とある英雄達の最終兵器
第107話 冷静と情熱の間には深い溝があったが案外簡単に乗り越えられちゃった
「んじゃ枕持てぇー、よーい、はじめっ! おらっ、テュール死ね!!」
開始の合図とともに枕で殴りかかってくるテップ。
(浅はかな! そのくらい読めるわっ!)
テップの考えることなどお見通しだとばかりに余裕でその枕を受け止めるテュール。
「えぃっ!」
ボスンッ。
「へっ?」
テュールが後頭部に衝撃を感じ後ろを振り返ると、満面の笑みでセシリアが立っていた。あまりの殺気、闘気のなさに呆気なくその攻撃を食らってしまったようだ。
その一瞬の気の緩みをレーベは見逃さない。テュールの視界に入らないよう深くしゃがみ、足元を刈り取るようなローキックを放つ。一応足に枕は巻いてある。
そして、テュールの体勢が崩れたところでテップが動く。正面から大きく踏み込み――攻撃の寸前に真横へと切り返す。本命はテップをブラインドにして虚を突かんとするカグヤ――木刀with枕で一直線に切り込んでくる。
テュールは不意を突かれるも両手でガードすることに成功する、が、同時に迫っていたレフィーの拳with枕には対応できず、その脇腹を打ち抜かれ――。
ズバァァァンッッッ!!
「ひでぶっ!!」
テントの端まで吹き飛び、倒れる。それを追うようにリリスが、トットットと駆け寄り――。
ボスンッ! ボスンッ!
容赦なく死人に枕を打ち付けた。
電光石火の攻防はまるで入念な打ち合わせをしていたかのように鮮やかに決まり、テュールは僅か3秒で退場となった。
――ニヤリ。
テップと少女達5人は怪しい笑みを浮かべ、頷き合う。次の標的は――。
「おい、お前ら何だその目は……おい」
「あ、ボク急用思い出した。じゃーねー」
テップwith少女5人組の妙な迫力にたじろぎ、ジリジリと後退するアンフィス。ヴァナルは潔く逃亡した。
「じょ、上等だ。てめぇらかかってこ――」
シュー……。
6人は修行では見せたこともない、鮮やかな連携でアンフィスを一瞬で葬る。
くるり。
そして、最大の敵であるベリトへと向き直るテップ達。
「…………その、私もお腹が痛くなってきたようなので棄権いたしますね?」
あのベリトでさえ、その禍々しき欲望渦巻く気迫にたじろぎ、逃げの一手を打った。これで残るはテップと少女達5人。
「さて、レーベ。俺と協力しないか? ツヨシの正式な飼い主と認めてやってもいいぞ?」
テップがレーベを傘下に引き込もうとする。
「ツヨシ……。ん」
てってれー。レーベが仲間になった。
「カグヤぁ。ちょいちょい」
カグヤを手招きし、ごにょごにょごにょと耳元で何かを囁く。するとカグヤの顔は真っ赤になり――。
「…………」
てってれー。カグヤが仲間になった。
「やれ」
こうして、3対3となったところでテップが指示を下す。まずはレーベがレフィーを足止めする。その間にテップは容赦なくリリスを殴る。
「痛い、痛いのだー! うぅー……! やめるのだぁ、うっ、うぅ」
無表情で何度も枕を叩きつけるテップ。泣きながら亀のように丸まるリリス。それをカグヤが止め、リリスをそっと慰めながら退場させる。そして、テップとカグヤはそのまま次の標的セシリアへと走る。
「え? え?」
戸惑うセシリア――しかし、それを容赦なく無表情で何度も枕で叩くテップ。やめて下さい、やめて下さいとセシリアは涙声だ。その隙にカグヤが後ろからお尻を枕で叩く。
「ひゃうん」
驚いたセシリアは、変な声を上げてしまい、恥ずかしそうに口に手を持っていった所でテップに吹き飛ばされ、退場となる。
「フ。3対1かおもしろ――ガハッ」
キンッ。
「モヨモト流居合術――疾り鳴き龍」
レフィーが喋っている最中に容赦なく最速の居合術をかますカグヤ。
「……。これで3人。同盟は破――うっ」
キンッ。
そして、レーベが喋っている最中にも容赦なく最速の居合術をかますカグヤ。
「さて、カグヤ?」
イヤらしい笑みでテップがカグヤに向き直る。
「…………リタイアします」
えぇぇぇーー!?
