Creation World Online
90話
どこからか笑い声が聞こえる。
声のする方を見れば、そこには楽しそうに団欒する40代くらいの白髪が混じった頭髪の男性と同じく40代くらいの上品そうな女性、その対面に俺に似た黒髪、優しげな眼差しの高校生くらいの青年が座っていた。
彼等は俺の存在に気がつくとニコリと笑いかける。
「こっちにおいで」
青年の声に吸い寄せられるように一歩足を踏み出すと、景色が変化した。
白髪の男性はその頭髪を自身の血で赤く染め、上品な女性はその顔を恐怖に歪める。
青年は心臓から大量の血液を流し、絶命していた。
そんな青年を見下ろすように、黒髪の少年_幼い俺が立っていた。
幼い俺は俺を見ると、ニヤリと笑う。
「また繰り返す」
☆
目開くとカーテンの隙間から陽光が入り込んでいた。
ベッドの上で上半身だけ起こすと、少しフラつく頭を抑えながら周囲を見渡す。
いつもと変わりない景色、磨き抜かれた木製の床に、白塗りの壁、垂れるカーテンは先日狩ったモブのドロップアイテムで作った高級品。
隣を見てみれば、だらしない顔で惰眠を貪る魔導師、アンリがいる。
「…またあの夢か。最近は見なくなってたんだけどな…」
俺は先程の夢を思い出す。
しかし、今日のはいつもと違ったような_
「んん…」
俺の思考は隣の少女の呻きによって中断される。
ゆったりとした動作で上半身を起こすと、ユラユラと身体を揺らしながら目を擦る。
そんな様子を見た俺は唐突にこいつが愛しくなり、抱きしめる。
ビクッと、アンリの身体が一瞬収縮したあと、ゆっくりと弛緩していく。
「えっと…どういう状況なんですか?いや、幸せなので文句はないんですけど…」
「いや、なんとなく。なんとなくこうしていたい」
俺がそう言うと、アンリは俺の背中に手を回してポンポンと背中を叩く。
「大丈夫ですよ。そんなに強く抱きしめなくても、私はどこへも行きません。なので、そろそろ力を緩めていただけませんか?口から昨夜の夕飯が飛び出してきそうなのですが…」
どうやら無意識の内に力が入りすぎていたようだ。
力を緩めるとアンリはふぅ、と溜息を吐いて俺の正面に跨るように移動する。
そして、俺の頭を抱えるように抱きしめる。
「…何してるんだ?」
「なんとなくです」
そう言って俺の頭を解放すると、正面から見下ろすように顔を近づけると、その細い指で俺の目の下を拭う。
その指先には透明な雫が付いていた。
自分の手で目元に触れてみると、濡れているようだった。
いつの間にか泣いていたのか…。恥ずかしいやつじゃん。
「…格好悪いな、俺」
「そんなの今更ですよ」
「おおう、朝イチのディスをありがとう」
「でも」
クスリとアンリは笑うと、そこで口をつぐむ。
でもなんだよ!すごく気になるじゃないか!
「でもってなんだよ。ここまで気にならせといてそれはないだろ」
「まあまあ、いいじゃないですか。わからない方が楽しいこともありますよ」
「それお前が楽しむやつだろ?」
「いぐざくとりぃ!」
「バカが一丁前に英語使いやがった!」
「なんですか!このくらいの英語だったら言えるんですよ!」
そこでお互いに目を合わせて、クスリと笑う。
楽しい、愛しい、こんなに心が満たされているのは全てコイツのおかげだ。
だからこそ夢で幼い俺が呟いたあの言葉『また繰り返す』という言葉が、脳裏にへばりついて離れてくれないのだ。
「えいっ」
「うおっ」
俺が考え事をしていると、そんな掛け声と共に俺に抱きつく。
アンリの平坦なものが俺の顔面に押し付けられる。
「これは?」
「悲しそうな顔をしていたので、元気出ました?」
「欲を言えばもう少しボリュームが欲しかった」
「余程眠りたいらしいですね。いいですよ、永遠に寝かせて差し上げます」
「ホンットすいませんでした。許してください」
黒塗りのナイフを取り出したアンリに俺は、全力で謝罪する。
アンリもそこまで怒っていなかったのか、ナイフをアイテムボックスに仕舞う。
そしてギュッと俺を抱きしめる。
「なんとなくです」
「何も言ってないんだが…」
「なんとなくですから」
しばらくそうしていると、規則正しい息遣いが聞こえてくる。
どうやらそのまま眠ってしまったようだ。
この体勢で首が痛くないのだろうか。
下手に動かすと起きてしまいそうだな。ま、このままでいいか。
1時間後、俺はこの時の安易な考えを後悔することになるのだが。
☆
その後、中々起きてこない俺達を心配したのかなんなのかよくわからないナクが、部屋の扉を開け、その音でアンリが目覚めたのであった。
ああ、ようやく終わったのか。めちゃくちゃ背中が攣りそうだった。
座った体勢でいると背中が痛くなるよな。
で、現在なんだが…。
「なあ、ナク。機嫌直せよ」
「…」
目の前で、用意された食事を取りながらむすっとした表情を浮かべるナク。
何故、拗ねているのかというとアンリの寝ていた体勢が羨ましいとのことだった。
子供か!
