Creation World Online
第67話
☆
「いーや?お前をとっ捕まえる算段が整ったんだよ」
そう言って目の前のお兄さんはニヤリと笑うと煙幕を地面に叩きつける。
さっきと同じ行動に、ボクは溜息を吐く。
いつものように路地裏にやってきた哀れな獲物を狩ろうと攻撃を仕掛けたんだけど…
どうやら偶々通りかかったってわけじゃないみたいだね。
とっ捕まえるとか言ってたから、どこかの組織の所属、そしてこの街の管理国、そこから考えられるのは…
「天和之國かな?」
「正解だ」
煙の向こうからそう声が聞こえた瞬間、ボクの固有技能『目視録』に攻撃反応、そして回避行動とカウンター方法が表示される。
次の瞬間、お兄さんが煙に紛れて攻撃を仕掛けてくる。
ボクがそれを切り裂くと、そのお兄さんだったものは硬質な音を立てて崩れる。
カラン、と乾いた音を立てて一本の黄色の剣が砕けて地面に落ちる。どうやらフェイクらしい。
固有技能『目視録』その効果は、回避とカウンターをする最適解を視認化するスキルだ。
このスキルがあったからボクは低レベルでも生き残れた、あの愚図共とは違うんだ。
脳内に油汚れの如くこびりついた記憶、嘲笑の記憶。
それらを思い出したボクの手からは赤い血が滴り落ちていた、どうやら無意識のうちに手を握り締めていたらしい。
最悪な気分だ、このお兄さん達を殺してはやくスッキリしたい。
「さあ、遊びはここまでにしよう_っ!?」
「ああ、そうだな。遊びはここまでだ」
暴風が吹き荒れ、周囲の煙が吹き飛ばされる。
しかし、ボクはそれをただ傍観しているしかなかった。
「なんで…なんでだっ!?」
あり得ない、おかしい、信じられない。
「なぜ…っ、ボクが動けないんだ!」
マズい、原因は…!原因はなんだ?
ボクの体力バーの上、簡易ステータスに表示されているのは【麻痺】の二文字。
いつの間に?そんな疑問の答えは目の前にあった。
転がる剣から溢れ続ける黄色の煙、これこそ麻痺の原因だろう。
「クククッ…ようやく気付いたか?そうだよ、それだよ。さ、終わりにしようぜ」
「へっ…こんなものっ」
勝ち誇ったように笑うお兄さんを無視してボクはアイテムボックスを開こうとして、それが叶わないことを悟った。
目の前に浮かんだ『アイテムボックスはロックされています』というシステムメッセージがそれを物語っていた。
お兄さん達の方角を見れば銀ローブを羽織った女魔術師が、白いオーラを放つ右腕を此方に向けていた。
「それじゃ、おやすみ」
そう言ってお兄さんは、ボクの口を優しく抑えてなにかを吸わせる。
甘い匂いと同時にボクの意識は暗い闇に沈んでいくのであった。
この後どうなるのかはわからない、多分殺される。
例え殺されなくともゲーム終了まで48界層の牢獄の街『アルカトラ』に投獄されるだろう。
そうされても仕方ない程ボクの手は汚れている。
ああ、なんだか眠くなってきた。
そうしてボクは意識を手放すのだった。          
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