とある英雄達の最終兵器
第104話 トコトコきてギュってしてナデナデする
それからしばらく経つとレーベが目を覚ます。
パチクリ。
「……?」
レーベは素早く立ち上がり、周りをキョロキョロ見渡す。自分の記憶と現在の状況を結びつけようとしているのだろう。そんなレーベにカグヤがゆっくりと現状を説明する。
レーベは状況を聞いてる間も、そして聞き終わって尚無表情であった。そして、先程から腕を組み、目を閉じている男へと向き直る。その男は目を開くと厳しい眼差しでレーベを捉えたまま言葉を発する。
「レーベ? 今俺は怒ってる。なんでか分かるか?」
静かな怒りを持ってテュールがレーベにそう切り出す。
「……」
気まずそうに下を向くレーベ。その口は閉ざされたままで地面を何度か視線が往復し、言葉を探している様子だ。そんな様子を見てテュールは一つため息をついて、肩の力を抜く。
「はぁ……。なぁ、レーベ。お前が強さに対して真剣に向き合ってるのは俺達も知ってる。それは決して悪いことじゃない。けどな、今日のはダメだ。強く言わせてもらうなら、レーベ一人で絶対に勝てない相手に一人で挑んだんだ。まして相手は魔獣、手加減なんか一切してくれない。下手したら――いや違う。運が良かったから生きてたんだ」
テュールはそんな黙って下を向いたままのレーベにゆっくりと諭す。周りの面々はそんな二人を静観する。いや、リリスは――。
「テューく――もごもご」
庇おうとでもしたのか、しかし、カグヤの手によって口を塞がれる。
「……でも、強くなるには」
テュールに諭されたレーベは、それでも自分の行動が間違ったものだと認められないようだ。覇気のない声でボソボソと言い返そうとする――が、最後まで言い切ることはできず、言葉を途切らせてしまう。テュールは、レーベとの距離を一歩つめ、身体をかがめ同じ目線で語りかける。
「レーベ。俺はな、いつも強さにひたむきなお前を尊敬している。俺自身がまだまだ修行途中だから師匠らしいことは何一つしてあげられてないけどさ。そんな俺をししょー、ししょーって呼んでくれて、目を輝かせながら修行しようって言ってくるお前が好きなんだ。だから自分の命を危険に晒すような無茶はやめてくれ。ま、今回は俺も事態を甘く見て強く止めなかったのも悪いけどな。だから、俺もごめん」
テュールは頭を下げレーベに謝る。その謝罪の言葉を聞き、レーベがハッと顔を上げる。
「違う。ししょーは悪くない……。悪いのは……私。……ししょー、ごめんなさい」
レーベは涙を浮かべ、何度も謝罪の言葉を繰り返す。小さな弟子はトコトコと近づき、テュールの胸に顔を押し付ける。テュールはそんなレーベをそっと抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でる。
周りは、その微笑ましい光景と結局甘やかしてしまうテュールに暖かい眼差しを向けるのであった。
それからしばらくしてレーベは落ち着くと、他の面々へと向き直り、頭を下げ謝る。謝られた方は謝罪を受け入れ、湿った空気を吹き飛ばすかのように軽口を叩く。
そしてリリスもそれは同様でキョロキョロ辺りを見渡し、ある一点――ベヒーモスを指差すと、わざとらしい声を上げる。
「あー!! そう言えばこの子の名前をまだ決めてないのだー!! リリスはぽよすけがいいと思うのだ!」
「は? ふざけんな! なんだその丸々とした名前は! こいつはいかつくてカッコイイ名前がいい! というか、俺の相棒だから俺が名前決めるし! そうだな、デュートリッヒ・ギルバーグとかどうだ!」
そんなリリスの気遣いを察したテップがごく自然な反応を返す。まるで演技だと思わせないような超自然体だ。流石である。
しかし、そのネーミングセンスゼロの案に女性陣は大ブーイングである。そこでカグヤが待ったをかける。
「えー、テップ君だけが決めるなんておかしいよっ? 私も考えるね? んー……ゲツロウマルなんてどうかな? レーベはどう思う?」
振られたレーベは――。
「……ん。ツヨシ」
「えぇ~、可愛くないですよ? そうですね~、ぷちベヒーモスになられたなら、ぷーちゃんなんてどうですか?」
女性陣はあーでもない、こーでもないと大盛り上がりだ。
「レフィーは、どう?」
カグヤがレフィーに問う。
「ふむ。美味そうだからな。エーロクとかでどうだ? クク」
(牛肉かよ。しかも最高等級越えちまってんじゃねぇか)
隅の方でワイワイ話し合う女性陣を眺めていたテュールだが、レフィーのあんまりな発言についつい心の中でツッコンでしまう。
「ぶるふぁ!? ぶるふぁふぁー!!」
どうやらベヒーモスも驚き、批難しているようだ。
それからもしばらく話し合いは続くが、決着がつきそうにない。しびれを切らしたテップは頭を掻いた後、叫ぶ。
「よーーし!! じゃあもういい!! じゃんけんだ!! じゃんけんで勝ったやつが決める!! 文句ないな!?」
「ぶるふぁ!? るふぁー……」
ベヒーモスの意志は一切確認せず、テップが強引に話をまとめにかかった。ベヒーモスはどこか恨みがましい目でテップを見る。それはそうだ、自分の名前がそんな適当に付けられるのでは納得がいかない。
しかし、そんなベヒーモスの気持ちなど一切構うことなく女性陣がそれでいいと頷く。ちなみにテップを除く男性陣はあまり興味がないため不参加だ。
こうして、テップと女性陣5人のベヒーモス名付けじゃんけん大会が開催されることとなる。
「よーし! 文句なしだかんな!? じゃーーーん、けーん!」
「「「「「ぽんっ」」」」」