成り行きを見守っていた全員が驚きの声を上げる。テップがカグヤに耳打ちした内容がそこまでのものだったのか、と、ものすごく興味が湧く一同であったが、なんとなく開けてはいけないパンドラの箱である気がして踏み込めないでいた。
「ふぅーはっはっは! 俺様大勝利ッッッ!! お前らに要求することはひとーーーつ!!」
ゴクリ。どんな無茶振りが来るのかと、生唾を飲む一同。
「王様ゲームをさせてくださぁぁぁぁああい!!」
……………………。
「「「「「は?」」」」」
ちょっと何を言ってるか分からない一同は開いた口が塞がらないのであった。
「テップ? 正気か? お前の願い事はそれなのか?」
「あぁ、そうだ! 女の子とキャンプして王様ゲーム! これが俺の青春にとって最も大事なことなんだ! お前は分からないのか!?」
テュールの冷静な問いに、情熱を持って答えるテップ。
(あれ? 俺がおかしいの?)
一応、周りに視線を配ってみる。皆が皆冷めた目をしていた。どうやら冷静派のようだ。
「そもそも王様ゲームとはなんなのだ?」
リリスが不思議そうな顔でテップに聞く。
「よーく聞いてくれたー!! 王様ゲームとは、クジで王様を決めて、他の人に好きな命令を下せるゲームだ!!」
好きな命令……。女性陣達が小さく呟き、思案顔になる。
(おい、まさか……)
「や、やってもいいかなっ……?」
「そ、そうですねっ! テップさんが勝ったんですからしょうがないですよね」
「フ、そうだな。少し興味が沸いた。やろうじゃないか」
カグヤ、セシリア、レフィーが前向きに検討し始めた。そして、その3人がリリスとレーベに意見を聞くと、やってもいいという答えが返ってくる。この時点でテュール、アンフィス、ヴァナル、ベリトは諦めて付き合うことを決める。
「よーし、決まり、んじゃ円になれ。クジはこれな?」
テップの手には既にクジが用意されていた。よほど楽しみにしていたのだろう。
(はぁ……王様ゲームね……。まぁ、俺も人生初の王様ゲームだからな……、王様になったらどんなこと言えばいいんだろ……)
テップに正気かなどと言いながらも、ちゃっかりワクワクドキドキしてしまっているテュールであった。
そして、遂に王様ゲームが始まる。皆が皆、自分のクジをこっそりと確認し――。
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
開始の合図とともに枕で殴りかかってくるテップ。
(浅はかな! そのくらい読めるわっ!)
テップの考えることなどお見通しだとばかりに余裕でその枕を受け止めるテュール。
「えぃっ!」
ボスンッ。
「へっ?」
テュールが後頭部に衝撃を感じ後ろを振り返ると、満面の笑みでセシリアが立っていた。あまりの殺気、闘気のなさに呆気なくその攻撃を食らってしまったようだ。
その一瞬の気の緩みをレーベは見逃さない。テュールの視界に入らないよう深くしゃがみ、足元を刈り取るようなローキックを放つ。一応足に枕は巻いてある。
そして、テュールの体勢が崩れたところでテップが動く。正面から大きく踏み込み――攻撃の寸前に真横へと切り返す。本命はテップをブラインドにして虚を突かんとするカグヤ――木刀with枕で一直線に切り込んでくる。
テュールは不意を突かれるも両手でガードすることに成功する、が、同時に迫っていたレフィーの拳with枕には対応できず、その脇腹を打ち抜かれ――。
ズバァァァンッッッ!!
「ひでぶっ!!」
テントの端まで吹き飛び、倒れる。それを追うようにリリスが、トットットと駆け寄り――。
ボスンッ! ボスンッ!
