Creation World Online

かずみ

第22話

「さて」
「さて」


 決勝戦が終了した翌日俺とアンリは10時過ぎまで惰眠を貪った後、宿【銀の月】の厨房に立っていた。なんのためかというと、優勝商品である目の前の黄金色に輝く肉を調理するためである。


「さあ!シュウくん!何を作るんですか?」
「そうだな…最近暑くなってきたからスタミナをつけるために豚丼なんてどうだ?ゲームでスタミナがつくかどうか知らんが」
「いいですね!では早速お願いします!」
「ん?アンリお前も手伝うんだよな?」
「はい?私料理なんてできませんよ」


 アンリは本当に不思議だと言わんばかりに首をかしげながらそう言った。
 …仕方ない、俺1人で作ることにしよう。
 俺はブロック肉を取り出すとそのままでは使えないため薄く削いでいく。
 ある程度削ぎ終わったら次はフライパンを熱して油を敷く。
 ニンニクをスライスしてその上で炒める。
 そしてそこに薄切りにした肉を入れるとしっかり火が通るまで炒める。
 次にそこに刻んだタマネギを加えてさらに炒める。
 タマネギが全体的に黄金色になったらフライパンの淵から回すように醤油を入れてパパッと混ぜる。
 最後にあらかじめ炊いておいたご飯の上に乗せ、最後に刻んだネギと卵黄を乗せたら完成だ。
 とても簡単だから是非ともアンリにも覚えて欲しいものだ。


◇◇◇◇◇◇
名称:黄金豚丼【ランクS】
効果:満腹度回復+45%
  自然治癒力上昇【8時間】
◇◇◇◇◇◇


 自分でも中々の出来だと思う。まあ、簡単な料理なんだけどさ。
 ランクが高いのは元々の食材のランクのおかげだろう。これをクリアに料理させたらもっと美味いものが出来るんだろうな。


「ほい、完成」
「おお!美味しそうですね!早く食べましょう!」


 そう言うアンリはもうすでに席についており今か今かと待ち構えている。
 もう一品何か作ろうと思っていたが2人で食べる昼飯なんてこんなもんでいいかと思い、作り置きしておいたサラダをアイテムボックスから取り出してテーブルに着く。
 アンリは豚丼を見た瞬間目を輝かせていたがサラダを出すと目に見えてテンションが下がっていた。どんだけ野菜嫌いなんだ。


「えー…これ食べなきゃダメですか…」
「ん?よく聞こえないな。食べるよな?」
「これ食べたくな…」
「食べるよな?」
「はい」


 俺がナイフを取り出して尋ねるとアンリはこくんこくんと何度も頭を上下する。よほど食べたいらしい。
 その後アンリは駄々をこねることもなくサラダを食べたのだが、食後になぜか遠い目をしていたのは不思議だった。よっぽど肉が美味しかったんだな。うん。


  ☆


 昼飯を食べ終えた俺たちは昨日の闘技場に来ていた。
 なんのためかというとパーティーを結成するためである。
 優勝した俺を含め、リンネ、キョウラク、サイカ、キョウジ、そしてシラクモ。
 この6人でパーティーを組んで界層のボスを攻略する。


「それじゃ、私は観客席で見てますね」
「ああ、それじゃ。しばらくの間お別れだな」


 俺とアンリは闘技場に入る前に別れる。なぜかというとパーティーを結成するメンバー以外は闘技場内に入ることは出来ないからである。
 これはシステム的にではなくとあるプレイヤー達が決めたことだ。


「おや?随分と遅い到着ですねシュウ殿」
「悪かったな、飯食ってたんだよ」


 俺が闘技場の受付を通ろうとすると受付に立っていた黒スーツを身にまとった痩身の男に呼び止められる。
 こいつがこんなルールを作ったプレイヤーの1人。【法皇】ハーである。
 他にも2つ名持ちのプレイヤーは数人居るが大抵の2つ名持ちはこのルールを作るのに尽力している。
 【皇帝】【将軍】【学者】【観測者】【木こり】【天使と悪魔】などがルールを作っている。テスター達の間ではギルド機能が解放されたらこいつらは間違いなくギルドを組んで、このゲームの中で1番の勢力になるだろう、との考えだそうだ。
 ちなみに2つ名はCWO内の【総合攻略スレッド】内で名付けられるものもあれば自分自身で名乗るものなどがある。まあ、自分で名乗るやつはだいたいのやつが大したことないんだけどな。
 そんなハーがこんなところで何をしているのだろうか。
 俺が尋ねるとハーはフッと笑って言った。


「【勇者】に会いたいがために女性プレイヤー達が勝手に中に入るのでここで警備をしているのですよ」
「おお…そうか、お疲れさん」
「ほら、早く行ってください。第三陣がやってきました」


 後ろを振り向くとキャーキャー言いながら剣や斧や槍などを構えた女性プレイヤー達が突撃してくるのが見えた。
 これは面倒だと感じた俺は背後で起こる剣撃や爆発音をBGMに闘技場内に入るのであった。


  ☆


 闘技場内に入ると俺以外の5人のプレイヤーは到着していた。あ、キョウラクの顔が死にそうになってる。


「遅いわよ!何してたのよ!」
「悪かったって、でもまだ開始時間じゃないだろ?」
「それはそうだけど…!」
「だったらいいだろ?」


 俺が笑いながらそう言うと悔しそうな顔をしてシラクモはそっぽを向いてしまう。子供か!


