まれたての赤ん坊のような授乳行為を続ける妹の頭を優しく撫で…

文字通り、母親の代わりのようにべったりと甘えてくる妹、羽月。
そして、そんな妹を恥ずかしがりながらも懸命に甘えさせている兄、涼羽。

そんな二人の姿に、美鈴は目を奪われている。

「…可愛い…」

男の子なのに、あんなにおっぱい吸われて。
男の子なのに、あんな風に押し倒されて。
男の子なのに、まるで女の子みたいに恥ずかしがって。
男の子なのに、お母さんみたいに妹を可愛がって。

ドキドキが止まらない。

涼羽が、お母さんのように授乳行為を求められ…
ひたすら妹に吸われ続けているその姿。

可愛くて可愛くてたまらない。

そんなに恥ずかしがる姿を見せられたら、もっと恥ずかしがらせたくなってしまう。

大好きで大好きでたまらない涼羽の、そんな姿。

もっと、近くで見たい。
もっと、じっくりと見たい。



――――私も、あんな風に甘えさせて欲しい――――



もう、止まらない。
止められない。

美鈴の手が、涼羽の部屋の襖にかかる。
そして、それを一気に開いてしまう。

まるで、自分の存在を強調するかのように。

「!!…」
「!!」

その音に、兄妹の世界に入りこんでいた二人の意識が向く。

羽月は、吸い付いているそれを決して離そうとしないまま、視線だけをそちらに向ける。
涼羽は、今の自分をクラスメイトに見られてしまっていることに、すでに暴発気味の羞恥を爆発させてしまう。

「み、見ないで!」

思わず甲高い声を上げてしまう涼羽。
そして、じっと自分を見つめてくる美鈴の視線から逃げるように、その熟れたトマトのように真っ赤になっている顔を逸らしてしまう。

そんな涼羽を見て、ぞくりとしてしまう。
まるで、剥き出しの背筋をそっとなぞられたかのような感覚。

可愛い。
可愛すぎる。

そんな涼羽に引き寄せられるかのように、美鈴は涼羽のそばまで近寄り、そっと腰を下ろす。

「…綺麗…」

むき出しになっている涼羽の胸。

男であるため、当然ながら女性のようなふくらみなどない胸。
しかし、それでいて柔らかな印象を受ける胸。

そして、羽月が吸い付いているところとは反対の、左のその飾り。

透き通るかのような白く、美しい肌。

たまらず、声が漏れてしまう。

「…ねえ、涼羽ちゃん」
「!!」

そっと耳に息を吹きかけるかのように、美鈴が涼羽に声をかける。
その声に、涼羽の身体が思わず震えてしまう。

「こんな夜遅くに、何してるの?」

見れば分かるだろうその行為。
すでに美鈴はそれを目の当たりにしている。

しかし、すでに答えの分かっている質問を、あえてぶつけてしまう。

この状況でも、羽月はひたすらに涼羽の胸に吸い付いている。
それゆえに、涼羽の身体がびくびくと、震える。

それでも、この羞恥に染まった顔だけは見られたくないのか。
必死に美鈴から顔を逸らして、そちらを向かないようにしている。

そんな涼羽の無防備な左の耳に、美鈴の口が近づく。

「…こっち向いて、答えて」

その無防備な耳を攻撃するかのように、吐息のような声を吹きかける。
その声に、涼羽の身体がさらにびくんと震える。

「!!や、やっ!!…」

たまらず漏れ出してしまう、甘く艶やかな声。
背筋をそっとなぞられるかのような感覚に、そんな反応を隠せない。

そんな涼羽があまりにも可愛いのか、美鈴の涼羽を見つめる顔に至福の表情が浮かぶ。

「…羽月ちゃんに、おっぱい吸われてるんだ。涼羽ちゃん」
「!や、やだ…見ないで…」
「涼羽ちゃんって、本当にお母さんなんだね。こんなことまで、してあげてるの?」
「!い、いわないでえ…」

耳に吹きかけられるような声が、涼羽の羞恥をさらに煽る。

その羞恥に、涼羽の理性が溶かされそうになってしまう。

クラスメイトに、見られてしまったこの行為。

恥ずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。

そんな思いが、涼羽の心を支配してしまう。

「…美味しそう…」

そんな涼羽の耳に、ぼそりとつぶやかれる一言。

「…え?」

思わず漏れる、涼羽の声。

「…私も、欲しい」

いつの間にか、羽月と同じように涼羽の布団に潜り込んでいた美鈴。
そして、その美鈴の口が、涼羽の左の飾りを覆ってしまう。

「!!ひゃっ!!」

その感覚に、甲高い涼羽の声が、漏れてしまう。

「ん…ちゅうっ…」

それを、目いっぱい味わうように舌でなぞりながら、吸い付く。

どことなく、甘い感じのそれ。
その甘い美味が、美鈴の口の中に広がっていく。

「(美味しい…)」

実際に、何かが出てくるわけではない。
だが、吸い付く度に…
舌でなぞる度に…

その甘やかな美味が、美鈴の味覚を刺激する。

「んっ…や、やめて…」

実の妹である羽月だけならまだしも…

赤の他人であり…
異性であり…
クラスメイトである、美鈴にまでこの行為をされている。

たまらずに、懇願するような拒絶の声が漏れる。

右の方は羽月が。
左の方は美鈴が。

それぞれ、文字通り涼羽を味わうかのように吸い付いてくる。

自らを燃やし尽くしてしまうかのような羞恥。
身を捩じらせてしまう、背筋をなぞられるような感覚。

それらが、涼羽の身体を。
涼羽の心を。

容赦なく攻め立てる。

「(なんだか…すっごく幸せ…)」

自分の隣で、夢中になって涼羽の胸に吸い付いている羽月を見ても分かってしまう。

この行為が、自分に言いようのない幸福感を与えてくれる。

当事者である実の妹、羽月以外は誰も知らないであろう、涼羽のこの姿。
それを、知ってしまった。

そして、実際に羽月と同じようにその行為を求め…
涼羽の胸の中に顔を埋めて、その飾りに吸い付くこと。

たまらない。
たまらないほどに、求めてしまう。

平坦でありながら、柔らかですべすべな涼羽の胸の中。

その胸に顔を埋めるだけで、まるで涼羽に包まれているかのような感覚。

たまらない。



――――こんなことを、いつも羽月ちゃんはしてもらってるんだ――――



無理もない。

こんなにも幸せになれるなんて。

羽月が、どれほどこの実の兄を好きになっても、おかしくない。
そう、思えてしまう。

好き。
大好き。

そんな想いが、美鈴の心に溢れてくる。

絶対に離したくない、という想いのままに、涼羽の胸に吸い付く美鈴。

片方は実の妹に。
片方はクラスメイトに。

二人に、その想いの大きさを表すかのように胸に吸い付かれる涼羽の姿。

その羞恥と、吸い付かれることによる刺激に襲われながらも。
必死にこらえながら、二人を包み込もうとしている涼羽。

そんな三人の甘く、優しげな行為が、この夜の中、しばらく続くこととなる。

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