パチクリ。
「……?」
レーベは素早く立ち上がり、周りをキョロキョロ見渡す。自分の記憶と現在の状況を結びつけようとしているのだろう。そんなレーベにカグヤがゆっくりと現状を説明する。
レーベは状況を聞いてる間も、そして聞き終わって尚無表情であった。そして、先程から腕を組み、目を閉じている男へと向き直る。その男は目を開くと厳しい眼差しでレーベを捉えたまま言葉を発する。
「レーベ? 今俺は怒ってる。なんでか分かるか?」
静かな怒りを持ってテュールがレーベにそう切り出す。
「……」
気まずそうに下を向くレーベ。その口は閉ざされたままで地面を何度か視線が往復し、言葉を探している様子だ。そんな様子を見てテュールは一つため息をついて、肩の力を抜く。
「はぁ……。なぁ、レーベ。お前が強さに対して真剣に向き合ってるのは俺達も知ってる。それは決して悪いことじゃない。けどな、今日のはダメだ。強く言わせてもらうなら、レーベ一人で絶対に勝てない相手に一人で挑んだんだ。まして相手は魔獣、手加減なんか一切してくれない。下手したら――いや違う。運が良かったから生きてたんだ」
テュールはそんな黙って下を向いたままのレーベにゆっくりと諭す。周りの面々はそんな二人を静観する。いや、リリスは――。
「テューく――もごもご」
庇おうとでもしたのか、しかし、カグヤの手によって口を塞がれる。
「……でも、強くなるには」
テュールに諭されたレーベは、それでも自分の行動が間違ったものだと認められないようだ。覇気のない声でボソボソと言い返そうとする――が、最後まで言い切ることはできず、言葉を途切らせてしまう。テュールは、レーベとの距離を一歩つめ、身体をかがめ同じ目線で語りかける。
「レーベ。俺はな、いつも強さにひたむきなお前を尊敬している。俺自身がまだまだ修行途中だから師匠らしいことは何一つしてあげられてないけどさ。そんな俺をししょー、ししょーって呼んでくれて、目を輝かせながら修行しようって言ってくるお前が好きなんだ。だから自分の命を危険に晒すような無茶はやめてくれ。ま、今回は俺も事態を甘く見て強く止めなかったのも悪いけどな。だから、俺もごめん」
テュールは頭を下げレーベに謝る。その謝罪の言葉を聞き、レーベがハッと顔を上げる。
「違う。ししょーは悪くない……。悪いのは……私。……ししょー、ごめんなさい」
レーベは涙を浮かべ、何度も謝罪の言葉を繰り返す。小さな弟子はトコトコと近づき、テュールの胸に顔を押し付ける。テュールはそんなレーベをそっと抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でる。
周りは、その微笑ましい光景と結局甘やかしてしまうテュールに暖かい眼差しを向けるのであった。
それからしばらくしてレーベは落ち着くと、他の面々へと向き直り、頭を下げ謝る。謝られた方は謝罪を受け入れ、湿った空気を吹き飛ばすかのように軽口を叩く。
そしてリリスもそれは同様でキョロキョロ辺りを見渡し、ある一点――ベヒーモスを指差すと、わざとらしい声を上げる。
「あー!! そう言えばこの子の名前をまだ決めてないのだー!! リリスはぽよすけがいいと思うのだ!」
「は? ふざけんな! なんだその丸々とした名前は! こいつはいかつくてカッコイイ名前がいい! というか、俺の相棒だから俺が名前決めるし! そうだな、デュートリッヒ・ギルバーグとかどうだ!」
そんなリリスの気遣いを察したテップがごく自然な反応を返す。まるで演技だと思わせないような超自然体だ。流石である。
しかし、そのネーミングセンスゼロの案に女性陣は大ブーイングである。そこでカグヤが待ったをかける。
「えー、テップ君だけが決めるなんておかしいよっ? 私も考えるね? んー……ゲツロウマルなんてどうかな? レーベはどう思う?」
振られたレーベは――。
「……ん。ツヨシ」
「えぇ~、可愛くないですよ? そうですね~、ぷちベヒーモスになられたなら、ぷーちゃんなんてどうですか?」
女性陣はあーでもない、こーでもないと大盛り上がりだ。
「レフィーは、どう?」
カグヤがレフィーに問う。
「ふむ。美味そうだからな。エーロクとかでどうだ? クク」
(牛肉かよ。しかも最高等級越えちまってんじゃねぇか)
隅の方でワイワイ話し合う女性陣を眺めていたテュールだが、レフィーのあんまりな発言についつい心の中でツッコンでしまう。
「ぶるふぁ!? ぶるふぁふぁー!!」
どうやらベヒーモスも驚き、批難しているようだ。
それからもしばらく話し合いは続くが、決着がつきそうにない。しびれを切らしたテップは頭を掻いた後、叫ぶ。
「よーーし!! じゃあもういい!! じゃんけんだ!! じゃんけんで勝ったやつが決める!! 文句ないな!?」
「ぶるふぁ!? るふぁー……」
ベヒーモスの意志は一切確認せず、テップが強引に話をまとめにかかった。ベヒーモスはどこか恨みがましい目でテップを見る。それはそうだ、自分の名前がそんな適当に付けられるのでは納得がいかない。
しかし、そんなベヒーモスの気持ちなど一切構うことなく女性陣がそれでいいと頷く。ちなみにテップを除く男性陣はあまり興味がないため不参加だ。
こうして、テップと女性陣5人のベヒーモス名付けじゃんけん大会が開催されることとなる。
「よーし! 文句なしだかんな!? じゃーーーん、けーん!」
「「「「「ぽんっ」」」」」
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