ナクは時々子供っぽいところがあるのだ。見た目は完全に年上のミステリアスなお姉さんって感じなんだけどな。
ムスッとした表情のまま、ナクはこちらをチラリと見る。
「ずるい。いっつもアンリばっかり構って…」
「悪かったって、ほらナク。何かしたいことはないか?なんでもいいぞ」
俺がそう言うと、ナクの目が光る。
すごく嫌な予感がするんだが…。
☆
「えい」
「ぬおっ!」
「ふふっ、シュウのここ硬いね」
「ぐっ…!ナク、それヤバ_くぁっ…!」
「何やってんですか!」
バンッと部屋の扉が荒々しく開かれると、そこには肩で息をするアンリの姿があった。
何をしてるって言われてもな…
「見たらわかると思うんだが…ただのマッサージだぞ?」
「…はい?」
そう、先程から俺はナクからマッサージをしてもらっていたのだ。
スキンシップを兼ねた労いだとか言っていたな。
「続きしてもいい?」
「ああ、頼む」
俺の腰に跨りながらそう言うナクに続きを頼むと、グイグイと俺の背中を押してくる。
ふおおお…堪んねえな…。
だらしなく頬を緩めていると、突然アンリが俺のふくらはぎを掴む。
「なにをしてるんだ?」
「私だってマッサージくらいできるんですよ。ほれほれ」
「あっちょ!待て、くすぐった_アハハハハハッ!やめっ、ハフフ!」
本人は一生懸命なのだろうが、いかんせんアンリの力が弱すぎてくすぐったいだけなんだが!
その後数十分間、笑い転げて俺は腹筋が筋肉痛になってしまった。
この痛みが治った暁にはアンリにお仕置きをしてやろうと思う。
声のする方を見れば、そこには楽しそうに団欒する40代くらいの白髪が混じった頭髪の男性と同じく40代くらいの上品そうな女性、その対面に俺に似た黒髪、優しげな眼差しの高校生くらいの青年が座っていた。
彼等は俺の存在に気がつくとニコリと笑いかける。
「こっちにおいで」
青年の声に吸い寄せられるように一歩足を踏み出すと、景色が変化した。
白髪の男性はその頭髪を自身の血で赤く染め、上品な女性はその顔を恐怖に歪める。
青年は心臓から大量の血液を流し、絶命していた。
そんな青年を見下ろすように、黒髪の少年_幼い俺が立っていた。
幼い俺は俺を見ると、ニヤリと笑う。
「また繰り返す」
☆
目開くとカーテンの隙間から陽光が入り込んでいた。
ベッドの上で上半身だけ起こすと、少しフラつく頭を抑えながら周囲を見渡す。
いつもと変わりない景色、磨き抜かれた木製の床に、白塗りの壁、垂れるカーテンは先日狩ったモブのドロップアイテムで作った高級品。
隣を見てみれば、だらしない顔で惰眠を貪る魔導師、アンリがいる。
「…またあの夢か。最近は見なくなってたんだけどな…」
俺は先程の夢を思い出す。
しかし、今日のはいつもと違ったような_
「んん…」
俺の思考は隣の少女の呻きによって中断される。
ゆったりとした動作で上半身を起こすと、ユラユラと身体を揺らしながら目を擦る。
そんな様子を見た俺は唐突にこいつが愛しくなり、抱きしめる。
ビクッと、アンリの身体が一瞬収縮したあと、ゆっくりと弛緩していく。
「えっと…どういう状況なんですか?いや、幸せなので文句はないんですけど…」
「いや、なんとなく。なんとなくこうしていたい」
俺がそう言うと、アンリは俺の背中に手を回してポンポンと背中を叩く。
「大丈夫ですよ。そんなに強く抱きしめなくても、私はどこへも行きません。なので、そろそろ力を緩めていただけませんか?口から昨夜の夕飯が飛び出してきそうなのですが…」
どうやら無意識の内に力が入りすぎていたようだ。
力を緩めるとアンリはふぅ、と溜息を吐いて俺の正面に跨るように移動する。
そして、俺の頭を抱えるように抱きしめる。
「…何してるんだ?」
「なんとなくです」
そう言って俺の頭を解放すると、正面から見下ろすように顔を近づけると、その細い指で俺の目の下を拭う。
その指先には透明な雫が付いていた。
自分の手で目元に触れてみると、濡れているようだった。
いつの間にか泣いていたのか…。恥ずかしいやつじゃん。
「…格好悪いな、俺」
「そんなの今更ですよ」
「おおう、朝イチのディスをありがとう」
「でも」
クスリとアンリは笑うと、そこで口をつぐむ。
でもなんだよ!すごく気になるじゃないか!
