Creation World Online
第53話
神殿の中は静かで、唯一鳴っているパイプオルガンの音色とステンドグラスから注ぎ込む光が女神像を照らし、神秘的な光景を作り上げていた。
その光景に見惚れていると、1人のシスターがやってくる。
「あっれー!シュウさんじゃん!珍しいね!どしたん?」
デカイ声でそう言うシスターの名はイルナ。
相変わらず今日も声の調節機能がバグっているようだった。
「イルナ、そんなに騒いでまた怒られても知らないぞ」
「大丈夫大丈夫!」
「へえ、何が大丈夫なのか聞きたいですね」
そう声を掛けられてゆっくりとイルナが後ろを振り向くと、そこには柔和な笑みを浮かべた20代前半の神父服を着た男性プレイヤーが立っていた。
「さて、何が大丈夫なのですか?」
「いや〜、神父様今日もかっこ_痛たたたたた!」
「ははは、騒ぐなとあれほど言っているでしょう?言葉、理解してます?」
ミシミシと音が鳴りそうなほどイルナの顳顬を掴む神父。
溜息を吐くと神父はイルナを放すと俺達に向き直る。
「こんにちは、本日はどうされたんですか?」
「ああ、ギルドを作ろうと思ってな。それにしてもライム、お前容赦ないな」
「ははは、よく言われます」
そう言って神父服の男、ライムは未だ蹲って顳顬を抑えているイルナの襟首をつかんで引き摺っていく。
ほんとあいつ見た目に反して酷いことするよな。
ライムに案内されて俺達は小さな小部屋に案内される。
小部屋の中には1人の年老いたNPCが椅子に腰掛けていた。
『よく来た、冒険者よ。貴殿等の目的はわかっておる』
「それなら話が早え。さ、クエストを受けさせてくれ」
キョウジがそう言うと老人は頷く。
『ギルド、それは神により認められし仮初の家族…さあ、神の試練を受けよ』
次の瞬間、俺達の目の前が真っ白に染まると、浮遊感を感じる。
そして、浮遊感が止まると俺達は埃を被った巨大な石造のドーム状の建物の中に立っていた。
その中心には巨大な鎖で繋がれた巨大な狼が座っていた。
鑑定を使用した結果_
◇◇◇◇◇◇
名称:ーーー
種族:チェインウルフ
HP30000/30000
状態:封印
◇◇◇◇◇◇
チェインウルフか、鎖の狼だから勝手にフェンリルかと思ってたが違ったみたいだな。
『む、人の子か。丁度いい、こっちへ来い』
チェインウルフはこちらに気がついたのかそう話しかけて来た。
てか、話せるのかよ。とりあえず近寄ってみるか…
「で、なんだ?」
『うむ、人の子よ。頼みがあるのだ、我が身体を封じておるこの鎖を壊してくれんか』
鎖の破壊か…いや、ちょっとそれはな…
「鎖を壊せばいいのか!よし、やるぜ!」
「兄さん落ち着いてください。鎖を壊した途端ガブってされかねないです」
鎖を破壊しようとするキョウジの膝に蹴りを入れて、ユノが何かを食べるような仕草をしてそう言う。
まあ、普通そう考えるよな。キョウジはバカだから仕方ないけど。
「ねえ、シュウ見て取れた」
「ん?ああ、鎖か、とりあえず少し大人しくしとけよ。いいか、間違っても鎖を壊したり…えっ?」
ドヤ顔のナクがこちらに差し出している手の上には俺の腕くらいの太さはありそうな鎖、ばっと振り向いてチェインウルフを見て見ればその身体を拘束していた鎖が切れて立ち上がって伸びをしていた。
『ふむ、人の子よ。助かったぞ、礼として復活始めの我が食事としてくれよう!』
「やっぱりそのパターンか!チクショウ!」
そう叫んでチェインウルフの鋭い爪の一撃を躱す。
あんなの当たったら即死だろ!
「よっしゃ!やってやんぞ!【黒槍雨】」
「結局こうなるんですね…拘束して戦えば楽だったのに…【開門】」
やる気を滾らせながら闇色の槍を複数展開するキョウジ。
文句を言いながら手に持っていた宝珠から門を出現させるユノ。
俺も負けてられないな。
「【エアカノン】」
掌から放たれた風の砲弾がチェインウルフにぶつかって_霧散する。
おい!今完全に当たっただろ!
『ふははは!効かぬ!効かぬぞ!人の子よ!そら、返すぞ!』
「んなっ!」
チェインウルフが尻尾を振ると俺めがけてエアカノンが飛んでくる。
魔法反射か!