「ごめんね、シュウ。シラクモも悪気があるわけじゃないんだ」
「ああ、わかってるよ。気にすんな」
「あはは、ありがとう。ほら、シラクモも謝って」
「…悪かったわ」


 サイカが謝るように促すとシラクモは渋々といった様子で謝る。
 そんな姿を見てサイカはさらに「ごめんね」と軽く頭を下げる。なんだろう、この母親感。
 俺が「気にするな」と手を振ると観客たちが騒めく。
 何事かと思い観客たちの視線を追うとそこには決勝戦で司会をしていたクリミアが空を飛んでいた。


「みなさん!長らくお待たせしました!みんなのアイドルクリミアさんの登場でーす!あ、嘘ですごめんなさい!石投げないで!」
「…なにやってんだあいつは」


 いつものようにハイテンションで現れたクリミアのアホな言動に呆れていると、観客たちも落ち着いたのか石を投げるのをやめる。
 なんとか落下せずに胸を撫で下ろしたクリミアは咳払いをすると堂々とこう言った。


「さあ!ということでですね!ここに6人の選ばれた戦士たちが集いました!それではパーティーリーダーである【勇者】キョウラクさんにお話を伺いましょう!キョウラクさん!」
「え?あ、僕パーティーリーダーなんですね。えっと…絶対に攻略して1日でも早く現実世界にみなさんを返してみせます!」


 キョウラクの挨拶が終わると同時に会場中から拍手や声援が飛んでくる。さすがに少し恥ずかしい。
 パーティーメンバーを見渡すとリンネ以外はみんな少し照れているようだった。


「さあ!みなさん!拍手で彼らを送り出しましょう!我らが英雄に盛大な拍手を!」


 会場に集まったプレイヤーたちからの拍手を背中に俺たちは闘技場を後にしたのであった。


➖【CWO総合攻略掲示板】➖
244.『りりり』
 で、実際のとこどうなん?


245.『マヨチキン』
 >244
 なにが?


246.『リフュー』
 >245
 あれじゃね、あんた攻略できんの?的な。


247.『りりり』
 >246
 そうそれ


248.『マヨチキン』
 あー、攻略かー。俺テスターじゃないからな。わからん


249.『ショーヤ』
 ふふふ、君たち


250.『ガスト』
 お困りのようだね!


251.『バーミヤ』
 助けに来たわよ!


252.『りりり』
 うわ!出た!ファミレス3人衆だ!逃げろ!


253.『マヨチキン』
 くっ…!俺は屈しない!ドリンクバーだけで粘ってみせる!


254.『リフュー』
 >253
 ただの迷惑な客じゃねえかwww


255.『りりり』
 さて


256.『マヨチキン』
 さて、それではどうぞ


257.『ショーヤ』
 君たち相変わらず切り替え早いね


258.『りりり』
 >257
 前向きなのが取り柄だから。それより情報はよ


259.『ショーヤ』
 焦るなwwバーミヤ!


260.『バーミヤ』
 承ったわ!そうね〜、正直シュウたちは余裕でゴブリンキングどころか4界層までクリアできると思うわよ。ただその先が問題ね。


261.『リフュー』
 >260
 問題ってなにがあるんだよ


262.『りりり』
 >260
 妖艶なサキュバスのお姉さまが相手で男は前屈みになってしまって戦いにならないとか?こっわ、でも一回行きたいかも


263.『フレン』
 妖艶なサキュバスのお姉さまと聞いて


264.『マヨチキン』
 >263
 あ、パイセンおつかれーっす


265.『バーミヤ』
 >262
 違うわよwこのゲーム5界層ごとに【管理者】っていう滅茶苦茶強いボスがいるのよね


266.『フレン』
 サキュバスのお姉さまがいないそうなので帰りまーすノシ


267.『リフュー』
 >266
 理由よwww


268.『りりり』
 >265
 ほーん、それでその管理者ってテスト時代に倒すのに苦労したん?


269.『マヨチキン』
 >268
 あ、それ気になる


270.『バーミヤ』
 テスト時代に管理者を倒したテスターは0よ。あの難易度は頭おかしいわ


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