お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

美鈴ちゃん…可愛い…

「んんんっ!!」

昼時の体育倉庫の中。
本来ならば、誰もいないはずのこの時間、この場所。

そこからかすかに漏れる、くぐもった声。

唯一の出入り口である扉は、内側から鍵がかけられ…
完全な密室となっているそこにいるのは、二人の男女。

一人は、そこに敷かれているマットの上に体を横たわらせ、その上半身を晒している。
もう一人は、その上に甘えるかのように抱きつき、露になっているその胸に吸い付いている。

今、この場で漏れ出た、くぐもった声。

その声の主である、高宮 涼羽。

その華奢な身体を、敷かれたマットの上に横たわらせ…
そして、その露になっている胸。

その胸には、涼羽のクラスメイトであり…
涼羽のことが好きで好きでたまらない、校内でも人気の美少女である、柊 美鈴。

その美鈴が、まさに母の母乳を求めるかのように、吸い付いているのだ。

人一倍敏感な涼羽の身体。
その中でも特に敏感な場所である、胸の飾り。

そこに、執拗に吸い付かれ…
時には舌で味わうごとくに触れられ…

その度に、涼羽はその身体を震わせ…
その羞恥を気づかれたくないと言わんばかりに抑えている口から、くぐもった声を漏らしてしまっているのだ。

いかに美少女然とした容姿とはいえ、れっきとした男である涼羽。
その自分が、なぜクラスメイトの女の子に、こんなことをされているのだろう。

美鈴からの懇願を、断ることができずになし崩しに受け入れてしまったのは確かに涼羽自身。
だからこそ、強烈なほどの羞恥を味わいつつも、無碍にすることなどできない。

まして、その美鈴の表情。

まさに、その幸福感と心地よさを表すかのような笑顔。

そんな笑顔を見せられては、なおさら無碍にすることなどできない。

涼羽の母性本能が、そんなことを許すはずもない。

とはいえ、その露になった胸に吸い付かれ、懸命に羞恥に耐えながらも身体を震わせ…
さらには。その羞恥を抑え込むかのような、くぐもった声。
そして、羞恥という名の朱に色濃く染まってしまっているその顔。

この密室の中、年頃の男女が二人っきりというシチュエーション。
どんな間違いが起こっても不思議ではない、このシチュエーション。

今まさに、そんな間違いが起こっている状況なのだろうが…

その被虐的な姿を晒しているのが、男子である涼羽の方で…
その涼羽に迫るように胸に吸い付いているのが、女子である美鈴で…

どう見ても、男女逆だろうと。
あきらかに、配役逆でしょうと。

誰が見てもそうつっこんでしまうような状況になってしまってはいるのだが。

ただ、どちらも美少女な容姿であるがゆえに…
美少女同士のゆりゆりした展開に見られることの方があきらかに多いと思われる。
片方は、確かに男だけれど。

「ん…♪」

涼羽の胸に顔を埋め…
その中にある胸の飾りに執拗に吸い付いている美鈴。

その心地よさ…
その温かさ…
そのほんのりとした甘さ…

その全てが、美鈴の心を掴んで離さない。

かつて、赤ん坊だった頃。
実の母に、こうして与えてもらっていた頃。

はっきりとした記憶にはないが、確かにそれをしてもらった感覚。

その感覚と酷似している、今のこの感覚。

男であるはずの、涼羽の胸。
その涼羽の胸の中で、それを感じることができるなんて。

大好き。
大好き。

何度言っても足りない。
何度想っても足りない。

「(涼羽ちゃん…だあい好き…)」

幸せすぎて、たまらない。
心地よすぎて、たまらない。

男とは思えない、そのほっそりとした、まろやかな体つき。

うらやましいとさえ思えるほどに。

さらには、その美少女顔。

男くささをまるで感じさせないその容姿も、好きで好きでたまらない。
しかも、その容姿に合わせるかのような、貞淑で下心を感じさせない、性衝動とは無縁のおっとりとした性格。

それが、美鈴の心を引き寄せる。
それが、美鈴に絶大な信頼感を与えてくれる。

そして、その羞恥に染まった顔。
そして、その様子。

それらの、なんと可愛らしいこと。

ずっと、見ていたい。
もっと、見せて欲しい。

「…涼羽ちゃん」
「んっ…な、なあに?」

突然の美鈴の呼びかけ。
それも、胸の中から上目使いで覗き込むかのような視線。

それらに戸惑いながらも、反応を返す涼羽。
ただし、羞恥に染まったその顔を見られたくないのか、あさっての方向を向いたままで。

「涼羽ちゃんの顔、私にちゃんと見せて」
「!そ、それは…」
「だって、恥ずかしがってる涼羽ちゃんの顔、すっごく可愛いもん」
「な、なに言って…」
「そんな可愛い涼羽ちゃんの顔、い~っぱい見たいの」