迫り来るエアカノンを【法則介入】で生み出した土壁で防ぐ。
『やるな、人の子よ』
「俺らを忘れてねえか!ワンコロ!」
「無視されるのはムカつきます」
キョウジの手が振り下ろされると、上空に待機していた数千本の闇色の槍が全てユノの作り出した門に吸い込まれるとその数を増やしながらチェインウルフに迫る。
闇色の槍が降り注ぎ、周囲の地面を巻き上げる。
岩の破片と埃が舞い散り視界が悪くなる。
「やったか!」
「兄さん、それフラグですよ」
そうならないと願いたいな。
そんな願いも虚しく床がドンドンと凍結していった。
『人の子よ。貴様等の評価を改めよう。だが、我のこの姿を見て生きていられると思うなよ!』
そんな声が響くと煙幕が晴れてチェインウルフの姿を確認することができた。
チェインウルフは口の端から冷気を噴き出し、その身体は氷の鎖に覆われていた。
完全に戦闘モードだな。やだわー。
『さあ、人の子よ。始め_ペギュ!』
俺の背後から飛んできた鉄塊が顎にぶつかって話を遮られるチェインウルフ。
あれ舌噛んでねえかな。プルプルしてるし噛んだんだろうな。
背後を振り向くと、そこには左手に鎖を持ち、右手にその鎖を千切った鉄塊を持ったナクの姿があった。
『小娘貴様…!』
「うるさい犬」
『キャン!』
ナクの投げた鉄塊は、プロの野球選手も涙目になるような豪速球で、チェインウルフの鼻頭に激突する。
うっわ、痛そうだな…
そんなナクの様子にチェインウルフはかなりご立腹のようだった。
『小娘!貴様!話の途中で_』
「うるさい」
『我の話を_』
「しつこい」
『そろそろやめ_』
「嫌」
おい、もうやめてやれよ!あいつ泣いてんぞ!
ナクに鉄塊を投げ続けられたチェインウルフは、最早抵抗する気もないのか、ただひたすら泣いていた。
「ナク、ストップ。もうやめてやれ」
「シュウ、邪魔しないで、まだまだこれからだから…ハァハァ」
若干楽しくなってんじゃねえよ!
『ひ、人の子、ありがとう。助かった…』
鉄塊を持ってハァハァするヤバいやつと成り果てたナクを止めるとチェインウルフがそう言ってきた。
俺はそんなチェインウルフに対して_
「え、何言ってんの?」
法則介入で地面を尖らせ、チェインウルフの腹部を貫き、宙へと吊るし上げる。
『な、なにを…!』
「いやいやいや、俺はプレイヤーでお前はボス。やる事は1つだろ?」
驚きの表情を浮かべるチェインウルフにニヤリと笑いかけて中指を立てる。
「まあ、そういうことだよ」
そして、尖った地面の先端から更に針を伸ばし、チェインウルフの身体を完全に貫く。
その様子はまるで赤い花のようだった。
すると、俺達の目の前が真っ白に染まり、次の瞬間目の前に老人NPCの姿があった。
『おめでとう、貴殿等は神の試練を乗り越えた。さあ、これを受け取りなさい』
そう言って老人はキョウジに1枚の白い羽根を渡す。
『それは【守天使の羽】使用すればギルドを作れる。そして、これは神からの贈り物じゃ』
すると、老人の横に白い光が収束すると_
『アン!』
そこには小さな水色の犬がいた。
鑑定を使用してみると_
◇◇◇◇◇◇
名称:ーーー
種族:フェンリル
HP:10/10
状態:なし
◇◇◇◇◇◇
『これはギルドを守る存在じゃ。大事にしてやるのだぞ』
老人は顎をさすりながらそう言った。
フェンリルは、キョウジの足元に駆けていくと頭を擦り付けた。
キョウジがデレデレしてるな。気持ちはわかるけど。
「よし!今日からお前の名前はモタロウな!」
「ちょっと兄さん!そんな名前つけないでください!可愛くないです!ね、あなたも嫌ですよね。にこごり」
キョウジの名付けは酷いが、ユノも大概だな!