容赦なく死人に枕を打ち付けた。
電光石火の攻防はまるで入念な打ち合わせをしていたかのように鮮やかに決まり、テュールは僅か3秒で退場となった。
――ニヤリ。
テップと少女達5人は怪しい笑みを浮かべ、頷き合う。次の標的は――。
「おい、お前ら何だその目は……おい」
「あ、ボク急用思い出した。じゃーねー」
テップwith少女5人組の妙な迫力にたじろぎ、ジリジリと後退するアンフィス。ヴァナルは潔く逃亡した。
「じょ、上等だ。てめぇらかかってこ――」
シュー……。
6人は修行では見せたこともない、鮮やかな連携でアンフィスを一瞬で葬る。
くるり。
そして、最大の敵であるベリトへと向き直るテップ達。
「…………その、私もお腹が痛くなってきたようなので棄権いたしますね?」
あのベリトでさえ、その禍々しき欲望渦巻く気迫にたじろぎ、逃げの一手を打った。これで残るはテップと少女達5人。
「さて、レーベ。俺と協力しないか? ツヨシの正式な飼い主と認めてやってもいいぞ?」
テップがレーベを傘下に引き込もうとする。
「ツヨシ……。ん」
てってれー。レーベが仲間になった。
「カグヤぁ。ちょいちょい」
カグヤを手招きし、ごにょごにょごにょと耳元で何かを囁く。するとカグヤの顔は真っ赤になり――。
「…………」
てってれー。カグヤが仲間になった。
「やれ」
こうして、3対3となったところでテップが指示を下す。まずはレーベがレフィーを足止めする。その間にテップは容赦なくリリスを殴る。
「痛い、痛いのだー! うぅー……! やめるのだぁ、うっ、うぅ」
無表情で何度も枕を叩きつけるテップ。泣きながら亀のように丸まるリリス。それをカグヤが止め、リリスをそっと慰めながら退場させる。そして、テップとカグヤはそのまま次の標的セシリアへと走る。
「え? え?」
戸惑うセシリア――しかし、それを容赦なく無表情で何度も枕で叩くテップ。やめて下さい、やめて下さいとセシリアは涙声だ。その隙にカグヤが後ろからお尻を枕で叩く。
「ひゃうん」
驚いたセシリアは、変な声を上げてしまい、恥ずかしそうに口に手を持っていった所でテップに吹き飛ばされ、退場となる。
「フ。3対1かおもしろ――ガハッ」
キンッ。
「モヨモト流居合術――疾り鳴き龍」
レフィーが喋っている最中に容赦なく最速の居合術をかますカグヤ。
「……。これで3人。同盟は破――うっ」
キンッ。
そして、レーベが喋っている最中にも容赦なく最速の居合術をかますカグヤ。
「さて、カグヤ?」
イヤらしい笑みでテップがカグヤに向き直る。
「…………リタイアします」
えぇぇぇーー!?
成り行きを見守っていた全員が驚きの声を上げる。テップがカグヤに耳打ちした内容がそこまでのものだったのか、と、ものすごく興味が湧く一同であったが、なんとなく開けてはいけないパンドラの箱である気がして踏み込めないでいた。
「ふぅーはっはっは! 俺様大勝利ッッッ!! お前らに要求することはひとーーーつ!!」
ゴクリ。どんな無茶振りが来るのかと、生唾を飲む一同。
「王様ゲームをさせてくださぁぁぁぁああい!!」
……………………。
「「「「「は?」」」」」
ちょっと何を言ってるか分からない一同は開いた口が塞がらないのであった。
「テップ? 正気か? お前の願い事はそれなのか?」
「あぁ、そうだ! 女の子とキャンプして王様ゲーム! これが俺の青春にとって最も大事なことなんだ! お前は分からないのか!?」
テュールの冷静な問いに、情熱を持って答えるテップ。
(あれ? 俺がおかしいの?)
一応、周りに視線を配ってみる。皆が皆冷めた目をしていた。どうやら冷静派のようだ。
「そもそも王様ゲームとはなんなのだ?」
リリスが不思議そうな顔でテップに聞く。
「よーく聞いてくれたー!! 王様ゲームとは、クジで王様を決めて、他の人に好きな命令を下せるゲームだ!!」
好きな命令……。女性陣達が小さく呟き、思案顔になる。
(おい、まさか……)
「や、やってもいいかなっ……?」
「そ、そうですねっ! テップさんが勝ったんですからしょうがないですよね」
「フ、そうだな。少し興味が沸いた。やろうじゃないか」
カグヤ、セシリア、レフィーが前向きに検討し始めた。そして、その3人がリリスとレーベに意見を聞くと、やってもいいという答えが返ってくる。この時点でテュール、アンフィス、ヴァナル、ベリトは諦めて付き合うことを決める。
「よーし、決まり、んじゃ円になれ。クジはこれな?」
テップの手には既にクジが用意されていた。よほど楽しみにしていたのだろう。
(はぁ……王様ゲームね……。まぁ、俺も人生初の王様ゲームだからな……、王様になったらどんなこと言えばいいんだろ……)
テップに正気かなどと言いながらも、ちゃっかりワクワクドキドキしてしまっているテュールであった。
そして、遂に王様ゲームが始まる。皆が皆、自分のクジをこっそりと確認し――。
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
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