ある意味、涼羽にとっては死刑宣告に等しい美鈴の懇願。
どうにかして、それを回避しようとするも、しどろもどろな声が出るばかりで、うまく言葉が出ない。

そんな涼羽に、容赦なく美鈴は懇願する。

「み、美鈴ちゃん…」
「涼羽ちゃん…」
「!…」
「…だめ?」

やめて。
それだけは、やめて。



――――そんなことされたら、拒めなくなっちゃう――――



涼羽にとって、決して抗うことのできない攻撃が、ついに出る。
自分の胸元から、上目使いでおねだりしてくる美鈴の姿。

嫌だ、ダメだと、理性が抵抗しようとするも…
その母性本能が、それを許してくれない。

こんなにお願いしてくるんだから、かなえてあげないと。

「…う、うん…」

その本能が、涼羽に自然と肯定の意を返させる。
そして、羞恥に染められたその顔を、美鈴の方に向ける。

「…こ、これで、いい?」

その視線が美鈴と交わった途端…
顔が燃え上がってしまうのでは、と錯覚するかのような熱さを感じてしまう。

見られたくない。
こんなにも羞恥に染まった顔を、見られたくない。

でも、涼羽の中の母性が、美鈴から顔をそらすことを許してくれない。

実の妹である羽月に対してでも、消えてしまいそうなほどの羞恥を感じてしまうのだ。
赤の他人であり、クラスメイトである美鈴に対してだと、ひときわその羞恥を感じてしまう。

でも、その母性に抗うことができない。

「…うう……」

恥ずかしくて、恥ずかしくてたまらない。
恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうなほど。

涼羽が、その羞恥を感じれば感じるほど、その可愛らしさを増していく。

「…えへへ♪」

そんな涼羽の顔を見ることのできた美鈴。
その顔には、まさにご満悦といった笑顔が浮かぶ。

「…あ、あんまり見ないで…」
「えへ。恥ずかしがってる涼羽ちゃん、ほんとに可愛い♪」
「い、言わないで…」
「や。こんなに可愛いんだもん」
「だ、だめだって…」
「可愛い涼羽ちゃん、もっと見せて?」

美鈴のその眼差しが、容赦なく涼羽を射抜く。
じっと見つめられるだけでも、今の涼羽には耐え難いほどの羞恥が襲い掛かってくる。

それでも、その顔をそらすこともできず、ただただ、美鈴の屈託のない笑顔からの視線を、じっと受け入れ続けるしかできない。

「涼羽ちゃん、私のこと、ぎゅってして?」
「え…」
「なでなでして?」
「……」
「お願い、涼羽ちゃん」

その屈託のない笑顔から来る、さらなる美鈴の懇願。

本当に年齢が退行してしまっているかのようなおねだり。
そんな美鈴が、本当に可愛く見えてしまう。

そんな風に甘えてくる美鈴に、羞恥を感じながらも、優しい笑顔が浮かんでくる。
そんな風に可愛らしく甘えてくる美鈴を、優しく包み込みたくなってくる。

「ふふ…」

その慈愛に満ちた笑顔。
それが、涼羽の顔に浮かんでくる。

そして、自身の身体を押し倒し、覆いかぶさるように抱きついている美鈴の身体をそっと抱きしめ…
その頭を、髪を梳くかのように優しく撫で始める。

「ふあ…」
「美鈴ちゃん、可愛い」
「ほんと?」
「うん」
「えへへ♪」

蕩けるかのように甘い、涼羽の甘やかし。

美鈴は、まさに柔らかで優しい何かに包み込まれるような感覚を感じ…
それをもっと感じたくて、涼羽の胸に顔を埋めてぎゅうっと抱きついてくる。

「涼羽ちゃん…もっと、もっとして」

その甘やかしがもっと欲しくて、もっとおねだりしてしまう。
もう、大人の一歩手前の年齢であるにも関わらず、幼い子供のように甘えてしまう。

「ふふ…はいはい」

そんな美鈴が可愛くて、涼羽はより美鈴を甘えさせようとする。

美鈴の頭を撫でる涼羽の手の動きが、さらに優しくなる。
より美鈴を包み込もうと、ぎゅうと美鈴の身体を抱きしめる。

妹、羽月に普段からしてあげている甘やかしを、今は目の前の美鈴にしてあげている。

「涼羽ちゃん…」
「?なあに?」
「だあい好き♪」
「…ふふ、ありがと」

もう何度言われたか分からない、その言葉。
だが、ひたすらに純粋で無垢な想いを乗せた、美鈴の言葉。

その言葉一つで、涼羽の慈愛がより膨れ上がる。

その蕩けるような甘やかしで、美鈴を包み込む。

美鈴は、そんな涼羽の胸の飾りを、再び口に含み、吸い始めてしまう。

「!んっ…」
「ん~…」

大好きで大好きでたまらない涼羽の胸の中でひたすらに甘えさせてもらえている美鈴。
その涼羽の慈愛がもっと欲しくて…

まさにそれを吸い出すかのように、涼羽の胸に吸い付いてくる。

いきなりの感覚に思わず身体を震わせ…
少し艶を帯びた、甘い声を漏らしてしまう涼羽。

しかし、美鈴を包み込み、頭を優しく撫でる手の動きは変わらず。

逆に、もっともっと包み込もうとしてしまう。

「(好き!好き!涼羽ちゃん、大好き!)」

想いが溢れて止まらない。
もっと、もっとと、涼羽を求めてしまう。

「…美鈴ちゃん…」

そんな美鈴をひたすらに包み込み…
これでもかといわんばかりに甘やかしてしまう涼羽。

その胸に吸い付かれるごとに、背筋をそっとなぞるかのような感覚に襲われながら。
その度に、その身体を震わせながら。

男女が二人っきりという状況の中、間違いは起こっていないものの…

その配役に関して言えば、間違いなく間違えてしまっていると言える。

しかし、そんなことなどどうでもいいと思えるようなほのぼのとした、甘やかな雰囲気。

美鈴は、大好きな涼羽と、その涼羽の甘やかしを思う存分堪能することができた。

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