そんなギャーギャー騒ぐ2人の間にナクがずいっと入り込むとフェンリルを抱き抱える。
ナクは今までにないくらいキリッとした表情を浮かべる。
「ふぇーがいい」
「ナクお前もか!」
まさかの参戦だった。しかも同じようなレベル。
「ふぇー、か…悪くないな」
「いいと思います。可愛いですし」
しかし、アホ兄妹はどうやら気に入ったらしく、もう俺が何を言っても無駄なようだった。
俺が溜息を吐いていると、ナクの拘束から抜け出してきたふぇーがトコトコと俺の足元に歩いてきた。
撫でてみようと思い手を出すと、避けられてしまった。
『ヘッ』
「…」
なんだろう、全然可愛くねえ。
小馬鹿にするような目でこちらを見るふぇーに少しイラッとしたのだった。          
その光景に見惚れていると、1人のシスターがやってくる。
「あっれー!シュウさんじゃん!珍しいね!どしたん?」
デカイ声でそう言うシスターの名はイルナ。
相変わらず今日も声の調節機能がバグっているようだった。
「イルナ、そんなに騒いでまた怒られても知らないぞ」
「大丈夫大丈夫!」
「へえ、何が大丈夫なのか聞きたいですね」
そう声を掛けられてゆっくりとイルナが後ろを振り向くと、そこには柔和な笑みを浮かべた20代前半の神父服を着た男性プレイヤーが立っていた。
「さて、何が大丈夫なのですか?」
「いや〜、神父様今日もかっこ_痛たたたたた!」
「ははは、騒ぐなとあれほど言っているでしょう?言葉、理解してます?」
ミシミシと音が鳴りそうなほどイルナの顳顬を掴む神父。
溜息を吐くと神父はイルナを放すと俺達に向き直る。
「こんにちは、本日はどうされたんですか?」
「ああ、ギルドを作ろうと思ってな。それにしてもライム、お前容赦ないな」
「ははは、よく言われます」
そう言って神父服の男、ライムは未だ蹲って顳顬を抑えているイルナの襟首をつかんで引き摺っていく。
ほんとあいつ見た目に反して酷いことするよな。
ライムに案内されて俺達は小さな小部屋に案内される。
小部屋の中には1人の年老いたNPCが椅子に腰掛けていた。
『よく来た、冒険者よ。貴殿等の目的はわかっておる』
「それなら話が早え。さ、クエストを受けさせてくれ」
キョウジがそう言うと老人は頷く。
『ギルド、それは神により認められし仮初の家族…さあ、神の試練を受けよ』
次の瞬間、俺達の目の前が真っ白に染まると、浮遊感を感じる。
そして、浮遊感が止まると俺達は埃を被った巨大な石造のドーム状の建物の中に立っていた。
その中心には巨大な鎖で繋がれた巨大な狼が座っていた。
鑑定を使用した結果_
◇◇◇◇◇◇
名称:ーーー
種族:チェインウルフ
HP30000/30000
状態:封印
◇◇◇◇◇◇
チェインウルフか、鎖の狼だから勝手にフェンリルかと思ってたが違ったみたいだな。
『む、人の子か。丁度いい、こっちへ来い』
チェインウルフはこちらに気がついたのかそう話しかけて来た。
てか、話せるのかよ。とりあえず近寄ってみるか…
「で、なんだ?」
『うむ、人の子よ。頼みがあるのだ、我が身体を封じておるこの鎖を壊してくれんか』
鎖の破壊か…いや、ちょっとそれはな…
「鎖を壊せばいいのか!よし、やるぜ!」
「兄さん落ち着いてください。鎖を壊した途端ガブってされかねないです」
鎖を破壊しようとするキョウジの膝に蹴りを入れて、ユノが何かを食べるような仕草をしてそう言う。
まあ、普通そう考えるよな。キョウジはバカだから仕方ないけど。
「ねえ、シュウ見て取れた」
「ん?ああ、鎖か、とりあえず少し大人しくしとけよ。いいか、間違っても鎖を壊したり…えっ?」
ドヤ顔のナクがこちらに差し出している手の上には俺の腕くらいの太さはありそうな鎖、ばっと振り向いてチェインウルフを見て見ればその身体を拘束していた鎖が切れて立ち上がって伸びをしていた。
『ふむ、人の子よ。助かったぞ、礼として復活始めの我が食事としてくれよう!』
「やっぱりそのパターンか!チクショウ!」
そう叫んでチェインウルフの鋭い爪の一撃を躱す。
あんなの当たったら即死だろ!
「よっしゃ!やってやんぞ!【黒槍雨】」
「結局こうなるんですね…拘束して戦えば楽だったのに…【開門】」
やる気を滾らせながら闇色の槍を複数展開するキョウジ。
文句を言いながら手に持っていた宝珠から門を出現させるユノ。
俺も負けてられないな。
「【エアカノン】」
掌から放たれた風の砲弾がチェインウルフにぶつかって_霧散する。
おい!今完全に当たっただろ!
『ふははは!効かぬ!効かぬぞ!人の子よ!そら、返すぞ!』
「んなっ!」
チェインウルフが尻尾を振ると俺めがけてエアカノンが飛んでくる。
魔法反射か!