「でもってなんだよ。ここまで気にならせといてそれはないだろ」
「まあまあ、いいじゃないですか。わからない方が楽しいこともありますよ」
「それお前が楽しむやつだろ?」
「いぐざくとりぃ!」
「バカが一丁前に英語使いやがった!」
「なんですか!このくらいの英語だったら言えるんですよ!」
そこでお互いに目を合わせて、クスリと笑う。
楽しい、愛しい、こんなに心が満たされているのは全てコイツのおかげだ。
だからこそ夢で幼い俺が呟いたあの言葉『また繰り返す』という言葉が、脳裏にへばりついて離れてくれないのだ。
「えいっ」
「うおっ」
俺が考え事をしていると、そんな掛け声と共に俺に抱きつく。
アンリの平坦なものが俺の顔面に押し付けられる。
「これは?」
「悲しそうな顔をしていたので、元気出ました?」
「欲を言えばもう少しボリュームが欲しかった」
「余程眠りたいらしいですね。いいですよ、永遠に寝かせて差し上げます」
「ホンットすいませんでした。許してください」
黒塗りのナイフを取り出したアンリに俺は、全力で謝罪する。
アンリもそこまで怒っていなかったのか、ナイフをアイテムボックスに仕舞う。
そしてギュッと俺を抱きしめる。
「なんとなくです」
「何も言ってないんだが…」
「なんとなくですから」
しばらくそうしていると、規則正しい息遣いが聞こえてくる。
どうやらそのまま眠ってしまったようだ。
この体勢で首が痛くないのだろうか。
下手に動かすと起きてしまいそうだな。ま、このままでいいか。
1時間後、俺はこの時の安易な考えを後悔することになるのだが。
☆
その後、中々起きてこない俺達を心配したのかなんなのかよくわからないナクが、部屋の扉を開け、その音でアンリが目覚めたのであった。
ああ、ようやく終わったのか。めちゃくちゃ背中が攣りそうだった。
座った体勢でいると背中が痛くなるよな。
で、現在なんだが…。
「なあ、ナク。機嫌直せよ」
「…」
目の前で、用意された食事を取りながらむすっとした表情を浮かべるナク。
何故、拗ねているのかというとアンリの寝ていた体勢が羨ましいとのことだった。
子供か!
ナクは時々子供っぽいところがあるのだ。見た目は完全に年上のミステリアスなお姉さんって感じなんだけどな。
ムスッとした表情のまま、ナクはこちらをチラリと見る。
「ずるい。いっつもアンリばっかり構って…」
「悪かったって、ほらナク。何かしたいことはないか?なんでもいいぞ」
俺がそう言うと、ナクの目が光る。
すごく嫌な予感がするんだが…。
☆
「えい」
「ぬおっ!」
「ふふっ、シュウのここ硬いね」
「ぐっ…!ナク、それヤバ_くぁっ…!」
「何やってんですか!」
バンッと部屋の扉が荒々しく開かれると、そこには肩で息をするアンリの姿があった。
何をしてるって言われてもな…
「見たらわかると思うんだが…ただのマッサージだぞ?」
「…はい?」
そう、先程から俺はナクからマッサージをしてもらっていたのだ。
スキンシップを兼ねた労いだとか言っていたな。
「続きしてもいい?」
「ああ、頼む」
俺の腰に跨りながらそう言うナクに続きを頼むと、グイグイと俺の背中を押してくる。
ふおおお…堪んねえな…。
だらしなく頬を緩めていると、突然アンリが俺のふくらはぎを掴む。
「なにをしてるんだ?」
「私だってマッサージくらいできるんですよ。ほれほれ」
「あっちょ!待て、くすぐった_アハハハハハッ!やめっ、ハフフ!」
本人は一生懸命なのだろうが、いかんせんアンリの力が弱すぎてくすぐったいだけなんだが!
その後数十分間、笑い転げて俺は腹筋が筋肉痛になってしまった。
この痛みが治った暁にはアンリにお仕置きをしてやろうと思う。
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