迫り来るエアカノンを【法則介入】で生み出した土壁で防ぐ。
『やるな、人の子よ』
「俺らを忘れてねえか!ワンコロ!」
「無視されるのはムカつきます」
キョウジの手が振り下ろされると、上空に待機していた数千本の闇色の槍が全てユノの作り出した門に吸い込まれるとその数を増やしながらチェインウルフに迫る。
闇色の槍が降り注ぎ、周囲の地面を巻き上げる。
岩の破片と埃が舞い散り視界が悪くなる。
「やったか!」
「兄さん、それフラグですよ」
そうならないと願いたいな。
そんな願いも虚しく床がドンドンと凍結していった。
『人の子よ。貴様等の評価を改めよう。だが、我のこの姿を見て生きていられると思うなよ!』
そんな声が響くと煙幕が晴れてチェインウルフの姿を確認することができた。
チェインウルフは口の端から冷気を噴き出し、その身体は氷の鎖に覆われていた。
完全に戦闘モードだな。やだわー。
『さあ、人の子よ。始め_ペギュ!』
俺の背後から飛んできた鉄塊が顎にぶつかって話を遮られるチェインウルフ。
あれ舌噛んでねえかな。プルプルしてるし噛んだんだろうな。
背後を振り向くと、そこには左手に鎖を持ち、右手にその鎖を千切った鉄塊を持ったナクの姿があった。
『小娘貴様…!』
「うるさい犬」
『キャン!』
ナクの投げた鉄塊は、プロの野球選手も涙目になるような豪速球で、チェインウルフの鼻頭に激突する。
うっわ、痛そうだな…
そんなナクの様子にチェインウルフはかなりご立腹のようだった。
『小娘!貴様!話の途中で_』
「うるさい」
『我の話を_』
「しつこい」
『そろそろやめ_』
「嫌」
おい、もうやめてやれよ!あいつ泣いてんぞ!
ナクに鉄塊を投げ続けられたチェインウルフは、最早抵抗する気もないのか、ただひたすら泣いていた。
「ナク、ストップ。もうやめてやれ」
「シュウ、邪魔しないで、まだまだこれからだから…ハァハァ」
若干楽しくなってんじゃねえよ!
『ひ、人の子、ありがとう。助かった…』
鉄塊を持ってハァハァするヤバいやつと成り果てたナクを止めるとチェインウルフがそう言ってきた。
俺はそんなチェインウルフに対して_
「え、何言ってんの?」
法則介入で地面を尖らせ、チェインウルフの腹部を貫き、宙へと吊るし上げる。
『な、なにを…!』
「いやいやいや、俺はプレイヤーでお前はボス。やる事は1つだろ?」
驚きの表情を浮かべるチェインウルフにニヤリと笑いかけて中指を立てる。
「まあ、そういうことだよ」
そして、尖った地面の先端から更に針を伸ばし、チェインウルフの身体を完全に貫く。
その様子はまるで赤い花のようだった。
すると、俺達の目の前が真っ白に染まり、次の瞬間目の前に老人NPCの姿があった。
『おめでとう、貴殿等は神の試練を乗り越えた。さあ、これを受け取りなさい』
そう言って老人はキョウジに1枚の白い羽根を渡す。
『それは【守天使の羽】使用すればギルドを作れる。そして、これは神からの贈り物じゃ』
すると、老人の横に白い光が収束すると_
『アン!』
そこには小さな水色の犬がいた。
鑑定を使用してみると_
◇◇◇◇◇◇
名称:ーーー
種族:フェンリル
HP:10/10
状態:なし
◇◇◇◇◇◇
『これはギルドを守る存在じゃ。大事にしてやるのだぞ』
老人は顎をさすりながらそう言った。
フェンリルは、キョウジの足元に駆けていくと頭を擦り付けた。
キョウジがデレデレしてるな。気持ちはわかるけど。
「よし!今日からお前の名前はモタロウな!」
「ちょっと兄さん!そんな名前つけないでください!可愛くないです!ね、あなたも嫌ですよね。にこごり」
キョウジの名付けは酷いが、ユノも大概だな!
そんなギャーギャー騒ぐ2人の間にナクがずいっと入り込むとフェンリルを抱き抱える。
ナクは今までにないくらいキリッとした表情を浮かべる。
「ふぇーがいい」
「ナクお前もか!」
まさかの参戦だった。しかも同じようなレベル。
「ふぇー、か…悪くないな」
「いいと思います。可愛いですし」
しかし、アホ兄妹はどうやら気に入ったらしく、もう俺が何を言っても無駄なようだった。
俺が溜息を吐いていると、ナクの拘束から抜け出してきたふぇーがトコトコと俺の足元に歩いてきた。
撫でてみようと思い手を出すと、避けられてしまった。
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